第37話 観覧車の作り方
「大工の親方をしているマリオと言います」
「錬金術士のアリサです」
錬金術ギルドのマチルダさんの紹介でやってきた大工さん。ずんぐりむっくりな外見だけど、力はありそう。30代前半くらいかな。
「それで、どんな物を作りたいんですか?」
「これです」
アリサお手製の観覧車のイラストを広げて見せる。
「えっ、ここに描いているのが人間ってことですか?」
「ええ。大人の男女です」
「ぶいぶん大きい物を作るんですね」
「はい、大きいです」
大きいと言っても、現代の観覧車に比べたら小さいけどね。さすがに技術の差があるから、そんなに大きい物は作れないだろうから、少し控えめにしてみました。
「直径が30mくらいですか」
「そうです。この2本並んだ木があるじゃないですか。それがあの木です」
窓から見える木を指さしながら説明する。
その木はセコイアの木で、すーっと高く伸びていて、一番上は20mはある。2本の木の15mのあたりに木の台を設置して、そこが観覧車の輪の軸受けになる。
「この大きさの輪になると、中心に力がかかります。バランスを取るために、少し傾けましょう」
「えっ、傾けると倒れちゃわない?」
「横から見たらこのくらいの角度にしまして。すると、力のバランスが均衡するんです」
「へぇ、気づかなかったわ」
「風車もこのくらいの角度がついていますからね。同じ原理です」
この親方のマリオさん、なかなか柔軟性があるかも。見たこともない観覧車のスケッチでどのような設計になるのか、すぐ考えられている。
「だけど、風車ではないんですよね。どうやってこの30メートルの大輪を廻すんですか?」
「それは、錬金術を使ってできるで心配しないでください」
そうは言っても、実はアリサもうまくいくか分かっていない方法だ。
アリサが使おうと思っているのは、スライム核。
堅くて球状のスライム核は、ベアリングに使えるんじゃないかと思っている。ただ、完全に球ではないので、削り込みをして真球にする。
そのためには同じ大きさのスライム核がたくさん必要になる。すでに冒険者ギルドにスライム核集めの依頼は出してある。ただ、普通のスライム採取の依頼と違ってスライム核の大きさが指示されている。
スライム核は魔力を注入すると一定方向へ回転するから、観覧車を廻す力にできるはず。
「費用はどのくらい掛かるものでしょうか」
「うーん。やってみないと分からないことが多いね。でも金貨100枚を見ておけばなんとかなるでしょう」
「金貨100枚。すいぶん掛かるんですね」
「そりゃ、これだけ大規模な物を作るのだから、何人も職人が必要で最低2週間は確保しないといけないので」
結局、変に価格交渉をしようとしていないマリオ親方を信用して金貨100枚でお願いした。諸君や材料の手配があるから半金の金貨50枚を前金として最初に手渡した。
遊園地を作るという夢を叶えるためには、お金が掛かるってこと。身に染みてわかったわ。
そんな夢のためにアリサが新しいこと始めた頃。王国では大きな問題がおきていました。
まだアリサも街の誰も知らないところで。




