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『運命の供犠姫』私のVRMMO生活は、運命値極振りから始まる百合ライフ。呪いの装備は絆の証?  作者: malka
第2部 - 第8章

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183.8章 - 第3話 ”皇帝陛下のお願い”

「申し訳ありませんでした。再開させていただきますわね」


 30分ほどでしょうか。戻ってきたリリエラさんは私達に気遣ってのことでしょう、自身の用事で中座したというスタンスを貫いてくださいます。


「ありがとうございます」


 2人も落ち着き、私もとにかくクエストは進めるという方針に納得し。ダイニングテーブルのそれぞれの席に戻っています。

 シナモンアップルティーのような物でしょうか。芳醇で刺激的な香りの紅茶をソブレロさんが注いでくださいます。


「私の大好きな、ミドガ帝国特産のフレーバーティーですの。是非召し上がりながらお話しさせてくださいまし」

「おいしい……です!」

「ナオさん。これは、是非お土産に買って帰りましょう♪」

 甘酸っぱい味に、スパイスの複雑で芳醇な香りが内包され、確かにこれは美味しい!


「うふふ、お気に召してよかったですわ。スパイスのブレンドでその”家の味”ができますの……。さて、依頼したい事なのですが、いくつかの段階に分かれます。まず1段階目。それは、中枢にもぐりこんでいる敵……乗っ取られた要人の排除支援です。ルナリスさんの知覚能力、おそらく魂魄属性に加え、魔眼あるいは特別な知覚能力をお持ちですわよね。さらに加えての“☆9 星の煌めきのティアラ”による、敵意や邪念の感知で、対象者を選別いただきます」


 “統合スキル-虹纏う銀の姫”に内包された”☆6 神霊感応”。それに、”☆9 魔眼-月姫の時空眼”ですね。

 確かに、ルナリスの感知、識別能力は私達どころかプレイヤー全体を含めても相当上位でしょう。


「その上で、対象を確実に選別し、かつ隔離するため、ナオさんに”☆7 深淵の封輪”の”孤絶封界”を用いていただきます」

「なるほど? しかし、”孤絶封界”ではあくまで相手を閉じ込める領域を形成するだけ。うまく対象だけを隔離することは難しいかと思われますが」


 我が意を得たりと、うなずくリリエラさん。


「ええ、そのために皇帝の名の下、『帝都安寧を祈る儀』を執り行います。この儀式に、潜在的な対象者を含む主要な人員を集めます。ルナリスさんに一次選定をしていただく事で、変質あるいは乗っ取りの直接的な要因が不明であっても、貴女と深い関係にある彼女が選定した対象を個別に指定し、隔離する。という”孤絶封界”を会場に展開する事が可能となるはずです。退場の過程ですぐに異常には気が付かれるでしょう。可能な限り、無関係な者を避難、誘導する事は騎士団長シャーリィ達に任せる事になります」


「相手も警戒するのでは?」


「そのための、『黄金の間』での茶番ですわ。あの時私達は第2の要因である”ミ=ゴの使役体”までしか、隔離する事ができていません……していません。確実とはもちろん言えませんが、第3の要因、未だ詳細不明の”ミ=ゴ変異体“には無力と、油断を誘えているものと期待するほかありませんの。本来であれば、選定された者と類似した特性のものすべて……と、領域を規定いただければよいのですが……。おそらく無実の者がそれでは対象に含まれてしまいます」


 確かに、”類似した特性”でよくわからない原因に侵された人々を隔離したら、無関係な共通する特性。例えば、癌に侵されているとか、そういう何かも隔離対象に含んでしまいそうで恐ろしすぎますね。


「ですので、ある程度の撃ち漏らしが出る事は覚悟の上です。とにかく帝国中枢を、有事に際し混乱させられる危険性を少しでも、”軽減”するのがこの第1段階目ですわ。もちろんルナリスさんが全て選定可能であれば、それに越したことはありません。ただ、気負いすぎないでください、という意味ですわ」


 人数が多いと、ルナリスの負担も心配ですが……。


「その『帝都安寧を祈る儀』は、どのような儀式にされるのですか?」

「初めは、創世聖教の聖別を受ける。という建前にしようかと思ったのですが……。皆様大変見目麗しく、さらに、ルナリス姫……さん、は、舞踊の心得もおありでしょう? 帝都歌劇場でお聞きいただいた、帝国有数の楽団もせっかく帝都におります。そこで! 堅苦しい儀式ではなく、楽しい祭典にしてしまおうかと思いますの」


 うん?

 リリエラさん? いえ、皇帝陛下は何を仰せなのかな?

