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『運命の供犠姫』私のVRMMO生活は、運命値極振りから始まる百合ライフ。呪いの装備は絆の証?  作者: malka
第1部 - 第2章

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35.2章-第8話 ”ダンジョン-試練の間-後半 #3/4”

【10層:モンスターハウス型試練 ラビット系モンスターの大群 草原フィールド】


 地面すれすれを高速で飛翔する、純白の天使。

 細かな制御で、小柄な標的たちの間をすり抜けざま、双短剣で切り裂く。

 このレベル帯の相手に融炎は不要。

 的確に、かつ高速に、秒間3羽、5羽、10羽という桁で、次々切り捨てる。


 中央では一帯がもこもこの真っ白に覆われた上空を、刀と扇を両手に舞い踊る、ルナリス。

 舞い踊る柔らかな乙女の、急所めがけて飛び込んでくる兎達。

 引き連れたお供の二振りの剣が、鋭い牙を、角を、はたまた手にした短刀を、もろとも両断していく。

 舞い踊るにつれ存在感を増していた、身に纏う蒼い雷が、一際強く光を発し……

 轟音一閃、稲光とともに群がっていた兎達が種類も大小も問わず、クレーターとともに消滅した。



 ◇  ◇  ◇



 【25層:ボス討伐型試練 巨人種 ギガース 岩場フィールド】


 関節部を重点的に狙い、双短剣を突き刺す端から、融炎を撃ち込む。

 一つ一つが穿つ穴は人の身からすれば甚大。されど、ギガースにとっては小さな傷にすぎない。

 しかも、高い再生能力に、その傷さえも、つける傍から消えていく。


 堕天使状態へ移行できれば。

 鈍化でただ殴られる案山子と化し、再生力は阻害され、ハルバードによる豪断に身を次々削られる。

 そんなあっけない幕引きも容易であろう……が、SLv5に上がったといえど、転身の使用制限は日に20回。

 100層踏破を思えば、こんなところで切るわけにはいかない……。


 空を舞うルナリスが、身に纏う雷の輝きを徐々に高めながら、空を舞う剣に執拗に巨人の目を狙わせる。

 直撃を受ければひとたまりもなく吹き飛ばされる拳打、襲撃を時に幻影でやり過ごし、時に舞の動きで腕を折り砕かれながらも、辛うじてやり過ごす。

 砕けた骨は巻き戻るように、癒され、想像を絶する激痛は慣れとともに、無視する。


 足、小指の付け根を穿った双短剣の融炎でつけた傷の治りが遅い。

 ようやく時が満ちた……。


 戦闘時間、実に2時間。


 巨人の拳撃の勢いを借り、吹き飛ばされたルナリス。

 思考伝達でタイミングを共有した今、待ち受けていた私との、熱い接吻。

 名残惜しさとともに糸を引く唾液の橋を断ち切り、枯渇しかけていた魔力が精神供与で補充されたことを確認。


「ナオ様…………」


 甘く、しかし強い意志を持ったその声に、私は決意を新たにする。



 追い打ちを与えんと、飛び込んできた巨人の首元に、地から天へ、遡る昇り龍が如く、駆けあがる雷光轟閃。

 蓄積されひと時に解き放たれた、雷に、首の半ばまでを黒く炭化させた巨人。

 かすかに見える脛骨目掛け、飛び込む白髪、白翼、の天使。

 常は放出の単一行使で打ち放つ融炎をしかし、此度は詠唱を重ね、織り上げた。


 飛翔の勢いに押され、刺し貫きゆかんとする双短剣-鳳凰翔舞が、業炎を噴出する。

 骨を溶かし消し飛ばし、肉をえぐり、蒸発させ、こぼれる血潮は揺らめく焔に瞬時に気化する。

 かくて、巨人の首を貫通した、純白の天使は、ただ1点の穢れもなく、空へと翔け抜けた。


 空を舞う天使と、地に舞う銀の姫の視線が、交わる。

 2人を隔てる無粋な巨大な体躯は、無数の黒い粒子となり、溶け消えた。


 無事の撃破に、さすがに覚えた疲れを振るい落とす暇もあればこそ。わずか1分の時を経て、階は昇り、フィールドは変遷する。

 100層に至る連続戦闘。それもまた、この試練の難関の一つであるが故。



 ◇  ◇  ◇



 【69層:群体討伐型試練  空クラゲ 浮岩フィールド】


 空に浮かぶ、数多の岩。

 その一つに二人の姿はあった。


「これ、飛べなかったらアウトでは……」

「羽衣に……感謝です」


 この試練の間、しばしばこうした、環境適応ができなければ脱落。という、ふるい落としが仕掛けられる。

 まさに昨日、82層まで順調に進んだところで、深海の底に叩き込まれ、水圧、暗闇、無呼吸の三重苦に、奇跡的に辛うじて指先の触れた扉から、外へ脱出を果たしたばかりだ。

 ルナリスの不死は、不死であって、リスポーンするプレイヤーとは違う。

 1歩間違えば、無限の責め苦を味わうところであったと、1日踏破挑戦を休もうか真剣に悩んだほどだった。


 しかし、空であればこちらの物。

 無数のクラゲの相手は面倒ではあったが、天使たるこの身の独壇場。

