第59話 アンソニーの依頼
紅炎の騎士団の駐屯地に今、来ている。
団長のアンソニーが依頼があるとのこと。
「アリサさん。わざわざ、すみません」
「あの・・・紅蓮の剣はまだ、なんです」
「分かりました。あと、どのくらいかかりそうですか?」
「そろそろかと思うんですが」
「そうですか。今日はその件ではなく新たな依頼なのですが」
「はい」
「実は、我が騎士団に移動命令が出まして」
ロマニア帝国との国境の街「エラン」。
そこに、騎士団が移動して、国防にあたる。
元々は、もう少し後の予定だったが、帝国側の兵員の移動が起きているらしく、予定が早まったのだ。
「ついては、アリサブランドのポーションをできるだけ多く用意してほしいのだ」
「アリサブランドですか」
「あ、うちの騎士団ではアリサさんのポーションはアリサブラントと呼ばれているんだ」
「冒険者ギルドで聞きました。あそこでもアリサブランドと呼んでいたので」
「名づけ親は、こいつだよ」
斥候をしているオーキッドさんを指す。
「前に納品してもらった時に、アリサさんのポーションにAのマークを付けまして。他のと区別したんです」
「そうだったんですか」
「品質が全然違うので。『これはなんですか』と団員に聞かれたから、アリサブランドだと答えていたんです」
そんなところからアリサブランドの名前が一人歩きしたんだ。
「あ、そうでした。実はビル&ボブ商会で出しているカラフルスカーフにも、アリサブランドが付く予定なんですよ」
「おっ、それはいいな」
「アリサブランドを名付けてもらって、広めてくれたオーキッドさんにもちゃんと了解をもらっておかないと」
「えっ、そんな。僕はただ、アリサさんのポーションの品質がいいからで」
あたふたするオーキッドさん。
あんまり目立つのが苦手みたい。
「アリサブランドは我が騎士団ご用達のブランドだから。宣伝に使ってもいいぞ」
「わー、ありがとうございます。そう言ってもらえると、プリシラが喜びます」
「その代わり、できるだけ多くのアリサブランドのポーションを頼む」
「わかりました」
騎士団の駐屯所を出たアリサは錬金術士ギルドに向かう。
ここに来る予定はなかったけど、錬金術のことならここよね。
「すみません」
「アリサさん。よくきたアルね」
東方出身のキムさんが出迎えてくれる。
奥のデスクには、マチルダさんがいる。
「アリサさん、いらっしゃい」
「えっと、マチルダさん。実は今日はお願いがありまして」
騎士団からの依頼の話をしてみた。
「うーん。残念ながらうちでは無理よ、それ」
「なんでですか?」
「だってアリサブランドのポーションでしょ。そんな高品質なポーション作れる錬金術士いないから」
「あ、違うんです。私がする錬成を手伝ってくれる人が必要なんです」
実は騎士団が求める数のポーションを用意するとなると、手が足りなくなる。
期間が決まっていて、数が多い上に品質が求められる。
それに応えようとすると、ポーション畑を拡張するのが一番だ。
だけど、ポーション畑をひとりで対応するのは無理がある。
だから、錬金術ができる人の手が必要なのだ。
「それなら、私とキムが順番に行きましょう。あと、錬金術士の見習いのリアもつけるわ」
「うわ、そんなにバックアップしてくれるんですか」
「騎士団の依頼だしね。あと、ギルドに卸す分もお願いね」
「もちろんです」
これでポーション増産のメドが立ったわ。
アンソニーの期待に応えられてよかった。




