仲裁人は壊れた王城へ戻ります
襲撃の翌朝、ルシアンが王城へ戻る道には、いつもとは違う人の流れができていた。
夜のうちに最後の魔物が討たれ、通りを塞いでいた死骸の多くはすでに運び出されている。兵士は避難のために張った縄を外し、住民は割れた戸板や落ちた瓦を道の端へ寄せていた。焼けた店の前では水桶がまだ並んでいたが、その隣では無事だったパン屋が半分だけ鎧戸を開け、朝から働いていた兵や運搬人へ焼いたパンを渡している。
昨夜、ルシアンは王城へ入らず、市内へ入ったところで各地区からの伝令が重なったため、守備隊の詰所を臨時の指揮所にした。王城へ進むより、そこから各戦線へ人員と物資を回した方が早かった。騎士団が魔物を追い、兵が避難路を開け、治療師が負傷者を受け入れ、火の残った区画では朝まで消火が続いた。王に必要とされるのは、足りない人員と物資をやりくりすることだった。
日が変わる前には大きな戦闘が終わり、明け方には各地区から届く報告も、交戦より救護と片づけの内容が多くなっていた。
王城へ近づくにつれ、建物に残る傷は増えていった。石壁の角が欠けた家、二階の窓を失った商店、扉の代わりに板を打ちつけた宿がある。道端には血を洗い流した水がまだ残っていた。
その一方で、閉じていた窓は少しずつ開いていた。ルシアンは馬上からそれを見ながら、前を行く近衛のあとを進んだ。
王城の外門は無事で、衛兵も普段と同じ場所に立っていた。ただし内側へ入ると、正面へ向かう道の途中から木材と石を運ぶ人足が増え、いつもなら大広間へ続く入口の前には縄が張られていた。
縄の向こうでは、正面大広間の屋根が中央から奥へ大きく失われていた。王宮全体から見れば被害を受けたのは一部にすぎない。それでも、外国使節や貴族を最初に迎える王城の顔だった。前日まで二階分の高さまで石柱が並び、大吊灯が下がっていた場所は、天井の三分の二ほどを失い、朝の光が直接床まで落ちている。
倒れた石柱は途中まで片づけられていたが、広間の中央にはまだ大きな石塊が積み重なっていた。曲がった金属がそこから突き出し、大吊灯だったものだと分かる。
ルシアンは馬を降り、しばらく入口から中を見た。
「昨夜の報告では大広間が崩れたと聞いたが、私はもう少し広間らしいものが残っていると思っていた」
隣で馬を降りたセドリックも、縄の向こうを見たまま外套の襟を直した。
「私も同じ勘違いをしていた。執務室まで無事だったのは、かなり運が良かったらしい」
広間の奥では、作業員が崩れた石を一つずつ木橇へ載せていた。別の一団は残った柱へ縄を回し、これ以上崩れる危険がないか確かめている。
ルシアンは中へ入ろうとせず、案内を待って横の回廊へ向かった。
◇
執務室の窓にも細かな石粉が付いていたが、机も書棚も襲撃前と変わっていなかった。着替えを済ませたルシアンが椅子へ座るころには、卓の上へ報告書が七束並んでいた。セドリックはそのうち三束を開き、昨夜までにルシアンが把握している市街地の報告を脇へ除けた。
「市街の死傷者数はまだ確定していない。治療所を移った者と、家族が直接連れ帰った者の照合が残っている。ただ、魔物については全地区で討伐済みだ。城門と外壁にも新しい破損は見つかっていない」
「なら、そこは今日の布告に使える。まず全て討ったことを知らせよう。原因の話より先に、戦いが終わったことを王都へ伝えてくれ」
「そのつもりで文案を作らせている。問題は、その次をどこまで出すかだな」
セドリックが別の束をルシアンの前へ置いた。表紙には、王城正面大広間で討たれた魔物の仮検分と記されている。
「その前に、レオンはどうなった。治療中というところまでしか聞けなかった」
