30.2章 - 第3話 ”帝都オークション-リモート参加 #1/2”
アンブロシウス辺境伯領 領都商業ギルド併設オークションハウス。扇状の小規模な劇場の形で、ステージを階段状の座席が囲む構造。壁沿いには小さなボックス席が用意されています。違法物品の取り扱いというわけでも当然なく、仮面をしたりといったプライバシー保護は特に必要とされていないようですね。
正面にはまるで巨大な映画のスクリーンのような白い垂れ幕が下がっており、そこに遠距離通信の魔道具で、帝都本会場の様子を映し出すそう。こちらからの入札は、”アンブロシウス辺境伯領 領都商業ギルド”の入札として、帝都で読み上げられ。各会場名で落札手続きがなされた後、各個別会場内で、実際の落札者を把握しておく形式というわけですね。
物品は帝都から会場へは転送魔術で送られてくるので、即日受け取り可能。
転送魔術は安全上の理由からも一般の普段使いはできず。また、特定の拠点間しか整備されていない、転送網となります。
プレイヤーのオークションやマーケットは個人単位で転送システムがゲーム的に用意されているので、それは特別というか、別物という事なのでしょう。
上流階級や、力ある商人が多く参加するだけあり、会場はなかなかに華やいだ雰囲気。
まだプレイヤーの流入が少ない事もあってか、中世ヨーロッパ風の格調高いフォーマルな物が多く見られます。
もちろん中には、冒険者や力ある者達と思しき姿もちらほら。
プレイヤーの活動領域が広がっていくと、こうした服装や文化様式も、良くも悪くも変わっていくのかもしれませんね。サーバーによっても特色が出そうです。現代リアルや、ファンタジー世界のデザインがどうやっても持ち込まれますからね。
外見上は女性同士のペアですが、一応気持ち的に私がエスコートする側を演じさせていただいております。
「では姫、こちらへ」
慇懃に割り当てられた2階の個別ブースに、麗しのルナリス姫を誘います。
雰囲気に合わせ、そっと、純白の長手袋に包まれた手を載せてくださいました。
意思伝達を通した温かな好意と重なって、柔らかくも小さな感触が、私に伝わってくる。
よく見ると、彼女も楽しそうに、口の端が緩んでいますね。喜んでいただけて何より。
エントランスを通るときは、大変にまたも注目を浴びたものでしたが、個別ブースを割り当てていただけていたのは感謝ですね。辺境伯に感謝です。
その辺境伯はといえば、事前の目録で、お互いに入札が被らない事は確認済みです。
帝都オークションの常として、サプライズ出品があることも多いそうで、そればかりは、空気を読んでうまくやる、ええ、日本人ですから、ちょっと得意です、大丈夫。
ブースの机にリアルコラボのノンアルコールカクテルと、焼き菓子を2人分用意して早速くつろぎ空間の演出を忘れませんよ。
待つことしばし。いよいよ始まったオークション。
ここ”アンブロシウス辺境伯領 領都”商業ギルドのオークションハウスをはじめ、各オークションハウスは定期的なオークションを開催しているわけですが、帝都オークションは、約100品目がオークションにかけられ午後13時から開始されます。
どの日に開催となるかはその時によるそうですが、リアル時間各月、つまり内部時間で言えば体感4巡り約120日に1回のオークションという事で、なかなかの活気です。
ちなみに、今回はどのみち予算的に無理と考えてはいたものの、「スキルスロットエクステンダー:小」がないかとも見ていたのですが、基本的にそちらは、他国の参加がある前提の帝都オークションに出品されることはなく、自国内のオークションに出るのが普通とのことでした。恒常的な戦力維持増進に必要だから、なのでしょうね。
今は25品目の魔剣を、辺境伯が2億2千万で落札されたところです。
連邦国側の会場との競り合いになっていましたね。
辺境伯曰く、アレイスター王国の情勢不安もあり、戦力の拡充を図りたいとのことでした。
さて、次がお目当ての
「ロットナンバー26 “☆6 飛翔の羽衣” 古代魔導文明時代の遺産ともいわれるこちらのお品。形状は、シアー感が美しく、品のある真珠のような光沢を持った、ストール。ドレスと合わせ、優雅に天空を舞う姿が目に浮かぶようです」
モニターに映る帝都会場でちょうど紹介されました。
浮遊、飛翔系のアイテムは多々あり、指輪や靴等が一般的。特に戦闘者にとってふつうはできるだけ邪魔にならないことが重要。そこに来てストールは腕の動きの阻害になる場合がある。
