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29.2章 - 第2話 ” ダンジョン-試練の間-前半 #2/2”

「まず……わたくしの……問題から、挙げさせてくだ……さい」


 そうして、とつとつと、紡ぎ出される彼女の考え。私は、その言葉を一言も聞き漏らさないように、頭の中で反芻しながら、二人で見返せるように、重要そうなものに”◎”、後回しで問題ないものには”△”、確認事項は”・”を付けながら、紙に書き出していく。


 こうしていると昔、MMOで難関ダンジョン攻略を目指し、夜中遅くまでボイスチャットで音声をつなげて、ワイワイやっていたを思い出しますね。

 今はボイスチャットどころか、言葉だけではなく、意思伝達という形で、彼女の感情が直接心に流れ込んでくる。その親密さが、嬉しく、そして少しだけくすぐったい。


【ルナリスの問題点】

 ◎遠距離攻撃の手段がない

 ◎足場の制限が大きい (舞い、が動きの基本にあるため、動く範囲が大きく、またしっかりとした足場が必要)

 ・※上2つの制限で、何もできない環境や相手が意外と多い

 ⇒歌唱と舞踊がもう少しでSLv10に上がるはず。そうなれば統合スキルに発展させ、空いたスキルスロットを活用できる



「”身捧ぐ姫”を筆頭に、戦闘中のバフ効果。誘引による敵の惹きつけ。階層が変わる間の、HP/MP補充。本当に助けられている反面、確かにそこは事実ではありますね」


 そして私があげた主な問題がこれら。


【ナオの問題点】

 ・様々な重ね掛け、互いの補助効果、装備の力等で、地力の不足は感じない(自身の経験値獲得半減も含め)

 ⇒レベルや強化。つまり、圧倒的な力でねじ伏せる、の段階まで上げるのは不可能なので、考えない。

 ・100階層連続に対して、継戦能力が問題

 △ 二重性の転身の回数制限(16回)  ⇒・期間内で上がるとしてもSLv5=20回/日の限界が、どうしようもない

 ⇒切り替える原因は主に以下なので、こちらを対策して切り替え回数を抑えるのが重要

 <堕天使⇒天使>

 ◎ 物理火力無効/物理耐性の相手 ⇒2人そろって手が出せない

 △ 速度差 ⇒デバフを重ねれば基本大丈夫。それでも無理な場合、ルナリスが惹きつけたところを狙う等工夫

 △ MP切れ ⇒ルナリスの潤沢な補給で基本、問題なし。1階層内でのMP切れはPOT(ポーション)など併用


<天使⇒堕天使>

 ◎ 特定の相手に火力不足 (大型や、HPが膨大なボス。急所や部位切断等を狙えないと、総合ダメージが低い)

 ◎ 全域攻撃を持つ相手 (速度で範囲外に避けるが許されない相手。低耐久、低HPで、回復以前に即死する)

 ・メンバーを増やす、も本来手だが……信頼できるか等も含めて、ルナリスの立場も考えると、積極的に採用したくはない。また、依頼の制限で、一時的なメンバーの採用はできない(臨時雇いや傭兵)。テイムや眷属化はスキルスロットの問題も……。


「ちなみに、魔術属性の魂魄はどのような効果があるのでしょう?」


 供犠姫の内包スキルで習得となっていますが、明示的に使っているところを見たことがありませんでした。


「特殊な……属性で……霊媒、死霊、洗脳、契約……そういう色々な……魂と魄、あるいは精神や霊を介した術、です。ひいては、蘇生に通ずる……ようなことも。ただ……普段使いできるような、……魔術ではあまり、なくて。相手や状況によって……は? あと、大会ではお役に……立てる可能性が」

「なるほど、それは確かに使いどころがむつかしそうですね」

「あ……あと……わたくしをもっと……使って……使い捨ててほしい……です」

「え、いや、それはちょ……え」


 また、とんでもないことを言い出すルナリスさんですよ?


「この身は、供犠の姫の称号を受ける身……です。尽くし、果てるが、定め」

「だめ。そういうのは絶対にダメです。というかですね? ルナリスさんと一緒にいたいから頑張っているのにそれは、本末転倒です」


 “むぅぅぅ”と、かわいい思考が流れ込んできますが、ダメです。


「それ……でも……過保護すぎ……るです!」

「むぅ……」


 まあ、それはわからないではないのですが……ちょっと爪で引き裂かれたとかが視界の隅に映ると、最悪天使モードに切り替えてでも、飛び込んで優先しているのは否定できません。


「む、むむむぅ……」


 ほっぺを両手で抑えられ、交わる視線。


「過剰感覚……も、痛み……も、慣れてい、ます。覚悟も……できていま……す。ナオ様とともにある……ための、痛み……は、むしろ」


 あの、真っ赤になってもじもじするのはですね?