「命に別状はない。宮廷の治療師が処置して、王家備蓄の上等な治療薬も使った。肋と肩、それに脚の損傷が重なっているから、少なくとも数日は寝かせるそうだ。本人は治療が終わったあとに受け答えできている」
セドリックは一枚だけ別にしていた紙を指で押した。
「治療師が止める前に、戦った魔物についても必要なところだけ聞けた。傷を付けても短時間で塞がり、脚や翼の深い傷まで戦闘中に回復したそうだ」
ルシアンが検分書を開くと、最初の頁には死体から確認できた特徴が簡潔に並んでいた。
二つの頭部は、王国内でも記録のある獅子型と虎型の魔物に近い。翼は骨格と羽根の並びからグリフォン系と見られる。ただし、それぞれの部位が一つの生物として自然に育ったと考えるには、首から胴、翼の付け根までの構造に不自然な点が多い。
「自然の魔物ではないと見ているのか?」
「宮廷魔術師も解体担当も、少なくとも既知の自然種ではないという意見で一致している。何をどう繋いだのかまでは、分からないそうだ」
次の紙には、広間の壁と柱に残った魔力痕の調査がまとめられていた。広間には高熱を伴う攻撃と雷撃の痕跡が残り、残留する魔力の性質も明らかに異なっていたため、一体が二系統の魔法を使ったと見られている。柱を深く抉った痕跡は魔法による損傷と見られる。
目撃した近衛や王城使用人の証言では、巨体の割に動きが速く、階段や柱の間でも翼を使って距離を詰めていたという。
最後に、死体から取り出された魔石の所見があった。
「無属性の魔石で、それでもこの大きさになるのか?」
「冒険者組合に残る高位魔物の記録とも照合させた。属性は持たないが、蓄えている魔力量は既知のA級個体から採れた物と比べても大きく外れないらしい」
セドリックは検分書を開いたまま、調査側が出した結論を続けた。
「破壊力、二系統の魔法、あの身のこなし、レオンが証言した再生、それに魔石まで合わせれば、個体としてはA級相当と見るのが妥当だそうだ。獅子型も虎型も、翼の元になったと思われるグリフォンも、それぞれならB級相当の記録がある」
ルシアンはもう一度窓の外へ目を向けたが、ここから大広間は見えない。それでも王城へ入る時に見た、空まで抜けた天井の形はすぐ思い出せた。
「B級へ上がったばかりの男へ、ずいぶんな相手を一人で任せたことになるな」
「任せた覚えは私にもない。本人も、あれが待っていると知って王城へ来たわけではないだろう」
「起きたら礼を言う。その前に寝かせてやってくれ」
ルシアンは検分書を閉じ、次の束へ手を伸ばした。
「次だ。魔物がどこから入ったのか分かっていなかったな」
セドリックが待っていたように、残りの束から一冊を抜いた。
「そこは朝までにかなり進んだ。城壁の外から大量の魔物が入った痕跡は、結局一つも見つかっていない。門の記録も、外周の見張りも同じだ。少なくとも襲撃に使われた数を、直前に外から走らせて入れたとは考えにくい」
「最初から王都の中に置かれていたと見る方が自然だな」
「そうなる。それに襲撃の始まった時刻が、俺たちを含めた巡察隊が王都へ戻る予定と合いすぎている。こちらでも以前からヴァレーヌ侯爵周辺を見張っていたが、襲撃当日の朝からレイヴァン家の動きが消えた」
密偵から上がった報告によれば、レイヴァン伯爵は襲撃前日の夜を最後に、普段使っている屋敷にも王都の執務先にも姿を見せていない。家人の出入りも急に減り、襲撃当日は門を閉ざしたまま、外から呼びかけても応答がなかった。
「それなら、屋敷を調べる理由には十分だな」
「門番も使用人も出てこない屋敷だ。だから今朝、騎士を入れた。」
セドリックは次の報告書を開き、今度は自分で読み上げずにルシアンへ渡した。
