182.7章 - 第23話 ”帝都観光 – 帝国大図書館 #2/2”
「神造図書館では不文律がございますの。ここで得た知識、書物の内容等を、口外してはならない。例外は皆様のように主と眷属の関係にある場合等。それから、同じ階層への出入りができる者同士、ですわね。聖国マリシアにおいても同様ですが、立ち入りが許される階層は創造神様の御心により定められます。許可無き者が知識を得ることを禁ずる規則ですわね。破りますと神罰の対象となりますので、くれぐれもお気を付け下さいまし。どの階層まで到達したか、でしたら開示しても問題ありませんわ」
「なるほど、肝に銘じます」
配信や動画でも、到達階層以外の、中で得られた情報は非公開にしないといけなさそうですね。
その事をルナリスや紗雪とも確認し合い。
「では、わたくしはここでお待ちしております。魔法陣は乗っていただき、下りたい、上りたい。あるいはどの階層へと念じられれば稼働します。ちなみに、地下50階層が高位聖職者の最深到達階層で、禁書庫になっていますの。かつての英雄や特別な神命を託された方々はより深くへ進む許可を得た方もいらっしゃると、伝承にはありますが、100年に数人というお話しですわね」
と、リリエラさん。この地上階には多数の机や椅子もありますので、待っていただくのに問題はなさそうですね。
巨大な縦穴に浮かぶ大きな魔法陣。
私たち全員で乗せて、薄緑色の輝きを放つ紋様がゆっくりと下って行く。
「とりあえずどこまで行けるか、確認からですね」
「はい……禁書庫、面白そうな……響きです」
おや、少し意外ですね? ルナリスの興味はそこに来ましたか。
「今のところ、公表されている範囲でこの帝都大図書館におけるプレイヤーの最深到達階層は35階層だそうです。神官系のビルドで、創世聖教に所属。位階を順調に上げて行けば、このルートで50階層まではいけそうという噂になっていますね。今プレイヤーの多くが、聖国マリシアの方の大図書館に挑戦しているそうです。最高到達階層はやはり50階層で、そちらも同じく禁書庫になっているみたいですね。運命値100の聖女プレイヤーの到達階層は不明だそうです」
大穴の周囲を取り囲む壮麗な柱に刻まれた、美しいカリグラフィーで描かれた数字が少しづつ大きくなっていく。
慣性を感じさせない魔法陣のエレベーターは地下30階層を超え。
「収蔵されている書物……の、魔力が高まって……きています」
「保存の魔法が全てにかけられているとは言われていますが、この魔力は書物自体の持つ力のようですね。魔導書とかそういうものもあるかもしれません。最も、ナオさんの魔導書でもある私、そしてかつてのナコト写本とは比べるべくもないですけれどね♪」
「ええ、紗雪は私の自慢の恋人で、魔導書ですよ」
むっふ~と、ちょっとどや顔をして見せる紗雪の頭を優しくぽんぽん。
わざわざ背後に翼扱いとなっている魔導書”ナコト写本”の幻影まで浮かべ、アピールしていますね。
地下40階。
「おや……割とあっさり。掲示板とかで公開されている範囲でしょうけれど」 「最深到達階層を更新してしまいましたね」
「神翼種……はやはり、特別……なのでしょうか」
地下50階。
ついに、魔法陣は禁書庫のフロアへとたどり着いてしまいました。
順調に下っていた魔法陣が停止し、そこで1枚の羊皮紙、クエストスクロールが虚空に生まれ、私達に見えるように文面をこちらへ向け空中に制止しました。。
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クエストスクロール”帝国大図書館 – 禁忌領域への侵入”
神代の知識への道を開く : 証が不足しています
異界図書館への道を開く : 資格を確認……時、未だ満ちず
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【パーティーアナウンス:帝国大図書館50階層への転移設定が許可されました】
【パーティーアナウンス:プライベートエリア”悠久の楽園”図書館と、帝国大図書館地下50階層を結ぶ転移扉の設定が可能となりました。詳細はハウジングメニューをご確認ください】
「これはまた」 「何とも面白そうな、と同時に厄物の気配が……」
「異界図書館。ナオさん、私すごく嫌な予感がするのですが、ナコト写本の知識によるとですね。邪神群に縁のある、とても特別な図書館が存在する可能性がありまして」
「資格……邪神様の加護……でしょうか」
ちょっと見なかったことにしたい気分も湧き上がりますが、異界図書館……ルナリスの運命ともかかわるのでしょうね、ええ。さすがに私ももうわかってきましたよ。
「まあ、そちらは”時、未だ満ちず”」 「要するにまあ、イベント進行可能な時期じゃないという事なのでしょう」
「そうすると問題は、”神代の知識への道”の方ですね。多分こちらが通常ルートというか、この帝都大図書館の正規の51階層以降へのルートなのでしょう」
「階層を越えて、書架……を覗き見る事……も、できないよう、です」
魔眼で51階層以下を除こうとしてくれていたルナリスが、ちょっと残念そうな気配を漂わせて、教えてくれます。
「神様が作られた図書館ですものね」 「仕方がないです。とりあえず、セレスティア……」
ひらひらと、腰元のアクセサリーに偽装していた、宝石蝶のテイムモンスター”セレスティア”が舞い上がると、数体の分身を生成。この50階層のあちこちへと飛んでいきます。転移ポイント代わりとして、隠れ潜んでくれるのです。
