60.3章-第4話 ”初級試練ダンジョン”
上空。正六角形の頂点の位置に打ち上げられた金属塊。それぞれが小型のドローン型ゴーレム。
中央には4脚の土台の上に、人型の上半身が乗ったゴーレム本体。その背中、ドローン型が格納されていたスペースには、射出を終えた穴を覆う蓋が形成され始めている。
上空の6機から本体に向け、エネルギーが照射され、バリアが張られる。
「右半分をやります」
「わたくしが左を」
ともに空をゆく私とルナリスが左右それぞれ3機づつを撃ち落しに向かい。
「照準良し。いつでも行けますよ!」
紗雪が浮遊する古式銃4丁と、対物狙撃銃、合計5丁の大小魔導銃で狙いをつけ、バリアの解除を待つ。
”試練の山脈 -玖-“山頂で待ち受けていたボスは、ギミック型でした。
本体が暴れる。時間経過で背中の格納スペース内でドローン型が生成される。ドローン型が射出されると本体にバリアが張られダメージが通らなくなる。ドローンを落とし、バリアが解除された本体が動いている間に、ダメージ。
その繰り返しです。
私たちは全員が飛べるので良いですが、基本は魔術や射撃武器でドローンを、前衛が本体を担当。みたいな分担をするのでしょうね。
とはいえ、これくらいはさすがに相手にならず。むしろ道中の、大量のゴーレム集団を相手取る方が正直疲れました。
順当に無事撃破すると、山頂のボスエリアであった広場中央に、”試練の間”よりかなり小さな、透明の水晶。
神様の眷属との会話インターフェイスが開くようなこともなく、
【個人アナウンス: 初級試練 ”試練の山脈 -玖-“ を踏破しました】
というアナウンスとともに、インベントリに直接報酬が。
装備品ではなく、”☆4 ゴーレム飛行ユニットの核”というアイテムでした。
「当たりと言えば当たりですけれど、今はまだ、使わないですね。試練の魔核ともども、使える時まで倉庫にしまっておきましょう。古代魔導人形用の、浮遊武器とかを生産するのに使えるはずです」
紗雪に見せ、判断してもらいます。ゴーレム用パーツや素材をとりには来たものの、魔導人形本体用には使える物、使えない物が、どうしてもあるそうで。
ちなみに今までは全てのドロップ品を基本的に売却していました。が、今は”悠久の楽園”の浮島の一つに、倉庫を建設し、できるだけそこに保管するようにしています。
今後、増やす魔導人形達のためにも、いろいろな素材やアイテムが必要になりますからね。
資金に困ったり、在庫整理をするときに、売却することになるでしょう。
そのあたりも、紗雪がドール体を主に活用し、基本的な管理をしてくれるようになり。大変助かります。戦闘に一緒に出てもらうのもありですが、いかんせん広大な領域。統括役として紗雪のドール体に、そちらに常駐してもらうのが最適なのでした。
「さて、こっちのダンジョンで欲しい素材は、十分集まりましたね」
「はい。数のチェックも終えて、完了ですよ~」
「では、”試練の平原 -拾弐-“へ移動しましょう」
広場で隣り合ったもう一つの神殿。その中の扉に触れた先が、”試練の平原 -拾弐-“。
一面に広がる草原。そこにたむろしているのは、いわゆるスライム型のモンスター達です。
「ここのドロップが、肌素材になるのでしたよね」
「ですです。シリコン素材みたいなものですね~。私や副統括個体の子達の肌は、古代魔導時代の技術で創られた素材なので、ポイント交換で入手しないと今はまだ難しいですが、一般の子達用には、ちょうどいい感じの素材になるのです」
「お化粧品の……素材にも……なっています」
リアル知識チートをすると、張り切ったプレイヤー達が、失敗した分野の1つでしたか。
ゲーム内化粧品の方が高品質で、肌への影響もないとか。そもそも、美を追求するご婦人方には強い味方の、再生系のスキル効果もありますからね。
ルナリスも、再生スキルのおかげで、いつでもお肌すべすべの、つやつやですよ。
私はほら、プレイヤーなうえにこれ、都度作り直される顕現体ですからね。本体はルナリスの首にはまった、チョーカーですし。
ちなみに、再生系スキル。乙女の初めて的なあれもその……再生しようと思えばできるらしいです……はい。
「さあ、柔肌天国のためにも、ナオさん、がんばりますよ!」
「え……そんなものを作るつもりは」
