第60話 紅蓮の剣は完成するのか?
「やっと咲いた」
たった1本残ったミスリル剣に根付かせた強剣草。
最初は3本あったんだけど途中で枯れてしまった。
ミスリルの剣を錬成するには草のパワーもとんでもなく使うらしい。
最後に残った強剣草に花が咲いた。
紅蓮の剣ができあがったか、収穫してみるタイミングだ。
「もしかしたら、全滅かも」
とても高価なミスリルの剣を3本も用意してくれたのに、一本も成功しないとなると格好がつかない。
せっかく信頼してくれるアンソニさんをがっかりさせたいない。
そんな気持ちで強剣草を引き抜く。
まずは、強剣草の根の周りの土を取り除いていく。
「なんか、ずいぶんと大きな根ね」
鋼鉄の剣ができた時の根の大きさに比べると重さで2倍はありそう。
引き抜くのも時間もかかるし力も必要だ。
「ミャア」
あ、白猫ミアも来た。
錬金畑で真剣に作業していると不思議も寄ってくるミア。
私の横に座ってみている。
「ふぅ」
なんとか、強剣草を引き抜けた。
大きな根で囲われたミスリルの剣だった物。
ミスリルの剣が火の属性が強化されて紅蓮の剣に進化しているか、どうか。
それは根を開けてみるまで分からない。
「ミア、いくわよ」
「みゃあ」
根の塊にナイフを刺して開けていく。
ガリッ。
ナイフが中の剣に当たった感じがする。
何かできているかも。
失敗したときは、中の剣が崩れ落ちてしまっている。
だから、剣に当たった感じは、成功の可能性を感じさせる物だ。
「あ、見えた。赤い?」
本来ミスリルは白銀の色をしている。
それが深い赤に輝いている。
根を取り除いていくと、深い赤の剣が現れてくる。
もしかして、成功したのか?
もっとも、その赤い剣が紅蓮の剣かどうかが分からない。
品質がどうなっているのか、分からない。
「どうにか、できあがったみたいね。この剣でいいのかな」
剣を両手で持ちまっすぐ上に突き上げてみる。
そこから一気に振り下ろす。
ボボォー。
剣から炎が沸き起こる。
間違いなく火の属性が付加されている。
「ここから先はアンソニーさんに見てもらうしかないな」
他の作業をすべて止めて、紅蓮の剣を持って街の外の紅炎の騎士団の駐屯地にやってきた。
「これはアリサさん。団長ですか?」
すでに顔見知りになった衛兵に声を掛けられる。
18歳くらいの青年だ。
「ええ。やっと依頼されてた、これが出来上がったの」
「これ、もしかして剣ですか?」
「はい。特別な剣です」
「ですよね。赤い光がもれてますから」
そう。
出来上がった剣は油紙で何重にも包んでいるのに、中から赤い光が漏れてくる。
「剣を持っている人を中に入れる訳にはいません。団長を呼んできますので、ここでお待ちください」
「はい。よろしくお願いします」
しばらく待っていると、アンソニーさんが出てきた。
オーキッドさんも一緒だ。
「お待たせしました、アリサさん」
「私の方こそ、お待たせしました、ですね」
「できたんですね、紅蓮の剣が」
「どうでしょうか。作ってはみましたが、紅蓮の剣になっているかどうか、わかりません」
「私も紅蓮の剣は噂でしか聞いたことがなくて。鑑定できるオーキッドを連れてきました」
油紙から剣を出す。
深く赤い光が強くなる。
「おおー、美しい剣ですね」
「ええ、アンソニーさん。振ってみてください」
「やりましょう」
剣を上段に構えて、大きく振りかぶって斜めに振り下ろす。
ボボボボォォォーーー。
すごい炎が起きる。私が振った時の三倍はありそうな炎。
「こ、これは。まさしく、紅蓮の剣です」
鑑定スキルを持つオーキッドさんが保証してくれる。
「それも、品質が高いですね。高品質の評価がついています」
「アリサさん、よくやってくれました」
「いえいえ。こんなすごい剣を作る経験をさせてもらって私の方が感謝しています」
アンソニーさんは、大きな袋を取り出す。
中に入っていた金貨をじゃらじゃらと出す。
「ここに、金貨が800枚あります。お礼はこれで足りますか?」
「えっ、そんなにもらえるんですか?」
「普通の品質の紅蓮の剣で計算した金額です。高品質だと足りないんですが」
「そんな。十分です」
オーキッドさんによると紅蓮の剣の価値は金貨2000枚。
ただし、ほとんど流通することがないので価値は確定はしない。
最後にオークションで着いた金額が金貨2000枚なのだ。
高品質となるといくらになるか不明だ。
研ぎの費用と鞘を作る費用、そして最初に渡したミスリルの剣の代金。
あとは失敗したときのリスクの費用。
諸々の費用を引いても、金貨800枚が残る。
「そんなに高価なアイテムを錬成できてうれしいです」
金貨が沢山もらえるのは、たしかにうれしい。
だけど、それだけの価値がある仕事ができたのが、もっと嬉しい。
今まで最高の金額になったのは、鋼鉄の剣で金貨20枚。
その100倍以上の価値の仕事だ。
「この剣は、アリサブランドの最高傑作ってことですね」
アリサブランドの名づけ親、オーキッドさんが嬉しそうに告げた。




