直せる鉄砲
「修理してほしい?」
「そうや」
善次郎が持ってきた話は、鉄砲の注文ではなかった。
「うちの鉄砲?」
「らしいで。六年くらい前に買うた言うとる」
「六年前?」
思わず聞き返した。
六年前なら、俺は十三歳だ。今のように百挺だ何だと言い始めるよりずっと前で、榊家寸もまだない。治具は少しずつ作り始めていたし、同じように作ろうともしていたが、鉄砲一挺ごとに職人が合わせて仕上げるのが当たり前だった頃だ。
「どこが悪いん?」
「それを見てほしいんやと。火蓋の辺りがおかしい言うとる」
「持ってきとる?」
「表におるで」
「先に言えや」
「今言うたやろ」
善次郎と一緒に表へ出ると、男が一人、布に包んだ鉄砲を抱えて待っていた。年は四十くらいだろうか。商人というより、普段から鉄砲を扱っている人間に見える。
布を解いてもらい、中から出てきた鉄砲を受け取った。
見覚えがあるような、ないような。
榊屋の鉄砲なのは分かる。台木の形にも金具の作りにも、どことなく覚えがある。だが、今作っているものとは明らかに違っていた。今よりも一つ一つの部品に、作った職人の手癖が残っている。
「これ、ほんまに六年くらい前?」
「それくらいや。俺が買うたんやない。前の持ち主から譲ってもろたもんやから、正確には分からん」
「なるほど」
鉄砲を構えるでもなく持ち直し、まず火蓋を動かしてみる。動くには動くが、妙に重い。火ばさみも動かしてみると、こちらにも少し引っ掛かりがあった。
「使えんことはない?」
「火は点く。せやけど最近、火蓋が上手いこと動かん時がある。近くの鍛冶屋にも見せたんやけどな」
「直らんかった?」
「直せんことはない言われた。ただ、榊屋の鉄砲やったら、榊屋に持ってった方がええやろって」
「へえ」
「それに、榊屋なら直せると聞いたからな」
その言葉に、少しだけ手が止まった。
榊屋なら作れる、ではない。
榊屋なら直せる。
少し前まで、そんな評判があるなんて考えたこともなかった。
「とりあえず預からせてもらってええ?」
「頼むわ」
「ただ、古い鉄砲やからな。見てみんと、どこまで出来るか分からん」
「使えるようになればええ。急ぎでもない」
「分かった」
男から名前と、どこから来たのか、それから分かる範囲で鉄砲を手に入れた時期を聞き、お澪にも伝えておく。そうして俺は、六年前に榊屋を出て、誰かの手から誰かの手へ渡り、また戻ってきた鉄砲を抱えて工房の奥へ入った。
◇
「古いですね」
新八は一目見てそう言った。
「分かる?」
「今のものとは違いますから」
「六年くらい前らしい」
「でしたら、榊家寸を使う前ですね」
「たぶんな」
まず火蓋を外す。
軸の周りに摩耗がある。地板にも擦れた跡があり、長く使っているうちに少しずつ動きが悪くなったらしい。ただ、火蓋の動きだけを見て、そこだけ直せば終わりとも言い切れない。
「地板も外そか」
「そうですね」
外してみると、今作っている地板とは穴の位置が違っていた。
「やっぱり違うな」
「今の地板は、そのままでは付きませんね」
新八が棚から現行の地板を一枚持ってきて並べる。
形は似ている。
大きさも極端に違うわけではない。
だが、穴の位置が少しずれている。縁の形も違うし、鉄砲側に合わせて削った跡もある。
今なら同じ時期に作った鉄砲同士であれば、ある程度は部品を入れ替えられるようになってきた。それでも最後には確認や調整が必要なところが残るし、何でも好きに入れ替えていいわけではない。
まして六年前だ。
一挺ずつ現物に合わせていた頃の鉄砲に、今の部品がそのまま付く方がおかしい。
「新しく作る?」
「作れば合います」