こうして、発行された許可にありがたく感謝しながら、転移ポイントとしての実質的な登録を完了するのでした。
「せっかく……です、ので……禁書庫のご本を、見ません、か?」
フロアに広がる膨大な書籍に満たされた書棚の海。さらには書籍のみならず、石板、羊皮紙、他あらゆる文字の記録媒体も収蔵されているのが見えます。
「いいですね。見て回りましょうか」
「ナオ様、”悠久の楽園”図書館との接続扉を敷設し、第3、第4部隊の子達を中心に調査を行う許可をいただけますでしょうか」
と、進言してくれるアメティスタ。確かに、この膨大な情報の海を私達が調べ尽くすとなればそれだけで人生が終わってしまいそうです。人海戦術で必要な情報を拾い上げてもらえるなら、何よりもありがたいですね。
と、言うわけで早速許可を出すと、ドール体の紗雪が向こう側で図書館と此処を繋ぐ扉を設置してくれました。
通過許可のある人にしか見る事も触れる事もできないそうなので、安心です。実は他にもそういう方のゲートというか扉が、他にもあるのかもしれませんね。
「ハウジングメニューに普通に追加されてました。すごく立派な扉の部屋が”悠久の楽園”図書館に出来上がったので今度見に行きましょうね」
「それはまた、楽しみですね。あと、図書館調査のために」 「魔導人形の子達の生産計画を少し変更してもいいかもしれませんね」
「第5部隊……情報部隊を設立……しますか?」
そうなると副統括ももう一人……んー悩ましいですが。
「とりあえず、今はサフィーロの第3、アメティスタの第4部隊に各25名づつを追加。様子を見ながらどうするか決める」 「というのではどうでしょう? 計画総数も、1,000人から、1,050人に増加で」
「帝都での用事が終わったら、うちの子達に外での素材集めも始めてもらえば、魔導人形用の素体素材も集められそうですね」
「良い……と、思い、ます」
現状700体にまで増えたうちの子達。年内には新目標の1,050人を達成できそうな勢いですね。
――「禁書……とは……」
いや、本当に。ルナリスが呆れて、目を点にしているのも分かりますよ。
「まあ、これも禁書と言えば……禁書なんでしょうね」
「過去の、貴族の……醜聞については、わかり……ます。が……」
いや、ほら。ゲームで禁書庫と言えば、すごい魔導書とか、禁断の知識をもたらす宝物。あるいは、すごい悪魔や使い魔召喚の儀式! なんて、期待するじゃないですか?
ざっと収蔵されている書物の分類を見ただけで数時間が建っていますが、結果、分かった事。
約半数は過去の子の帝国における醜聞の記録。主に貴族の不貞、反乱反逆の証拠、隠蔽された情報、不都合な取引記録。ただし、それは全て200年以上前の過去のものに限られている様子。現在に影響を及ぼしうる、あるいは機密性の高い情報はまた別の。それこそ帝城の中の禁忌図書室とか、そういうところにあるのでしょう。
問題は残り半分。
「帝国では……同性婚も普通……の、はずですが」
「それでも、アブノーマルすぎたり、著者が多分貴族だったり。それと時代によっては、聖国マリシアとの関係性で表向き禁書指定したために、こちらに収蔵された。とかもありそうですね」
いや、そうなんですよ。いわゆる、まあ、ええ。薔薇だ百合だののご本だったり。かなーりアブノーマルな性癖のご本だったり。
神造図書館塔の中に収蔵するな! と言いたくなるご本が大量にですね。
まあ、中には毒物の研究所とか、まじめな危険物、危険な情報の書籍保管区画もありました。そのあたりは、新たにここの情報収集にあたってくれるうちの人形少女の子達に、整理してもらいましょう。
――ちなみに、しばらく後。悠久の楽園の執筆部屋。そして、いけない妄想を形にしたうちの子達の手による創作本のバリエーションが、それはもう……増えたそうです。
――「まあ、50階層まで入ることができましたのね、さすがですわ」
と、出迎えてくれたリリエラさん。階層だけはお伝えしたのです。
「創造神様による特別な資格。の他、このミドガ帝国でしかるべき地位、立場にある者は50階層への立ち入りが認められますの。では、あの耽美なご本の数々もご覧になられましたのね?」
「あはは……ええ、さすがに驚きました」 「よもや神造図書館側にあのような書物が収蔵されてリルとは」
「ミドガ帝国においてもはや禁書ではないのですが、聖国マリシアとの関係性、特に聖浄心教という宗派が隆盛を極めた頃の悪しき名残ですわね。それもまた歴史という事で50階層の禁書庫に残されていますの」
「なるほど」 「今日は書物の傾向や建築様式や光景を堪能するにとどまってしまいましたが」
「そうですわよね、何せ階層ごとの分類に該当する書物が増えるほどに、階層全体の空間も広がりますの。ちなみに……その、女性同士の……とてもお勧めのご本もありますの。今度是非、お教えしますわね」
ほんのり顔を赤めて、恥ずかしそうに、しかし軽い興奮を湛えたきらきら光る瞳で見つめてくるリリエルさん。
「是非、楽しみにさせてください」
「はいですわ!」
あれ? そういえば彼女はただの……と言っては失礼ですが伯爵令嬢ですよね。50階層の禁書庫に立ち入りが許される特別な地位にいらっしゃるのですね?
結局この日は帝国大図書館51階層以降、および、ルナリスとの運命に関わりそうな新しいクエストのきっかけを手に入れ。
夜には帝都一と言われる、王侯貴族の接待にも用いられるという特別なレストランでのプライベートなディナーを楽しみ。
いよいよ明日の帝冠勲功授与式に臨む事となるのでした。