 ルナリスと、空舞う剣も、快調に屠っていくのであった。


「あ、そこのクラゲ逃げるな、隠れるな!」


 岩の陰に隠れるクラゲを1匹たりとも残さず殲滅しなければならない……その、面倒に気が付いたのは、階層攻略開始3時間後の事であった……。


 逆に討滅が進んだところで、それに気が付き、十分な休憩も取れたので、良かったやら悪かったやら。



 ◇  ◇  ◇



 【78階層:異常環境型試練 適応種討伐 毒霧フィールド】


 一面の赤紫の大地はごぽごぽと、不気味に泡立つ。

 薄紫に煙る視界。一呼吸ごとに鼻の奥がひりつく感覚。

 ルナリスは超速再生の恩恵で毒に侵される片端からその影響そのものを快復していっている。

 問題は私。常時回復のために光輝魔術を使うわけにはいけないので、症状が重くなるごとに回復を繰り返すことになります。


 毒の進行による戦力低下を計算に入れなければ。

 ほら、今も繊細な翼の制御に乱れが生じ、高速飛行状態から錐揉み、暴走、ぬめる大地に真っ逆さま。

 痛い……気色悪い……。


 “見つけました”

 意思伝達で伝わるルナリスの感覚。ことまでは直接伝達できずとも、変化があったと伝われば十分。


 光輝魔術で一度状態をリセット。バリバリと放電する音と、光を目印に、あっという間の空の旅。

 彼女が相対していたのは、でろでろに溶けた体の、亜竜。


「アンデッド系でしたかー」


 簡易鑑定に示された名は”☆5 ポイズンドラゴンゾンビ”


「雷を……打ち込んでも……再生します」

「了解です。ここは私の出番ですねっと」


 ヘイローの輝きが強く、強く増して行く。

 炎に頼ることが多い私ですが、その本質は天使。

 いまだ神聖属性には至らずとも、光輝属性が象徴するものの一つは浄化。

 清浄な光が、双短剣を照らす。 詠唱、魔力充溢。


 光の上位属性たる、“属性:光輝”。


 さらに、重ねに重ねた、増幅効果

  “魔術:特化-接触”, “魔術:消費増幅”, “特化効果強化”, ”反属性強化”, ”ヘイロー:光/闇属性強化”

 軒並みSLv5に達した今。

 その倍率すでに、5.6倍を超え。


 加えて、” 8 旧支配者たる蜘蛛神の恩寵のドレスセット”がもたらす”魔力特性最適化”

 推定倍率11倍越え。


「祓え、清冽なる光よ!」


 むしろ穏やかに、すっと、毒をまき散らす、躯の竜の額に差し入れた翼をかたどった、双短剣。

 死してなお、毒の大地に蠢く竜は、

 すっ、っと

 光に溶けるように消えていった。



 ◇  ◇  ◇



 【90階層:対軍型試練 魔眼兵 攻城城塞フィールド】


 川を挟んだ平原の先に聳える、高さ10mはあろうかという非現実的な城壁。

 空に昇り遠景に偵察すると、内部に街はなく、ただ、大規模な砦がそびえるばかり。

 城壁は六芒星型に組まれ、頂点を結ぶすべての線分が兵の経路として、接続されている。


 見えた情景を伝えようと、地上で待つルナリスの下へ、降り立とうと緩やかに下降へ転じる私。

 不意にその全身が痺れ、指先も翼も痙攣する。


 慌てて開いたステータス画面に見える状態は、麻痺……?

 墜落。


 試練の名目から察するに……魔眼兵つまり……。


「城壁上にいくつも影があるのは見えましたが、まさかこの距離で、魔眼で麻痺をかけたとかそういう感じですか……? あの砦にどれだけの兵士が詰まっているのかわかりませんが、かなり無理ゲーでは……?」


 もはや今回の踏破チャレンジ開始から、体感3日。72時間をすでに超えているわけですが、以前も語った通り、内部時間経過と外は連動しておらず、この攻略中、回数制限スキルは回復しません。外に出ればいつも通りちょうど6時間が経過しているのでしょう。

 視界を奪うようなデバフで魔眼が止まるのかわかりませんが、そろそろ堕天使モードの解禁どころか……。


「月魔術でもしかすると……視界を乱し、回避できる可能性が……あります」

「なるほど。月魔術の幻覚は魔術的な視界もだましていましたね」


 あれは今回ですと45階層でしたか。ボス型試練で登場した目を布で覆い隠し、おそらく魔力視覚とかそういうたぐいで、現実を認識しているリッチ型のボスモンスターでした。

 月魔術の幻覚が見事にはまり、天変地異と呼ぶにふさわしい大魔術の連発を、明後日の方向に気持ちよさそうに連打している背後から、余波すらボスが自分を守るため張っている障壁の後ろ、穏やかに晴れ渡った野を歩み、2人で刈り取ったのです。


「とはいえ数も多いですね……ちょっと精神的にも疲れました。このまま踏破まで駆け抜けるかの最終確認の相談も含めて、一度ミニチュアコテージで休みましょう」


 こくり


 幸い川のこちらは、林になっていましたので、少し奥へ行った陰に設置し、2人で休憩としゃれこむのでした。


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