「やっぱそうなるか」
材料から地板を一枚作り、この鉄砲に合わせて穴を決め、縁を削る。それが一番確実ではある。
そこで、お澪が顔を上げた。
「六年前なんですよね?」
「うん」
「でしたら、昨日分けた地板はどうです?」
「昨日?」
「古い地板です」
俺はお澪を見た。
お澪も俺を見る。
「あ」
「ありますよね」
「あった!」
棚へ向かった。
昨日まで、何に使うのか分からないまま置かれていた地板。その中から、昔の鉄砲に使っていたらしい六枚を分けてある。
「これや!」
「まだ合うと決まったわけではありませんよ」
「分かっとる!」
一枚持って戻り、外した地板と並べた。
「……近い」
穴の位置も、縁の形も、現行品よりずっと近い。
新八が鉄砲へ当て、穴の位置を見てから、何度か向きを変えて確かめる。
「そのままでは無理ですね」
「やっぱり?」
「ですが、これなら合わせられます」
「どれくらい?」
「穴を少し合わせて、こちらの縁を削れば。軸のところも見た方がいいですが、一から作るよりはずっと早いです」
「……捨てんでよかった!」
思わず声が出た。
昨日まで俺は、棚を埋める古い部品を見て、邪魔だの何だの言っていた。それが今日になったら、一挺の鉄砲を直すための部品に見える。
地板そのものは昨日から何も変わっていない。
変わったのは、それが何に使えるのかを俺たちが知ったことだけだ。
「だから何に使えるか調べたんでしょう?」
お澪が呆れたように言った。
「昨日のお前に今日の俺を見せたいわ」
「昨日も私いましたよ」
「そうやった」
「虎松さんもいました」
「それもそうやな」
新八が地板を持ったまま、俺たちを見ている。
「直していいですか?」
「お願いします」
◇
地板を合わせれば終わり、というわけではなかった。
せっかく六年も使われた鉄砲が戻ってきたのだ。地板と火蓋だけ直して返した翌日に、今度は別のところが壊れたでは格好が悪い。何より、持ち主は「榊屋なら直せる」と聞いて、わざわざここまで持ってきたのだ。
「ほかも見よ」
「そうですね」
火ばさみの動き、軸の摩耗、ばね、火蓋、銃身と台木の取り合い、ネジや鋲の緩み。順に見ていくと、すぐに撃てなくなるほどではないものの、いくつか気になるところが出てきた。
「よう使っとるな、これ」
「六年ですからね」
「六年使ったら、こんななるんやな」
考えてみれば当たり前のことなのに、妙に新鮮だった。
俺はずっと、鉄砲を作る側にいる。
出来上がった鉄砲を試射し、問題がなければ客へ渡す。そこまでは何度も見てきた。だが、その鉄砲が客の手に渡った後、何年も火薬を詰められ、火縄を挟まれ、雨の日も乾いた日も使われ、五年、六年と経った末にどうなるのかを見る機会は、それほど多くなかった。
鉄は減る。穴は少しずつ広がる。擦れるところは擦れ、木も湿気や乾燥を繰り返す。使い方によって減る場所も違う。
作った日に正しかった形が、六年後までそのまま残っているわけではない。
「千吉」
五平が呼んだ。
「はい」
「見てみ」
千吉が鉄砲を覗き込んだ。
「どこをです?」
「分からんから見るんや」
「……はい?」
相変わらず五平の教え方は難しい。
「ここの地板、新しいの合わせるならどうする」
「ここ削ります」
千吉が指を差した。
「何でや」
「当たってるからです」
「削ったら?」
「入ります」
「ほんまに?」
千吉が黙った。
五平は答えを言わず、鉄砲を少し傾けた。
「こっち見ろ」
千吉が覗き込む。
「……減ってる?」
「せや」
俺も横から見る。
言われてみれば分かる。
