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『運命の供犠姫』私のVRMMO生活は、運命値極振りから始まる百合ライフ。呪いの装備は絆の証?  作者: malka
第2部 - 第7章

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183.7章 - 第24話 ”帝冠勲功授与式 #1/2”

 玉座の間は、光と権威が凝縮された、贅を尽くした聖域でした。

 幾重にも吊るされた巨大なシャンデリアの光が、ドーム状の天井を覆う金箔細工に反射し、光のさざ波を作り出す。光の洪水に彩られる壁面は深紅のベルベットと、黄金のレリーフが格式高さを主張する。床には、ミドガ帝国の紋章が織り込まれた分厚い絨毯が敷き詰められ、その上に居並ぶ貴族達の熱気が、会場全体を熱狂的な、しかし厳粛なる静寂で満たしていました。

 列席する貴族たちは、男女問わず、刺繍と宝石で飾られた正装に身を包み。その視線は、壇上に集まっています。


 彼らの瞳には、単なる儀礼としてではなく、『帝国の武勲と、その恩恵を享受する権利』への強い憧憬と。アーカリア大陸崩壊を阻止せしめた英雄達への憧れと期待に満ちていました。



 玉座に座すは暗めの紅色に染め抜かれた地色に、オリハルコンの神々しい金色で装飾が施された、美麗な甲冑姿。

 なんでも、歴代の皇帝陛下は、ほとんど人前で素顔を晒すことが無いとか。常に全身甲冑を纏っていて、性別すら非公開。帝都の外壁や、様々な彫刻、歴史絵画も甲冑姿で肖像画がほとんど存在しないのはそういう事みたいですね。

 現実でそんなことをしようものなら、本物の皇帝が分からず、偽物乱立で大変なことになりそうなものだけれど。そこはさすがにどれだけ現実のように見えようとも、というかもう私も現実としか思えなくなりかけていたけれど、VRMMOゲーム“Steps to Elysium Online”の中。皇帝の証である宝剣は全ての住民に理屈抜きに理解され。その上、もし万が一真偽の判定をしなければならなくなる事態ともなれば、偽装不能の称号だけをステータス画面の一部として、提示する事もできるのだとか。


 玉座そのものもひときわ異彩を放っていて、透明感ある漆黒の鉱石に、黄金の星に見える輝きが無数に閉じ込められています。しかも、これ、たった一つの宝石の塊から削り出したそうで。なんでも国宝の一つなのだとか。



『ナオさん、あの玉座の材質。現実で言うところの、ブラック・スター・サファイアですよ。あんな巨大な宝石の塊、現実では考えられませんし、SEOの世界でもあり得ない巨大さですけれど。素敵ですね~……あれはちょっと欲しくなっちゃう』

 『紗雪ちゃん……創ってみます、か?』

 『え……?』

 念話での囁きへの、ルナリスの思わぬ返しに、絶句してしまう紗雪。


 『”統合スキル-虹纏う銀の姫”、ですか?』 『確かに、”生成-制限:宝石”のスキルが内包されていますよね』

 アメティスタと仲睦まじくお話をしながら、生成してあげている事が、割と頻繁にあるのは知っていましたが、冒険の最中にはほとんど使うことが無かったスキル。ブーストアイテムとしても使うような相手とここ最近は相対していませんでしたからね。ちょっと戦闘面では、ゆるゆるプレイをしすぎていましたか?


 『はい。あの……大きさは、さすがにすぐに、とは……参りませんが。一抱えくらい……の宝石でよろしければ、あの……ような、漆黒に黄金の輝きを、秘めた物を……生み出すことは可能、です』

 『そうでした。そうでしたよ~ルナリスちゃんすごい! ここだと悪目立ちしちゃいますから、今度やってみてもらってもいいですか?』

 『もちろん……です』


 なんて、進む式典を横目に、こっそり念話で楽しくお喋りしながら、厳粛に執り行われる功績の発表と、褒章の授与を見守る私達。式典は進み、勲章の授与を含む勲功特に優れた方達の褒章へと移ってきています。住民の貴族の中には陞爵(しょうしゃく)した家門もありますね。

 事前に辺境伯から聞いていた通り、この001サーバーのプレイヤー達はグランドクエストの一つが全世界全サーバー唯一の☆10評価、ベストエンドに終わりという事で、喜び勇み。我先にとすでに発行されていた3つのグランドクエストの次なる一つ。これも、最高のエンディングを迎えんと、聖国マリシアへと向かってしまいました。聖女さんがすでに現地で活躍しているというのも、良い起爆剤だったようですね。

 彼らのためにも別途プレイヤー、来訪者向け式典を急遽開催してくださったとの事でしたが、住民としてはあくまで本日が本式典。



 『ここから、皇帝自ら、勲章の授与に移るみたいですよ』

 と、紗雪が注目したのは今、壇上へと呼ばれ勲功を読み上げられている小柄で、ほっそりとした。いかにも文官といった方。

 同時に、皇帝陛下がいよいよ玉座を立ち。先ほどまでは宰相からの褒章、目録の授与であったところを、自らの手で授けるようです。


『栄光の金羊毛章』。第4位にあたる大勲章の授与を宰相閣下が功績や氏名、略歴と共に読み上げた後。

 少し高めの中性的に聞こえなくもない、どこか女性的な声で皇帝陛下が宣言する。


「我が勇猛なる剣が戦野を駆けるには、汝の知謀と術数こそ、万軍に勝る礎なりき。帝国の財(たから)たる民草を統べ、広大なる大地へ遍く(あまねく)、淀みなく輜重(しちょう)を整えしその献身。神聖なる帝冠の御光のもと、永遠に顕彰(けんしょう)せられん!」


