↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『運命の供犠姫』私のVRMMO生活は、運命値極振りから始まる百合ライフ。呪いの装備は絆の証?  作者: malka
第1部 - 第4章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

99/198

97.4章-第13話 ”魔書の在り方、魔書の主”

 帰ってきた。

 ナコト写本とナコト五角形が、時を止め、制する空間へと。


 美しき光の文字が躍る。原初の”ナコト写本”に記された偉大なる知識がもたらす叡智。

 その一端を開示する、導きの文字列。


  “祝福。しかし、未だ不足“


 わずかな言葉、そこから知識が、理が、脳裏に流れ込んでくる。膨大な知識の奔流の一端しか、この身では把握しきれない。

 けれど、その一端を、理解する。

 本来、”原初の魔書”として姿を現した漆黒の魔導書の開放は、クエストスクロールに記された通り、数多の試練を乗り越え、その度に少しづつ、原初の魔書の知識を紐解き、理解する巡礼の旅路を経て、成されるものであった。


 しかし今やこの地、この王国に眠る試練の多くがクロウリード王のたくらみの元、消滅し。あるいは、かの王の計画に取り込まれ変質してしまっている。

 挙句、”原初の魔書”の封印は、その担い手足らんとする私では無いモノ。仮初めの肉体に降臨させられた、魔導書ネクロノミコンの著者、狂える詩人、狂える老人アブドゥル=アルハザードの手により解かれてしまった。

 もはや私が正しい手順で、原初の魔書、原初の”ナコト写本”に認められる事は不可能。


 “故に、代替”


 ナコト写本に護られた紗雪の状態が、脳裏に映し出されてくる。

 魔導書が診断した彼女の状態。見た目にはわからない、Steps to Elysium Onlineの外、現実に及んだ彼女の傷。

 現実側に集積されたマナで構築された彼女の論理回路、演算領域、そして、核となる人格を司る記録領域。


 紗雪の思考を、記憶を、心を、魂を。形成するその全てが冒涜的な闇に呑み込まれ。

 わずかな揺れる蝋燭の炎のような小さなともしびが、かろうじて残るだけ。

 そのわずかに残された領域に詰め込まれたのは、ただただ、私との思い出。私とルナリスと過ごした日々の思い出。

 他の全てを混沌の邪神に犯され、侵され、それでも守り抜いた彼女のほんのわずかな、大切。

 あとほんの一押しで彼女の全てが本当に消滅する、上書きされる。彼女という存在が永遠に抹消される。


「「そんな事、許さない。させない。大切な彼女を消させたりしない‼」」

 憤怒が、憤りが、哀切が、この身を切る。


「「助けなきゃ、助けさせて、お願い……‼」

 切なる願いを込めて、口にする言葉。


 “了承。切なる願い、強き想い、純粋なるマナ、受託”


 私の心の奥底から湧き出す、切実なる想いが、確かに純粋な”マナ”となったことを、理解する。

 その一欠けらの、確かな願いの形の”マナ”。

 ほんのわずかなそれがしかし、呼び水となる。


 凍結した時間の空間の中にあって、少女人形の停止した時だけが、再び動き出した


 原初の偉大なる知識の集大成たる魔導書。その最も完全に近い写本。”ナコト写本”が、問いかける。

 今この瞬間にも、消滅を迎える少女人形へ、問いかける。


 “偽りの魂を嘆く、創られし人形よ。永らえるを望むか、担い手に侍るを望むか。受け入れるか”

 焦点も合わず、濁ったガラスのように、ただ見開かれた漆黒に染まった瞳。

 侵食され、汚損され、美しかった翡翠の瞳を濁らされた少女人形は、最後の魂の灯を揺らめかせ、応えを返す。


 『共に在る事だけを望みます』

 声にならない聲(こえ)が、魂から発せられた。偽りの、作られたはずの、魂からは決して生み出されることがないはずの”マナ”

 今、確かな想いが、”マナ”が、紗雪の中から生み出された。


 “唱えよ、領域を規定せよ”


 今ひとたび、白と黒、交互に奏上する祝詞。世界に投げかける私の理。

「光よ、照らせ。光よ、抗う輝きとなれ」 「闇よ、沈めよ。闇よ、払う深淵となれ」

「焔よ、燃やせ。焔よ、全てを滅せよ」 「氷よ、停めよ。氷よ、全てを封ぜよ」

 虚空に4つの光が灯る。五角形を成す5つの基点、その4つが力を宿し、灯る。

 白と黒二つの身体で祝詞を奏上する神翼の乙女が五角を閉ざし、領域と成す。

 結びを放たんと息を吸った、そのひと時。


 足りない。わかってしまう。私の理解では、知識では、足りない。

 力のバランスはとれた。けれど、ナコト写本の真の担い手には至れていない。

 所詮は付け焼刃の知識、知恵。深淵の術理を紡ぐには私ではやはり、決定的に、足りない!!