地板側を削れば収まりそうに見える。だが実際には、地板を受ける側が長年の使用で減っていた。その減った形に合わせて新しい部品まで削ってしまえば、ひとまず収まっても、別のところに無理が出る。
「ここは削るな」
五平が言った。
「こっち直すんですか?」
「先にこっちや。ほんで合わせる」
千吉が古い鉄砲と地板を何度も見比べている。
新品を作るなら、目指す寸法がある。
榊家寸に合わせ、見本に合わせ、確認して、同じものへ近づけていけばいい。もちろん、それだって簡単ではない。だが少なくとも、どこへ向かえばいいかは決められる。
修理は違う。
目の前にある鉄砲は、六年前に誰かが作り、それから何年も使われてきた一挺だ。最初から今の榊家寸ではない上に、使われた時間まで形に刻まれている。
物差しを当てて、数字だけを今の寸法へ戻せばいいわけではない。
どこが最初から違うのか。どこが使われて減ったのか。どこはそのままでいいのか。どこへ手を入れれば、全体として正しく動くのか。
そこは、まだ五平の目の方がずっと強い。
「難しいな」
俺が言うと、五平が鼻で笑った。
「鉄砲やぞ」
「知っとるわ」
「同じに作るんと、直すんは違う」
「……せやな」
規格を作れば、職人の腕がいらなくなる。
そんな単純な話ではなかった。
むしろ逆なのかもしれない。
決まった寸法で作る仕事まで、全部五平にやってもらう必要がなくなった。千吉でも出来る仕事は千吉に任せる。佐吉や藤吉に任せられるものは任せ、外で作れる部品なら外へ出す。
そうして五平の手を空ければ、こういう「何が正しいのかを現物から判断しなければならない仕事」に、その腕を使える。
名人が百個の同じ部品を作り続けるより、百人が迷う一か所を見てもらう。
それなら、五平の腕は百挺を作る邪魔になるどころか、百挺を支える力になる。
名人に何でもやってもらう工房から、名人にしか出来ないことを任せられる工房へ。
俺が作りたかったものは、もしかすると最初からそっちだったのかもしれない。
◇
「戻ってきた鉄砲、見るところ決めといた方がええな」
俺が言うと、新八が頷いた。
「火蓋だけ悪いと言われても、そこだけとは限りませんからね」
「うん。せっかく戻ってきたんやから、最低限ここは見るって決めよ」
何を見るべきかは、新八と五平にも考えてもらった。
火ばさみがきちんと動くか、火蓋に無理がないか、ばねに問題がないか。軸や鋲が減りすぎていないか、銃身や台木に危ないところがないか、ネジが緩んでいないか。そういう最低限見る場所を決めた上で、最後には実際に火を入れて確かめる。
何もかも細かく決めればいいわけではない。
古い鉄砲は一挺ごとの差が大きい。見る場所を決めることは出来ても、そこから先は現物を見て判断するしかない。規格に押し込めるための決まりではなく、見落とさないための決まりだ。
それでも、「頼まれたところだけ直して返す」のと、「戻ってきたら最低限ここまでは見る」のでは意味が違う。
「これ、書いとこ」
お澪が言った。
「見るところ?」
「それもですけど、この鉄砲です。どこが悪くて、何を替えたのか」
「そこまで?」
「次に同じ頃の鉄砲が来たら、役に立つかもしれないでしょう?」
「……なるほど」
お澪は帳面を開いた。
いつ頃の鉄砲なのか。どこが悪かったのか。何を交換したのか。どの古い地板を使ったのか。どこを合わせ、どこには手を入れなかったのか。
今は一挺しかない。
だが、二挺目が来れば二つ分かる。三挺目が来れば、二挺では偶然だったことと、同じ頃の鉄砲に共通することを少しずつ分けて考えられるようになる。
六年前に作った鉄砲は、どこが傷みやすいのか。どの部品なら使えるのか。どのくらい手を入れれば直せるのか。
