196.8章 - 第11話 ”帝都襲撃 #5/5”
「恐れていた通りか……」
伝令の衛兵隊隊員さんが見せる遠見の水晶球に映し出された光景。帝都の外、騎竜ゴーレムが引く馬車で半日もない距離。そこを大軍と呼ぶほかない大戦力が通過している。
大小無数のモンスター、奥にはまさにファンタジーのドラゴンと一目でわかる勇壮なシルエットがこれまた無数にのしり、のしりと、大地を揺るがし軍勢と歩調を合わせるようにゆっくりと歩みを進める。
そして何よりの問題は。
人、人間――であった者達。
騎士甲冑に身を包み、あるいは魔導砲を乗せた浮遊台を騎竜ゴーレムに引かせ、はたまたグリフォンの背にまたがり。
皆一様にどこか虚ろな瞳で、背中から緑の触手を生やしている、人……ミドガ帝国軍人たち。
魔除け、ミ=ゴの生み出した黒い兵士らを遠ざけると信じ込まされていたそれが発した赤紫色の魔力光で変質させられた者達だろう。細菌なのかそもそもの原因は帝都に暮らしていた頃に十分に摂取させられていたか。
「伝令、伝令!」
さらに別の衛兵隊隊員が駆け込んでくる。
「皇帝広場の癒しの動物たちが突如変質、狂暴化。周辺地域内で封じ込めには成功していますが、帝城、教会区、貴族街への通行不能。直前に同区画へと逃げ込む複数の人影の目撃情報あり。特殊地下水脈への侵入形跡あり。結界用水路2割破損。住民対応に追われており、いづれも動員可能な部隊が不足」
さらに駆け込んでくる、今度は女性の近衛兵。よく見ればその姿は私達の護衛に先日ついてくれていた中の一人。
「報告申し上げます。大交易宮のくだんの商店をはじめ相当数の店舗が引き払われており、関係者も見当たらず。残された小規模な他店舗の品は一部を接収して参りました。残された取引許可証に記された内務省・帝都物資統括官は先程の“帝都安寧を祈る儀”において、“ミ=ゴ変異体”化を確認、処断されております」
「検査、確認」
「聖女イリス様とナオ殿らにお預けせよ」
伝令にもたらされた情報から配置指示をする軍人さん達の傍ら、拡張収納カバンから取り出される大小さまざまな魔導触媒の岩塩を見ていく聖女イリスと、ルナリス。
「敵軍勢、先鋒は約4時間後に到来、本体襲来は約8時間後と予測されます」
「帝都内の鎮圧が間に合わん」
「逃げ込んだという人影への対処もなすべきでしょう、さらなる破壊工作、あるいは次なる作戦行動など採られようものなら」
あのワイバーンに対処できていなければ大混乱に陥る帝都に先鋒が殴り掛かり。ほぼ壊滅したところに本体がとどめを刺す。そんな計画だったのでしょうね。
「待て、軍備に用いる触媒は全て汚染されていると考えるべきであろう、防衛兵器も稼働できずに守り切れるのか」
「大交易宮にすでになかったとなれば、どこへ持ち去られた」
「触媒のみではない、他の物資は問題ないのか。調査せねば。携行武装の身で対処するには人員が全く足りぬ」
「そもそも指揮系統からして、大規模戦闘をこなすには、虫食いが過ぎる。どれだけの軍高官が消えたと思っておるか」
内務省・帝都物資統括官、相当に爵位の高い貴族家でしょうし、戦略物資の流通、その根っこそのものを抑えられていたというわけですね……。
「いづれも……汚染されては、おりません」
ルナリスの”統合スキル-虹纏う銀の姫”と”魔眼-月姫の時空眼”に反応なし。
「無反応」
聖女イリスの魔力確認にも赤紫の光は発せられず。
そうした全てをじっと見つめていた全身甲冑姿の皇帝陛下が一言。
「帝都内部の鎮圧と調査を優先せよ。その間、帝都外からの侵略者の先鋒は余が対処する」
そこで、今まで状況を静観していた皇帝陛下が言葉を発します。一瞬驚いたような反応を示す各員ですが、異論を一切さしはさむ事無く、すぐに。
「「「御意」」」
