44.2章-第18話 ” 第1回大規模イベント その1 - PVP大会予選 #2/2”
ジャイアントキリング、という扱いのあの試合の影響もあって、その後の試合は私たちの倍率も大分落ち着いてしまい。
第7試合以降 1.9倍, 1.5倍, 2.0倍と進み。
いよいよ予選も最終版。勝てば本戦進出。
負けても、一応、残り数枠をかけた試合はありますが、より一層狭き門。
【予選第10試合 VS PT ”名称未設定“】
倍率:2.4倍
保有ポイント:0
賭けポイント:8億2,158.8万+最終報酬の100%
勝利報酬ポイント累計:110万 (最終集計時、賭け累計獲得 29.3倍)
ええ、8億ポイント行きました。
さすがに負けるわけにはいきません……。
取り置き? ええ、考えましたが、ルナリスに理想のお城(お庭付き……お庭って湖があるんだ、わー)を贈りたい。絶対に。
大分脳がやられてる? ええ、そうですよ、そうですとも。
とはいえちょっと今回の相手は厄介かもしれません。
黒覆面黒ローブの6人組。
さすがに私も試合が進み、間の時間はほとんどルナリスとデートしていたとはいえ、目立つ相手の動画はチェックしています。
そんな中に彼らの姿もありました。
いわゆる暗殺者タイプ、というか暗殺ギルド所属とかそういう感じでしょうね。速く正確、かつ麻痺毒等各種状態異常使い。
スキルスロットの限られるこのゲーム、異常抵抗/耐性が微妙に積みづらいというか、汎用である程度効果を抑えつつ広くカバー、にどうしてもなるのですよね。
あとは使っている装備が、運に恵まれではあるものの、レアリティーが高すぎて、強化素材が手に入らない……。
オリハルコンやミスリル、高位モンスターの素材をドバドバ要求されるのです。試練の間でも多少は手に入りましたが、あそこはランダム性が強すぎるため、種類もまちまち、1種類ごとにみると数が足りず。さらに、強化にも必要な、肝心の各装備の素材アイテムがどこで手に入るのか皆目見当もつかない物ばかり。
イベントが終わったら、そういうダンジョンに行きたいとは思っていますが……この大会に間に合わせるのは不可能でした。
カウント10
個別認識させないためでしょう、そっくりな姿の6人が、位置を入れ替え、さらに惑わせに来ます。
カウント5
ルナリスも、さすがに緊張の色が見えます。
“大丈夫だよ”
あえて気楽な気持ちを意思伝達越しに送り
カウント0
気配が消える。見えているはずなのに見えない。
隠密系の技能でしょう。それに装備品の隠匿効果などもありそうです。
とにかくルナリスとともに上空へ。飛べるアドバンテージを最大限に。
チクリ
双短剣を握る手に、小さな痛み。とたん、痺れだす体。
光輝魔術 - 治療
上位の光属性の前では十分に消せるランクの模様。
ルナリスの歌も響きはじめ、数多の幻影が、舞い踊り始めます。
しばしば飛んでくる、小さな毒針と、治療との、かなり地味なせめぎ合い。珍しくヒーラームーブでひたすら耐久。
かすかに揺れる影は見えるのですが、どうにも捉えどころがない。
天使状態の速度でも、狙いに降りれば、彼らも速度に自信がある暗殺者。逆によってたかって、返り討ちにされるのが目に見えています。
ルナリスの纏う雷が徐々に輝きを増してきました。
冷炎は魔力を根こそぎ使う上、光輝魔術の使えない堕天使モードでは、状態異常で動けなくされるのが先。
異常の種類も多岐にわたるので、エンゲージメントスキル”狂愛の楔”の慈愛による状態異常防止効果でも、完全にはカバーしきれません。それでも最後の切り札はそれですが……。
相手もしびれを切らしたのか、短剣や投擲用の杭のようなもの等、直接ダメージにつながる攻撃の頻度が増してきました。
幻影に惑わされ、飛ぶ剣に撃ち落され。
視界の隅にわずかにとらえた影2つ。
狙いは……ルナリス。
毒にぬめる2人4本の短剣を、ぎりぎり、双短剣で捌きます。
高速の剣戟の応酬に、融炎を重ねる余裕がない。
空歩系統のスキルでしょう、1歩1歩は1秒程度しか持たないようですが、常に動き回り、空中に足場を確保する暗殺者2人。
