184.7章 - 第25話 ”帝冠勲功授与式 #2/2”
勲章の授与が完了し、私たちは玉座の前で深く頭を垂れた。肩にかけられた『創世の聖十字大綬章』の重みが、アレイスター王国での辛く厳しかった記憶を呼び起こし、改めてすぐ後ろに控えてくれている2人との”今”がある事の歓びを。このSEOの中でも強く実感する。
「――此にて、論功行賞の儀は滞りなく成就せり!」
トレド宰相閣下が高らかに宣言する。その直後、皇帝陛下が甲冑越しに、玉座の脇に控える宰相へと静かに顎を引きました。
「褒章は、未だ尽くされておらぬ」
ホール全体に響く皇帝の言葉に、参列していた貴族たちの間に微かなざわめきが走った。
勲章を除く褒章、金銭やアイテムは迎賓館『星の家』で受理すると事前に聞かされていました。この場は爵位に関わる事項が無ければ、勲章の授与のみであると。爵位を望まない事も辺境伯を通じて既に連絡してあり、その旨も了承されています。
つまり、何か不意打ちのしがらみで縛り付けるような事でもなければ。勲章授与の他に、公的な褒美が壇上で与えられるのは、事前の通達に無い破格の恩寵を意味する……。
「畏まり(かしこまり)ましてございます、陛下」
宰相閣下が深々と頭を垂れると、玉座の右手から、儀典服を身に纏った侍従たちに運ばれ、黒い漆塗りの台座が静かに滑り出てきました。その台座には深紅のベルベットの上に、美麗な彫刻と煌めく宝石細工が施された4つの宝飾箱が載せられています。
宰相は丸眼鏡のブリッジ部分を片手でそっと持ち上げ、ことさらに背筋を伸ばし。宣言する。
「これらはミドガ帝国の国宝に数えられる品々より、陛下から直接賜る褒章の品々となります」
それと共に、儀典侍女というのでしょうか。運ばれた台座の傍に控えていた女性達が優雅な所作で、台座から宝飾箱を取り上げ、私たちの前に進み出る。
まずは私の天使、堕天使、両方の身体に同時に。
「慈悲深き神翼の乙女へ、かつての聖人が保有した聖具に由来する、”憐憫の金鎖”を。因果の巡りを現す神翼の乙女へ、古竜の魔核より創られし至宝、”深淵の封輪”を授ける」
ありがたく拝領した、1本の美しい金の鎖と、二の腕につける銀色のアームレット。
所有権の獲得により見えるアイテム情報によれば。
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☆7 憐憫の金鎖 (アクセリー/部位指定無し)
主材質:創世聖教の聖人がかつて創造神から与えられたとされる聖具の一部、光輝精霊のマナの雫
強化値:15 (安全強化上限:15)
特性:慈悲なる憐憫、光精の恩寵、不壊
※慈悲なる憐憫:自身が与える物理的損傷(生命力, 物理的欠損等のダメージ)を、
精神への損傷(MP, 精神, 魂等任意のダメージ)へと置き換える事が可能。
※光精の恩寵:魔力を消費するたび、AGI(敏捷), DEX(器用)の基礎値を一定時間上昇する
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☆7 深淵の封輪 (アクセリー/アームレット)
主材質:深淵龍の魔核、銀嶺ミスリル
強化値:15 (安全強化上限:15)
特性:孤絶封界、損傷回避、高速再生
※孤絶封界:離脱不能の隔離領域に対象を捕らえる。対象の複数指定可能。
効果持続中、自身もまたこの領域の外へ離脱する事は出来ない。
領域の広さは直径が強化値×100mの球形を基準とし、追加の魔力消費により拡大/縮小が可能
効果の対象以外の出入りは自由。
※損傷回避:孤絶封界内で自身又はパーティーメンバーが肉体的な致命傷を負った場合に、
損傷の無効化を選択できる。この効果が発動した場合、孤絶封界は解除される。
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天使の方は、ますます特化強化が進み、一撃必滅が前提となっている戦闘スタイルにおいて、手加減の余地を獲得するもの。神炎で焼き滅ぼす代わりに、精神ダメージで気絶させる事ができるように……。
いや、待ってくださいよ? それも確かに可能かもしれませんが、これ。下手すると一発廃人とか。物理的、肉体的に強い。あるいは、超速再生するような敵に対して、精神や魂の方を消し飛ばして倒すとかできません?
