104 エリー湖の女神1
「よう。元気にしていたか?」
朝早く、エリー湖への討伐隊に集合したフェル達の前に、懐かしい顔が並ぶ
「エドガーさんにリュークさん!お二人も討伐隊に?」
「ああ、2日ほど前に帰ってきたばかりだったんだが、ネールに声をかけられてね。
そうそう、紹介して置こう。前に話したかもしれないが、エリオットだ。」
そういうと、隣にいたエドガーやリュークと同じぐらいの年齢と思われる男性をフェル達に紹介する。
かなり精悍な顔つきをした優男である。筋肉質ではないが、非常にしなやかな身のこなしが佇まいから見てとれる。
エリオットについては、フェル達とは、初対面であるが話は聞いていた。
エリオットは腕利きのハンターで、エドガーとリュークと共に3人でパーティーを組んでいたらしい。
ところが、ある依頼の途中で、かなりの重症を負ってしまったことから、ギルモアの街で静養をしていると聞いていたのだ。
「はじめまして。フェルといいます。エドガーさんたちにはすごくお世話になっています。
かなりの怪我をされていると聞いたのですが、もう良いのですか?」
「ああ、話は聞いているよ。フェル君とクリス君だね。よろしくね。
新人なのに、なかなかやるらしいじゃないか。
本気でパーティーに誘いたかったって、エドガーが何度も言ってたからね。」
エリオットは、落ち着いた声色でフェルとクリスに握手をおこなう。
その右腕には、かなり痛々しい火傷の跡が見えた。
「ああ、すまんね。前に大火傷を負ってしまってね。
一命は取り留めたんだが、2年ほどリハビリ生活になってしまったんだよ。
つい最近までは、剣も振れない状況だったんだ。
そうそう、昨日バーン君にも会いに行かせてもらったよ。復帰できたのは彼のおかげだからね。」
話を聞くと、どうやらエドガー達はエリオットのことをバーンに話したらしい。
すると、ゼペットの指導を受けながらバーンが試作した魔法薬を数本渡されたのだという。
「正直驚いたね。ギルモアでもなかなか治療ができなかったのが、ものの数週間で回復したのだから。
流石に、火傷のあとは専門外らしいけれど、逆にこれは魔法でなんとかなりそうなんだ。
というわけで、今回は俺のリハビリも兼ねて参加させてもらうことにしたのさ。」
エドガーとリュークの腕前は、十分知っている。
これ以上頼もしいことはない。
「しかし、涼風の連中も一緒とはな。ジルベルトの奴は大丈夫なのか?」
涼風は、このギルドでは良くも悪くも有名人である。
もちろんエドガー達古参のハンターは、彼女たちがこのギルドに来た頃から良く知っている。
エリオットも、思い出したかのように渋い表情になった。何を思い出したかはわからないが。
「ええ、まぁお元気そうですよ。いつもボロボロですが・・。」
「まぁ、なんだかんだで、あいつはあの環境を楽しんでるフシがあるからな。
死んでなければまぁ、いい。今回も、ちょっと離れて動くかな。」
そんな話をしていると、銀の拍車のメンバーと初顔の若い6人の男達が集合してきた。
おそらく、あれが”龍の顎”だろう。
最近、この街に着たばかりの集団らしいのだが、皆装備は中々整っているし、オークなどの討伐しているので、腕も悪くないとの評価だ。
「おお、エリオットじゃないか。久しぶりだな。」
銀の拍車の面々も久しく会っていなかったエリオットが今回の作戦に復帰するのを聞いて、声をかけてくる。
一方、龍の顎の方はなかなか緊張しているようで、リーダー格の男が丁寧に挨拶をしてまわる。
そして、しばらくして涼風のメンバーとフェスカが現れると、直立不動に背筋を伸ばした。
「えらい緊張しているようだが、あいつら大丈夫か?」
エドガーが銀の拍車のリーダーのギルバートに、耳打ちする。
「いや、あいつらな・・・最初はすっげー威勢がよかったんだぜ。
だけど、この前、酒場でジルバにからんじまってな・・・・。」
それを聞いてエドガーは納得と同時に同情をした。
「まぁ、いい薬といえばいい薬だがな。若い奴が調子に乗るとロクなことにならんからな。」
そういうと、ギルバートはエドガーの元を離れ、皆の中心になるあたりに行くと話をしだした。
「おはよう。知ってる者も多いかもしれないが、私が銀の拍車のリーダーをさしてもらっているギルバートだ。あまり偉そうなことを言える立場じゃないんだが、役目上今回の討伐隊のリーダーをさせてもらう。とはいっても、全体の移動や撤退のタイミングや判断が中心なのだけで、基本は各チームのリーダーの指示で動いてもらうことになる。
では、軽く自己紹介だけして早速エリー湖に向かおう。」
そのあとは、本当に簡単にチーム毎に自己紹介が行なわれた。
ほとんど名前と簡単な役割の紹介だけがである。
重要な役割を持つのが、回復魔法の使い手として、銀の拍車のカーン、涼風のミリナ、そしてギルドからフェスカの3人、収納魔法の使い手としてエルファルドとフェル、そしてジルバ。
これぐらいである。
龍の顎とエドガー達にはこれらの役割をこなせる人物はいないようであった。
「うむ。ではちょっと予定と異なるが、フェスカはエドガー達に同行することにしたい。
人数的にもそうだが、フェスカの護衛としてもその方がバランスがいいだろう。
どうだ?」
ギルバートがジルバに問うと、ジルバは問題ないというように頷く。
それを見て、ジルベルトはあきらめたかのように項垂れた。
龍の顎の面々もその様子を見て、心中察するかのような表情をする。
「あと、行きの間は、予備の武器や野営道具は、それぞれの収納使いが預かろう。
顎の分は、エルファルド。エドガー達のはフェルで頼む。
狩った跡の獲物も基本同じメンバーで収納してくれ。
なので、帰りは場合によっては道具は各自で持ってもらうことになる。いいな。」
これには特に異論はでなかった。
今回の収入は、討伐後の素材収入がメインだし、龍の顎にとっては行きだけでも荷物を収納してもらえるのは助かる。特に行きは丘を登るのだから。
そして、涼風には配慮をしている。というか、ジルバに荷物を持ってもらうように頼むような恐ろしい真似は出来ない。
「本当に、腕は確かなんだがな・・・。」
ジルバたちをちらりと横目で見ながら、エドガーはギルバートの気苦労を察していた。
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