第66話 馬車が来ない
「なんで、こんなに高いのよ」
「すいませんね。入荷が少なくて」
「こんな値段じゃ、買えないじゃないの」
八百屋で買い物にきた奥さんが文句を言っている。
最近、野菜の値段が急激に上がってきているのだ。
「なんで、そんなに入荷が少ないの」
「どうも、街道に魔物が出没するらしいんだよ」
「そんなのやっつけてよ」
「私に言われても・・・」
魔物が街道まで出てくる。
時々あることではある。
しかし、今年の初夏は異常なほど多いらしい。
冒険者ギルドには、討伐の依頼が多く出されているけど、依頼を受ける冒険者があまりいないらしい。
他の街に割の良い仕事があるらしく、冒険者が移動してしまっている。
その影響は紅炎の騎士団にも及んでいた。
「なぜ、そんなに馬車が集められない?」
「実は、他の街から馬車が来ていないのが現状でして」
「移動の命令が出ているのだ。なんとしても、馬車が必要なんだ」
「わかっていますが・・・」
紅炎の騎士団には30騎の騎士がある。
騎士はもちろん馬に乗っているから、馬車は必要ない。
しかし、騎士には従者がそれぞれ10名づつ着く。
弓兵や剣士達だ。
従者には馬がないから移動の際には、馬車を使う。
馬車を借り切って移動するのだ。
その馬車が手配できていない。
このままでは、3日後に迫った移動が予定通り行うことができなくなってしまう。
「参った。今回の移動はただの移動ではないというのに」
紅炎の騎士団に下った命令は、帝国との国境の街に移動すること。
帝国に不穏な動きあり、と連絡が入っている。
ガリナ王国に存在している4つの騎士団のうち、親衛騎士団を除いた3つが集まる予定なのだ。
他にも元々駐留している歩兵中心の軍団に加えて、もうひとつ軍団が移動してくる。
国境の街には、王国の半分以上の戦力が集まってくる。
完全な臨戦態勢だ。
この100年間は王国では戦争らしい戦争はなかった。
帝国は外に領土を求めることはなく、内政をしっかりと行っていた。
しかし、新しい皇帝が決まり、体制が一新されると戦力増強が続いていた。
そのうえ、戦力の移動が行われている。
王国との国境近くに軍団が移動してきているのだ。
王国も対応するために、軍団と騎士団を移動している。
その作戦に基づいた移動が、馬車がないという理由で出来ないなんて許されるはずがない。
「参ったよ、アリサさん。せっかくポーションを届けてもらったのにな」
「あの・・・。よかったら、浮島で移動したりしますか?」
「えっ。あの島、移動できるの?」
「はい。馬車よりは少々時間が掛かりますが」
浮島は一辺100mの広さがある。一時的には300人くらいの人が駐留しても大丈夫だ。
もちろん、建物はそんなにないが空き地ならある。
テントを持ち込んでもらえぱ、なんとかなる。
「それ。いけるかもな」