今は五平の頭の中にしかない判断でも、その時に何を見て、何をしたのかを残しておけば、次に見る人間の手掛かりにはなる。帳面を読んだから五平と同じ腕になるわけではない。それでも、何も知らずに一から考えるのと、前に同じような鉄砲をどう直したのか知っているのとでは違う。
分からないなら、次に分かるようにしておけばいい。
補修用の部品を作り始めた時と同じだった。
修理だって、一挺直して終わりにする必要はない。
◇
結局、その鉄砲は思っていたより早く直った。
古い地板を現物に合わせ、摩耗していた軸にも手を入れた。火蓋の動きも戻り、火ばさみやばねも確認した。最後は新八と五平がもう一度全体を見て、それから試射することになった。
火薬を入れ、弾を込める。火皿へ火薬を置いて火蓋を閉じ、火縄を火ばさみに挟む。
構え、引き金を引いた。
火ばさみが落ち、火皿の火薬が弾ける。
一瞬遅れて、銃声が響いた。
「……よし」
煙の向こうで、新八が頷いた。
撃てたから終わりではない。もう一度動きを確かめ、試射の後にも緩みや異常が出ていないかを見る。それでも問題はなかった。
数日後、持ち主が取りに来た。
「もう出来たんか?」
「出来たで」
「早かったな」
「ちょうど合いそうな部品が残っとったんよ」
鉄砲を渡し、直したところも説明する。
男は火蓋を何度か動かし、火ばさみも確かめた。
「軽なっとる」
「地板だけやなくて、軸の方も減っとった。ほかも一通り見たけど、今んところ大きな問題はない」
「ほう」
「ただ、古い鉄砲やからな。またおかしいとこ出たら持ってきて」
「分かった」
男は代金を払い、鉄砲を布へ戻した。それから、何でもないことのように言った。
「これなら、また榊屋の鉄砲買うてもええな」
「何で?」
思わず聞いた。
男が俺を見る。
「壊れても直せるやろ」
「…………」
「鉄砲なんぞ使っとりゃ傷む。絶対壊れん鉄砲なんかないやろ?」
「まあ、せやな」
「ほな、壊れた時に直せる方がええ」
それだけ言うと、男は鉄砲を担いだ。
「また頼むわ」
「おう」
見送ってからも、俺はしばらくその場に立っていた。
壊れても直せる。
俺はこれまで、同じものを作ることばかり考えてきた。寸法を揃え、不良を減らし、壊れにくくする。百挺作っても、その百挺が同じように働くようにする。
それは当然、大事だ。
だが、どれだけ上手く作っても、道具は使えば減る。鉄砲なら火薬を使い、火を使い、何度も金具を動かす。雨に濡れることもあれば、ぶつけることも落とすこともあるだろう。
百挺の鉄砲を作れば、百挺分の時間がその日から始まる。
一年後も使われる。
三年後も使われる。
六年後には、今日の鉄砲のように戻ってくるものもある。
なら、作った日に壊れていなければそれでいい、という話ではない。
壊れにくく作ること。
壊れた時に直せること。
直した後に、また安心して使えること。
その全部が、使う側から見れば一挺の鉄砲の話なのだ。
◇
「これ、売れるな」
後ろから声がした。
振り返ると、善次郎がいた。
「修理代?」
「ちゃう」
「何が?」
「直せる鉄砲や」
「……何それ」
「今の客が言うとったやろ。壊れても直せるから、また榊屋の鉄砲買うてもええって」
「うん」
「それ、鉄砲売る時に言えるやん」
善次郎が笑った。
「榊屋の鉄砲買うたら、壊れた時も持ってきてくれ。部品も置いとる。直せるもんは直す。そう言うて売れる」
「なるほど」
「他所の鉄砲より絶対ええなんて言わんでええ。もっと腕のええ職人がおるかもしれんし、一挺だけ作らせたら、そっちの方がええ鉄砲作るかもしれん」
「お前、榊屋の商人やろ」
「嘘ついて売れ言うんか?」
「それも嫌やな」
