76.3章-第20話 ”マナとは”
本日から1日2話投稿(7:30, 22:10の2回)に変更させていただきます。
こちらは本日2回目の投稿です。
無事パーティーも盛況のうちに終わり、ルナリス、紗雪の2人とともにプライベートスペースへ。
しばし楽しかった先程の余韻に浸りつつ、暖かい紅茶を片手に、ほっと一息。
「いろいろと確認しないといけない事が、多いですね」
と、切り出してくれたのは紗雪。
「そうだね。邪霊のDrop、クエスト報酬、やっと10になったスキルレベルからの進化統合、さっきのガチャのスキル」
おや、ルナリスはちょっと、おねむですね。一生懸命起きていようとしてくれていますが。
「ルナリス、おいで」
もぞもぞ、言葉もなく膝の上に収まる彼女。今回も無理をさせてしまいましたからね。あれから日数は経ったとはいえ、いろいろと、たまっていたものもあるでしょう。道中はどうしても、ゆっくりできませんでしたから。
「とりあえず各種Drop品と、クエスト報酬はまあ、確認だけでいいかな」
「そうですね。よほど私達が絶対に使うっていうもの以外、基本的にそのまま、あの子たちに自由にさせてもいいかもしれません」
「うん。資金もある程度自由にしてもらって、伸び伸びやってもらいたいね」
「では、そのあたりは副統括の子たちに」
とりあえず、辺境伯からの今回の報酬。直接家令のお爺様から受け取った分と、冒険者ギルドで指名クエスト報酬として受け取った分を合わせて。クエスト達成時のGOLDは、基本的にシステム側からの物みたいなのですよね。ですのでそれは別で。
クランランク上昇 F ⇒ C
30億GOLD、
☆5 ゴーレム騎竜×2頭
☆5 空間拡張(2倍)の施された馬車×1台
スキルスロットエンハンサー×1個
「馬車は手が空き次第、アメティスタ達がさらに改良してくれると思います」
「思い出という意味で、今までの馬車も大事だけれど、実用面では正直助かる。ていうかこれ、結構どころじゃなく高級品だよね。とりあえずは今いる子達の武装だね」
「はい。その後の古代魔導人形生産は少しペースを落とす予定です。研究開発の時間も重要ですので」
「うん。今回のダンジョンで、戦力的にはかなり頼もしいってわかったしね。スキル結晶ガチャの結果も上々」
「LUCの影響はない、とされていますが……そうとは思えないほど、かなりすごかったですね~」
安心感もあってか、銀のお姫様はすっかりすやすや。穏やかな吐息に耳を傾けつつ、優しく髪をなでてあげます。
紗雪と2人きりで会話というのも随分と久しぶりな気がします。つい言葉もいつも以上に気安く。
こういうのもいいですね。
ルナリスが大事なことは絶対ですが、どうしてもまだ、お姫様という意識と、難しい境遇を抱えているので。そこの緊張というか、私の側に遠慮がまだあるのでしょうね。
「で、邪霊のDropが、これか~」
「これまでとは違い、ある意味普通のDropという感じですね」
「まあね。今までが特殊? 特別? すぎて……」
「それは間違いないです。しいて言えばアトラク=ナチャも、アフーム=ザーも、ルナリスの魂の匂いに引かれて発生したイベント、という面が強いです。今回のシュブ=ニグラスは、敵方……と思しき相手の召喚した存在、という違いでしょうか。プレイヤーはだいたいが、グランドクエストを受注していますので。ナオさんは、特別のユニークシナリオがそれを内包している感じでしょうね」
「なるほど。にしてもあれ、誰だったのだろうね。今見えている敵という意味では、アレイスター王国側の人間? 存在? だろうけれど」
☆8 汚染された魔核 (断章:シュブ=ニグラスの断片 由来)
☆8 増殖する木片 (断章:シュブ=ニグラスの断片 由来)
「魔導書、魔本を確保されたのが痛いですね」
「だね~……とはいえ、あれは阻止しようがないと思うけれど。クエスト評価的にも”マイナス”はついていたけれど、☆10だったし。それはそうと、魔本と言えば、私の”☆8 原初の魔書”って、あれだよね、ナコト写本モチーフ? その物?」
「ナコト五角形、太古の魔導書という敵方の言葉。十中八九そうでしょうね」
「本人? 本? が隠そうとしているぽい雰囲気があるから言わなかったけれど……」
「ゲーム的には性能の開放をしなければいけないでしょうね。クエストスクロールも出ていますよね」
「うん。クトゥグアの方ね……アフーム=ザーつながりでもあるし、もし同じように力を貸してもらえる系統のクエストなら、何とか進めたいけれど」
