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第55話 オーディション

「今日はエリオットの奴のオーディションの日かぁ」



昨日、ショックで浮島に帰る元気がなく。もちろん、エリオットに会うこともできず。

ひとり、街の宿に泊まって泣いているうちに、寝てしまった。


もう9時か。こっちの世界の人たちは朝が早いから、もうみんな働いてる。

私は、何もする気が起きなくて、


結局、宿に人にお願いして、今晩も泊まることにして部屋にいつづけた。


昨日、渡す約束だった声質変化ドロップ。

渡せないまま、ここにある。


「オーディションなんか、落ちちゃえばいいのよ。いいきみ」


太い声がでなくて、審査員が首を横に振っている。

あせっているエリオットさん。


ざまぁみろ。

乙女心を弄んだ罰だ。


今日はどうせ、何もする気にならないから、ここにいて寝てよう。


・・・


なんで、私。ここにいるんだろう。


劇場の関係者入口。

オーディションに出る役者が通るとこ。


こんなとこにいたら、エリオットさんに会っちゃうじゃないか。

帰らなきゃ。


だけど・・・なぜか、動けない。

あんな嘘つきに会ってどうしようと言うのか。


どうせすべてが嘘なんだから、意味ないじゃない。


「あっ、アリサさん!よかった!」

あちゃ、見つかってしまった。エリオットさんだ。


「昨日はどうしたのかな。何かあったの?」

「・・・・」

「えっ、調子でも悪いの?」

「・・・・」

「ごめん。もうすぐオーディション始まってしまうんだ。あれ、持ってきてくれてる?」


無言で袋をひとつ差し出した。


「ありがとう。こんなに。これだけあれば、乗り切れるよ。絶対、主役を勝ち取ってみせるから応援していてね」

エリオットさんは、走って関係者入口に消えた。


なにやっているんだろう、私。

もう、家に帰ろう。


帰って、錬金畑の世話しなきゃ。

もう、恋は、当分したくない。



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