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31.2章 - 第4話 ”帝都オークション-リモート参加 #2/3”

  結果的に、大変喜ばれました。さすがに、それくらいの信頼はいただいていたようです。

 奥様もお連れになっていたようで、ご挨拶も済ませ、戻るときには調理者を紹介してほしいといわれましたが、辺境伯が、帝都との連絡で、来訪者の持ちこむ美味を知っていたようで、輸送は無理であろうとなだめられていました。


 そして、お暇する間際。辺境伯から呼び止められましたよ?


「この度もシークレットオークションは開催されるようでしてな。1つは武具の一種、1つはスキル。最後に風変わりな、これは、儂などにとっては、さほど関心の及ばぬものであるようですが……。念のため。これもよい機会。是非、最後まで参加されることをお勧めします。また、その頃になりましたら、使いの者をスペースまで向かわせますので、よろしければ傍に仕えさせてやっていただきたい。落札品の受け取りのご案内も、必要でしょうからな」


 と、アドバイスというか、明らかに裏を感じさせる申し入れをくださったのです。

 いやはや、ご挨拶にはやはり行くべきものですね。まだ内容はわかりませんが……。




 後半戦も早いもので終盤に差し掛かるところ。

 ロットナンバー70以降は美術品も多くちょっとだけ、暇になって、ルナリスの手をきゅむきゅむと握ったりして遊んでいました。

 彼女も、そこまで興味はないようで、淡々と見ているという風だったので、椅子をこちらに寄せて、腕によりかかったり、なごんでいました。


 さて、そうしてお目当てのロットナンバー90.


「いよいよ佳境に入ってまいりました、今回の帝都オークション。続きましての出品は、ロットナンバー90 “☆7 炎獄のバルディッシュ” でございます。こちら大変希少な、炎煌石を贅沢に使い、アダマンタイトとともに精錬した逸品。4億GOLDが開始価格となっております!」


 そう、ハルバード、ではないのですが、類似武器という事で一応、特化スキルでも対応範囲内。

 “武術:特化-長柄武器”であれば、良かったのですが、補正をとにかく限界まで積むために、” 武術:特化-斧槍“にしている私だと、若干マイナス補正はかかります。

 とはいえ、背に腹は代えられない……と、思っていたの……ですが。


「ぅぅ……」


 ルナリスが心配そうにひじに絡みついたまま見上げています。


「んーまあ、これは無理かもと初めから思っていましたからね。最適解でもないですし。属性的にも、天使での融炎と被るのはよくありません」


 そう、両面炎になりますからね。

 でまあ、現在の入札状況ですが。


「帝都会場から、11億、11億です!! 他いらっしゃ、12、12億、始まりの街会場からです」


 あーこれ、プレイヤーですかね?いづれにせよ、資産オーバーです。

 ご縁がなかったという事で、すっぱり諦める他ないですね。


「帝都会場からご参加のお客様、95億でご落札です」


 さすがに瑕疵のない☆7、多少マイナー武器とはいえこうなりますよね。正直☆8よりも、☆7の方が市場価格は高い場合が多いそうで。

 リアルで考えれば、戦闘機1機の購入費用に近い感覚ですか?辺境伯からも予想価格100億超えときいていたので、初めから無理と思ってはいましたが、ワンチャンもありませんでしたね。


「地力ドロップを狙いましょう」

「がんばり……ましょう」


 さて、これで目的はおしまいなのですが、先ほども辺境伯からも意味深なお言葉をいただいていますからね。


「さあ、皆様。まずは多数のご参加に厚く御礼申し上げます。恒例ではございますが、ここからは、シークレットオークション! 今回も、本日の締めにふさわしい、風変わりな逸品を、ご用意いたしました。まずはこちら、ロットナンバー101 “☆7 淫魔の装いセット” 多くを語るまでもございませんね? さあ、5億GOLD開始です!」


 ざわっと、特に帝都会場側が揺れました。

 んー……? なんでしょう?

