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『運命の供犠姫』私のVRMMO生活は、運命値極振りから始まる百合ライフ。呪いの装備は絆の証?  作者: malka
第2部 - 第7章

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181.7章 - 第22話 ”帝都観光 – 帝国大図書館 #1/2”

「此方が本日、午後をお過ごしいただく帝国大図書館です」


 先ほど大聖堂で身に着けていた創世聖教の十字架は仕舞い。昨日とはまた別の、知的な探求の場にふさわしい洗練されたフォーマルな装い。現実で言うところの、女性用のお洒落なスーツのような……ツーピースに近いでしょうか。


 ジャケットは、淡いクリーム色とシックなグレーの糸で緻密に織り込まれており、その襟元と袖口には、極細の金糸が繊細なラインを描いています。ボタンは、ミドガ帝国の紋章が刻まれた真珠貝で統一され、光を浴びるたびに静かに瞬きます。

 スカートは、膝を覆う上品な丈のタイトなシルエットで、歩くたびに生地が柔らかなドレープを描き、彼女の優雅な身のこなしを邪魔しません。足元は、低めのヒールが付いた黒のレザーシューズ。

 過度な装飾は排されているものの、首元には細い金銀のチェーンが幾重にも重ねられ、控えめな輝きで彩を加えています。


「非常に美しい建物ですが、建築様式は帝城や大聖堂のゴシック調とは違いますね」 「左右対称でアーチや円柱を多用している……ルネサンス様式とかが近いですか?」


 見上げる私達も、翼は目立ちすぎるので再び隠し。お洋服もマジッククローゼットに出発前に登録しておいた、シンプル目なドレスに外見を変更しています。

 ベースとなったデザインは、袖を排したノースリーブのAライン。生地には、極めて軽量なミスリルシルクが用いられ、静寂な図書館にふさわしい清廉な雰囲気を纏っています。スカートは足首が覗く程度の丈で、機敏な動きや椅子に座る事を妨げません。

 今回は全員お揃いのドレスデザインで、その色彩とワンポイントをそれぞれの好みで変えています。


「SEOの事ですから、単にデザイン上の都合という事はないでしょう。何か歴史的な理由があると思いますよ」

 と、返してくれる紗雪は空色のドレスに、袖口やスカート裾に緻密に織り込まれた銀糸が、細かな幾何学的な花模様を描く。


「帝都の……大図書館は、二重構造になって……いる。と、聞き及んでおります」

 ルナリスは、淡いアイリス色に、胸元からウェストにかけて蒼銀色のビーズをらせん状にあしらい。


「なるほど? 時代の違う建造物が組み合わさっているとか」 「とすると、ルネサンス様式の建物の方が、ゴシック調だった大聖堂とかよりも新しいのでしょうかね」

 私は天使体を純白の生地に透明なビーズで幾何学模様を。堕天使隊は薄朱色に星形のビーズをちりばめたデザイン。


「その通りですわ。内部には試練ダンジョンと近しい、創造神様がお創りになられたとされる空間がございます。その外側を、人が作りしこの大図書館で覆っていますわ。まずは外側の、人手による建物からご案内しますわね」


 厳格でありながらも調和の取れた美しさを誇る大図書館。外壁は淡い象牙色の化粧石で、巨大な半円形の窓が整然と並び、光を館内に取り込んでいます。大閲覧室は、天井まで届く巨大な円形ホール。そこから伸びる書架に満たされた部屋が無数に並び、要所要所にまた小閲覧室が設けられる構造。

 収めきれない蔵書は、馬車に用いられるような、空間拡張の施された居室に収められ。こちらは司書さんにお願いして持って来てもらう形式。

 古書の紙とインクの薫り、知識の重みが凝縮されたかのような、張り詰めた静寂が支配する空間を見学することしばし。


 奥へと続く通路の先には一風変わった広間が広がっていました。

 ともすればダンスホールかと思うような、華美な装飾の施された大空間。しかしここには所狭しと、薄いモノリス(石板)が飾られています。


「これは……?」

「此方がこの大図書館、外殻部に収められたすべての蔵書とそのありかを示すモノリス群になります。利用者は司書に聞く以外にも、こちらでお目当ての書物を探すことができるのですわ。この大図書館に持ち込まれる書物はすべて自動的に、こちらに登録されますの」


 なんと、いわばゲームUI的なシステムウィンドウの物理版。と言ったところでしょうか。魔導具という事になっているのでしょうが、現実と同じかそれ以上に便利かもしれませんね。

