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第53話 錬金畑で野菜をつくれるの?

「初夏の陽ざしがまぶしいな」


浮島にある蛇神さんの池の前で私はぼーっとしていた。


「おーい、そっち押さえてくれ」

「はーい」


向こうではマリオ親方が観覧車を組み立てている。

だいぶ工程が進んできたみたいで、形が見え始めている。


そんな声を聴きながら昨晩のことを思い出していた。


エリオットさんと過ごした夜。

甘く熱い時間。


ちょっと思い出すだけで身体がまた熱くなる。


「おねいちゃん」


いきなり声を掛けられてびっくり。

えっと、君は親方のとこのお手伝いしてる男の子だよね。

10歳くらいかな。


「僕、ファルコ」

「いつも、親方のとこでお手伝いしてるよね」

「うん。だけど、あまりできることがなくて」

「そうなんだ。今も休憩中なの?」

「うん、危ないから離れてろって。だから暇なの」

「ふーん」

「ね、おねいちゃん。畑、ずいぶん余っているから、何か作物作っちゃ駄目?」

「えっ」


ファルコは、農村の子でマリオ親方のとこで下働きをしている。

村では、いつも畑仕事を手伝っていたから、こんなに畑が余っているなら、何か作ってみたい。


そんなことを言ってきた。


「何が作れるのかな。普通の作物は作ったことないから、分からないや」

「僕がやってみて、いい?」

「うーん。じゃあ、ここの空き地、使ってみる?」


蛇池の近くの1区画。

10mX10mで100㎡ある。


「なら、耕すのは、こいつにやらせよう」

「鍬なの?ちょっと変わった形しているけど」

「うん、鍬。鍬だけどちょっと違うのはね。ほら」

「うわぁーーー、すごいっ」


動く鍬を使って自動的に耕していく。

耕運機なんて無い時代だから、自動的に耕してくれる動く鍬に、びっくりしている。


「便利でしょ」

「これなら、簡単に畑できるね」


種はどうしようと思っていたら、ファルコはちゃっかり持ってきていたみたい。

ちょっとづつ、いろいろな作物の種。


「これはね。サラダに仕える菜なのさ。だいたい15cmごとに3粒づつ植えて」

「こっちは、トマトにしましょう」


解説しながら種を撒いていく。こんなに小さいのに農業のこと詳しいんだ。

すごいね。


2時間もすると、1/3くらいは畑の形になってきた。


「あれ?もう芽が出てる」


最初に植えたあたりを見ていたファルコが声をあげる。


「えっ、まだ芽がでるはずないじゃない・・・あれ、本当だ」


最初のサラダ菜のところだから15cm離して種をまいたから、芽も15cm毎に出ている。

ちっちゃな芽ががんばって出ている。


そういえば、水は蛇神さんの池から汲んであげたなぁ。

もしかして、あのお水が特別なのかな。


お昼になったから、親方と一緒にご飯を食べてまた畑に戻ってきたら。


「あ、さっきの芽、大きくなってる。こっちも芽が出てきた」


すごい。もう、本葉が出ていて、ちいさいながら菜っ葉っぽくなっている。

あっと言う間に育ってしまう。


「おねいちゃん、もっと一杯植えたいな」

「じゃあ、動く鋤、自分で使ってみる?」

「えっ、いいの?」


どうかな。ファルコでもできるかな。

私以外は、動く鋤を使ったことがないから、使えるのかどうか疑問。


「えっと、こっちの端に置いて、と。どうやったら動くの?」

「耕してって、お願いするのよ」

「耕してくださいな、お願いっ。わっ、動き出した」


ファルコでも使えるみたい。

後は、ファルコに任せてしまおう。


蛇神さんの池の近くの5区画は、ファルコに任せてみた。

もちろん、親方が手伝いを必要としているときはダメって言って。

あと、種やら支柱やら必要な物は市場で買ってきてもらうから、銀貨2枚を預けた。


一生懸命畑づくりしている。

私はそんな姿を見ながら、エリオットさんの事ばかり考えていた。


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