春の五十一日
春の五十一日
朝から空はどんよりと曇り、湿った風が村を吹き抜けていた。
教会では、子どもたちが「とけいのはなし」を学んだ。
まだ本物の時計を持つ家は少ないが、神父は太陽の高さや影の伸び方を教え、時間を読む工夫を語った。
リジィは外に出ると、地面に立つ棒の影を見ては首をかしげる。
影が短くなったり長くなったりすることに、不思議そうな顔をしていた。
はるのごじゅういちにち くもり
きょうは ひのでのとき ひるのとき ひのでからひるまでを まなんだ
かげが ちいさくなったら ひるにちかいんだって
春の五十二日
昼前から雨が降り始め、村人たちは屋根の下で足早に行き交った。
教会の勉強は、数字を使った数え歌。
神父は「ひとつ ふたつ みっつ」と唱え、子どもたちに繰り返させた。
リジィは数を指で数えながら声を張り上げていた。
午後、雨脚が弱まると、家の畑の土はしっとり濡れて、柔らかく耕しやすくなっていた。
父と母が鍬を入れる横で、リジィは小さな桶を持ち、水溜まりをすくっては畑の端に捨てて回った。
はるのごじゅうににち あめ
かぞえうたを うたった
いちにさんを ゆびでかぞえた
春の五十三日
朝は晴れていたが、昼前には雲が広がった。
教会では「かぞえのつづき」として、十まで数える練習をした。
大きな声で数える子もいれば、舌がもつれて笑い声が上がる子もいた。
帰り道、リジィは小石を拾って並べ、「ひとつ、ふたつ」と数えながら遊んでいた。
まだ指の数を超えると迷うこともあったが、楽しそうに繰り返していた。
はるのごじゅうさんにち はれ
じゅうまで かぞえた
いちばんすきなのは なな
春の五十四日
朝から強い風が吹きつけ、木の枝がざわめいた。
教会では、これまで習ったことを振り返り「ことばとすうじ」を合わせる遊びをした。
神父は机の上に果物を置き、「りんごはみっつ」と言って子どもたちに指をささせた。
午後、家に戻ったリジィは、母と一緒に畑で芽の数を数える手伝いをした。
まだ正確さには欠けていたが、少しずつ数を実際の生活に結びつけ始めていた。
はるのごじゅうよっか かぜ
りんごを みっつと かぞえた
はたけのめも かぞえた
春の五十五日
朝から空は晴れ渡り、村には静かな日差しが満ちていた。
今日は日曜にあたり、教会では勉強ではなく祈りの集いが行われた。
人々は皆、色とりどりに染められた布を身にまとい、静かに祈りを捧げた。
午後は家族そろって過ごす日。
父が森で摘んできた薬草を母が干し、兄が手伝い、リジィはその葉を数える役を任された。
彼女は「ひとつ、ふたつ」と一生懸命に声を出し、時折数を飛ばしては母に笑われた。
はるのごじゅうごにち はれ
きょうは おいのりをした
やくそうを かぞえた




