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ちいさな日記帳  作者: カティオ


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春の七十一日

   春の七十一日


 朝の空気は澄んでいたが、空には薄い雲が広がり、やがて日差しを遮った。

畑の土は数日前の雨でまだしっとりとしており、父はその湿り気を利用して野菜の畝を整えていた。

母は庭先で摘んできた薬草を干しながら、リジィに声をかける。


「今日は教会で文字の復習がある日だよ。気を抜かずにね」


 リジィは頷き、小さな布袋を肩にかけて兄と共に村の通りを歩いた。


 教会の前にはすでに子どもたちが集まり、神父は「朝・昼・夜」に続く時間の感覚をさらに深める授業を行った。

たとえば「午前」と「午後」という言葉を説明し、太陽の位置と結び付けて理解させる。

リジィは何度も空を見上げ、頭の中で太陽の動きをなぞってみた。


 家に帰ると午後は畑の端で雑草を抜く手伝いをし、土のにおいに指を黒く染めながら、母にほめられてうれしそうに笑った。


はるのななじゅういちにち くもり

わたしはきょう ひるとごぜんごごをならった

おてんとさまのばしょで じかんがかわる

あさ ごぜん ごご よる

たくさん ことばがふえた



   春の七十二日


 今日は朝から青空が広がった。

教会では数字の勉強が続き、数を十まで数える練習に加え、簡単な足し算を教わった。

石を机の上に並べ、「二つと三つを合わせるといくつ?」と問われると、リジィは指を折りながら数えて答えた。


 午後、父は森から帰り、袋いっぱいに薬草を抱えていた。

葉を乾かすために軒下に広げると、独特の香りが家中に漂った。

リジィは母の指示で葉を並べるのを手伝いながら、「これはあしたもつかう?」と尋ねた。

母は「しばらく干してからだよ」と答え、忍耐を教えた。


はるのななじゅうににち はれ

かずを じゅうまでかぞえた

ふたつとみっつは いつつ

てをつかうと わかりやすい



   春の七十三日


 午前中、教会では文字の練習が中心だった。

「あ」「い」「う」といった母音を丁寧になぞり、神父は子どもたちの書いた板を一枚ずつ確認した。

リジィは、まだ線が曲がってしまうことも多かったが、前よりも少し形が整ってきた。


 午後は兄と一緒に畑の水やりを手伝った。

井戸から水を汲み、桶を持って往復する作業は小さな体には重かったが、兄が「ゆっくりでいいよ」と声をかけてくれるたびに元気を取り戻す。

土に水が染み込み、苗の葉がいきいきと見えると、リジィの顔にも満足げな笑みが浮かんだ。


はるのななじゅうさんにち はれ

あいうをかいた

まがったけど まえよりきれいになった



   春の七十四日


 雲が流れやすい天気で、陽が差したかと思えば影が伸びる。

教会での勉強は、これまで学んだ「朝・昼・夜」「午前・午後」などの言葉を組み合わせて、短い文章を作る練習だった。

「ごぜんに あさごはんをたべる」「ごごに そとであそぶ」といった簡単な文を口にする。

リジィは照れながらも声に出して練習した。


 午後は家で母が糸車を回しながら、古くなった衣服を繕っていた。

布は草木で染めたやわらかな緑や褐色で、家の中に落ち着いた色合いが並ぶ。

リジィは布切れを集めて人形の服を作ろうとし、母に「指を刺さないでね」と針の扱いを教わった。


はるのななじゅうよんにち くもり

ごぜんにあさごはん

ごごにそとでおしごと

ことばをつなげると たのしい



   春の七十五日


 朝はひんやりとしていたが、昼には少し暑さを感じるほどの陽気になった。

教会での勉強は数字の発展で、十を超えた数を学ぶことに挑戦した。

十五、二十と数を伸ばしながら、子どもたちは声を合わせて唱えた。

リジィは「じゅうご」と口にしながらも、頭の中で石を並べて確かめている様子だった。


 帰宅後、父は「今日は保存していた麦を少しすいしゃへ運ぶ日だ」と言い、村で決められた順番に従って麦袋を担いで出かけていった。

リジィは家で待ちながら、母とともに残っていた野菜の葉を刻み、粗挽きの麦粉で作った薄い粥に加えて夕食を整えた。

香りは素朴でありながら、体を芯から温めるようだった。


はるのななじゅうごにち はれ

じゅうごまでかぞえた

おかゆがおいしかった

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