 ルナリスと目を見合わせますが、彼女も正直よくわからないといった風です。

 モニター越しなので鑑定が通らないのですよね。


 と、そこで控えめなノックが。辺境伯が手配くださった方でしょう。


「どうぞ」


 扉を開け招き入れたのは……おや? 初日に出迎えてくださり、辺境伯の応接室に同席された執事さんではありませんか。

 おそらく家令とか、執事長のお立場ですよね。なんでそんな


「失礼いたします。どうぞ、そのままおかけください。ナオ様、ルナリス様のお手伝いをするよう主より仰せつかってまいりました。」

「これは、ご丁寧に本当にありがとうございます」


 言われ、立ってお見合いしているのも……と、席に戻ります。一般日本市民の出としてはちょっと落ち着きませんが、ルナリスはしっかり落ち着いていますね。さらっと、席は素早く元に戻してあるあたりもさすがです。


「わたくしはいないものと、後程ご相談など必要な場合まで、お思いいただき結構でございます。少々、ご説明など申し上げますと、ただいま出品の品は、世継ぎに悩む貴族の救いともなる品というわけでございますな。加えて、特殊な職業を開花させる補助ともなるものでございます」

「なるほど」

「存じませんでしたわ」


 ルナリスから意思伝達で、“ソワソワ ソワソワ” と、落ち着かなげな意思が伝わってくるのですが?

 え……ルナリスさん? ですから貴女はすでに、私の想像を超えてですね?


 まあ、いづれにせよ優に60億を超えて手が出るわけもないのですが。


 続くロットナンバー111にはスキル結晶”☆7 属性:神聖”

 なるほど。今使っている、光輝の上位、ただし進化にはSLv以外に条件が必要と思われる、魔術属性ですね。

 今の、試練の間攻略のカギとはならないのと、いづれ自力で進化させるつもりなのでスルーでよいでしょう。


 こちらは、34億で落札。やはり☆7ランクとなると、スキル結晶もこういう桁になりますよね……。


「さて、本日いよいよ本当の最後でございます」


 おもむろに帝都会場に持ち込まれた大きめのカート。

 覆いの布が外された後には……なんでしょう?



「”☆7 古代魔導人形……の、骨格 と、遺物”、でございます。残念ながら、現行規格の魔導人形に組み込むことはかなわず。歴史的価値、並びに、研究分野における価値から、古美術品の分類としての出品でございます。さらに付随する遺物は……」


 魔導人形、その言葉に思わず食いついてしまいます。


「ルナリス、この”魔導人形”というのは何でしょう? 実は今度の大会の商品リストにも、似た”魔導人形の核“というものが、様々なランクで用意されているのですが」


「連邦にある、魔導都市で開発された……新しいゴーレム……のような物、です。基本的には、事前に……魔核に、処置を施し……ゴーレム化と同じように……するようですが、霊や、特別な存在……最高級の物では神の、一時的な依り代に……することも目標とされて……いるとか。あとは……錬金術の秘奥と……組み合わせて人造の生命を……生み出す技術の一端ともいわれて……います」


 ふ……む……? それってもしや。


「異世界? 神界? の。この世界の実態を持たない存在の知り合いというか、再会を約束している方がいるのですが。もしかしたらその依り代にも?」

「天使様の……眷属……でしょうか。可能性は高いと思い……ます」


 ほぅ……ほぅほぅ。次の大規模イベントの交換一覧にある部品としか思えないアイテムがある時点で、多くのプレイヤーに切望されているナビAIを呼び出す手段になるのでは? とかなり疑ってみていましたが、これは十分にありえそう?


 と、そこですっと、1通の封筒が、執事さんから差し出されます


「失礼を。主より、ご関心を持たれるようであればこちらをお渡しするようにと」


 ルナリスにも見えるように開くと、簡潔に


 “此度の指名依頼の前金の一環として、100億GOLDをお貸しする”

 “試練の間踏破の暁に、その最奥に眠る魔核の売却費用との相殺を行うものとする”

  “依頼の破棄、又は、失敗に際し、返金額に不足の発生する場合、本年12月末までの返済を行うものとする。この期間において、利子を課す事はない”


「62億、連邦の魔導都市からご参加のお客様から62億のご入札です」


 連邦の会場通しの競り合いが過熱している。


「ナオ……様……その方とはどのような?」

「そう、ですね。この世界に来る前に、いろいろと手助けをしてくれたり。あとは、ちょっと辛いことがあって、自分でも思っていた以上に精神的に参っていたところを、癒していただいたというか。そして最後に別れる時に、この世界を一緒に旅しようと。その手段はこの世界にあるからと、約束していたのです。ただ、ここまで異様な金額を出さずとも、他の手段が確実にありますね。それこそ大会の後の……」


 じーっと、私を見つめていたルナリスが、かぶせるように、私の言葉を遮り、


「邪霊の誘い……を受け入れられ、この身を……あの時……その方に捧げて……いてだいていれば。わたくしの全ては、貴方様の……モノです。きっとうまく……ちゃんとします……ですから、共にいさせていただけれ……ば、それだけで」

「え?」


 あーこれは……いけませんね、まるで浮気というか、気まずいです。

 そしてあの時の、触手部屋の主の邪霊の戯言も、しっかりと認識されていたのですね? ルナリスの身体を依り代に、ナビAIを降臨させる。供犠姫の体をナビAIに乗っ取らせることができる。そういう邪霊の誘い文句を。それを今も気にしての発言……と。