 よく見れば、何人か人がモノリスの間に立って、タッチパネルを操作するように指で触れています。検索とかしているのでしょうかね。


「そして、この部屋の奥こそが、この大図書館の真の領域。創造神様がおつくりになられた神秘の図書館ですわ」

 奥に設けられた重そうな、巨大な鉄扉。その下側に設けられた通用口のような普通サイズの扉の前には複数人の衛兵が立っています。


「ナオ様方には閲覧許可が発行されていますので、ご安心くださいまし。もちろん私も、貴族の娘として、閲覧許可がございますわ」

 衛兵が守る扉の横に設けられた水晶に手をかざすと、通行許可を示すように緑に輝きます。以前の”彫刻の街”の衛兵隊の所でも、似た水晶で犯罪歴とかを調べられましたね。

 SEOのシステム的には、キャラクター毎に許可が発行されているか否か、管理されているといったところでしょう。


 ごそごそと、そこそこの人数で順番に許可確認をして通過する私達を前に、赤い制服を纏った衛兵さんは特に何も言うことはなく。ただ、私達の美貌と、少女人形達のかわいらしさに軽く相好を崩している人が少しいるくらいでしょうか。


 二重構造という言葉は比喩でも何でもありませんでした。

 まるで教会建築のような、ゴシック調の大きな建造物が、扉を抜けた先、光に満ちた空間にデンッと建っています。


「拡張された空間、でしょうか」

「その通りですわ。この空間を取り囲む光の幕。それを覆うようにして外殻の建物が建てられていますの。ここは一種の聖域、あるいは神域のようなものと考えられていますわ。似た構造は聖国マリシアにあります。あちらは直接、大聖堂の中に神造図書館が一つの巨大なお部屋、あるいは塔として存在していますが……大きな違いは、聖国マリシアのそれは、空間拡張された100階層の図書館塔が上へと延びている事」


 タワー型の図書館ダンジョンとかそんな感じなのでしょうか? 非常に興味をそそられるお話しですね。

 と、思っていたら、紗雪が念話で、

 『プレイヤー動画で上がっているので見られますよ。こっそりウィンドウに表示しますね』

 と、見せてくれた映像。そこに映っていたのは、大聖堂の広い通路の奥に開かれた大扉。その向こうには、光に満たされた別世界が広がっていました。

 大理石造りの白い円形の大空間、中央を貫く巨大な吹き抜けを通り、ステンドグラスが作り出す虹色の光が降り注ぐ。

 その吹き抜け部分には、いくつもの魔法陣が配され、階層間を移動するには、上り下りする魔法陣に乗って、空を飛ぶように運ばれる。階層間をつなぐ階段は見当たらない。

 吹き抜け空間から放射状に広がる書架。大部屋へとつながる壁沿いには、聖画が描かれている。


『まさにファンタジーという感じの、夢のある空間ですね。魔法陣がエレベーターみたいになっているわけですか』

『なんでも、階層ごとにシステム的な許可が必要らしくて、例の運命値100をふって十三聖女の一人になったプレイヤーでも、50階層までしか立ち入り許可が得られていないそうですよ。一般プレイヤーだと20階層とかがまだ限界だとか』

『モンスター討伐型のダンジョンとは違う、特殊条件で次のフロアが解放される形の知識ダンジョン。とかですか』

 きっと上の階層には特別な魔法やスキルの習得に関する書物とか、魅力的なアイテムが秘蔵されているのでしょうね。


 などと、こっそりやり取りをしているうちに大図書館内、神造図書館部分の内部にたどり着きました。

 そこはまさに今、動画で見せてもらった聖国マリシアの大図書館とうりふたつ。

 ただ、その全てが上下逆であることを除けば。


 深い巨大な穴が地下方向へと伸び。そこは階段も見当たらない、階層が積み重なった構造。

 竪穴には無数の魔法陣が浮かんでおり、その魔法陣に乗って上下に移動する人がちらほら。

 建築様式的に上から、ステンドグラス越しの光も差し込んでいますが、それ以上に図書館としての光源となっているのは各階層を満たす、温かな、しかし光源の不明な空間そのものが発しているような光。そして私達の、特に”五感強化”と”鷹の目”のスキルを保有する紗雪ですら見通す事ができない、遥か地の底にあたるであろう辺りから差し込む神々しい光。

 それはあたかも、天へと昇る塔を、天空の空ごと上下逆さまにして、地下深く目掛けで差し込んだかのよう。


「神々しく……も、恐ろしさ、畏敬の念……を、覚える光景、です」

 ルナリスが本能的に感じる恐れに、私の肘にそっと手を添え、寄り添います。


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