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第5章「遠い国の赤い犬」③

 鉱山で働く男たちは、死が隣り合わせの生活のためか、賭け事と酒に溺れていった。近くに、当然のように酒場と娼婦宿が作られ、男たちの乏しい金を吸い上げ続ける。鉱山から、砂金が出る間は、盛り場の火が消えることはなかった。


 リュウは、鉱山から帰る道の側にあるそれらの店を冷ややかな目で見つめ、けして近寄ろうとはしなかった。泥だらけの顔だが、母譲りの整った顔立ちは、娼婦たちの注目を集めて、あからさまな誘いの言葉を掛けられる。だが、けして彼女たちに見向きもせず、寝床のある小屋に帰っていった。


 「おまえは、女が嫌いなのか」

 と同じ小屋にいる髭面の男が尋ねてきたが、リュウはじっと見つめ返し、「好みじゃないだけだ」と一言呟くと、毛布をかぶって目を閉じた。

 「もったいねぇぜ」と髭面は羨ましそうに言う。この男は稼いだ金がたまるたびに娼婦宿に通いつめ、そのせいで厄介な病気にかかると、借金して水銀が混じった薬を買い、症状が落ちつけば、すぐに同じことを繰り返している。当然、金がたまるわけもないが、同室のリュウに金の無心をすることはなかった。あるいは密かに隠し場所を探っているのかもしれないが、それが髭面なりの仁義かもしれなかった。


 ある日、リュウが先に小屋でベッドの上に横になっていると、娼婦宿から帰ってきた男が、「変な女がいた」と独り言のように呟いた。

 その女は、娼婦宿の一室にいて、客を取るでもなく、一日中部屋に閉じこもって、何か不思議な作業をしているようだった。男が宿の女将に尋ねると、その女も客を取ることがあるらしいが、指名するものは皆無らしい。

 「誰も気味悪がって近寄らない」と女将は困ったような顔をしていた。

 それでも追い出されないのは、部屋の中で鍋窯を使って不思議な薬を作っており、その薬が、男たちの性病にてきめんに効果を発揮しているからだった。

 「魔女のようなもの」と女将は言った。


 髭面の男が、事を終えて階段を降りようとするとき、廊下にその女が立っていた。

土地の先住民の血と、この土地を支配する移住者の血が混ざったような顔つきで、茶色い肌をしていた。少女のような薄い胸板だったが、男に話しかけた仕草は、大人びていた。

 「薬は効いたみたいね」と女は男の顔を冷ややかに見つめる。

 その目の色は茶褐色だったが、ランプの光が映えると、赤く輝いて見えた。


 「あんたと同居している男に話があるの」と女は告げた。


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