67.3章-第11話 ”少女人形達の快進撃 #2/2”
「みんな、生み出されたばかりとは到底思えない強さですね」
「練度も……高い、です」
空を舞い、戦う子達から、嬉しそうな気配が。
「なんと言っても、全員が古代魔導人形ですからね。古代魔導文明の英知の一端。現在では失われた技術。一般の子達でも、現在のプレイヤー上位層並みの力はすでに有していると思いますよ」
「うんうん。これでまだ発展途上どころか、レベルも10ちょっと、各種スキルもまだまだ下位の物だなんて、信じられません。やっぱり残りのイベントポイントは、ランダムスキルボックスに変えてしまうのもありな気がしますね」
「そうですね、一応集団戦を前提としたスキル構成は意識する必要がありますが、それぞれの特異性を持つのもありですし。かなり偏ったスキル構成の私たち3人が使える物が手に入る可能性もありますしね」
結局あの後、現在では入手困難や、作成難易度が高い触媒、溶媒、等をまかなうため、1セット1,000万ポイントの古代魔導人形用 素材加工用品セット×1,000個を交換し、100億ポイントを消費。
それでも残り512億ポイントちょっと。全部つぎ込むことはさすがにないかもしれませんが、1個1,000万ポイントのスキルランダムボックス。5,120箱……案外悪い賭けでもないのでは……?
一応、魔導人形の子達は1,000人規模に最終的にはする予定。
上位属性スキルくらいはさすがに出るでしょうから、使うメンバーが大幅に増える以上、全て買い集めるのは無理なので。うん、大ガチャ大会を開くのがありな気がしてきましたね。
「ルナリスも、ガチャしたいですか?」
「楽しそう……です。ナオ……様の、アクセサリー、が気になりますが……アメティスタ……が、手が空き次第作りたい……と張り切っていたので」
「そうですね。いい物がドロップしたらそれはそれとして、ポイント交換でランダムとはいえ無難な物を狙うより、素材をいろいろ集めながら、作ってくれるのを待った方が楽しいですね」
「そうは言っても、ナオさんのアクセサリーは適当すぎるというか……何かオークションで買いません?」
「んー……それで負けるようなら、本末転倒かもしれませんけれど。そこまで致命的な性能のものは売られていませんし。うちの子が作ってくれる環境になったのですから、装備、アクセサリーはうちの子製が良いです。なので、いつまででも待ちますよ」
「そうですか? まあ、それであれば。来訪者たちの間でも割と、スキルランダムボックスは人気みたいですね。当たれば大きいと。1憶MC越えのオークションも複数あったみたいですよ」
リアル換金すれば1億円……プレイヤー達のMCに対する感覚も、順調に狂ってきていますね? まあ、一気に換金する人は意外といないらしいですが。ゲーム内のキャラスペックを成長させるのにも相応に使った方が効率がいい。という判断ですね。
「今アメティスタと確認しましたが、初期100体の本体生産があと1週間ほどで完了予定とのことです。それから数日が期限のこの開通計画完遂後に、皆で開封大会を楽しむのがよいかもしれませんね。タワーディフェンス型イベントまでも、そのタイミングであれば、約1週間の余裕があるはずです」
「そういえばイベントもありましたね。辺境伯領に戻って、防衛応援に参加する頃でしょうかね。生産イベントの方は、参加しようもなかったのでノータッチですが」
ダンジョンなので、外界と完全に距離が一致するわけではありませんが、ボス部屋を考慮せず、ある程度急いで攻略した場合で、7日程度の長さと言われています。今回は両側から進行しているので、順調にいけば東側から進行してくる舞台と、4,5日で会えるはずという計算ですね。
「生産イベントは、アメティスタ達には勉強になるので、見学に出かけさせていますよ」
「最新の……知識の吸収……大事、です」
「いいですね。暇な期間のはずが、想定外の忙しさになったので。どこかで時間を見つけて、私達も軽く覗きに行きたいですね」
「はい。いざとなればまあ、動画で公開されているのでそちらですね」
「3人でデート……も、いいですし……お城でまったり……も、素敵です」
と、そんな暢気な話をしている間も、うちの子達は、危なげなく攻略を進めてくれています。