意向を踏まえあっという間に部隊配置の再検討が進みます。驚くべきことに西、竜の背骨山脈への対処にまわす人員を大幅に削減。それこそ城壁上からの援護射撃を担当する魔導兵団すらも帝都内部へと回し、残されたのはわずかな伝令のみ。
「ナオ殿、2つ頼みがある」
「なんでしょう?」
一通りの指示を終えたシャーリィさんから私へのお願い。それは、防衛と調査の要にかかわる事柄でした。
「1つは麾下の魔導人形部隊にも引き続き帝都内の鎮圧に助力願いたい」
「はい、それはもちろん。私達もそちらに回りますね?」
「それも願いたいが、まだ敵部隊本体到着まで8時間程度はあるのだ。それまでの間、ナオ殿達3人にはもう一つ。特殊地下水脈への侵入者を追っていただきたい。案内は近衛がする。あそこは大部隊での活動は困難ゆえ、少数精鋭で確認と、もしよからぬことを企んでいるのであれば阻止して欲しい。特殊地下水脈に異常が発生すれば、現状の防衛の要である結界の喪失はもちろん。主要施設、生産拠点、あらゆる帝都機能に長期的な影響を残しかねない。私と綾は主要拠点間の交通の要衝となっている帝都広場周辺区域の開放に向かう必要がある。陛下が敵群先鋒を抑えてくださる間に、本体の襲来までの間に帝都内の鎮圧を何としても完遂したい」
たしかに、ただでさえ戦力が足りず。横目で聞いていた軍議によれば、魔導砲等の兵器類も、軒並みあの魔導触媒の岩塩を使用しており、現状使用不能に陥っているとか。予想通りというべきか、赤紫の光を発するばかりで、本来の用途を成していないらしく。触媒の交換をして再稼働させようにも、魔導技師もかなりの割合が“ミ=ゴ変異体”に変異しており、手が回らないと。
「案内、無問題」
そんな話し合いをする私達の横から聖女イリスが。
「聖女イリス様はミドガ帝国地下の地図も完璧に暗記していらっしゃいます、はい。実際に行き慣れている者以外であれば、お任せいただいた方が良いかと、はい」
「……普段であれば、許可できないところだが、今は戦力が全く足りない。許可しよう。ナオ殿、例の配信というものだけ頼む。綾と彼女の補佐役に確認してもらう故」
補佐役、ナビAIの事ですね、そういえば彼女のナビAIはどんな子なんでしょう?
「承知しました」
そうしてゴスロリ聖女イリスちゃんと、司祭さんこと研究員さんを伴い帝都地下、特殊水源へと怪しい人影らしきものを追跡する臨時クエストが発生するのでした。
ちらっと視界の隅で光るアイコンを意識すれば、遂行中の2つのクエストにもしっかりと記録が。
マナ簒奪の阻止の関連クエストになっているのですね?
※更新を”!!”で表記
---☆8 禁忌級クエスト 「ユゴス コンコード(ユゴス協定)」 ※公開名称「アーカリア大陸の深淵」---
☆8 禁忌級クエスト #1 彷徨いの樹海 ミ=ゴの研究施設調査 : 済
!! ☆8 禁忌級クエスト #2 進行中―帝都蠢動
追加条件達成済 (星の煌めきのティアラを復元)
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---プレイヤー共通:長期連続クエスト :☆10 - 「マナ簒奪の阻止」 ---
☆6 帝都蠢動 #1 ミ=ゴの影―侵蝕 :!! 済
!! ☆6 帝都蠢動 #2 地下水脈:進行中
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一部クエストの完了で経験値とMCも入っています。レベルが1上がって135。
私たちは、保留になっていた経験値を特殊進化で全放出したので、掲示板や配信で紗雪が調べてくれた範囲でのプレイヤートップ層のレベル170台からはだいぶ離されていましたが、少しづつ追い上げていますね。
次の進化ラインはレベル200でランク4では? 年内は最上位層でも達成は厳しいだろうという予想がプレイヤーの間で濃厚な中。しっかりクリアして、少しでも追いつきたいところです。




