小説ジャック
バチッ
トン
トン
ヴゥオッ
ヴゥオッ
トン
トン
あー
あー
誰か聞こえてるか?
第二十二話
小説ジャック
皆、あいつの声がするのを期待してたんだろ。
すまんね。
小説ジャックだ?
いや、そんな大それたもんじゃねえよ。
単なる気の迷いってやつさ。
今日は少し酒がヘンなトコに入っちまったようでな。
少し喋りたくなっただけさ。
ん?
俺の話しは聞きたくない?
まあ、そうだわな。
ここも本来、あいつの場所だ。
俺が割り込んでるってだけでも無粋な話しだ。
聞きたくなければ、スイッチ切っといてくれればそれでいい。
そのうちあいつがまた、独り喋りを始めるだろ。
俺の話しは戯言だ。
別に聞かなくちゃ、やつの話しが分からないってもんでもない。
ただな。
今日はちょっと気分がいいから、少し話したくなった。
そんだけだ。
元来俺は、無口な方でな。
酒の力でも借りねえと喋れないような男なのさ。
可笑しいだろ?
酒や料理や、バイクの話しだったらどんだけでも話せるんだがな。
自分の事を話すのは苦手なのさ。
そう、俺は料理も作れば、バイクだって直す。
実はプラモデルも好きでな。
パテ盛ったり、コンプレッサー使ってマックス塗りしたり、ウェザリングなんてものお手の物さ。
安い千円くらいのプラモデルでも、チマチマ作って店に飾れば、
飲んだ客が
「えらく立派なフィギアだね。」
なんて言ってくれたりする。
まあ、大体、こういう手先が器用なヤツに限って、人間は不器用なもんで、
俺も昔から良く勘違いされる。
言い訳するのも面倒臭いから、たいがい勘違いされたまま放っている。
こうゆう人種を世間では
「職人」
って言うらしい。
それなりの数の女は抱きてきたつもりだし、
それなりの数の女に恨まれている。
そして、こんな性格が祟ってか、
挙句、手すら握った事ない女にだって恨まれてる始末だ。
自慢話がしたいのかだって?
おいおい、こんな情けない自慢話なんて世の中にゃあ無えよ。
珍しく、今日はちょっとだけ気分がいいから
自分の事を喋りたくなった。
ほんとにそんだけさ。
そう大々的にブログを開設してまで「聞いてください」って程のもんでもねえから、
あいつには申し訳ないが、ちょっとだけ場所を借りる事にした。
心配すんな。
後でちゃんとバレないように消しとく。
意外と怖いんでな、あの女。
そうだな。
このグラスの中のウイスキーが一杯、いや二杯分くらいの時間だ。
これは一人のバカな男が
僕から俺に。
子供からバカな職人になるまでの単なる昔話さ。
『ちょっと大人な私達の日常』
<少年の旅 編>




