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ちいさな日記帳  作者: カティオ


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春の四十六日

   春の四十六日


 空は晴れわたり、村にはやや強い風が吹きつけていた。

午前中の教会では文字の勉強が続き、リジィたちは「川」「森」といった自然をあらわす言葉を教わった。

先生役の神父は、実際に村のまわりにあるものを題材にし、子どもたちが頭の中に映像を描きやすいように工夫している。


 帰宅後、リジィは庭の畑で母に並んで雑草を抜いた。

土を握る感触は少し冷たかったが、手のひらにはやわらかな湿り気が残った。


 夜、彼女は机の上に身をかがめ、今日覚えた文字をなぞりながら、ゆっくりと日記に書き込んだ。


はるのよんじゅうろくにち はれ

きょうかわと もりを おしえてもらった

かわはながれて もりはみどり

すいしゃもかわのそばにある



   春の四十七日


 朝はうす曇りであったが、昼には太陽が差しこんだ。

教会では「家族」という言葉を学び、それぞれの文字を丁寧に書き写した。

神父は「父」「母」という字を黒板に大きく示し、子どもたちが声に出して覚えるよう促す。


 午後、家では兄が父の手伝いで薪を割り、リジィはその小枝を拾い集めて束ねた。


 夕方になると、母が草木染めの布を干す姿があった。

風に揺れる布は、深い藍や淡い茶の色をしていて、白布が珍しいこの村らしい光景だった。


はるのよんじゅうしちにち くもりのちはれ

かぞくのもじをならった

ちち はは にい

みんなでいっしょにごはんをたべる



   春の四十八日


 朝からしとしとと雨が降り続いていた。

教会では「空」「雨」「風」といった天気に関する言葉を学び、窓の外の景色を眺めながら声を合わせる時間が印象的だった。

リジィは雨音を聞きながら紙に文字を書きつけ、まだ慣れない手つきながらも楽しげであった。


 午後は畑に出られないため、家の中で母の手伝いをした。

古い布を裂いて縄を綯う作業は単調だが、母の指の動きをまねるのが楽しかった。


はるのよんじゅうはちにち あめ

そらとあめと かぜをおぼえた

あめはぽつぽつ そらはひろい

かぜがふくと ふくがゆれる



   春の四十九日


 雲はまだ多いものの、朝から光が差していた。

教会では「食べ物」に関する言葉を学び、麦や野菜の絵と一緒に文字を確認した。

リジィは「麦」という字を見て、すぐに父の保存している袋を思い出したらしい。


 午後は村の広場で子どもたちが集まり、年上の子が縄跳びをして遊んでいるのを眺めた。

リジィは縄を結ぶ役を任され、皆の真似をして笑顔を見せていた。


はるのよんじゅうくにち はれ

むぎのもじをかいた

むぎのふくろはおおきい

すいしゃでこなにする



   春の五十日


 朝から澄んだ青空が広がり、村には新しい季節の兆しが感じられた。

教会では「朝」「昼」「夜」の復習に加え、時間の流れを示す言葉の練習が行われた。

神父は太陽の動きを指さしながら、「頭の上に太陽がくれば昼だ」と繰り返す。


 午後、父は森に薬草を探しに行き、母は庭で芽をつけ始めた野菜の世話をした。

リジィも小さな手で土をならし、父の帰りを待ちながら空を見上げていた。


はるのごじゅうにち はれ

あさひがのぼると あさ

たいようがうえにくると ひる

ひがしずむと よる

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