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『運命の供犠姫』私のVRMMO生活は、運命値極振りから始まる百合ライフ。呪いの装備は絆の証?  作者: malka
第2部 - 第7章

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172.7章 - 第13話 ”ミドガ帝国 帝都来訪”

「帝都に到着します、なの」


 メイド人形少女にして副統括、サフィーロが操る馬車は、巨大な城壁の影に差し掛かっていました。

 馬車の周囲には飛翔する、アクロイトを筆頭に据えた第1部隊6名と、ルビーノに率いられた第2部隊6名。

 馬車の中では給仕役や補佐役として、第3部隊のメイド人形少女4名と、第4部隊からアメティスタと2人が付き添っています。

 今回は特別な御呼ばれという事もあり、副統括4人総出で、さらに配下の子達にも随行してもらっています。


 貴族でも何でもない私達は、着の身着のままでも良いのでは? と思わないでもなかったのですが、今回お呼ばれする場所が場所だけに……こちらも格式を考えるべきという事になったのです。


 まあ、帝都からさほど離れていないところに、宝石蝶セレスティアに転移してもらったので、長距離をこの状態で実際に移動してきたわけではないのですけれどね?

 配信も念のため控え、後で動画で公開予定です。



 日差しを浴びて淡い金色に輝く、石灰岩が主材料らしき城壁。その壁面はまるで壮麗な彫刻美術館のように、様々な帝国の歴史の一節らしいレリーフや、グリフォンとドラゴンをあしらった帝国の紋章、その他様々な威厳ある意匠が整然と掲げられています。よく見ると、同じ鎧を身に纏った……立ち位置的に皇帝陛下か、英雄? 姿が多く見受けられますね。

 壁の高さは、空を飛ぶ鳥型モンスターをも遮るのではないかと、安心感を覚える威容。

 アレイスター王国王都と比較しても数段は贅を凝らし、防衛能力を向上されているであろうその威容に、思わず息をのむ。


「さすが……帝都、です。初めて目にします……が、アーカリア大陸の中心を……宣言するだけは、あり……ます」

「そういえば帝都の名前を聞いたことが無かったですね」

 またしても私が調べ損ねたかと思ったのですが。


「ミドガ帝国、帝都には固有の名前はないのですよ。帝都。それは唯一絶対である、そういう意思の表れらしいです」

「はい……他大陸と、外交文書……を取り交わす際、等に、必要が……あれば、ミドガ帝国帝都と記すようです。が、そも…そも、そのような……場合、ただミドガ帝国。と、……表記すべき場合の方が多い……ので。大陸に帝国……はこの2,000年……ただ一つです、し」

「なるほど、問題になる事もなく、その権勢を誇示する意図もあると」 「それにしても、辺境伯領ともまた、全然雰囲気が違いますね」


 あちらはどちらかと言えば質実剛健でしたが、こちらはまさに、豪華絢爛。

 今通過しようとしている正門は、巨大な凱旋門のよう。太陽とドラゴンを組み合わせた黄金……ではないですね。あれ、多分オリハルコン(神金)です。で、できた紋章が、門の最上部で太陽を反射し、強烈な輝きを放っている。

 門を警護する兵士たちは、真紅と黄金の豪奢な制服に身を包み、まるで歩く芸術品。その動きは一糸乱れず、人間味を感じさせないほどに完璧でした。


 その姿は、何かで見たのかもしれない、スペイン黄金時代の王室近衛兵を彷彿とさせます。もちろんこちらはさらに先鋭化された部分甲冑も付けられており、様相は大分異なるのですが。


「衛兵の甲冑……も、ぴかぴか、綺麗に磨かれて……いて。それに……実用性より、も……様式と美しさ……が優先されてい、ます。裕福さ……と、この地が外敵……の脅威から遠い……事がみてとれ……ます。」

 なるほど。かつての祖国と比べてもいるのでしょうけれども、言われてみれば、衛兵一人一人に至るまで、装飾過多なデザインは実践的な武力よりも、美観を優先していることが見て取れます。


「西は竜の背骨山脈に護られ。北部は始まりの街、この世界では神聖な領域とみなされる地。海からの進行はどの大陸でも容易くない。彷徨いの樹海の領域すら、竜の背骨山脈に阻まれてか、こちらまでは侵蝕して来ていない。東ミドガ帝国領内で反乱でも起こさない限り、極めて安泰な立地ですからね」


「竜の背骨山脈から、強いモンスターが下りてくることはないのです?」


「かの……山脈の脅威は……長い歴史の中、で……外部へと向いた事はほとんど、あり……ません。あっても、彷徨いの樹海……となる前の、南部。肥沃な森林地帯……に向けて、が、主でした」

「なるほど。となると、アンブロシウス辺境伯領は、頻度は低いと言っても北東方面から襲来する」 「竜の背骨山脈に対しても最前線になりかねない立地という事ですか」


 うん、それは確かに、帝国内でもひときわ実戦重視の土地柄となってもおかしくないですね。


「ナオ様、通行の許可証が必要、なの」

「あ、ごめんなさい。こちらで」

 荷物検査もない簡単な検問ですが、身分証の提示が必要なのですね。

 あらかじめ受け取っていた、 辺境伯からの紹介状を見せ、簡単に通してもらえました。

 魔法のカバンがあるこの世界、荷物検査とかどうしているのでしょうね。現実でもその問題への対策について、デウスから提示された検査装置や仕組みだけで問題がないのか、議論が活発に交わされていると聞きます。



