春の五十六日
春の五十六日
朝から冷たい風が吹き、畑の麦の葉が大きく揺れていた。
教会の勉強では「十より大きな数」を学んだ。
神父は二十や三十を「にじゅう」「さんじゅう」と唱え、子どもたちに繰り返させた。
大人にとっては何気ない数だが、リジィには新しい響きであり、不思議な重なりをもった音に聞こえた。
帰り道、リジィは小石を並べて「じゅういち」「じゅうに」と数えようとしたが、途中で声が小さくなってしまい、兄に助けてもらいながら続けた。
はるのごじゅうろくにち かぜ
じゅうよりおおきなかずを まなんだ
にじゅうがむずかしかった
春の五十七日
朝は薄曇り。
畑の端では父が土を掘り返し、母が芽の間を丁寧に整えていた。
リジィは教会で「たしざん」の初歩を学んだ。
「ひとつとひとつでふたつ」――神父は手を使い、果物を動かしながら説明した。
子どもたちは声をそろえて繰り返し、リジィも手を開いたり閉じたりして数を合わせた。
午後、家に戻ると母が豆を入れたかごを差し出した。
リジィは豆をふたつ、さらにひとつ加えて「さん」と数え、満足げに笑った。
はるのごじゅうしちにち くもり
ひとつとひとつで ふたつ
まめをかぞえるのが たのしい
春の五十八日
朝から雨。
村の道はぬかるみ、子どもたちは教会に入ると衣をはたいて泥を落とした。
今日の勉強は「たしざんのつづき」であった。
「ふたつとふたつでよっつ」――神父は繰り返し、子どもたちは声をそろえて答えた。
リジィはまだ指の動かし方がぎこちなく、ときどき数を飛ばしたが、それでも夢中で声を出した。
夕方、雨脚が強まるなか、家で母と豆を選り分けながらリジィは何度も「ふたつとふたつ」を試し、指を合わせては得意げに笑った。
はるのごじゅうはちにち あめ
ふたつとふたつで よっつ
あめがおおきなおとをたてていた
春の五十九日
晴れ間が戻り、畑の土はまだ湿っていたが空気は澄んでいた。
教会では「ひきざん」の手ほどきが始まった。
神父は果物を並べ、「ふたつからひとつをとると?」と問いかける。
子どもたちが首をひねる中、リジィは指を折りながら「ひとつ」と答えた。
午後は家で、兄が木の枝を並べて遊びながら「さんからひとつをとると?」と問いかけ、リジィが応えるやりとりが続いた。
失敗も多かったが、学んだことが遊びと結びついていった。
はるのごじゅうきゅうにち はれ
ふたつからひとつをとると ひとつ
まちがえても もういちどかんがえる




