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第5章「遠い国の赤い犬」⑪
ルビアの口から息が漏れた。驚いた顔、それから苦悶に変わる。
リュウに手を回して、しがみつくようにして顔を寄せ、
「こうなると思ってた」とささやいた。
彼はナイフを抜くと、彼女の体を左手で支えながら、シャツをまくり上げる。
手のひらを腹にあて、膨らみを確かめると、ナイフで切り裂いた。
彼女の口から、ごぼごぼと血が溢れる。リュウは、手を休めず、腹からかき出すようにして、「それ」を取り出した。
卵のような形をした赤黒い石だった。
ポケットから皮袋を取り出すと、中に収める。
抱きかかえたルビアの体から力が失われていくのがわかった。そのままベッドに横たえると、たちまちシーツが真っ赤に染まった。
「私は、殺されたのね」とルビアはかすれた声でいった。
「あなたの母親が言ったとおり」
リュウは何も答えなかった。誰に言われるでもなく、自分の意思で行動しているつもりだったが、それすら誰かの暗示なのかもしれないと心の奥に繰り返し考えが浮かんだ。
娼館は誰もいないかのように静かだった。




