悪ー貳ー
「さて」
と、僕は前置きを置きながらもサヤさん含めちゃんと人数分お茶を出した後。
「何から説明して欲しいですか?」
と、客であるサヤさんとは向かいのソファに腰掛ける。
「コノエちゃんについて教えて!」
「……………」
いやそこは「全部に決まってるでしょ!!」って普段のあなたなら言うところじゃないですか。いったい本当マジで、何があったんですか?
しかし当の本人のサヤさんの目はまるで少女漫画のように目を輝かせ、その視線はコノエさんの方へ向けられていた。
ちなみにコノエさんは僕の隣に座っている。いつもなら向かいのソファに座るのだがサヤさんからのただならぬ気配を察してかすぐさまこちらに座った。
いつもこんな風に隣に座ってくれたらいいのに…。
おっといけない今はそんな場合じゃ無かった。
「コノエさん…のことですか?」
この「…」の間は「僕の正体とかどうして自分が殺されたのか知りたくないのですか?」という含みだったのですが、
「うん!教えて教えて!!」
と、意気揚々と答えられ、もう僕はこれ以上のやり取りは無駄な気がしました。
本当に何があったんだ…。知ってるし思い当たる節があるけども。
ここでは「類は友を呼ぶ」というどこかの先人が言っていた言葉で納得することにしましょう。
……そうなると僕もその中に入るのか?いやまさか(笑)
「んふふ〜、それにしてもコノエちゃんは可愛いな〜。歳は十、十一、ってところかな?」
「いや」
と、僕が口を挟んでもサヤさんの口は止まらない。
「サツキくんと一緒に住んでるってことはサツキくんの妹なのかな?それにしては二人は似てない気もするな〜」
「いやですから」
と、なおもサヤさんに僕の制止は効かない。
「好きな食べ物は何かな?好きなこととか趣味ってある?どこに通ってるの?普段は何してるの?その髪は生まれつきの色?好きな動物とかいる?好きなブランドとかある?好きなタイプは?好きな歌手とか芸能人は?最近ハマってることは?将来は何を目指してるの?得意な教科は?好きな番組は?呼ばれたいアダ名とかある?行きたいところとかある?得意教科は?いつもは…」
だめだ、コイツ…。早くなんとかしないと…。
もうサヤさんはコノエさんについて聞きたいことを思いつく限りにあれやこれやと話しかけるので手がつけられない状態となった。
…この人本当に僕がさっき殺したサヤさんなのかなー…?とても同一人物と思えないんですけど…。
さて、そしてその質問のマシンガンを受けるコノエさんはと言うと。
「………………」
無視。
まぁ、これぐらいは当たり前のことだしそもそもコノエさんが僕以外と喋ってるところなど見たことないのでこれぐらいはいつも通り無表情に…。
………。
…アレ?
なんか、コノエさんの様子がおかしい。
違和感を感じコノエさんに近づく。
「コ、コノエさん?大丈夫ですか?」
一応サヤさんには聞こえないよう耳打ちで話しかけた、が、やはり反応がない。
「コノエさ──」
と僕は心配してその小さな肩を触った。その時。
僕の手先からはあり得ない感触が返ってきた。
例えるならそう、それはまるで何百年も動くことがなかった巨大な石のようで、何万年も封じ込められた永久凍土のような冷たさで、誰にも破られず、干渉されず、放置された存在のような感覚。
簡単に言うと固まっていた。
彼女、コノエさんは固まっていた。
あの冷徹で滅多なことでは動揺もしないし口喧嘩なら負けたことのない見た目は幼い少女は。
サヤさんの猛烈な、自分に対しての邪な感情を込めた言葉の数々に打ちひしがれていた。
表情は動いてないけど多分内心「怖ろしい子!!」と背景に稲光とか移し込んでいるのかもしれない。分からないけど。
ともかく、これ以上サヤさんの攻撃を続けさせるのは僕的にもコノエさん的にもよくない。
話が進まないし。
「ね〜、教えてよ〜♪」
と、若干カナデさん化してるサヤさんに対して僕は眼鏡をクイッと押し掛け、言った。
「コノエさんは僕の彼女です」
ビタッ、とサヤさんの動きが止まった。
少し遅れて「え?」と一瞬何言ったの?という表情を見せた。
「歳は二十歳です」
「え?」
「ちなみに僕はその二つ上です」
「え?」
あんなに饒舌だったサヤさんはしばらく「え?」としか言わなくなった。