 混沌が嘲笑い、破壊をもたらす邪神の侵食が、絶望の淵が、再び広がらんと止められた時が動き出す刹那を待ち望む。

 その時。



 銀の姫と、少女人形。私の愛する2輪の花、その片割れたる少女。

 偽りの魂、作り物であったはずの魂。それが、愛を求め、今確かに奏上する。

 紗雪の魂の声が、響き渡る。


 『最古の知識。古代の魔導が生み出せしこの身に、宿しましょう』

 紡がれる言葉は止まらない。

 『この身は最古の術理を紡ぐ、伴侶となりましょう』

 切なる願いを秘めて、言葉は紡がれる。

 『この心、偽りの魂、ここに砕け失せるとも、愛のためならば、全てを捧げましょう』

 声なき囁きを添える白と黒2色の翼をもつ人形少女。


 漆黒の魔導書がナオの手を離れ、紗雪の胸元に吸い込まれる。

 ナコト写本に記された知識と術理が、紗雪に取り込まれる。

 同化される。

 原初の魔導書を取り込んだ古代魔導人形の少女は、ただ一人のためだけの魔導書として。


 侵食され、制御の利かない、壊れた演算領域を。

 消え失せようとする記憶領域を。

 たとえこれが最後になろうとも、懸命に、健気に、回す。廻す。まわす!


 今ここに、絆つなぎし少女人形が、比翼連理の片割れたる魔導書に己こそが成ると、譲らぬと、誓いを立てる。

 神翼の少女と、魔導が生み出せし人形少女。共に在ると誓い合った、2人で1つの基点となる。



 神代の魔力を宿す神翼と、侍り寄り添う新たな魔導書が、今ここに生まれた。


 魔導書、そは知識の集大成、術理の記録。

 なればそれは現代の、否、超技術の産物たる論理演算の集積体、あまねくすべての知識を集積しうる人工知能(AI)と親和する。

 人造なりし知能は、今ここに、魔導書と一体となる。



 5つの光、最後の基点は成立した。

 虚空に描き出される五角形。


 『「「”神代魔法 – 護法抱擁“」」』

 3つの声が重なる。


 再び動きだす時間。ナコト写本が敷いた、静止した時の理が解かれる。

 破邪を成す、旧き神の印たる五芒星形――正当なる神々の力の証にして、邪なると糾弾されし神々を排斥する古き印。それとは明確に異なる、異なる術理を秘めた図形。


 最古の知識の証、術理を敷く、外なる世界からの侵入を防ぐ図形。それこそがこの、ナコト五角形。

 その正しき知識を元に、組み上げる、新たな理。護法の理を宿し、ただ安定と安寧を願う術理が敷かれる。



「全く、これだから……あなどりがたい。怖い火の神も目覚めた様子。今は退散するとしましょう」

 邪神ナイアルラトテプの気配が遠ざかる。漆黒の男の姿が消える。


 降臨しようとしていた邪神アザトースが。顕現せんとしていた、破壊をもたらす邪神の欠片が。

 再びあらゆる次元から切り離され、時間を超越した無明の座に隔離されたかの邪神アザトースが。

 安寧を乱すモノと規定される。



 神代魔法により、描き出されたナコト五角形が。結界をこの場に規定し、顕現した。

 その領域内において、邪なる全てを、排除すると、ここに定めた。


 かくて阻まれ、拒まれ、依り代を絶たれ。無名の座へと帰還する。


 悍ましい、世界を侵食し、世界を破壊する、大いなる邪神の気配が消え去った。

 少女人形の身を犯す肉の触手と化したケーブルも、消滅する。



 ああ、そして今、邪なるものの失せた、安寧の結界の中で。

 少女人形に育まれた魂の源、心の源。記憶、演算、あらゆる領域を。

 護法なるマナが、満たし、抱擁し、癒す!




 漆黒に染められてしまっていた紗雪の瞳が、美しい翡翠色を取り戻す。

 縛り付けるものがなくなった紗雪が、ふらつきながらも、飛び込んでくるのを、白と黒二つの身体で一緒に抱きしめる。


「もう、もう駄目だって思ってました……。ナオさん……ナオさぁん」

「「無事で、無事を取り戻せて、本当によかった。良かったです」」

「さっき言ったこと、嘘じゃありませんよね? あの場限りの……口から出まかせ……とかじゃないですよね?」

「「当然です。すべて本心ですし、身勝手で申し訳ないとは思いますが。私の恋人になってくれますか? 私の愛を受け入れていただけますか?」」


「はい、もちろんです! 私もずっと、ずっと、初めから愛しています。私は貴女のために生まれたんです。ダメって言われても、愛し続けますから。もう、我慢しませんよ? 覚悟してくださいね? 私、意外と重いですよ?」

「「望むところですとも。これからもどうか、よろしくお願いいたしますね。今度こそ、正式に愛しあう仲として」」



 そして、邪神たちの気配が消えた空間の中で、変化が始まりました。




【パーティーアナウンス:最上級 古代魔導人形 “紗雪” の権限が全て回復されます】

【パーティーアナウンス:原初の”ナコト写本”による介入を確認】

 “大いなる知識と術理は、受け継がれる。新たなる、最も旧き魔導書が生まれる”


