47.2章-第20話 ”第1回大規模イベント その1 - PVP大会本戦 #2/3”
【本戦 ベスト4決定戦 VS PT ”もふもふぱらだいす“】
倍率:3.3倍
保有ポイント:0
賭けポイント:51億2671万+最終報酬の100%
勝利報酬ポイント累計:425万 (最終集計時、賭け累計獲得 34.3倍)
「これは、壮観ですね」
「かっこいい……し、かわいい?」
「え、えへへ、ウチの自慢の、モフモフっ子たちです」
そういって、猫背だった彼女が胸を張って示すのは、テイムモンスター、というか彼女の仲間たち。
3頭の巨大な狼
2頭の、ドラゴン? でしょうか、ふさふさの毛が生えた、しかしまだ小さい子竜
「えと、情報に疎くてごめんなさい。戦って大丈夫……です?」
「はい! テイムモンスは、ちゃんと復活するようになるんですよ。ウチら来訪者と一緒です。むしろ戦うのが大好きな子たちなので、思いっきりやり合ってあげてもらえたら。あ……あの……ウチらの方こそ、その、ルナリスさん? お姫様? は住民さんですよね。大会中は大丈夫なはずだとは思いますけれど……」
「ええ、私たちはちょっと事情があって、基本的に大丈夫です。お気遣い感謝ですよ」
ジーっと、ルナリスがふさふさの子竜を見ています。気に入ったのでしょうか……。
ドラゴンって、テイムスキル無しで飼えますかね?
カウント10
ぽやぽや、あくびをしていた彼らが一気に獰猛さを増します
カウント5
こちらも油断なく、身構え
カウント0
「支援スキル、フル掛けですよ~!」
無詠唱でしょう、連続でテイムモンス達を様々なエフェクトが包み込みます。
その光の中を、こちらの身長よりも体高が高い狼3頭が有機的な連携の動きを見せながら迫ってきます。
2人はもちろんすでに空に。
しかし今回は子竜2頭にとっても空はお手の物。
カッと開いた口から光の奔流、光属性のブレスが一直線に飛んできます。
私を狙ったそれを、バレルロールを打ち、回避……したところに直下から、3つの巨大な火球が逃げ場を奪うように三角に並び、面積を大きくして迫ってきています。
銀光が視界の隅をかすめるのをとらえ、迫る火球へ逆に急降下を仕掛ける私。
追い越した2本の銀剣が火球の一つに炸裂。誘爆を生む中を突っ切り、双短剣を狼の1頭に。
悪寒を感じ咄嗟に、飛行方向を地面水平に!
翼の端をかすめる子竜2匹のブレス。クールタイムが短い。
かすめただけでHPの4割を消し飛ばされる脆弱な天使の身。光輝魔術で治癒を施しながら一度上空へ離脱。
入れ替わりに放射されるルナリスの稲妻が、ブレスを放った直後の小竜の1匹に直撃。
GYuu!
小さい悲鳴を上げ痙攣する子竜に、テイマーからのヒール支援。即座に建て直されます。
狼3匹は空を飛ぶ手段はさすがにないのか、相手の援護の火球が良いタイミングで放たれてくる中、高速飛行する私と、緩やかに空を舞うルナリス、2匹の子竜が、ドッグファイトを繰り広げます。
一進一退の攻防が繰り返されることすでに5分。
華やかな空中戦に観客の興奮も絶好調。
そんななか、冷静にカウントしていた私は……
5秒前……
転身 顕現体/裏 堕天使モード
3秒…… 速度を失った身を自由落下に任せ、ブレスを回避。
「もってけ、“魔に捧ぐ命の輝き – 生命転換”」
生命力の8割を捧げ、あふれ出る魔力を即座に叩き込む!