いろいろと知識として必要層と思い、あれから調べました。
アフーム=ザーは、封印された旧支配者、まあ、語弊を恐れずいえば邪神達を開放する役割も担っている邪神。だからあの時のクエストは、”解放者”となっていたのかなとか。
アフーム=ザーの親にあたる邪神が、炎の邪神クトゥグア。とか。
ナコト写本も、クトゥルフ神話においてとても特別な、最も古い魔導書の一冊であるとか。
「天使姿の火力が徐々に不足してきているようですからね」
「そうなんだよね~……。でも、両方アレイスター王国国内がクエストの対象場所。……ルナリス関連という意味でも、行くべきではあるのだけれど」
「今回のシナリオもですが、他サーバーの状況を掲示板で調べると、相当ひどいことになっているみたいですね。大陸西部はどのサーバーも壊滅状態ですよ」
紗雪とですと、リアル準拠の、プレイヤー同士のような会話ができるのも、正直ありがたいですね。
ルナリスともいづれはこういう関係も築けるのかと思うと、ちょっと、いえ、かなり楽しみなような。一方で、果たしてSEOの外を前提とした関係性となるのが、よい事なのか、わずかな迷いもあります。
眠りの中で、と斎賀さんも言っていましたから、今も少しづつ、ルナリスには現実世界の知識が与えられているのでしょうか。
今のところ、懸念に上がっていたような、彼女の精神的変容などは見られませんが。
いづれにせえよ、今回の斎賀さんから言われているクエスト。その、目標達成をしなければなりません。
「うん。まあ、シュブ=ニクラス素材も、生産組の子達、第4部隊に預けちゃおう」
「そうですね、ナオさんの装備の強化素材にもなっていませんし」
「強化。そう、強化だよ~。私達、装備のレアリティーが高すぎて、一切強化できていないのなんとかしないと……。いや、状態異常抵抗の腕輪は強化できるのを、面倒でやっていなかっただけだけれど……」
「あら? ナオさん、また通知を見ていませんね?」
「およ? 何か来てた?」
紗雪がちょっとだけ呆れたように半目で見てきます。
「もう、しょうがないですね」
膝の上ですやすや寝息を立てるルナリスを起こさないように気を付けつつ、そっと隣に腰掛け、腕に体を預けてくる紗雪。
「はい、前にモニター出してあげますから、ちゃんと読んでくださいね」
と、映し出してくれたのは、今度のタワーディフェンスイベントの、告知アップデートでした。
「どれどれ。なるほど、これはバックストーリーですか」
「です。世界中、要するにサーバー内、の悪しきマナ。要するに、悪事、犯罪行為、悪感情、そうしたものか生まれたマナですね。あ、マナが何か、ナオさんはもうご存じでしたっけ?」
「魔術の源的なゲーム要素じゃないの?」
「それもありますが、現実の、も含めてです」
「うん? あ、デウスのサーバールームと称して見せられた、あれと関係が?」
「なるほど……。ちょっと権限を確認します」
待つ事少し。
「確認できました。ナオさんにはたいていのことがお話しできそうですね。とはいえまあ、簡単に。このSteps to Elysium Online自体それが大きな目的の一つですが、Deus ex Machina Corp.の新技術の中核、”マナ”。それは要するにこの世にある、あらゆる存在の感情や情動が生み出すエネルギー、のようなものです。これを活用できる技術を開発したのが、デウス……と、今は思っておいてください。で、SEOというこの世界唯一のVRMMOは、このマナを極めて効率よく収集できる手段であったわけです。一般プレイヤーが接続するために購入している、そこそこ大きな箱がありましたよね」
「うん。パソコンの本体みたいなやつね」
「あれが、マナの収集/転送装置みたいなものです。中立ないしは良性の感情に基づくマナは極めて高効率のmエネルギー源ともなり、また、物質転用の効率も良いです。これを活用した様々なビジネスが、デウスの主な資金源ですね。SEOも想定以上に収益が大きいみたいですが、元々こっちはマナを集めるためがメインで、現金だけで見れば、出ていく方が多い、赤字前提のビジネスモデルでした」
まあ、完全換金システムをしかもこれだけ、高効率で還元していたらそうですよね。”マナ”の活用がそんなに莫大な利益を生むのでしょうかね。
説明ばっかりしていてちょっと飽きてきたのか、紗雪がちょんちょんと、私の腕をつついて。
なんです? あ、腕枕して欲しい?
