58.3章-第2話 ”彫刻の街”
アンブロシウス辺境伯領、領都から北西に4日間。彫刻の街。
初級試練ダンジョン”試練の平原 -拾弐-“と、”試練の山脈 -玖-“ を内部に抱えるこの街は、ダンジョンで得られる素材を活用した、ゴーレム産業が大いに発展している。
ゴーレム制作の花形と言えば、ゴーレムの中枢コアの制作能力。すなはち、性能を左右する技術力の高さだが、もう片割れともいえるのが、外装の美しさ。
多様な選択肢の中でも、彫刻による芸術性の高さを追い求める職人が集まり、出来たのがこの町との事。
軒を連ねる工房や直営の店舗には確かに、ゴーレムはもちろん家具や小物、彫像等、様々な彫刻作品が並べられている。
「良い家具があれば、買いそろえるのもありかもしれませんね」
「コンセプトルームとかいっぱい作っても、余りあるほどの部屋数ですものね~」
「趣の……異なる部屋で、ナオ……様と、夜を共にするの……楽しみ、です」
多少控えめながらも、しっかりと主張するお胸でもにゅっと、腕を挟み込み、見上げるルナリス。
アールヌーボー調の優美で華やかな今のプライベートルームもいいですが、気分で日々雰囲気を変えて……いい、いいですね。
「紗雪ちゃんも……混ざればいいのに」
「ル、ルナリスちゃん!? ですから、大胆すぎるってぇ」
こうした事だけはルナリスの一人勝ちというか、予想外に押せ押せなのですよね。私としては嬉しいだけですが。
一方の紗雪は、日中はお姉さんぶって可愛がったりと私たちをからかうのですが、夜は遠慮して別に用意した私室に姿を隠そうとしてしまう。
「紗雪ちゃんも……はやくナオ……様に……身も心も、捧げて……愛してもらうべき。すごく……幸せな気持ち……になれる。わたくしも、一緒に……」
「さ、さささ、さんp……ル、ルナリスちゃん!? だから、どうしてそういうところだけは……! 王様、王様!? その辺の教育抜けていませんでしたか!?」
「ご本……いっぱい……あったから。たくさん……読みました……よ?メイドの子達が……特に、おすすめ……教えてくれて」
「そっちの仕業かぁ!」
「気持ち……よくて、ぽかぽか、ふわってお空に飛ぶくらい……幸せ、ですよ?」
えー……うん。私は嬉しいので、いいのですけれどね? 清楚な見た目でエッチな銀の姫、素晴らしいと思います、はい。
「せっかくですから軽く観光がてらにご説明を。魔導人形文化は連邦。ゴーレム文化がここミドガ帝国で盛んです。中でも、今の私のように人に近い、柔らかな肌素材を生かした技術体系は魔導人形の方が得意とするところです。一方のゴーレムはイメージされるとおりの、岩石や金属の物はもちろん。人型であっても、現実で言うロボット的なイメージの方が主流になっています」
今覗いているお店には、義手義足のような、人型の金属製のパーツに、それぞれ様々な彫刻や彫金が施されています。
「己の肉体や、手にした武装を、主たる兵装とするのもゴーレムに多い特徴ですね。魔導人形は逆に魔術的な力を主とし、武装は私がそうしているように念動などで体から離して操作する。本体で持つ場合はヒト同様に、という感じです」
ルナリスが手にしたガントレットのようなパーツ。彼女の手と比べると、手のひらのサイズからして四倍以上もありますね。
「魔導人形は最低限の性能の物でも、非常に高コストになります。量産に向かないのですよね。ナオさんの場合、古代の工房がありますから、比較的量産が可能となっている、例外中の例外です。素材さえあれば……ですが。現代技術では不可能でしょうね」
いやはや本当に、あの工房をポイント交換で取得させてもらえたのは、大きかったです。
それに、見た目も素敵なのですよね。ファンタジーと言えば! な、魔導工房。
「一方ゴーレムはこれもイメージ通りと思いますが、核さえ用意しておけば、周辺の素材からでも体を作り上げることも可能です。もちろん性能を上げるなら、ここにあるような専用パーツなどあらかじめ用意した方が良いです。ゴーレムもナビAIの素体候補の一つなのですよ」
「搭乗できる人型ロボットみたいなゴーレムを作るプレイヤーが出てきそうですね。て、そういえば、PVP大会の時のイベントスペースで展示があったと聞いたような」
いまなら、ナビAIの素体にしてもらって、ナビAIと一体になって戦う。みたいなプレイも目指せそうではないですか?
「そうですね。ただ、演算能力の基盤となるコアの容量が、魔導人形に比べ制限されるので、私的には微妙ですが。そのあたりを改善しつつ、ナビAIがフルサポートするなら、人型搭乗兵器はできますね。そうした例外は抜きにしても、手軽に戦力の数をそろえられるのはゴーレムの強みです。英雄級ユニットを作るなら魔導人形。軍団戦の兵士を作るなら圧倒的にゴーレム。な感じですかね」
そうして次に見に入ったのは、ゴーレム本体の核を扱う工房。
展示されているのは、多種多様な種類のゴーレムだが少々異色。いわゆる生活雑貨に近いものです。
「魔導具とも……これも、また違い……ますね」
ルナリスが興味を示し、実演している全自動調理器やお掃除ロボット的な物を眺める。
「魔導人形の場合、人型で制作されて、人と同じような道具を使うのが主流です。こうした形がいかにも道具、機能性の体現、みたいなのはほぼ無理ですね。自我というか、自意識の形も自由なゴーレムならではと言えるでしょう。”悠久の楽園”は、魔導人形達がしっかりお世話させていただきますので、大丈夫ですよ!」
そうして街の様子を見ながら進むことしばし。工房が減り、武装した人たちとすれ違う事が増えてきました。
冒険者ギルドの建物のある広場にたどり着くと、そこには2つの神殿が。
ここが、初級試練ダンジョンの入り口を擁する場所ですね。
「まずは、”試練の山脈 -玖-“から参りましょうか」
「はい。あ、パーティーはいったん私も普通にメンバーにしておきましょう」
パーティーはメンバー上限6人。経験値の分配方式は基本均等。
ナビゲーションAIはメンバー枠を使うか使わないかの選択が可能。
経験値について枠を使った場合、普通のプレイヤーと同じ。枠を使わない場合、専属でついているプレイヤーと分け合う事になります。
私の場合、二重性のスキルの関係で、天使、堕天使に半分づつで経験値が割り振られます。
つまり、顕現体/表の天使モードを基準で計算すれば
メンバー枠に入れた場合:3人で経験値を分け合った後、半減=総獲得経験値の1/6が私に。
メンバー枠に入れない場合:ルナリスと半分こした後、さらに紗雪と半分こした後、半減=総獲得経験値の1/8が私に。
となるので、メンバー枠を使った方が取得経験値が増えます……。
ルナリスの取得分がその分、少し減ってしまいますが。
試練の間と比べると少しサイズの小さい扉。
さて、今回は素材集めがメイン。タワーディフェンスイベントまでに、ハウジングエリア”悠久の楽園”にある程度の戦力を確保するため、頑張りましょう。