「き……きき……きもちぃぃ、で……でしゅ!!」


 ちょぉ!?


「きゅってして、とろんって……なって……こみあげて……きちゃって……。わたくしの、ニクが……ナオ様のものに、ためになっているって……」

「すとーーーっぷ」


 ちょーっとこの子は何を言い出しますかね!? 献身というよりもうそこまで行くと、HENTA……おっふ。


 ふしゅー、ふしゅーって、ちょっと興奮というかボルテージ上がっているルナリスさんを、なでなで、ちゅっちゅして鎮めるのに、2時間ほど


「きゅぅ……」


 恥ずかしさに未だに目を回している彼女をベッドで、お膝の上に抱っこして。

 あ、これ、すんすんって、泣いているんじゃなくて、首筋の匂いを、かいでいらっしゃいますね?

 でも駄目ですよ? まだ夕飯前ですからね、これ以上は、ね。


「わかりました。鋭意努力します。というか、確かに目標を達成できない事には、本末転倒なのは事実ですね……」


 そのせいで攻略ができていないという事は断じてない。正直その程度の差ではないのです……。

 その2回3回の転身があればクリアできているならば、とっくに覚悟を決めています。

 ただまあ、信用していない。と思われるのは、違うでしょう。


「最悪の場合の保険としての、不死もあることは認めます。私も善処しますね」

「はい……!」


 胸元をぺろぺろし始めていたのをやめ、上を見上げる彼女のなんと清楚かわいい事よ。

 このギャップというかもうなんでしょうね、魔性過ぎてもう、狂っちゃいますよ?


「問題はおおよそ洗い出せたかと思います。ではどうするかですが……」

「明後日……オークション、です」

「おや? 来訪者オークションは適宜開催ですよね?」


 ふるふる


「帝都オークション……です。ギルドで、告知が、出てまし……た。毎月の、で。遠隔地参加……が、あります。各国からも参加……するので」

「ほほう。ごめんなさい完全に失念して調べてもいませんでした」


「となると、どうやって参加するかですか。さすがに誰でもOKではないですよね?」

「指名依頼の、支援で……辺境伯に……ギルド経由でお願い……するのがいいと思いま……す」

「いいですね、さすがルナリスさん。不足を補ってくれるちょうどいいものがあるかわかりませんが、チャレンジしてみましょう! 幸い試練の間の討伐報酬も含めて資金はさらに増えましたからね」


 ちなみに今の資金はこんな感じです。

 ナオ

 MC:1.23億 、動画収益MC:1,100万

 GOLD:8.4億 (宿代、8月末まで前払い済み)


 ルナリス

 GOLD:11.2億


 アイテムドロップも、私のLUCが高いのも大きいみたいで、結構おいしいのです。

 ただ、使えるものが出やすいとは何だったのかという程、これじゃないな、という物ばかり出て困り。

 いえ、確かに使えないわけではないのでしょうが……。

 持っていないスキル結晶と、いつ強化や制作に使うか分からないので溜めている素材系以外は売ってしまったのですよね。

 まあ、そういう理由もあって、スイートルームに泊まりづめ、などというぜいたくを満喫できているわけですが。

 借家にすると、物件としての出費は下がるでしょうが、維持が面倒ですからね……。


「私がお預かり……している分も……ちゃんと使って……ください、ね」


 あ、はい。もう、本当にいじましいというか。

 とはいえ今回はさすがに、パーティー資金として、使わないといけないかもしれませんね。




 その後無事辺境伯から、参加資格を与えられ、出品予定リストの目録を受け取るとともに、この領都にある商業ギルドの中の遠隔参加用の会場から出席できることとなったのでした。

 なお、服装は普段の防具がすでに、そんじょそこらであつらえるよりもドレスとしても格が高いため、そのままで良しと言われました。


 でもせっかくなので、何か用意しようかな……と思ったら、ルナリスから、もっと強くなるまでは防具でこういう高額取引の場は赴いた方が安心と、窘められました。

 むう、もっと強くなったら、素敵なドレスいっぱいお着換えして、イチャイチャデートしますからね!?


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