舞い踊り、電の圧を高め続けるルナリスに、近づけまいと、捌き続ける。
ガクリ……高度が落ちる。慌てて痛みの源を見れば、地上から投擲された杭が2本、翼を貫き、麻痺毒が注ぎ込まれています。
落下するのを必死につなぎ止め、光輝魔術の治療を施す傍ら、追撃を仕掛ける空中の2人。
2本を食い止め、2本に肩を穿たれ痛みに歯を食いしばるその刹那。
空を舞う2本の銀剣が私に短剣を撃ち込み動きが一瞬止まった、黒づくめ2人の首を刎ね飛ばしてくれました。
とはいえ、4つの貫通傷に、毒と麻痺に侵され、天使モードの耐久ではすでに瀕死。
慌てて、転身 顕現体/裏 堕天使モード。
落下する私はあえて地上へ加速し
“やって”
ルナリスに合図一つ。
蒼白い電が空を覆う
目も明けていられないほどの稲光の連続
太い太い、竜がごとき稲妻が。
無防備に空から降りる、堕天使を起点に地へと下る。
狙いのつけられない相手の代わりに、ええ、私を起点に。解き放たれた雷の嵐が地上を席巻しました。
練りに練った魔力を籠めた雷の直撃に、背水のガッツ効果が発動、瀕死でも、死な安!(死ななければ安い)
すかさずルナリスが発動してくれた、”狂愛の楔 - 慈愛”により、麻痺が2人に軽減分割され、動きを取り戻しました。
ダメージは私とは比べるまでもなく小さくとも、膨大な稲妻に打たれた、暗殺者たちが隠蔽を解かれ、痙攣中。
わずかな痺れを私から引き受けつつも、自由落下に羽衣で加速をかけたルナリス
瀕死の背水で膂力が天井知らずに膨れ上がった私
主人を追い空を駆け下る2本の銀剣
回避しようともがくも、あえなく暗殺者残り4人ともに、致命の一撃を叩き込まれ……。
“WINNER: Party - ナオ&ルナリス”
“試練の間”の攻略動画の公開を待ってもらってよかった……のでしょうね。ルナリスの雷魔法と、飛行に関する詳細なデータはこの大会が始まってからの分しか、入手できていなかったはずです。
【パーティーアナウンス:おめでとうございます。本戦出場が決定いたしました】
保有ポイント:19億7181万
勝利報酬ポイント累計:125万 (最終集計時、賭け累計獲得 31.7倍)
===その頃、イベント公式配信===
「優勝候補の呼び声高かった、”クルセイダーズ”をなんとなんと、封殺してしまった、”ナオ&ルナリス”が今、本戦出場決定ですわ!! なんとメンバー平均保有ポイント、この時点でぶっちぎり1位の19億越え! 勝利報酬ポイントの未確定分があるので、ここからまだ跳ね上がりますわよぉ!」
「たった2人のパーティーでここまで勝ち進んだ結果、セルフベットの倍率もかなり高かったからにゃぁ。ポイント獲得ランキング2位は、一般参加のプレイヤーさんにゃ! うまく賭け進み、12億ポイントにゃ! にゃぁ、豪邸うらやましいにゃぁ。」
「え……一緒に住みたいとか。この破廉恥娘。どんびく」
「だだだ、誰がだにゃぁ! ポカポカ陽射しの豪邸がうらやましいって言っただけにゃぁ」
司会進行はリアル世界で人気の、かしましVTuber娘3人組。
悪役令嬢系金髪ツインドリル。なぜか和名の”栗栖那”
ちょっとわきが甘い、天然猫娘 “みゃぁこ”
ダウナーゴースト娘 “ゆぅりす”
種族も姿も元のアバターそのままのキャラクリし、Steps to Elysium Online最初期からの参加勢。
「ゲーム内時間で、本戦は明日開幕。明日がベスト8決定戦。明後日が、ベスト4決定戦から土曜の準決勝、決勝。からの、表彰式ですわ~! リアル時間的に、7月27日(日)の12時~18時が明日、18時~24時の間が明後日という感じですわね!」
「4倍時間加速だから、決勝の時間は……うにゃぁぁ、頭がこんがらがるにゃぁ」
「ふっ、みゃぁこ、おつむが、みゃぁこ……くす」
「ゆぅりす、おま、それはダメにゃぁぁ、せ・ん・そ・う、だにゃぁ」
「や、め。そこ、手入れる、な」
「相変わらず敏感にゃ娘にゃ、にゃふふぅ
「わたくしも混ぜるのですわ~~! あ、時間を忘れないように、リアル連動アプリで、タイマーセットをお忘れなく~で~すわぁ~!」