 馬車が門をくぐり抜けると、世界が一変しました。

 それは、ただの風景の変化ではなく。魂さえ直接揺さぶるような、圧倒的な生命力の奔流。


 まず、真っ先に嗅覚を刺激する香りの洪水。複雑に入り交じるスパイスの香りと、焼かれたパンの食欲を誘う匂い。

 視界に飛び込んできたのは、赤みがかった石造りの建物が並ぶ、広大で賑やかな大通り。建物の壁には、複雑な透かし彫りの窓枠がはめ込まれ、アイアンの看板と共に職人のこだわりと誇りを感じさせる。

 立ち並ぶ露店にレストラン。そのどれもが活気に満ち溢れ、異国情緒あふれる歓迎の交響曲を奏でている。

 街全体の色調は、テラコッタ(素焼きの土の色)と白が基調となっており、その重厚さが、帝国の歴史の深さを物語っている。


  「この石畳の……模様、綺麗です……」


 ルナリスが、馬車の窓から外をのぞき込み、指さす先。

 馬車道にもなっている石畳には、色とりどりの鉱石を使った精緻な幾何学模様が施されて、まるで巨大なモザイク画の上を走っているよう。もはやただの道ではなく、街全体を覆う芸術作品。


「道中とのギャップがまたいい感じでしょう? 紗雪があえて、大きな町の観光を避けて、直接帝都行きにした理由。理解してもらえました?」

 ふふん。と、得意げな紗雪。

 そうなのです。道中の観光は山間部や湖、自然豊かな場所を中心にして西ミドガ帝国の副帝都とも呼ばれるアズガも避けて、ここまで来ました。それというのも、この大陸の文化の中心とされるここを、最大のインパクトを感じる形で見てほしい。と、紗雪が勧めたからなのですよね。

 フェリシテ連邦の魔導学園都市はまた違う趣があるのでいつか行きたいですね。とも言われています。


「ええ。これは正直、想定以上ですよ」 「どちらかというと、自然は豊かだけれど質素。というのがこの世界の私のイメージでしたから」

「そうでしょう、そうでしょう。豊かな自然は大きな魅力ですけれど、特に日本だと西欧に旅行に来たような雰囲気に浸れる帝都は大人気で。戦闘系プレイヤー以外だと、かなりの割合がここ帝都に根付いて活動していたんですよ。ゲーム的な次のマップという感覚で、聖国マリシアに移動した人たちが勿論多いですが。今もほら、あのお店とかプレイヤーの個人店舗ですよ」


 指さす先に目を向ければ、お寿司屋さんじゃないですか。


「スパイスの貿易とかファンタジー小説あるあるの料理手法系儲け話では、むしろこの世界。特に東ミドガ帝国は現実すら超える、マナを含有する植物のスパイスなんかもあって、現実すら超えるバリエーションに失敗する人が多かったですが。生食の文化は、存在こそすれど主流ではなくて。元々、海もそこまで遠くはなく、魔法のカバンで鮮度の良い海鮮は仕入れられますから、寄生虫対策とかを魔術で完璧にして、こうしてお店を開いたら住民に大ヒットしたそうです。現実でも和食の修業をされていた方だとか。今ではこちらを本店として、他サーバーにお弟子さん仲間を誘って店舗展開を検討しているそうですよ。半生くらいの焼き加減の海鮮スパイス焼きがかなり親しまれていた国民食ですので、ミドガ帝国とは親和性もあったのでしょうね」


 辺境伯領の初期に宿泊していたあの高級ホテルでも、確かに、ムニエルなどの魚料理。それに、たまにカルパッチョ等も提供されていましたね。


「ちなみに今はまだ、現実の国の規制でできませんが。マテリアライズでこちら独自の香辛料とかを現実世界側に持っていく事ができれば、料理の幅が広がると、大いに期待が高まっているそうです」


「なるほど? 味覚がフルに発揮される現実でどんな風味、味を感じるのか」 「それは確かに、楽しみですね」

「こちらの世界……を、超える、この世界の……食材を使った料理……興味があります」

 確かにそうですよね。制限された味覚で味わっていたこちらの食材が、果たしてあちらでどう感じられるのか。

 ただまあ、マナで構成された食材を、現行の食品衛生基準。あるいは、栽培はしなくとも種等がごみに捨てられたり。万が一にも、既存の生態系への影響が出る危険性がないのか。検証、検討する事はきっと膨大なのでしょうね。

 いつか解禁されるなら、是非とも楽しんでみたいですね。


「あ、それでしたら、年内にはデウスが実験食堂を私達が暮らしている敷地内にオープンするそうですから、多分私達は食べられるようになりますよ」

「「「おぉぉ」」」

 思わず私とルナリスの声がぴったりとそろってしまいました。


 そうして、先々への期待に胸を膨らませながら、帝都を馬車の中から観光する事しばらく。

 人々のざわめきと活気に満ち溢れた大通りを緩やかな傾斜に従い上り、見えてきたのは、『皇帝広場』。

 巨大なクーポラ(円蓋)が見事な、創世聖教帝都大聖堂が隣接する、帝城と並ぶ帝都の中心。

 ここを境に、大通りは正面奥に帝城のそびえる高級官僚街(貴族街)と、左側面部にある富裕層向けの高級商業区、右側面部の聖教区へと分岐している。


「紗雪様、このまま帝城に向かっていいです、なの?」

「ええ、サフィーロ。それでお願いします。ナオさん、貴族街の入り口で再度、辺境伯からの紹介状を。今度は皇帝陛下の招待状も用意してくださいね」


 そうなのです。一応、辺境伯に軽く希望は聞いてもらえはしたものの、強いご推薦という名のお願いもあり。

 私達は市街の普通のホテルではなく、帝城敷地内にある迎賓館の一つ。『星の家 (カサ・デ・ラス・エストレージャス)』に招かれたのです。


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