第54話 盗聴じゃないもん
エリオットさんは明日のオーディションのために、練習している。
練習が終わった後、一緒に食事する約束をした。
その時に声質変化ドロップを渡す約束をしている。
エッチしちゃった後だから、顔を合わすのがちょっと恥ずかしい。
もちろん、それ以上にうれしいっていうのが強い。
がんばっているかな、エリオットさん。
私は劇場に隣接しているカフェでカフェオレを飲んでいる。
「エリオットさんの声、ちょっと聴きたいな」
きっと練習しているはずだから、その様子ちょっと聴いてみたい。
練習の時は、部外者は入れないから、近くにいるの。
「これ、使っちゃおうかな」
《聴力強化の耳当て》
『錬金農法の勧め』の中にあったアイテムで、便利そうだから作っておいた。
これをすると、耳がよくなって遠くの音も聞こえるの。
えっ、盗聴じゃないよ。単に好きな人の声を聴きたいという乙女の願いを叶える道具だよ。
そんな言い訳しながら、アイテムを耳に当てる。
「うわ、音、大きい」
いきなり周囲の音が大きくなって聴こえてくる。
劇場の方を意識して耳を澄ましてみる。
すると、劇場の中の声が聴こえだす。
「あなたは私に死ねと言うんですか」
やってる、やってる。
明日オーディションということで、参加する役者さんは練習で忙しい。
だけど、声からしてエリオットさんじゃない。
エリオットさんはどこかな。
劇場の中をイメージして、すこしづつ移動させてみる。
「どうだね。エリオット。順調かい」
「はい。今度の役は感情移入できる役なので・・・」
おっと、エリオットさんだ。
それと、監督さんかな。
練習ではなく打ち合わせしているのかな。
「その話じゃない。頼んでいたあの話、どうなった?」
「はい。ちゃんとやりましたよ」
「おっ、しっかりと終わったのか。ちゃんと報告してくれないから失敗したと思うじゃないか」
「すいません」
「それで、あの女、落としたのか?」
「はい」
「ちゃんとエッチしたんだろうな。まさか、キスしました。みたいな子供みたいな話だったら怒るぞ」
「そんなことはありません。ちゃんと最後まで」
えっ、私のこと?えっ、なんで監督さんに話しちゃうの?
「よしよし。これで依頼主に報告できるな」
ええー、どういうこと?依頼って何?
「でも、もういいでしょう。約束は果たしましたから」
「おいおい。何言っているんだよ。依頼主は一度なんて言ってなかったぞ。おまえに首ったけにしておくのが依頼だ」
「もう、そうなっています」
・・・。嘘、でしょ、エリオットさん。
「あ、ところであの薬、使ってみたか?」
「食前酒に入れて使っています」
「おおっ、それで効果はどうだった?」
「効果ありました。すぐに目がとろんとしてきて。甘い言葉と軽いタッチでもう」
「そのままエッチに持ち込んだのかな。すげーな、あの薬。俺も欲しいな」
・・・。最悪・・・。
アリサは、自分が闇の底に落ちてしまった、と感じていた。