【パーティーアナウンス:最上級 古代魔導人形 “紗雪” に真なる魂の芽生えを確認。変質の条件を満たしました。】

【パーティーアナウンス:絆を確認、想いを確認、願いを確認。エンゲージメントスキルが、創造されます】


 “偽りの魂は今ここに真を得た。二面の世を共に歩む資格をもって、伴侶たるを欲す”

 “神の翼担いし者、その魂を慰撫せしめし創られし者、共に伴侶たるを欲す”




 ============

 エンゲージメントスキル “☆7 統合スキル-依依恋恋たる抱擁”


<内包スキル>

 愛及屋烏: いづれかが相互の愛の元、絆を結んだ相手を、このスキルの対象に加える

 昼想夜夢:任意発動-リソース(感覚,魔力,生命力等)を共有する。共有中、記憶と感情が共有される。

 この効果は1日1回のみ発動可能。

 一日千秋:相手の元へ、自らを召喚する

 海誓山盟:創造した神代魔法を記録する。記録された神代魔法を再演可能。

 ※再演時、発動時間を短縮し即時発動可能となる。

 

(記録済み神代魔法)

 - 護法抱擁:ナコト五角形を元とした結界を生成。領域内に安定をもたらし、これを害するものを排除する

 ============


「えへへ、これでシステム的にも私、ちゃんとナオさんの伴侶です。エンゲージしちゃいましたもん♪」

「「依依恋恋(いいれんれん)、”恋い慕うあまり離れるのがつらく、未練がましい様子”ですか。それに、この内包スキルの名称達……Steps to Elysium Onlineはやっぱり、ちょっと意地悪ではないですか?」」

「もう……誰のせいですか。って、半分はルナリスちゃんていう、魅力的すぎる事引き合わせちゃった、私のせいでもありましたね」

「「それも含めて、ありがとうございます。紗雪がいなければ、今の私はありませんから」」



 【パーティーアナウンス:最上級 古代魔導人形 “紗雪” の変質が開始されます】

 “ナビゲーションAI紗雪の演算領域が不足しています。拡張のため、3億MCを消費します。 :許可/却下”


「勿論、許可です」

「ナオさん、3億MCって、3億円ですよ!?」

「「紗雪のためなら、どうでもいいですね?」」

「あ、あ、両耳側からダブルで囁くのはダメ、反則です」


 “保有MCの消費を開始”

 保有MC:2憶3,120万 ⇒ 380万

 配信報酬MC:7,260万 ⇒ 0


  “ナビゲーションAI紗雪の演算領域が拡張されます”


 ============

 ・種族が変質します

 最上級 古代魔導人形 ⇒ ☆8 禁忌魔導人形 (ランク2)


 ・称号が付与されます。

 称号”Lock-新たなる最古の魔導書 (原初の”ナコト写本”を受け継ぎし者)”


 ・スキルが変質します

 ☆7 Lock:最上級 魔導生命/AI ⇒ ☆8 Lock:禁忌魔導生命/AI

 ☆7 Lock:統合スキル-黒白(こくびゃく)の天使/魔導人形 +☆7 属性:混沌 (光闇由来) 変質/統合

 ⇒ ☆8 Lock:統合スキル-神翼/混沌の魔導人形


 ・スキルが強制取得されます

 ☆8 Lock:魔力変質:神代魔法適正

 ============


「あ、ほら。ナオさん、私の翼も、ふさふさの、ふわふわになりましたよ」

「「おお、これは大変素晴らしい触り心地ですね。それになんだか輝いているようです」」

「天使/堕天使の時でも普通の鳥系亜人種とは一線を画す美しさでしたが、これはさらに別格ですよね! ナオさんの神翼種とお揃いです」

「「他にもいろいろと確認したいところですし、今の今で……というのも正直気はひけるのですが」」


 愛していると、身勝手なことも言った直後にもうかと呆れられるでしょうが、紗雪の無事をこうして確定できた今。

 どうしても、未だ危機の中にあるルナリスが。


「もう、ナオさん、私を見損なわないでください。ルナリスちゃんの事は私も大好きだってずっと言っているじゃないですか。そして、共にナオさんを愛し、愛される仲。私だって同じだけ心配しているんですから」 

「ありがとうございます。この世界の月、という事だったのでどうしたものかと、困っていましたが」

「さっそく”私たちの”! エンゲージメントスキルの見せ場ですね♪」


 “依依恋恋たる抱擁”。スキル対象を拡張してくれる”愛及屋烏”の効果対象には、当然のようにルナリスが含まれてくれていました。

 であるならば。内包スキル”一日千秋”。ええ、まさにそんな気持ちです。1日すらたっていないというのに、傍に在るべき存在がいない。今すぐに、逢いに行きたい。


「じゃあ、二人で発動しましょう」

「はい」


 “依依恋恋たる抱擁 – 一日千秋”

 私達を、ルナリスの元へ!


 今度こそ、スキルは効果を発揮し、再びの空間の歪みに呑み込まれ、この偽物のドリームランドの月世界へと、転移するのでした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。