騎士が最初に見つけたのは人間の死体で、使用人の服を着た者だけではなく、帳簿や荷の管理をしていたと見られる者、護衛らしい武装をした者もいた。屋敷の奥と倉庫側に分かれて倒れており、戦闘で死んだというより、逃げる前に口を封じられた可能性が高いと記されていた。
さらに裏手の倉庫には、奴隷輸送に使う形の檻が残されていた。人一人を入れる大きさの物だけでなく、荷車へそのまま載せられるほど大きな檻も複数あり、木枠と鉄格子には血、獣毛、羽根、深い爪痕が付いている。
ルシアンは頁をめくり、檻と一緒に見つかった搬入記録へ目を移した。
「南方交易の荷へ混ぜて王都へ入れていた可能性が高いのか」
「その可能性が高い。倉庫から出た受領記録では、大型の生き物を『南方産の獣類』として商会荷へ混ぜている。同じ荷には香辛料や染料、布も載っていて、檻だけを見なければ普通の南方交易だ。王都へ入ったあと、どこへ移したか分からない荷も残っている」
「あれだけの魔物が、城門を破らず突然市内へ出た理由にはなるな」
次の頁を開いたところでルシアンの指が止まり、押収品の欄にある《獣導の楔》という名を読み直した。
「これは《獣導の楔》という名前まで分かったのか?」
「一緒に手引書が残っていた。南方で使われる軍用の魔道具らしい。魔物へ事前に処置をしたうえで強い干渉を掛け、進ませる方向と攻撃する対象を指定する。恐怖や痛みで逃げる反応もかなり抑えられる、とある」
市街で戦った魔物の多くは、傷を負っても逃げなかった。
ルシアンはそこだけ思い出し、すぐ次の行へ目を移した。
「手引書だけでなく、《獣導の楔》そのものも残っていたんだな」
「未使用と見られる実物が残っている。それと、今朝になって市街から回収した魔物を調べ直したところ、手引書にある処置と合う痕跡が何体かから見つかった。倉庫の檻と搬入記録まで含めれば、偶然で説明するのは無理だ」
報告書の最後には、もう一つ人間についての記述があった。
屋敷で死んでいた男の一人が、ベルクから以前照会されていた逃亡奴隷商人と年格好や特徴が近いという。複数の偽名を使っていた記録とも一部が重なるが、本人を直接見た王都側の人間がいないため、最終確認はまだ付いていない。
「レオンが見ているな。採石場の件で追った奴隷商本人なら、顔も覚えているはずだ」
「治療師から許可が出てからでいい。死体を寝台まで持っていく必要もないし、今は特徴を聞くだけで足りる」
ルシアンは報告書を机へ置き、そこまでに揃った証拠を頭の中で繋いだ。王都の中へ魔物を運び込んだ記録があり、屋敷には魔物を収容した檻と、襲撃個体に使われたものと同じ処置を行う魔道具、その手引書まで残っている。関係者の多くが死んでいる一方で、当主だけが消えていた。
ルシアンは報告書を閉じ、セドリックへ返した。
「オルディス・レイヴァン伯爵を、王都襲撃の首謀者として捕縛対象に指定する。王都の全門、主要街道の関所、各地方の騎士団と国境詰所へ人相と家紋を回せ。生きて捕らえることを優先するが、武力で抵抗するなら現場の判断を縛るな」
「分かった。すぐ出す。国外へ向かっている可能性もあるから、南へ向かう商隊の記録も追わせる」
「それでいい。もう一つ、ヴァレーヌ侯爵へ王城への出頭を求めてくれ。レイヴァンが長く誰の下で動いていたか、本人の口から聞く」
セドリックは捕縛命令の紙をまとめると、扉の外で待っていた書記へ渡した。書記が走り去る足音を聞きながら、ルシアンは椅子の背へ身体を預けた。
◇
昼前には布告の文案もまとまり、ルシアンは窓際へ立ってセドリックが読み上げる文面を聞いた。
「『今回、王都各所へ出現した魔物は、騎士団、王城守備隊、冒険者ならびに市民の協力によって全て討ち取られた。現在、王都内に戦闘中の魔物は確認されていない』。最初はこれでいいだろう」