実はドン引きする程、とんでもない効果な気がしてきたのですが。
うん、間違いなくそういう用途でも使えますねこれ。
一方堕天使の方は、相手を確実に逃がさずに決着をつけるのに有効でしょうかね? さらにこちらの味方への保険もかけられると。対象はパーティーメンバーのみ、なので軍団戦における保険にまでは出来ませんが、一プレイヤーが持つ効果としては破格すぎますね。隔離空間とはいえ、強度の限界とかはあるでしょうから、過信は禁物でしょうけれど。
あと、隔離空間は、新しい別空間を生成し、相手ごとそこへ転移するわけではなく。その場に、そういう領域を重ね合わせて、定義する。というスキルのようです。
あ……これ、装備を意識して使い方をしっかりと把握していくと、”対象の選択”。で、悪さというか、応用が効きますね。厳密に対象を認識、視認等していなくても、概念的というか……すごく大雑把な、ざっくりとした指定ができます。うん、うん。これはまさに今欲しかったものかもしれませんよ。現状のクエストを考えれば、割とすぐに頼る場面が来そうな予感がひしひしとします。
「神翼をいただく眷属なりし、月の姫巫女ルナリス。亡き西方の国に伝わる古の秘宝。そはただ一国の戴く証にあらず。この大陸の至宝なり。ここに、ミドガ帝国に伝わる証をこの者に授ける」
続いて、ルナリスへと差し出されたのは、ダイヤモンドのように透明な中に、無数の小さな輝きを秘めた。まるで星を内包したような2つの宝石。
そこで皇帝陛下からさらに言葉が発せられる。
「今、この場にて、姿を取り戻させるが良い」
「ありがたき……幸せ。御前にて……失礼いたします」
言われ、いつも頭にのせていたアレイスター王国脱出の折、託されたティアラをそっと頭から外すルナリス。
恭しく、受け取った2つの宝石をそっと、空のままだった台座にはめ込むと。
思わず気になり、眷属のステータスからアイテム性能を見守る私。
長らく、この状態だった王権の証ともされたアイテムが。
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☆7 星の煌めきのティアラ ※未だ神秘を取り戻していない
形状:時に青緑に、時に赤紫に色を変える宝石を中央に戴いた、ティアラ。宿る神秘はまだその一端を取り戻したに過ぎない。
主材質:ミスリル/神銀、各種宝石、各種魔核、星の導きの欠片
強化値:0 (現状、強化不可)
基本性能: MND/CHR/LUK+☆7
特性:不壊、魔術発動体、星明りに舞う蝶
※星明りに舞う蝶:装備者から一定範囲内の味方と認識されている者に以下の効果を付与
回避補正:小
阻害効果/異常効果への耐性向上:小
意思伝達:相互に漠然とした意志の伝達が可能
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ついに、その真の姿を取り戻す。
再び、虹色の輝きを纏う銀の髪の頭上へといただいたティアラ。
それは、神話級の宝物としての姿を取り戻していました。
性能そのものは、単純なアップグレードと、害意とその源を感知できるようになったというもの。
意思伝達は念話と違い、漠然とした気持ちを心で感じる事ができるので、こう、心がポカポカするというか。感じ方が違うものなので、なくならなくてよかったと正直に思ってしまいます。
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☆9 星の煌めきのティアラ
形状:時に青緑に、時に赤紫に色を変える宝石を中央に戴いた、ティアラ
主材質:ミスリル/神銀、各種宝石、各種魔核、星の導きの欠片
強化値:0 (安全強化上限:20)
基本性能: INT/MND/CHR/LUK+☆9
特性:不壊、魔術発動体、神秘宿す蝶の舞い、旧き誓いの証
※神秘宿す蝶の舞い:装備者から一定範囲内の味方と認識されている者に以下の効果を付与
回避補正:大
阻害効果/異常効果への耐性向上:大
意思伝達:相互に漠然とした意志の伝達が可能
邪念感知:自身への害意とその方向、源を感知可能
※旧き誓いの証:太古の昔に交わされた誓いの証
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そして、そうした性能の変化よりも何よりも。
収まるべき主の下に、完全な姿となり収められた神秘の装飾品から、幻想的な輝きが放たれる。
その光は大きく広がり、帝城はおろか、帝都の全てを――否、後にプレイヤーの情報網で大陸をも超えて、聖国マリシアより先すらも照らし出したという。まさに世界を一瞬覆った、神秘の輝き。
【パーティーアナウンス:☆8 禁忌級クエスト 「ユゴス コンコード(ユゴス協定)」 、追加条件(星の煌めきのティアラを復元)を達成しました】
ほんの数秒ではあったものの、その神々しい光に呑み込まれ、騒然となる会場。――この時は知る由もありませんでしたが、帝都も含む世界中で、プレイヤーも含め、当然ですがかなりの大騒ぎとなっていたそう。
「静まれ。永く国々が分かれ、失われていた神意の一つが今ここに蘇った。実に喜ばしきことである」
皇帝陛下のその一言に、水を打ったように静まる会場。さらには止まっていた音楽も再び演奏が始まり。
「同じく、神翼をいただく眷属なりし人形姫、紗雪。古代魔導帝国に遺産より褒章を授ける」
と、紗雪に渡されたのは魔法のカバンと同じ、拡張収納になっている古めかしい銀色の入れ物でした。
かつて紗雪のための素体を、オークションで落札した時と同様、なんらかの装備やアイテムがその中に収められているのでしょう。
この場で中身を調べる事もできず。
――ええ……それはまた、しばらく先のお話し……。
かくて、特別な褒章の授与も終わり。
いよいよ本当に帝冠勲功授与式は幕を閉じ、懇親を深める晩餐会へと場は移っていくのでした。