はいはい、良いですよ。
ルナリスを起こさないように、気を付けつつ。
「一方で、悪感情などに戻づく”悪いマナ”のような物は、ろ過というか、中立化するような処置が必要なので、活用効率も悪いです。悪用するなら逆に高効率なようですが……デウスは、それを許容しません。で、このSEOから集まるマナも、どうしても悪いマナが一定比率含まれます。それを有効活用できるようにするのが、このイベントであり、それ以降、恒常化される各自の領域防衛型コンテンツ(タワーディフェンスコンテンツ)というわけです」
「ふむふむ」
イベントページに書かれている以上の、それこそ今となっては世界の秘密レベルでは? という事を補足してくれる紗雪。
「要するにこのイベントは、世界にたまった”悪いマナ”が、モンスターの姿となって、ハウジングエリアや専用イベントスペースを襲いに来る。そうして、活用困難な悪いマナで生成されたモンスターを、倒すことで、その経験によって新たに生じる”マナ”を得ると。そして、このイベントに書かれている通り、このモンスターはMCをプレイヤーが獲得する事ができません」
「そこでまでMCをプレイヤーへ放出すると、デウスが赤字になっちゃうんだね」
「です。その代わりに、そのエリアには、所属するプレイヤー応じたモンスターが出現して、そのプレイヤーに必要な強化素材を低確率でDropすると」
「おぉ。フェニックス素材とか、アトラク=ナチャ素材とかもう本当、どうしろと? っていうレベルでしたからね……。強化素材が基本的に、その装備の制作素材かそれ以上のレアリティーなの本当きつい」
「さらに、イベント後も、この襲撃は恒常的に行われて……要するに、放置ゲーム要素の実装ですね」
「身もふたもない。でもそうだね。要するにプレイヤーはハウジングエリアに、それこそタワーディフェンス的な自動防衛機構を構築しなさいと。そうすると、勝手にやってくるモンスターを倒してくれて、低確率で強化素材が手に入っているよと」
スマホゲームとかで、よくある仕組みですよね。
ただ、その防衛の仕組みは各プレイヤー独自に、考えて、作り込めと。
うちは古代魔導人形の子達による防衛網ですが。生産職なら自動迎撃設備を作っても良し。商人プレイヤーなら、傭兵の住民を雇ったりしてもよし。権力者を目指すプレイヤーは、自警団、自身の組織する軍隊を創設しても良し。
うん、本当に無限の可能性が、ここにもまたありそうです。
「ですね。マナの収集効率はデウス的には悪いでしょうけれど、正直邪魔になるだけの”悪いマナ”から、低効率であっても、新規の善性か中立の”マナ”が獲得できる。かつプレイヤーへの報酬にMCがないので、得られたマナは基本的に全部回収できて、プレイヤーはSEO内部での強化素材が手に入る。割とWin-Winです」
「うちの場合も、魔導人形の子達に基本は任せるんだよね」
「ええ。私達が、常時ここにこもっているわけにはいきませんし、ゲームコンセプト的にもそれが正しいです。私のドール体はここに基本常駐しますから、必要に応じて、直接指揮をとったり、調整もできますしね」
「夜中とかは平気なの?」
「魔導人形は睡眠不要ですよ。娯楽としては、睡眠もとれますので交代制は取らせますが」
「侵入経路とかいろいろは始まってみてから、かな」
「ですね。出現ポイントがどのような物かに合わせて、防衛網や、経路を制限するような城壁を築こうかと。広大な敷地はできるだけ生産活動や、景色を楽しむために活用したいですからね。戦闘領域は限定的にしたいものです」
気が付けばずいぶんと話し込んでしまっていました。
肝心のスキル調整もせねば……。