「いい。最初に終わったことを伝えてくれ。被害の集計は確定してから別に出せばいい」
「その次は、『調査の結果、今回の襲撃は城外から自然に流入した魔物によるものではなく、何者かが王都内へ事前に魔物を持ち込み、意図的に放った事件であることが判明した』。首謀者については、すでに特定して追跡中とする。レイヴァンの名は、押収品と屋敷の調査記録を整理してから公表する」
「それで出そう。魔族については一字も入れるな」
セドリックは文案から顔を上げ、すでに避難所へ広がっている別の噂も付け加えた。
「今朝の避難所では、もう魔族が王都へ魔物を送り込んだという噂が出ている。証拠は何もないが、あの光景を見た連中には結びつけやすいらしい」
「だから王家はそれを肯定するどころか、憶測を呼ぶような発言もできない。分かっている犯人を追う話と、分かっていない相手を恐れる話は違う」
セドリックは文案の余白へ短く書き込み、机へ戻った。
「政治だけを見れば、襲撃前よりお前には有利になった。レイヴァンが首謀者と固まれば、ヴァレーヌ派の議員や貴族は一斉に距離を取る。すでに朝から面会の申し込みが増えている」
「これまで侯爵邸へ通っていた連中も、その中にかなり混じっているのか?」
「全員ではないが、見覚えのある名前は多い。政治家の足は、避難民より向きを変えるのが早いらしい」
ルシアンが窓の下の通りを見ると、兵士が荷車を一台止め、崩れた石を積んだ車を先に通していた。その脇では、避難していたらしい家族が荷物を抱えて戻ってきていた。
「政敵が減るのは助かる。だが、事件のおかげで国を動かしやすくなったと喜ぶ気にはなれないな」
「私も勧めない。守旧派は弱るが、あいつらが何年も言ってきた『この国は平和に慣れすぎた』という言葉は、事件の前よりずっと民へ届きやすくなった」
「王都の城壁の内側まで魔物が出たのだから、無理もない」
「魔族の噂も同じだ。実物を見たことがない者でも、昔の戦争の話は知っている。魔物への恐怖が、そのまま別の恐怖へ広がるのは止めきれない」
「止める必要はない。怖がるなと命じても何も減らない。それより、襲ってきた魔物はもういないことと、やった人間を追っていることを毎日知らせた方が良い」
セドリックはそこで文案を閉じ、布告を出す場所と時刻まで確認した。
「では、鐘のあとに各広場で読ませる。市場と城門にも同じ文を貼らせよう」
◇
ヴァレーヌ侯爵が王城へ来たのは、午後になってからだった。
護衛を二人だけ連れ、いつもと変わらない正装で現れた。王城の正面大広間が使えないため、案内されたのは執務棟の小さな応接室だったが、侯爵は狭さを気にした様子もなく、ルシアンの前まで進んで正式な礼を取った。
顔色も歩き方も、追及を受けるために呼ばれた人間には見えなかった。
セドリックがルシアンの右側へ座り、机の上にはレイヴァン邸から押収した品の目録と手引書の写しが置かれている。
「侯爵を呼んだ理由は、もう聞いていると思う。レイヴァン邸から、今回の襲撃に使われたと見られる魔道具と手引書が見つかった。魔物を収容していた檻と搬入記録もある。本人は消え、屋敷では複数の死体が見つかった」
「王城へ向かう途中で概要は聞きました。陛下が私へ何を問われるかも、おおよそ分かっております」
ヴァレーヌは目録へ手を伸ばさず、ルシアンの問いを待った。
「なら聞こう。侯爵はレイヴァンに、何をさせようとしていた?」
「陛下の改革を止めるため、議会と貴族の支持を崩す材料を集め、必要なら強い手段も排除するなと伝えました。政治的に陛下を退かせるためです。ですが、王都へ魔物を放てとも、市民を殺せとも命じておりません」
