170.7章 - 第11話 ”屋内プールは魔法のお味?”
放送翌日。少し気疲れもした私達は贅沢な自宅を満喫しようという事で、屋内プールに集まっています。
「ナオ……様、わたくしの水着、いかが……でしょうか? 少し、露出が…多すぎましたか?」
水に入ったら透けてしまわないか不安になる、真っ白の水着。想像していたレースのかわいらしい物ではなく。シンプルかつ大胆なハイレグに、背中が大きく切り取られたデザイン。
「スタイリッシュさが強調されて、お洒落綺麗です。それに、白い肌に白い水着がすごくその……」
「そそります……か?」
デコルテや薄い皮膚にほんのりと朱をさしながら、いたづらっぽく迫るルナリス。
「え、ええ。それはもう。今すぐ抱き上げて部屋に連れ帰りたいほど」
「うふふ、やりま……した♪ でも、今日は……まだ駄目、ですよ?」
一方の私は、肩から胸もとをフリルで包んだ、フェミニンなワンショルダービキニを、2つの身体で左右反転させたデザイン。腰にはパレオを巻いています。
そしてちょっと遅れて入ってきたのは。
「お待たせしました♪」
腰から胸元がビスチェ風で、裾はミニ丈フリフリ。ワンピースタイプの水着で、肩口はひらひらのオフショルダー。すごく可愛らしい、薄ピンクの水着に身を包んだ紗雪です。
むふふ~と、ニンマリ笑顔を浮かべる彼女に、猫口になった唇が開く寸前。
「コケティッシュな魅力あふれる、素敵なチョイスですね。少女らしい可愛らしさと、オフショルダーから覗く肩口に二の腕、胸元の妖艶さ」
「ふぇ……」
ふにっとした笑みのまま、固まってしまった紗雪の腰をぎゅっと抱き寄せると、ほんのり暖かな体温が、薄い水着越しに感じられ。
「うん、最高ですね」
「な、ななな、ナオさん! ちょ、それはずるいですよぉ」
ふふふ、紗雪は先手を取られるのに弱いですから。よわよわですから。軽く頬を膨らませ、でもまんざらでもなさそうなので。うん、良いですよね?
私は? と、所在なさげにもじもじしだしたルナリスと、2人同時に唇を奪ってしまいました。
「も、もう! 今日は、ぷ、プールで遊ぶんですからね! そ、そういうのは……夜にぃ」
「ふわふわ……です」
宝石を敷き詰めたような、裏に光源を仕込まれた色ガラスの天井。多様な色とりどりの花を咲かせる植物。ガラス張りの回廊から見える通路の手前には、美術品が収納されたガラスケース。
個人のお家の中にあってよい空間では断じてない気がしますが、この贅沢に、感謝しながら楽しむのが今日のコンセプト。
「ナオ……様、お手を……お手をどうか離さないで、くだ……さいませ」
「大丈夫ですよぉ、ちゃんとしっかり握っていますからね。さあ、
実は泳げないことが判明したルナリス。よく考えれば当たり前でしたね。
内陸にある王都にあって、王城の塔に幽閉されていた彼女が泳ぎに出かけるなんて、あり得るはずがありません。
今日、本格的な泳ぎの練習をするつもりはありませんので、触れ合いを楽しむことを主眼に、形ばかりの平泳ぎの練習。
なのですが……ルナリス、やはりその……純白の水着。いえ、それ本当に水着ですよね? ちょっと透けてきている気がするのですが?
『アメティスタ特製の水着ですよ。良かったですね♪』
『特製ってなにか意味が含まれてない!?』
堕天使ボディの私に戯れる紗雪がこっそり、耳元でささやくのですが。え? まさか現実の水着と違って、透けない工夫をわざとオミット(除外)したりしていません? あ、これだめ、絶対にしてそう。
実は今日の水着は、アメティスタたっての希望で、SEO内で彼女が手ずから仕立ててくれたものを、マテリアライズでわざわざ持って来ています。
普通は届くのに数日を待つマテリアライズの出力アイテムですが、この敷地内にもそのための設備があるそうで、1時間以内に持って来てくれるのです。まさに至れり尽くせり。
元々布をほとんど排除された、背中。V字に深くカットされたそこからちらちら見えるほっそりとした腰から臀部にかけての曲線。そして先程までは確かに見えていなかったはずの、たわわお尻の艶めかしいラインが、水着の内側に……。
「ナオ……様?」
急に上を向き、一生懸命平泳ぎで足を開いて、閉じてを繰り返していたルナリスを、前に進むのに合わせて抱き上げる私。
私達だけしか見ている人はいませんけれど、いませんけれどぉ……!