 片膝を突き、深く首を垂れた男性の胸元に飾られる勲章。


 『甲冑の指でよく、飾り付けられますね』

 思わず、そんなところに目の逝く私でしたが。

 『現実の……安全ピン? とは異なり、ます……ので』

 と、ルナリスがそっと優しく教えてくれます。紗雪? その「そこですか?」 と言わんばかりの呆れたまなざしはやめてくださいね? ちょっと心が痛いですから。


 その後はさらに高位の勲章の授与が粛々と進められ、第2位にはアレイスター辺境伯閣下が。

 ただし、現在も彷徨いの樹海や連邦との国境の対応、竜の背骨山脈の南西方面の警戒。さらには、大陸全土4分の一の消滅という事態の事後処理のため、緊急かつ多忙を極め、ご本人は欠席。

 その旨を正当な公務であり、まさに忠臣の鑑と大いに讃えた後、代理人として出席した首席補佐官が儀礼用のクッションに乗せられた勲章を拝領されていました。


 そしていよいよ……。


「来訪者、ナオ。従者ルナリス、紗雪、前へ」

 細い金縁の丸眼鏡をかけ、伏し目がちの。穏やかで知的な高齢の男性。トレド宰相が私達をお呼びです。


 『昨夜の劇場……と似た、微かな違和感……の気配が多数……感じられます。あまりにもぼんやりと……しか感じられず、発生源は……わかりませんが』

 『ありがとう。私には何も感じられないので、魂魄属性の特性でしょうか』 『なんとも嫌な感じですね』

 『いざという時のために警戒は緩めずにおきますね』

 そっと、魂核を介して伝えられる懸念。

 とはいえ、今どうこうできるわけでもないので、みんな揃って目の前の事に切り替える事にします。



 帝都歌劇場で初お披露目をした、今回の式典のための特別なドレス。純白と淡い桜色の優しい彩に包まれた天使姿の私。情熱的な漆黒と深紅を纏う堕天使の私。すべての翼を展開し、2つの身体で寄り添い合い、粛々と玉座の前へと続く専用の赤じゅうたんの敷かれた通路を進みます。この時ばかりは従者、眷属という立場を重んじ。私の半歩後ろをそれぞれついてくる、2人。ミッドナイトブルーのドレスを裾もほとんど揺らさず、静かに、すっと背筋を伸ばし嫋やかに歩むルナリス。月光で編んだ繭のような銀灰色の輝きを纏い、軽やかに、けれど優雅に歩む紗雪。


 白と黒を基調としつつ、それぞれに異なる翼を靡かせる、麗しいドレス姿の私達に列席の貴族たちから感嘆のため息が漏れる。決して主張しすぎず、穏やかに場を盛り上げる楽団の演奏も、このひと時は少しだけ華やいだように感じられたことでしょう。



 揃いの”不朽の束縛”のチョーカーを首元につけた私達が、片膝をつき、跪くと。


「聴かれよ。深淵なる邪悪により窮地に陥りしこの大陸、アーカリアを守護すべく。神翼に至りしナオ、従者ルナリス、従者紗雪が成せし武勲を」


 声量を落とし、しかし厳粛な響きで宰相閣下が続ける。

「竜の背骨山脈に路(みち)を切り拓き、幾たびの邪神の饗宴を退け、根源なる邪神の降臨をも阻む。その神聖なる意志は、邪悪に侵されし地に創造神の御光(みひかり)を再び遍く知らしめた。この比類なき功績に対し、皇帝陛下は、帝国最高位の褒章『創世の聖十字大綬章』の授与をここに宣誓される!」


 帝城が揺れるかと思う程の、深いどよめきが上がる。

 それほどまでに、この最高位の大綬章の授与というのは、ミドガ帝国の歴史の中でも稀だそう。しかもこの大綬章は、帝国の一存では発行できず、創世聖教の賛同が無ければ授与する事ができないという、特例中の特例。


 おそらく。この2日間の帝都観光も、人品をそれぞれに見定めるという目的もあったのかもしれませんね。



 どよめきが収まるのを待ち。今度は皇帝陛下が告げられる。


「汝らの功、まさに比肩する者無し。邪を討つその武勇、己が命を懸け、真実の愛を貫きしその深き情は我が神聖なる帝冠に比する至宝なり。汝らの助力を得しこと、神の御心の思し召しと、余自ら言祝ぐ。汝の献身、その愛深きを、この玉座にて永遠に顕彰せん」


 万雷の拍手が降り注ぐ中。一人づつ順に豪華極まりない大綬章。肩から掛ける飾布に、創世聖教の聖なる十字架と、竜、グリフォンをあしらったオリハルコンの勲章が取り付けられたそれをかけていただく。


 その時。そっと小さな声で。

 『この後(のち)、歓談の始まり。速やかに余の傍へ参れ……必ずですわ』

 と、そっと囁きかけられたのでした。


 式典の最後を飾る懇談会、もちろんご挨拶に伺うつもりでしたが。ちょっとただ事ならないと気を感じるのは……考えすぎでしょうか?

 それに……あれ? 声は明らかに違いますが……うん?


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