第38話 ノミの市で錬金畑産品を売ってみた
「ちょうど、よかったわ。大工さんに前金を払ってしまったから、あまりお金がなくなってしまって」
「あら、おうちでも増築するの?」
「別の物を作ってもらおうと思って」
「何つくるの?」
「まだ内緒」
シートを引いて、商品を並べている、ふたり。
染色工房のジャスミンと錬金術士のアリサ。
「前からノミの市の1区画に申し込みしていたんだけど、あまり商品がなくてね」
「思ったより広いわね。私は商品一杯もってきたから、場所が余ることはなそさうだけど」
ジャスミンは工房で染めた商品を持ってきている。ハンカチやお財布の様な小物から、バックの様なちょっと大きい物まで。すべてが布製で様々な模様が染めつけられている。
「あ、この財布の鳥のキャラ、かわいい」
「でしょう。モチーフは鷹なの」
「こういうの好き」
そんな会話しながら商品を並べているから、時間が掛かってしかたない。
「これは何?」
「時間を計る器具。この砂が全部落ちると音がなるの」
アリサの持ってきた商品は、見ただけでは何に使うのかわからない物が多い。
錬金術を駆使して、いろいろと試しで作ったけど、あまり使っていない物を持ってきていた。
「こっちの植木鉢は?」
「これは釣りツリーって言って、釣りをしてくれる木なの」
「へぇ」
アリサが持ってきた商品に興味深々なジャスミン。見たことがない品が並んでいく。
「さぁて、もうすぐで市が始まるわね」
「はい。アリサさん、一杯売りましょうね」
ノミの市の会場を見渡してみる。ふたりのブースはちょっと大きい方。小さいブースと大きいブース。全部入れて50ブースほどある様だ。
月に一度開かれる街のノミの市は、なかなか有名で遠くから市を目的にやってくる人もいる。もちろん街の人もやってくるから、なかなかの人出になるらしい。
「これはブローチなの?」
9歳くらいの女の子が、赤の護符に興味を持って聞いてる。
「これは、魔物を寄せ付けない護符って物なの」
「ふーん。ブローチじゃないのね」
「普通につけていても綺麗だけど、本来は魔物がいる所に行く人のためのアイテムなのよ」
「そっかぁ」
ちょっとがっかりしている女の子。このくらいの歳だと、キラキラした物に反応しちゃうよね。
「こっちのコーナーの物なら、特別な効果はないから、手ごろな値段なの」
アリサの示した箱には、ペンダントトップやピン留、ブローチなどが沢山入ってる。実は錬金で失敗した物の中でキラキラした物を加工した物だ。
「これも、綺麗」
女の子がアクセサリーの箱の中を見ていると後ろから声がかかる。
「こらっ、マリ。勝手に動くと迷子になるだろ」
すらっとした男の人がやってくる。あの子のお父さんだろう。
「いらっしゃいませ」
「あ、うちの子がすみません」
「よかったら、見ていってくださいね。マリちゃんも見てくれてるし」
にこにこして言ったら、お父さんも商品を見てくれる。
「おや、これ、タリスマンですね」
「はい。赤の護符です」
やっぱり親子ね。同じ商品に目がいくらしい。
「珍しいですね、これ。もしかして、あなた、錬金術士ですか?」
「はい。ここにある商品はだいたい私が作ってます」
「ほぅ」
錬金術士が作った商品だということで、真剣に見始めた。
その話を後ろで聞いていた女性も気になったみたいで、座って商品をチェックしはじめる。
お昼の頃になると、ずいぶんと多いお客さんが私達のブースに集まっていた。
ただ、脈絡なく作ったアイテムを、売れるどうかあまり気にしないで持ってきたからそれほど売れてる訳じゃない。それでも、売れると金貨1枚くらいする商品が多いので売り上げがなかなかある。
ジャスミンの染め布の商品も売れている。
私の錬金アイテムをみて、ほしい物と一致しなかった人が、代わりに買ってくれたりする。
「アリサさんと一緒にお店出して正解。先月より倍は売れている感じ」
「私の方も売れているから、よかったね」
この日の売り上げ、私が金貨7枚くらいで、アリサさんが金貨1枚ちょっと。出展のブース代が銀貨2枚だから、利益が沢山でた。
暗くなる前に市は終わるので、売れ残り商品をまとめて片付けをして。浮島に帰ろうと、ジャスミンと別れてから、ひとり街を歩いている。
アリサは気づいていないが、後からつけてくる男が二人いる。男たちは、慎重に少し距離を開けて行動している。
アリサに危険が迫っていた。




