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第26話 新製品は売れるかしら・・・こっそり悪役令嬢が初登場

「銀貨2枚ね」

「そんな高くして大丈夫?」

「私も最初はもう少し安い方がいいかなぁと思うの」


アリサ、染色工房のジャスミン、ビル&ボブ商会のプレシアの3人。


街のメインストリートにある小さなブティックで話込んでいる。


話ている内容は、新製品の値段について。


6色スカーフが各色10枚づつ完成して明日新製品として売り出す予定だ。


「いい?この新製品は画期的な商品なの。銀貨2枚でも安いくらいよ」

「だって、しっかりと藍染したスカーフでも銅貨5枚くらいじゃない。いくらなんでも4倍は・・・」

「大丈夫。たぶん、すぐに売り切れよ」


自信満々なブリシアさん。

美人な彼女が太鼓判を押してくれると「そうかな」って思ってしまう。


だけど、反面。


「なに、この値段。こんな高いスカーフ売れる訳ないじゃない」

と、文句を言っているお客さんもイメージに出てきてしまう。


だから、もう少し、安い値段の方が安心できる。


3人で徹夜して開発した商品だし、やっぱり売れてほしいと思う。


「銀貨2枚は高くないって、ロイズ商会の3色ストールなんて、金貨1枚よ。私達の5倍もするのよ」

「だけどあっちは、貴族相手のお店じゃない。公爵令嬢ブランドだし」


ライバルの偵察に行ったときのことを思い出した。


3色ストールは、赤、黄、青の鮮やかな色のストール。

その端には、ブランドマークが刻印されている。


公爵令嬢がモデルになったブランドマーク。

この街の領主である公爵の長女が関わっているファッションブランド。


だから、むちゅくちゃ高い。

それなのに、飛ぶように売れているらしい。


「私達のは、庶民の女性でもちょっとがんばれば買える値段でしょ」

「そうだけど」


6色スカーフをつけた時をイメージできるように、巻いた部分と伸ばした部分を作ってディスプレイする。

このディスプレイ方法は、前世でヤフオクで売るスカーフ用の写真を撮影するときに綺麗にみえる形として教わったもの。

そんな経験がいきて、うれしいな。


「うん、ウィンドーのディスプレイも完璧ね。アリサさん、センス抜群ね」


値段は「銀貨2枚」ってプリシラさんが大きく書いている。



あと、1時間もすれば開店の時間になる。

私達の新製品は街の人に気に入ってもらえるんだろうか?

ドキドキ。



「いらっしゃいませ」

「きちゃった。開店前に並んだの久しぶり」


プリシラさんの友達かな、と思えるお客さんが5人ほど開店前に並んでいた。


「これが新製品ね。すごくきれいな色ね」

「でしょう?このアリサさんが染料を作ってくれたの」


紹介されて、ちょっとドキドキする。

ファッションブランドのメインスタッフの扱いをしてくれたのがすごくうれしい。


「こっちのジャスミンさんが染めてくれたのよ」


ジャスミンさんの顔も上気している。


お客さん5人はそれぞれ、気に入った色のスカーフを試着してみている。

買ってくれるのだろうか?


「これ、ちょうだいね」


ピンクのスカーフがまず、売れた。

プリシラさんが手早く包んで銀貨2枚と交換する。


「私はこの色」


今度は黄色のスカーフが売れた。

ピンク2枚、赤2枚、黄色と緑が1枚づつ。


ひとりが二枚買ってくれたから、5人で合計6枚が売れた。


「すごい。すぐに売れてしまったわ」


ジャスミンさんが喜んでいる。


「まだ、安心してはダメ。あの方達は、知り合いのお客さんだから」

「そうね」


まだ昼前だから、メインストリートを歩く人が少ない。

本番になるのは、お昼になってからだろう。


多くの人が行きかっているとき。

ショップのウインドウの新製品を見て、どれくらいの人が足を止めてくれるか。

どれくらいの人が店に入ってくれるか。そして買ってくれるか。


最初に用意したのが60枚。開店直後に6枚売れたからあと54枚。


「初日で半分売れたら、ブームになるかもね」


今日の販売目標は30枚ってことね。


どうなることやら。


・・・・・


それから2時間が経過した。

なんと、もう新製品は売り切れてしまった。


人通りが多くなるお昼になる前に売り切れ。

想定外の人気だった。



「うわー、あれ、綺麗」


カップルが入ってきて、嬉しそうに色をふたりで選んでいる。

いいなぁ、ラブラブで。


「どう、似合う?」

「似合うよ。こっちもいいんじゃない?」

「あ、やっぱり?どっちか迷ってたの」

「両方買おうか?」

「本当?大好き」


売れてうれしい反面、うらやましくてむかつく。

私もそんなこと言ってもらいたい。


なんてことがあったり。


「これください」


仕事前だと分かる雰囲気のキャリアウーマン。

時間がないから、さっと選んですぐにお会計。


できる女はこの世界でもいるのね。


いろんなお客さんがやってきて、それぞれ気に入った色のスカーフを買っていく。


すっごくうれしい。



「えっ、ピンクはもうないんですか?予約とかできないの?」


ウインドウの商品も売れてしまって、色の名前しかないのに、予約を入れてくれたお客さん。

他の色をみて、ピンクもきっと綺麗だと信じてくれたのね。



一色一色、売り切れになるスカーフが出てくる。

その度にプリシラさんが、「売り切れ」と書いていく。



最後まで残った紫の1枚が売れたのが開店から2時間しか経っていないとき。


「すごいわ。うちの新製品の記録よ」


「すべて完売」と大きく書いたプリシラさんが嬉しそうに報告する。


「やったわね」

「すごいわ」


臨時の店員をしていたアリサとジャスミンがプリシラと手を取り合って喜んだ。



その姿をこっそりと店の外から覗いていた女がいた。


彼女は公爵令嬢。そう、ロイド商会のブランドマークになった女性だ。


イライザ・ラッセル。ラッセル公爵家の長女で公爵令嬢。


公爵令嬢は美しいその顔を悔しそうにひん曲げていた。


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