「えー。かったーい、無機質ボディがお好みなんですか? 金属の冷たさと、固く締め付けられる感触の方がいいと。興奮しちゃうと。ほぅ……どうします、ルナリスちゃん?」
「ナオ……様が……望まれるなら、て……手錠とか、足枷……とか、そういうのも……むしろ望んで、わたくしに嵌めていただきたい……ポッ」
「ちーがーいーますからー。そもそも、魔導人形達のお肌のお話でしたよねぇ!? ルナリスちゃ~ん、私を置いて斜め上に暴走しないで~」
と、そんなじゃれ合いをしながらも、無数に寄ってくるスライムたちを、的確に核を切り裂き、貫き、蒸発させ。インベントリ内のドロップ品の山と変えていきます。
「このペースなら3日くらいで終わりそうですね~」
「制作の方が追い付かなさそうな」
「まあ、そこはまだ日数が……39日もありますから。順次制作という事で。先に生産系の子を重点的に用意しますしね」
「羽根は足ります? 何なら一度ばっさり、やっちゃって、リポップしましょうか?」
「だ……ダメ……です!ナオ……様、の羽根を、採集するなら優しく……少しづつ、です。わたくしが、やらせて……いただきますから」
ルナリスに、優しく撫でるように、羽根の採集してもらうの、気持ちいいのですよね。
丸坊主になるまでむしり取って、死に戻りで復元とか思ったら怒られちゃいました。ゲーム脳イクナイ。
「一般の子達のは、私や、副統括の子達の羽根を素材にしても十分ですから。まあ大丈夫ですよ。せっかくなので、美観というか統一感のためにも、他種族の羽根は使いたくないですけれどね」
ええ、実はうちで生み出す魔導人形の子達は全員、天使/堕天使の羽根を有し、飛行能力を持たせるという、かなり贅沢仕様で計画しているのです。
数がどこまでそろえられるかはまだわかりませんが、総員飛行部隊ってすごくないですか。
まあ、浮島で構成されているハウジングエリアなので、そうでもしないと、そもそも、皆自由に動けないという問題があるのですが。防衛という意味では、かなりの強みでしょう。
そうしてワイワイ楽しみながら、狩りをすること3日。
いよいよ、ボスです。
彼? は、格別にプルンプルンとして、もちもちとした見た目をし。デザートのゼリーのようにトロピカルで透明感のある色をしていました。
「今日のデザートは、ゼリーにしましょうか」
「ゼリー……です」
「いいですね。フルーツポンチとかも添えちゃいましょう。ナオさん、細かく切ったフルーツと、ナタデココをいれたソーダも、いいかもしれませんよ?」
ボスですか? 融炎でジュワっと逝ってしまわれたところで、露出した核を紗雪が対物狙撃銃でズドン、して終わりましたよ。
ルナリスは美味しそうな見た目に、デザートに思いをはせていました。
【個人アナウンス: 初級試練 ”試練の平原 -拾弐-“ を踏破しました】
私たちが育ったのもありますが、初級試練だとこんなものなのですね。
住民の皆さん的にも、素材の収集場所になっているというのは納得です。
なお、ボスドロップは”☆4 レインボースライムジェル”で、高級化粧品の素材なのだとか。
と、目的も無事終わり、ハウジングエリア”悠久の楽園”に戻ろうというところで、システムメニューにメッセージが届いていました。
リアル側、斎賀さんからで、明日リアル8月1日の午前中。ゲーム内部8月1の巡り2日目。つまり、SEOサービス開始から126日目に、打ち合わせがしたいとのことです。
了解のお返事と、9時頃に伺う旨を返信。紗雪が教えてくれたイベント発表の件絡みでしょうかね。
とりあえず、紗雪は今回の素材でいよいよ副統括の子達の最終更新ができるので、戻ったら楽しみにしていてください。
と言い残し、古代魔導人形工房の浮島へ飛んでいくのでした。
「連日、狩り詰めでしたし、私たちはお夕飯までまったりしていましょうか」
「卵の……様子を見た後、お風呂……に一緒に、入りま……しょう」
「いいですね」
この領域全体をめぐる、魔力がこもった、特別な循環水でいつでも、リアル温泉のようなお風呂に入れるのも、最高の贅沢ですからね。この領域を手に入れられてよかったことの一つです。
それも、各お城に様々な広いお風呂が用意されているので、気分に合わせて楽しみ放題です。
あ、排水は別経路で流れているので大丈夫ですよ。白亜の城中枢に混ざるようなことはありません。




