表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ちいさな日記帳  作者: カティオ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/18

春の五十六日

   春の五十六日


 朝から冷たい風が吹き、畑の麦の葉が大きく揺れていた。

教会の勉強では「十より大きな数」を学んだ。

神父は二十や三十を「にじゅう」「さんじゅう」と唱え、子どもたちに繰り返させた。

大人にとっては何気ない数だが、リジィには新しい響きであり、不思議な重なりをもった音に聞こえた。


 帰り道、リジィは小石を並べて「じゅういち」「じゅうに」と数えようとしたが、途中で声が小さくなってしまい、兄に助けてもらいながら続けた。


はるのごじゅうろくにち かぜ

じゅうよりおおきなかずを まなんだ

にじゅうがむずかしかった



   春の五十七日


 朝は薄曇り。

畑の端では父が土を掘り返し、母が芽の間を丁寧に整えていた。


 リジィは教会で「たしざん」の初歩を学んだ。

「ひとつとひとつでふたつ」――神父は手を使い、果物を動かしながら説明した。

子どもたちは声をそろえて繰り返し、リジィも手を開いたり閉じたりして数を合わせた。


 午後、家に戻ると母が豆を入れたかごを差し出した。

リジィは豆をふたつ、さらにひとつ加えて「さん」と数え、満足げに笑った。


はるのごじゅうしちにち くもり

ひとつとひとつで ふたつ

まめをかぞえるのが たのしい



   春の五十八日


 朝から雨。

村の道はぬかるみ、子どもたちは教会に入ると衣をはたいて泥を落とした。

今日の勉強は「たしざんのつづき」であった。

「ふたつとふたつでよっつ」――神父は繰り返し、子どもたちは声をそろえて答えた。

リジィはまだ指の動かし方がぎこちなく、ときどき数を飛ばしたが、それでも夢中で声を出した。


 夕方、雨脚が強まるなか、家で母と豆を選り分けながらリジィは何度も「ふたつとふたつ」を試し、指を合わせては得意げに笑った。


はるのごじゅうはちにち あめ

ふたつとふたつで よっつ

あめがおおきなおとをたてていた



   春の五十九日


 晴れ間が戻り、畑の土はまだ湿っていたが空気は澄んでいた。

教会では「ひきざん」の手ほどきが始まった。

神父は果物を並べ、「ふたつからひとつをとると?」と問いかける。

子どもたちが首をひねる中、リジィは指を折りながら「ひとつ」と答えた。


 午後は家で、兄が木の枝を並べて遊びながら「さんからひとつをとると?」と問いかけ、リジィが応えるやりとりが続いた。

失敗も多かったが、学んだことが遊びと結びついていった。


はるのごじゅうきゅうにち はれ

ふたつからひとつをとると ひとつ

まちがえても もういちどかんがえる

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