「ごめんなさい。ルナリス、私にとって貴方は本当に、心から大切な存在です。心配するようなことは何もありませんよ。どちらかというと、万が一の場合のため。大会の後、試練の間の攻略のメンバー追加に間に合うかも? などと考えていたのが半分です。いわば保険ですよ。だから気にする必要が無い事なのです」


 サユキさんとの関係は、残念ながら、そういうものではありませんからね。親友との約束というか、ね。

 おかしな感情を持ったらそれこそ、怒られてしまいますでしょう。


「……いえ。ごめんなさい、うまく言葉が……違う、のです……。きっと、後悔、なさいます。入手すべき……わたくしは大丈夫ですからと……お伝えしたかったの、です。仮に現行品……でも、連邦から外に出る事……が、あまり、無いはず……の品です。技術者も、帝国には……あまり」


 これ、イベント報酬で核をとった後、連邦へ移動して、っていうゲーム的な導線が張られているのでしょうかね?

 私の場合、そちらにすぐ移動できるかは、ルナリスの立場的にも言い切れないのは確かに……。

 でも、ゲームですから、大丈夫大丈夫。

 と、ルナリスの頭に手を伸ばし、落ち着かせようと、いらない心配だよと、慰めようとしたところで……。


「わたくしが、ナオ様を、惑わせた……。ごめんな……さい」


 すくっと立ち上がるルナリス。


「このお話、謹んでお受けいたします」


 すっと、辺境伯の簡易契約となる手紙をとり


「71億」


 ギュッと、私の手を握りしめ、澄んだ声を会場に響かせ、美しい筆跡で、署名してしまったのです。


「よろしいのですな」

「はい。指名依頼は両名へのご依頼。わたくしがお受けする事に問題はございませんわね?」


 いつもの、ゆったりと、吐息とともにこぼれ出るような細い声はどこへ消えたのか、はっきりと宣言を。


「もちろんにございます」

「ルナリス……!」


「72億、連邦の魔導都市からご参加のお客様から72億のご入札です」


「75億!」


 ルナリスの声が凛と響き渡る。


「ナオ様の……後悔の元には断じてなりたくは……ございません。どうかお許し、を。いざとなりましたならば……この身をいかなるモノにゆだねて……でも、辺境伯様へはお返し……しますので」


 あまりの展開に、頭が追い付かず、思わず呆然と彼女のまっすぐな瞳を見つめてしまいます。

 会場の薄暗さに、見落としていましたが、その目の端にはうっすらと涙が……。


 ああ、また私は……ゲームだと甘く……あの時のひと時の激情をもう忘れていたのですね。

 彼女の視点ではどうだ?

 死に物狂いで助けに来てくれた一筋の光。

 邪霊は何か取引を持ち掛けていた、自分の身体でかなえられる何か、願いがこの救い手にはあるんだ。と、知ってしまった。


 救い出してくれた。みんなを失って、でも最後に、光が訪れた。逃亡中も埒外の怪物、再びの邪霊からも、守られた。

 不安で、不安で、捨てられないように、つなぎとめる。依存する。溺れてしまう。

 帝国までたどり着いても、でも、結局は自由になれないはずの身。次はだれに使われるのか。誰の付属品になるのか。

 そう不安を抱いていたら、またもやその枷を、断ち切ると言ってくれて……。


 彼女視点では、恐ろしい空手形に、全てをかなぐり捨てて、全てを投じて、後悔をさせたくない、ただその一心で。

 あの時かなったのかもしれない夢を、目的を。自分が諦めさせたと思い込んでしまっている、それに手を伸ばせるかもしれない。


 あぁ……もう。ゲーム視点とか、メタな読みとか、次への導線がどうとか。

 現実的に考えないはやっぱり無理だと冷静な部分では、わかっているけれど。

 彼女は生きているのですよ。


 あぁ……もう……彼女はどうしようもなく、そこに実在し、私もまた、この世界の一部なのですよ。


「75億、もうございませんね? では。本日正真正銘最後のお品。ロットナンバー103 “☆7 古代魔導人形骨格と遺物” アンブロシウス辺境伯領 領都商業ギルドのご参加者様、75億GOLDにて落札です」


「ルナリス、ありがとう。そして、不安にさせて、無茶をさせて、ごめんなさい。愛しています。絶対に。何があっても、離しませんから」


 緊張に、固く震える彼女をきつくきつく、絶対に離さないと。

 抱きしめたのでした。



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