このアイテム、さらに1つ問題があり、それが消費魔力。
性能がいい。ある意味良すぎる。浮遊や飛翔のマジックアイテムの多くは、足場が確保できない、踏ん張りが地面と比べ効かない。という特徴がある代わりに、消費魔力が抑えめになるよう、調整されている。
ところがこのアイテム、芸術性を意識しすぎた制作者のこだわりにより、しっかりと地を踏みしめるがごとく動ける。という触れ込みの代わりに、とんでもなく魔力をバカ食いする……。
一転、ルナリスなら、フルに月魔術を使い続け、私の封印体に常時魔力を吸われ、さらに合間の顕現体のMP補充をしてもなお、回復の方が上回る状態。しかも、その源泉たる超速再生はまだ成長の余地あり。
辺境伯からも、本当に使えるのであれば狙い目。おそらく芸術的価値を上回る入札はないであろうとの、お墨付き。
「1億8千万。1億8千万以上ございませんか?」
と。つい思考に没頭していた間に進んでいますね。
「1億9千万」
合図を送れば、商業ギルドのオークショネアが、しっかりと伝えてくれます。
「アンブロシウス辺境伯領 領都商業ギルドから、1億9千万」
「1億9千万、ございませんか?」
「では、アンブロシウス辺境伯領 領都商業ギルドのご参加者様、1億9千万GOLDにて落札です」
「やりましたね♪」
「ありがとう……ございます」
ルナリスと思わず、微笑みを交わします。
いやぁ、このストールさらに素晴らしいのがですね? おっと、目録のスペックを開きましょうか。
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☆6 +15飛翔の羽衣
形状:大判のストール。空気のように軽く、透明度も極めて高い。アレンジのしやすさも抜群。
主材質:古代魔導文明時代の芸術家の作品といわれる。主材料-未特定(人造素材)
基本性能:AGI+☆7, DEX+☆7
強化値:15 (安全強化値10)
特性:飛翔、空歩、色調変化、舞踏補正:大
※飛翔(魔力を用いて空を飛ぶ)と、空歩(空中に足場を形成する)が同時に発動する
(強化値によりさらに効果が増している)
※色調変化:魔力を用い、任意の色調に変化させる事ができる
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まずは何をおいても、”色調変化”
これのおかげで、今後いろいろなドレスや服装にお着換えしても、ルナリスを美しく彩ってくれるのですよ!
わかりますよね? これまず一番大事!
そして次に、強化値がそう、OE(安全値を超えて過剰強化)済。
15段階強化にする苦労とか、MMOの一般的な感覚で言ったらもう、胃に穴が開きますよ。しかも、制作素材すら不明のアイテム……。このパーティー初の強化装備です。
おそらく、基本性能のランクが装備レアリティーよりも1段高く、☆7並みであることと、舞踏補正がその効果でしょうかね?
ただ、これが実は更なる罠で、飛翔と空歩の効果も上がって多分、さらに消費魔力効率が悪化しているらしいのですが。
舞踏補正も、ルナリスのスキル構成にマッチしていて最高すぎますね。そもそもが、舞踏とのシナジーで効果の上がる舞刀術に、プラス補正になります。
素材未特定とか、古代魔導文明というのも気になるところですが、いつかこの辺りも明かされていくのでしょうかね。
遠距離魔術のあては、今回のオークションでありませんでしたが、これで、空を足場にルナリスが舞い、戦えます。
あまりに良いお買い物にご満悦ですよ。
もう1個の狙いの品は最後の方なので、ルナリスとデート気分でオークションの進行を楽しみます。
課金ショップのコラボ店舗、増えすぎでは? しかも、調理不要、原材料不要なローコスト。データだけで出来立てがいつでもサーブできるとあって、提供価格を多少落としても利益率はこちらが上。
現実の店舗とお客を食い合うことを警戒する店はもちろん多いようではあります。
先程までは厳選イチゴの贅沢パフェを、2人で堪能していました♪
トロリと濃厚なストロベリージュレに、イチゴのジェラートの酸味も感じる味わいが、たまりません。
そういえば、口に入るものの贈り物というか差し入れ、問題ないですかね?
まだプレイヤーも少ないここでは、比較的物珍しいかもしれませんよね。例の転売対策で、消費期限の停止輸送ができませんので。ちょうどオークションも休憩時間に入り、便宜を図っていただいた辺境伯に少しお返しができないか、などとちょっと余計なことを考える余裕も出てきました。