「やろ?」
善次郎は悪びれない。
「でもな、同じような部品置いとって、昔売った鉄砲まで持ってきたら見てくれる工房は、そう多くないやろ」
そうなのだろうか。
少なくとも、昔の榊屋は今とは違った。
壊れた鉄砲を持ってくれば、親父も五平も直しただろう。直せと言われれば、現物を見て、必要なら部品を一から作り、その鉄砲に合わせて直したはずだ。
だが、それは「直せる職人がいる」という話だった。
今は少し違う。
補修用の部品を置く。古い部品も、何に使えるか分かるようにして残す。戻ってきた鉄砲はどこを見るのかを決め、何を直したのかを記録し、次に同じような鉄砲が来た時にはその記録を使う。
五平がいなければ何も出来ない状態から、五平の判断を必要なところに使いながら、榊屋全体で修理を受けられる状態へ少しずつ変わっている。
誰か一人が覚えているから直せるのではない。
榊屋へ持ってくれば直せる。
似ているようで、それはかなり違う。
「鉄砲一挺売る時に、鉄砲だけ売っとるんちゃうんやろ?」
善次郎が言った。
「……その後も?」
「せや。売った後も面倒見る言うなら、それも込みで榊屋の鉄砲や」
「…………」
商人は時々、俺が何日もかけて考えていることを一言で言う。
ちょっと腹が立つ。
「何や、その顔」
「何でもない」
「また何か考えとるやろ」
「お前には言わん」
「何でや!」
◇
工房へ戻ると、お澪がさっきの修理内容を帳面へ書いていた。
「まだ書いとるん?」
「今度同じものが来た時、虎松さんが覚えているとは限りませんから」
「俺そんな信用ない?」
「物差しをなくしたのは庄吉さんですけどね」
「そこは分けて考えよか」
お澪が笑った。
棚を見る。
昨日まで邪魔に見えていた古い地板は、一枚減っていた。
たった一枚だ。
だが、その一枚で、六年前に榊屋から出ていった鉄砲がもう一度使えるようになった。
余分に作った部品も、古い部品も、物差しも、帳面も、それだけを見れば地味なものだ。棚に部品があるだけでは鉄砲は直らないし、寸法が分かるだけでも直らない。帳面に記録があるだけでも直らず、最後には現物を見て判断出来る職人の腕もいる。
だが、それらが繋がれば、一挺の古い鉄砲を以前より早く、確かに直せる。
お蓮のところで作る地板も、嘉兵衛が作るネジや軸も、宗次郎が守っている百挺の予定も、お澪が書き残す帳面も、新八が見る部品も、五平の目も、別々の仕事に見えていた。
実際、別々の仕事ではある。
けれど、それらが同じ榊屋の中で繋がった時、鉄砲を一挺作るだけではなかった別の力になる。
百挺作れるようになったから、売った鉄砲の数も増えた。売った鉄砲が増えれば、いずれ壊れて戻ってくる鉄砲も増える。
それなら、その先まで榊屋の仕事にすればいい。
作って、売って、終わりではない。
使われて、減って、壊れて、それでもまた使えるようにする。
百挺の、その先。
どうやらそこには、新しい鉄砲を作る仕事だけがあるわけではないらしい。
◇
翌日。
「虎松」
「何?」
朝から善次郎が来た。
「部品だけ欲しい言う客、また来たぞ」
「また?」
「おう」
「何が欲しいって?」
善次郎が懐から紙を出した。
「今回は多いで」
「……何個?」
紙を受け取る。
地板、鋲、軸、ネジ。それだけではなく、ほかにもいくつか書いてある。昨日直した一挺のために使った部品より、ずっと多い。
俺が黙っていると、善次郎が楽しそうに笑った。
「売った後も面倒見るんやろ?」
「……言うたな」
「言うた」
「ほな、仕事や」
「…………」
直せる鉄砲。
どうやら、その言葉には思っていたよりたくさんの部品が必要らしい。




