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ちいさな日記帳  作者: カティオ


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春の四十一日

   春の四十一日


 朝から雲が空を覆い、森の奥から冷たい風が吹き下ろしてきた。

父は雨の気配を感じとり、早めに森へ薬草を採りに出かけた。

母は庭の畑で芽吹いた野菜を見回し、リジィはその横で雑草を抜く手伝いをした。

小さな指で土を掘り返すと、しっとりとした匂いが立ちのぼる。


 教会では読み書きの勉強が続いている。

この日は「空」「山」「川」といった自然の言葉を学んだ。

年上の子どもたちは静かに文字を写しとり、リジィはまだぎこちない手つきで筆を動かした。


はるのよんじゅういちにち くもり

そらをならった

くもがいっぱい



   春の四十二日


 夜明けとともに霧が晴れ、日差しが戻った。

父が森から持ち帰った薬草を母が広げて干す。

香りが家の前に漂い、リジィはそれを嗅ぎながら興味深そうに見つめた。


 午後、畑では兄と並んで草取りをした。

兄は慣れた手つきで雑草を抜くが、リジィはまだ根ごと抜けず途中で切ってしまう。

それでも母は「それでいいよ」と笑った。


 教会では「朝」「昼」「夜」の勉強が深められた。

朝は太陽が昇ったとき、昼は頭の上に太陽があるとき、夜は日が落ちて暗くなるとき。

リジィはその区切りを不思議そうに眺めながら聞いていた。


はるのよんじゅうににち はれ

あさはひがでるとき

ひるはあたまのうえにひがくるとき

よるはくらいとき



   春の四十三日


 空気が澄み、村の周りの野の花が一斉に開いた。

子どもたちが駆け回る声が遠くから聞こえる。


 午前の教会では数の勉強があった。

リジィは「いち、に、さん」を板の文字と照らし合わせ、指を折って数えた。


 午後、母に連れられて薬草を摘む手伝いをした。

食べられるものと薬になるものがあることを少し教わったが、リジィにはまだ区別が難しかった。

それでも柔らかな緑を摘むと、指に清らかな香りが残った。


はるのよんじゅうさんにち はれ

くさをつんだ

においがよかった



   春の四十四日


 朝から穏やかな陽気が続いた。

父は森へ、母は庭の畑へ、兄は薪割りを手伝い、リジィは洗濯物を干す母の横で小さな布を広げた。

布は草木染めのやわらかな色合いで、春の光に透けて揺れていた。


 教会では物の大きさを表す言葉を学んだ。「大」「小」といった文字に合わせて、先生が机や石を指し示す。

リジィは「おおきい」「ちいさい」と声に出して真似をした。


 午後は畑の端で草取りをした。

根を深く張った草は抜きにくく、リジィの指先に土が黒く染まった。


はるのよんじゅうよっか はれ

くさをぬいた

てがくろくなった



   春の四十五日


 今日は保存していた麦を水車小屋に運び、粉に挽く日だった。

これは村が家ごとに日程を決め、まとめて行われる習わしである。朝から人々が袋を抱え、順番を待って列を作っていた。


父は家に残り、森で得た薬草を干していたため、母と兄が麦を運んだ。リジィもついて行き、石臼の回る音と水の流れを興味深そうに眺めていた。水車の回転が力となって、麦が粉へと変わっていく様子は、子どもの目に不思議なものとして映った。


はるのよんじゅうごにち はれ

すいしゃをみた

ごろごろおとがした

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