「氷炎よ! 封ぜよ!」
魔力の枯渇と引き換えに、凍れる灰白色の炎が空を走る。
飛行状態に復帰。
迫る脅威に、光のブレスを当てるも無意味と悟り、反転、離脱を試みる子竜。
その速度がしかし、ガクンと一瞬、だが確かに落ちる。
ほんの1秒に満たない間隙。すでに相手プレイヤーの支援も上書き詠唱は終わっていた。ミスでは断じてない。完璧なタイミングだが、仕様上どうしても存在する隙。上書きがおそらくできない、そのスキル。
生まれる一瞬の隙に差し込んだ氷炎が子竜2匹を捉え、氷の棺に閉じ込めた。
上空の脅威が消えるのを待つまでもなく。すでに私の1手が刺さることを信用し、先に動き始めていたルナリスが、相手プレイヤーの背後に舞い降りていた。
緩やかな弧を描き迫った刀が、プレイヤーの首に添えられ。
踊る2振りの剣が囲むように切っ先を、同じく触れないギリギリに添え。
「降参……していただけますか?」
ドゴン、と、大きな音とともに落下するも、氷炎の強烈な封印効果ゆえむしろ無傷の子竜2匹を、封じた氷の棺。
3頭の狼も、主の命を握られ、いつでも飛び出せる体制は維持しつつ、静止。
「いやぁ……ウチの負けです。降参します!」
“WINNER: Party - ナオ&ルナリス”
「次回までにはこの子たちをさらに進化させてあげるのです! 今日はありがとうございました♪」
「こちらこそ」
「もふもふ……すごく……かわいいです」
「えっへっへ~♪ルナリス姫も、モフモフっ子は良いですよ~おすすめです♪」
すっかり打ち解け、話す私達に、狼たちと、すぐに封印を解いた子竜たち、がすりすりとほおずりしてくるのでした。
ふさふさの小竜のやわらかい毛並みに夢中になってしまったルナリスが、離れるのをむずがったり。ちょっとアクシデントもありつつ……。
ちなみにこの子達姉妹は、雲竜の特別変異個体。いわゆるユニーク個体の超希少種らしいです。
【本戦 準決勝 VS PT “ミナリス守護騎士団“】
倍率:2.3倍
保有ポイント:0
賭けポイント:143億5478万+最終報酬の100%
勝利報酬ポイント累計:625万 (最終集計時、賭け累計獲得 37.1倍)
準決勝のお相手は、重装騎士6人のパーティーでした。
ミスリル性の金属鎧に、アダマンタイト製の縦長な長方盾、腰には長剣を佩き、4人がランスを、2人がメイスを構えている。
ファンタジー故の、魔術ありきの身体能力に任せた、しかしそれゆえに堅固なフルパーティー。
装備の質も相当に高いことが見て取れる。
もう使ってもいいですよね……決勝はどうも彼らなので、こちらが切り札になることはないでしょうし。
ルナリスとうなずき合い、ついに解禁します。温存していた、堕天使モードの新装備。
ええ、試練の間では見事に、念願のハルバードをゲットしたのですよ♪
漆黒の優美な姿に、精緻な銀の彫金が施された、一振りのハルバード。
以前のもの同様、先端の槍部は長く、堅固。斧部は大きく張り出し重厚感たっぷり。さらに反対の鎌部は非常識なほどに、まさに鎌。鋭利で肉厚、禍々しさを感じるほどに鋭利。
まさに、非現実的なまでに、純ファンタジー、超重量武器としてのハルバード。
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☆7 銀嶺斧槍
形状:漆黒の優美な姿に、精緻な銀の彫金と漆黒の魔核で彩られた、ファンタジーなハルバード
主材質:アダマンタイトを主とした超重合金、重力属性を帯びた魔核
基本性能:STR+☆7, MND+☆7, END+☆5, MND+☆5
強化値:0
特性:不壊、魔術発動体、加重撃、力場纏
※加重撃:この武器に対し、任意の方向/大きさの重力加速作用を発生させることができる。効果の上限は振るものの膂力に依存する。
※力場纏:加重撃に付随し、武器周辺に、重力属性に由来する力場が纏われる。霊体等非物質存在への影響力を行使可能。
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重く、壊れず、加速による威力増強が可能。私の成長や背水等のバフ効果でその威力もさらに増幅される。
さらには難点であった、物理無効や、非実体の相手にもある程度の効果を、端的に物理で殴れるように、なる。
シンプルですが、理想的な武器です。
脳筋武器? はっは。
元々、デバフで弱体化させて、物理で殴るが堕天使モードのコンセプトです。問題なし!