 ちょっと私、頭がおかしくなったのかも。


 『ナオさん、大丈夫ですよ、正しく聞き取れてます。私も意味が分からないですが』

 『そかぁ……』

 紗雪からの念話に、思わず気の抜けた返ししかできない私。


 思わず無言になった私達を前に。


「驚いていますわね! うふふ、でもこれにはきちんと考えがあるのです。堅苦しい、正式な創世聖教の儀式に則ってしまいますと、一度に対応できる人数が限られます。せいぜい貴族家当主と、帝城で働く役職者本人まででしょう。ですが。慰問を兼ねた特別な催し物とすれば、帝城で働く者の多く、貴族家の親族、そして近衛騎士団と帝国騎士団第1大隊……シャーリィの部隊ですわね、それくらいまでであれば一度に招く事が出来ますわ。複数回に分けてしまえば、異常が相手に露見します。できるだけ多数を相手に、1度で仕掛ける。それにはこの方法が最善なのですわ」

「なるほど……」 「やむを得ない……のでしょうか」

「一網打尽にというのはわかりますが、識別はルナリスちゃんに任せる事になるのであれば、それこそ式典より前に様々な場所で目星をつけていく。というのはダメなのでしょうか? 捕らえるのは後にして」


 うん、確かに紗雪の言う通りですね。識別さえしてしまえば、捕らえるのには極論、私たちは必要ない気すらします。


 その指摘に、わずかに言い澱み、ルナリスにちらりと視線を送るリリエラさん。


「実は……帝都歌劇場で識別くださった者達。貴族の子息、豪商の家族……いただいた情報で特定はできました。しかし、その全てが……あの夜を境に行方不明となっているのです」

「それはつまり」 「観測した事を、感知された?」


 沈痛な面持ちでうなずくリリエラさん。ルナリスの眉根に僅かに、力がこもり。


「ルナリスさんの責任は一切ございませんわ。観測していただいた事が、ただただ、有り難いばかり。その情報のお陰で、貴女であれば、識別可能と判断できたのですから。しかし、お分かりいただけましたでしょう?」


 念話を通じルナリスをなだめながら、私と紗雪も頷きを返します。


「黄金の間ではあえて、2つ目の既知の懸念”ミ=ゴの使役体”のみを対処するという茶番を演じたのはそうした背景もありましたの。ですので。1段階目で、可能な限りの最大限の効果を得るのがこの作戦です。その上で、第2段階目としては、紗雪さん。貴女のご指摘通り、個別に識別を依頼したいのです。その時の対処はナオさんに頼らず、1段階目で潔白が証明された帝国騎士団第1大隊に任せるつもりです。もちろんルナリスさんの護衛……そもそも貴女方は互いに離れたくない、いえ、離れられませんのでしょう? をしていただきます」


「1段階目、2段階目共に、もちろんお引き受けいたします」

 念話で確認の上で即座に応じます。


「あらあら……報酬のお話しもまだですのに。ダメですわよ? 貴女方は冒険者でしょう?」

「あ……あはは」 「ですが、事は帝国の一大事ですし。いつ私達にも影響があるかわかりませんから」


「うふふ。まあ、良いですわ、報酬はまた改めてきちんと提示します。そして3段階目以降ですが、これは2段階目までがどのように進展するかで、流動的にはなります。が、おそらく相手も黙って手をこまねいてはいないでしょう。特級の戦力として、協力を依頼したい次第ですわ」


「それも含め承知しました。もちろん状況によってご相談……ではありますが」

「結構ですわ。敵に違和感、確証を与えるわけには参りません。急ぎたいのはやまやまですが、『帝都安寧を祈る儀』の決行は14日後。楽団の最終公演の翌日です。練習の手配はソブレロが行います。よろしくて?」


 今がSEOサービス開始から344日目。現実世界では9月24日(水)の18時~24時。

 ですので、決行の358日目は、現実時間9月28日(日)の午前6時~12時の間ですか。

 思えばもうすぐ内部時間で1年がたつのですね。現実で言えばまだ3ヶ月ですが。

 普通のMMOであれば、1周年に該当する期間。それでプレイヤー全体が第2大陸というのは遅いのか速いのか。いえ、体感では十分もりだくさん過ぎて速いのですが、VRMMOの性質上ただ画面の前で操作をしている。というのとはわけが違うので感じ方も、全く異なりますね。


 現実でちょっと息抜きをとも考えていましたが、舞台で舞い踊る練習という事であれば、それはそれでよい息抜きになるかもしれませんね。


 デウスが用意してくれた特別な機材と身体のお陰で、24時間ログインしっぱなしでいくら大丈夫とは言っても、多少のログアウトはしますが。


 そうして私達はダンスレッスン……と、いつの間にか歌唱のレッスンにまで取り組むことになるのでした。


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