「強い手段の中身を決めず、レイヴァンへ任せたということか」
「長く任せてきた男でした。越えてはならない線を理解していると、私が勝手に信じていた。その判断は誤りでした」
ヴァレーヌの声はそこで初めて少し低くなった。
「私も、あの男に裏切られたのでしょう。だからといって、私が申し上げてきたことまで誤りになったとは思いません」
ルシアンが口を挟まずに続きを待つと、ヴァレーヌは王都で起きたことへ話を移した。
「この王都で実際に魔物が人を殺し、王城まで破壊した。しかも南方を通じて持ち込まれた軍用の魔道具が使われ、複数の魔物を組み合わせたとしか思えぬ個体まで現れた。陛下は、それでも魔族の脅威を遠い話として扱われるおつもりですか」
「今回の事件に魔族が関わった証拠は、まだ一つも出ていない」
「証拠が出てから備えるのでは遅いから、私は何年も申し上げているのです。王国の意思決定を議会へ分け、王権を弱める時ではない。この王都の惨状こそ、それを証明したのではありませんか」
「私が王都へ着いた時には、もう騎士団が地区ごとに戦い、門の兵は避難路を作り、治療師は商家を開けて負傷者を入れていた。王城から命令が届く前に、現場で必要なことを始めていた」
ヴァレーヌは口を挟まずにルシアンを見たため、ルシアンはそのまま続けた。
「全てを私の命令待ちにしていたら、あの時の被害はもっと増えていた。国が強くなければならないという点では、侯爵と争うつもりはない。だが、その強さを王一人の判断へ戻すべきだという結論には同意しない」
「陛下は今回の襲撃を受けても、なお改革を進められると?」
「今回の襲撃を受けたから止める、という理由にはならない。そもそも、王権の行方で対立していたからこそ、今回の事件が起きた可能性もある。侯爵の責任と、レイヴァンの罪と、王国の制度は別問題だ」
ヴァレーヌはしばらく答えず、やがて立ち上がると、呼ばれた時と変わらない姿勢でルシアンへ礼をした。
「では、私に対する調べには応じましょう。レイヴァンが何をしていたのか、私も知る必要があります」
「王都を離れる時は許可を取ってくれ。今日からは、侯爵家の記録も調べる」
「承知しました。そのうえで、国防についての私の意見まで取り下げるつもりはありません」
「その意見まで禁じるつもりはない。議会へ戻れたなら、そこでまた聞く」
ヴァレーヌは護衛とともに応接室を出ていった。扉が閉じたあとも、セドリックはすぐには口を開かなかった。
「思っていたより元気だったな、とは言わないでくれ」
「言おうと思っていたが、先に取られた。あの調子なら議会へ戻る気も十分あるらしい」
「戻れるかどうかは、ヴァレーヌと私の働き次第なのだろう」
ルシアンは机の上に残った《獣導の楔》の目録を閉じ、代わりに朝から脇へ置かれていた別の紙を引き寄せた。それは大広間の応急工事についての報告で、残った石柱の安全確認から始まっていた。
「今度は石柱の数か。今日は朝から壊れた物ばかり数えているな」
「安心しろ。修繕費はまだ数えられる段階にも達していないそうだ」
「それは…まったく安心できない報告だな」
セドリックが笑ったところで、王城の外から鐘の音が聞こえた。その鐘は正午を知らせる時とは間隔が違い、続いて広場で布告を読む役人の声が風に乗ってかすかに届いた。
役人が最初に、王都へ現れた魔物はすべて討ち取られたと読み上げると、窓の下の通りで足を止めていた人々からまばらに声が上がった。少し遅れて別の場所からも拍手が聞こえ、兵士がそれを止めることなく、石を積んだ荷車を王城の外へ通していく。
ルシアンは最後まで布告を聞いてから、応急工事の紙を開いた。一頁目には、午後から立てる仮囲いに必要な木材と人足の数が並んでいた。