あ、これ、私もダメ無理。胸元も薄っすらと透けて、白い水着越しに薄っすらピンク色の……あまりの艶めかしさに興奮しすぎて鼻の奥がつ―んって。
もっと大胆なことをいつも一緒にしているはずなのに、どうしてこう、予想外の時のこういうのは別腹というかですね。
「ちょっと休憩にしましょう、ね」
そっと彼女の大変けしからぬことになりかけているお身体を、抱きしめ、水から上がり、ビーチチェアに。
ふわふわの、タオルでしっかりと包み込んであげましょうね。
ん、こしょばゆいですか? はい、もぞもぞしないで。ね? 見えちゃうから。何とは言えないけれど白いおみ脚を暴れさせたら、本当に見えちゃうから。
「こっちの水着はそういう悪戯はないので、大丈夫ですよ~。それとも~、やっぱりそういうのが良かったです?」
バナナボートをプールに浮かべ、背中から抱きしめるようにして2人乗りしている紗雪。元々露出している肩を、さらに水着のオフショルダー部分を引き下げ、すぼめ、見せびらかすようにしながら振り返り。からかってきます。
「そういう悪い子にはこうですよ~」
はむっ。露出した肩の付け根を、唇ではむはむ。
「ひゃぁん、く、くしゅぐった」
慌てふためく紗雪に、揺れるバナナボート。
4人乗りで大きめのそれの、思わぬ横方向の揺れに。
「あ……」
くるりと回転し、天地逆に。これ結構まず……!
泳げないとは言いませんが、元々得意ではなかったらしい、私。しかも、紗雪に悪戯をしていて呼吸も整えていなかったところで水の中へ真っ逆さま。
深さは立って顔が出る程度ですが、思いっきり水を飲んでしまいました。苦しさにさらに、水中で咽てしまい、空気を失う私。辛うじて、沈む寸前にSEO内で鍛えられた空中での方向感覚をフル活用し、腕の中の灰銀色の髪の少女だけは水面方向に押し出したので、彼女は既に浮上しているはず。反動でさらに深く、沈みこんだ私。
あぁもう、本当に私は何をしているのでしょうね。咄嗟の事に天使ボディの方で自分の状態を客観視する事も忘れ、堕天使ボディの主観視点のまま、呼吸困難に喘ぎ前後不覚に。
まじめに苦しさが限界に達しそうになる中。
膨れ上がる二つの魔力。
水面方向、そしてプールサイド。
渦巻く水の流れ、私を中心に据えたプール一杯の水の渦が漏斗状にできあがる。
強烈な空気の流れが沈みゆく私の身体を捉え、空気の泡で包み込む。水中で急激に戻った呼吸に呑んだ水をむせかえりながら吐き出す。
私を封じ込める空気の泡の揺り籠は渦に流され、プールの端へと流れつく。その時にはもう、黒い髪を広げ、私は水面にぷかぷかと浮かんでいました
ようやく天使ボディの方で状況を見ればよかったことに気が付き、状況を眺める私。
この状況を起こしてくれた2人は、未だ濃密な魔力をその身に纏い、緩やかな上昇気流のようなその流れに長い髪を逆巻かせています。
水の流れを変化させ、バナナボートごと私へと近づく紗雪。
飛び降りると、天井を見上げ漂う私を引き上げ。
「ばかぁ! こんな時まで、こっちを優先しないでくださいよぅ」
えぐえぐと、泣きながら私を引き上げようとする灰銀色の髪の人形少女。
溺れかけてひどい状態の顔をあまり見られたくはなかったのですが、そんなことは言っていられませんね。
「咄嗟に、大切な人を護ろうと体が動くのは、当たり前でしょう?」
「ばか、ばかぁぁ」
あ、それダメ、沈む。
泣きながら、引き上げようとしていた私のお腹に抱き着かれ、2人一緒に沈みました……。