カウント10
重量差に、堅固な防御力、ルナリスにはかなり相性が悪い相手です。
雷も、あのミスリルの鎧がかなり軽減してしまうのでしょう。
カウント5
一方あれだけの重装、いくらファンタジーとはいえ、瞬間的にどうかはともかく、そこまで敏捷振りではないはず
だから
カウント0
「うふふ、さあ、力比べですわよ!」
ちょっとテンション上がってしまいましたね? 口調が乱れてしまいました。
おぉぉぉ
相手も気合十分ですね。4人が密集し、盾を前に、騎馬もないのに自力でランスチャージとか、とんでもないことしてきます。
「暗黒よ、威を削げ」
ぶわりと足元から扇形に広がった暗黒が、迫る相手の足や武器に絡みつき、急激な減速をかけます。
相手後方、少し遅れて両側面から追随するメイス持ちの2人から、光の波動が放射され、暗黒の束縛に対抗しようとする。
ですが、出力も属性の位階も違うのです。
わずかに拘束が緩むかどうか、それだけの効果しか発揮しません。
思い切り踏み込み、ドレスを翻し、ランスの間に身を通す。
遠心力と射程を活かし、盾の上からハルバードの斧部を叩き込む
最上級の堅牢性を誇るアダマンタイト性の盾が、慮外の加速を加えられた超重量兵装の一撃にまさかの……
真っ二つに引き裂かれた……。
折れたとか、へこんだとか、吹き飛ばされたではなく。
金属が引きちぎられる、聞いたことがないような音と共に。
……。
思わず静止する戦場。
舞歌い始めていたルナリスすら、思わず目を点にしてみている。
「う……そぅ……ドラゴンが衝突しても傷一つつかない、上級装備なのに……」
相手から漏れるかすかな声が聞こえる。
「う、うふふ? ほ、惚けている場合ではありませんよ! い、いきますわぁー」
キャラ崩壊しかけながらも気を取り直します。好機には違いありませんからね。
そして、つい新しい武器のようやくのお披露目に嬉しくてはしゃいでしまいましたが、せっかくのハルバードなのですから、それらしい使い方をしなければ。
一歩間合いを外し、慌てて構えなおされる盾に、上から、鎌を下に向け。
えいっと、盾の裏に差し入れ引ききって差し上げれば
「ぐぁぁ」
ガランと落ちる盾1枚。
盾の上から裏に回った長大な鎌部に、腕を引き斬られ、腕ごと落ちた盾1枚。
さすがの準決勝、慌てて反応した残り2人が盾を斜め上に掲げ、4人の隊形が組み替えられます。
2本のランスが下から突き出され、盾を構える二人はもう片手を剣に構えなおす。
両側面から迫っていたメイス持ちが、光をまとわせたメイスで挟撃を仕掛けてくる。
「では……ほいっと」
無常に上空へ飛びあがり、包囲を脱する私。
空中で展伸し、くるりと盾持ち達4人の陣形の後ろに回り込めば、がら空きの後ろ姿。
「障壁!」
敵もさるもの、バリア系の技能が放たれ、魔力の壁が4枚重なり出現しますが……
どっせーい。
飛行と空中回転の勢いも、全て載せた全力スイングに、
「もっていきなさい」
魔に捧ぐ命の輝きの腕輪に生命力の7割を捧げ、背水のブースト威力を無理やり跳ね上げます。
障壁4枚を真正面からぶち破り、盾持ち2人の胴体をミスリルの鎧ごと、真っ二つ。
さらに捧げた生命力が転換され、あふれ出した魔力を糧に
「冷炎よ!」
光属性らしき魔術の使い手樽メイス持ち二人を襲う灰白色の冷たい炎。
浄化系魔術で抵抗しようとしたようですが、神威を秘めた炎を前には儚く消えるばかり。
あっという間に生まれる2体の氷の彫像。
こちらに全意識を集中した、盾を破壊された一人と、片腕ごと盾を落とされた一人。
その首が片や刀に、片や2振りの空舞う剣に、鎧兜の隙間から刎ね飛ばされ
“WINNER: Party - ナオ&ルナリス”
終幕。
無事決勝へと駒を進めることができたのでした。
……このハルバードの威力、癖になりそう。ちょっと怪しい快感を背筋に感じる私でした。
そんな私を、ちょっとジト目で見つめるルナリスに、さらにお腹の奥底に怪しい疼きが……。