周辺警護も、サフィーロを中心とした第4部隊の小さなゴシックメイド達と、ルナリスの2振りの空飛ぶ剣で鉄壁です。
【レイドアナウンス:罠多数の領域のようです。各自注意。第3PTの確認後、通過するよう】
いよいよダンジョンらしく、罠なども登場しているようです。
私たちは全員が空を飛んでいるので、床部分に設置された罠はほとんど引っかからないのも強みですね。
先行する子たちが次々と罠を看破し、解除や、通ってはいけない場所のマーキング等、細かく対処してくれています。
そしてこの罠地帯で出現するようになったのが
【レイドアナウンス:第1前へ。第2は周辺への対処を優先】
ジワリ……と洞窟の壁面全周から滲み出してきたスライム系統……なのは間違いないのですが、一際悍ましいモンスター。
腐肉と血で生成された”アンデッド - ブラッディスライム”です。このSEOのスライムは基本的に、割とかわいい系と言いますか、ゼリータイプのポヨンと丸々とした存在が多く、デロデロのホラーテイストではないのです。が、これは別……。
さらに、前方にはこれらが寄り集まり。あまり意識したくないのですが……肢体をつなぎ合わせたと思しき、いわゆる”フレッシュゴーレム”にまとわりついて、一体と化した巨大モンスターがのそりのそりと。集団で通路をふさぎにかかっています。
しかも厄介なのはこの”アンデッド - ブラッディスライム”、アンデッドなので光属性が弱点なのはそうなのですが、浄化しても実体が残り、これがなんとも汚らしい汚濁として勢いそのままに襲い掛かってくる事……。
人形少女たちもちょっと、嫌そうな表情……。
「氷炎で固めてしまいましょうか」
副統括の子達との通信用イヤリングを介して聞くと、
「ナオ様、大丈夫ですわ♡」
「はい、マスターのお手を煩わせることなどありません。どうかお任せを」
アクロイトと、ルビーノがきっぱりと宣言してくれます。
「さあ、あなた達。良いところをお見せしますわよ♡」
一足先に動き始めたのは、ルビーノ率いる第2の魔導部隊。
綺麗な澄んだ声が、輪唱を奏でる。
属性は氷と光。6人の口が紡ぐ詠唱がきれいな和音を成す。
「聖なる光よ、清冽なる氷よ、共に清め、封ぜよ」
ルビーノの合図とともに広がる冷たく、しかしどこか温もりを感じる魔力の具現。
私の氷炎の悍ましさとは真逆の、その感覚が走り抜けるや否や。
床から天井まで、洞窟の壁面が、きらきらと美しく輝く氷に閉ざされたではありませんか。
内包された光属性がアンデッドへの特攻となり、さらに、醜い死肉と血の塊は、氷の内に閉ざされ、消え去るを待つばかり。
「私達も、参りますよ!」
前面に盾を6枚集結させ、壁と成し。その周囲をランスで取り囲む。
戦乙女風の少女人形達はすっぽりとその陰に隠れ、敵からは姿も見えない。
そんな鉄壁の布陣を前に押し出し、
「突貫!」
移動補助系のスキルで強化された、力強く素早い飛翔に合わせ、鉄壁の守りと、穿ち貫く剛撃が前方へと射出されます。
追随する高速飛翔状態の少女人形達の念動に後押しされ、60㎝の彼女たちをはるかに超える巨体の”フレッシュゴーレム”達が、致命傷を負い消滅し。はたまた、押しとどめられます。
まとわりついていた”アンデッド - ブラッディスライム”が、盾の壁を乗り越え、這い出そうとするとことに
「武装転換、抜剣」
盾とランスが瞬時に消え、足場を失い落下するスライムと、押し合いの力が消え、前へつんのめるフレッシュゴーレム。
体勢を崩したそこに、各自2本、浮遊させた剣計12本による、滅多切り。
本人たちは緩やかに後方へと飛翔しており、凄惨な戦闘の痕跡を浴びるようなこともありません。
私の転身の武装版、クイックチェンジ系のスキルをしっかりと使いこなしていますね。
「再度突貫!」
瞬間、再度消える剣と、現れる盾とランス。
繰り返される第1部隊所属、戦乙女風の少女人形達の突撃を留める事も出来ず、貫かれ、押しとどめ。
途端天使少女達は武装を転換、切り裂き捨てられ、黒い靄と化して消える。
繰り返し、掘削するように隊列を穿たれ。
通路に密集していたモンスターたちは、純白の翼も髪も、穢れ一つ与えることもできずに滅び去ったのでした。




