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『運命の供犠姫』私のVRMMO生活は、運命値極振りから始まる百合ライフ。呪いの装備は絆の証?  作者: malka
第2部 - 第7章

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168.7章 - 第9話 ”生放送『デウスの秘密、世界の変革』 後半 #1/2”

 鮮やかに色づいていく世界。

 近未来的な前衛芸術のようなビルディングが広がりながら、自然と融合した、SF風ファンタジーの世界。

 透明なカプセルの中に浮かぶ、先ほどまでスタジオであった空間。周囲は透明な膜で包まれていて、さんさんと降り注ぐ太陽、眼下に広がる近未来的な都市。


「さあ! ここからがこの番組『デウスの秘密、世界の変革』。その真の始まりですわ! まずは改めてゲストのご紹介♪ SEOプレイヤーで、知らない方はいらっしゃらないですわよね? 天使と堕天使、2つの姿を見事に使い分け、アレイスター王国第4王女ルナリス姫を見事救い出し。第001サーバーを世界で唯一のベストエンドへと導くキーシナリオを牽引した、ナオさん♪」


 先ほどまでの陰鬱とした状況から一転。

 情景の変化にも驚きを隠せずにはいるものの、呼ばれては答えないわけにはいきません。

 ここはひとつ、景気づけに。


 ふぁさり。すべての翼を展開し、ひらりと2つの身体で宙を舞い。

 青一色の、歓喜のコメントの流れを背景に、ドレスの裾をなびかせ、正面に向かって空中でお辞儀をば。


「そして彼女の愛する2人! 住民移住計画『夢現の架け橋』プロジェクトの第1号、ルナリス姫♪ そしてそして、彼女達を支える、ナビゲーションAI。紗雪嬢!」


 2人が同じくすべての翼を広げ、私の隣にふわりと舞い上がり、カーテシー。

 よくできましたと撫でようとする私に先んじて胸の中へと、ぽふん、と飛び込んできてしまったので行き場を失った手で、頭をなでなで。んん、柔らかな身体の感触、そして、甘い香りがして気持ちいい♪


「そしてもう一組。SEOプレイヤーの一部に大人気、呼び名の通り姉御肌、なのに可愛い犬猫に目がない、”草の姉御”」

「あーまあ、今日は風華でいいさね。もう日本中どころか、下手すりゃ世界中にばれてるしね。SEOでは今まで通りいかせてもらうが」


 一瞬の間が空いたのは、心の裡を確認したためか。

 先ほどまでの、植木鉢の中に1本だけのぺんぺん草が生えているというシュールな姿から一転。レディッシュブラウンの髪を靡かせるクールビューティーが、クリーム色のラガマフィン、にゃんこのミーちゃんを抱き上げ。


「風華だ。よろしくな。こっちが住民移住『夢現の架け橋』……2号って言っていいのかい、これ? まああたしのテイムモンスター第1号のミーちゃん。それと」


 ミーちゃんを左腕でそっと大切に抱きしめ。右手を伸ばし。

 上に向けた手のひらに顎を、ぽすんと乗せるサモエド。


「自分でしゃべればいいのによ。まあ、いいや。あたしのナビAI、ポンちゃんだ。知っての通り、この子が自宅周辺の警備システムを常時監視していてくれなければ。そして、デウスが治療を請け負ってくれなければ。あたしは死んでた。てな感じでまあ、よろしく頼まぁ。あたしの過去は知ってる人は知ってるだろうけれど。今は置いておいてくれな」


「最後に、わたくしの片腕。Deus ex Machina Corp.副社長にして私の私設秘書。斎賀ですわ」

「よろしくお願いいたします」


 ぇ……斎賀さん副社長さんだったの!? でも、私設秘書って……。


「地上波にも映像は連携されていますが……もうめんどくさいので交代の司会者とかいりませんわね。どうせろくでもないですし。このまま私と斎賀で進めさせていただきますわ。まあ、自業自得ですわよね。番組の趣旨まで捻じ曲げてもう。あ、視聴者の皆様? あとでニュースを追いかけていただければと思いますが、いろいろと。ええ、いろいろと、日本もましになると思いますので、これからもデウスとSEOをよろしくお願いしますわね。さ、じゃあ斎賀!」


 と、そこで振るんですね。

 ちょっとだけ、仕方がないなぁと、温かな表情を目に浮かべた初老の男性がスーツ姿のまま前に出ます。


「御覧の皆様、まずはこの空間についてご説明をいたします。ここはSEOに新たに設けられた特別なサーバー。現実に寄り添う、もう一つの現実。サーバー名称は各国共通で、”B001”と振らせていただいておりますが、その名は」


 バンッと、黒い背景に黄金色の文字が宙に浮かびます。表示されていたのは。


 ============

 ビジネス用ワールド

 “Elysium Catalyst”

(Steps to Elysium Online サーバー”B001”)

 ============


「”Elysium Catalyst”。 理想郷を示すElusionと、触媒・変革を意味するCatalystを組み合わせ。『理想の成果を生む触媒』の名を冠しましたわ! 元々の娯楽用VRMMO “Steps to Elysium Online“すなはち”楽園への道行き”と対を成す名前ですわね」


「はい。4倍加速のこの空間には契約いただいた法人、政府機関、個人の方、どなたでもスペースをご用意します。ログイン方法その他はSEOと同じ。こちらでの成果物はマテリアライズにより現実へ。また、現実の情報媒体、機材等の持ち込みも、先ほどのカメラクルーのようにマテリアライズの逆、現実から仮想への変換により容易に可能です。細かい事は平素通り、弊社ホームページや、各省庁等の案内をご確認ください」


 すでに滝のようだったコメントが、もはや光の点滅としか認識できない速度に。そんな情報を、斎賀さんは認識できているようで。


「せっかくですので。ナオさん? 皆さんで外を飛行してみていらっしゃいませんか? その様子をお見せしながら、いくつかのご質問をピックアップし、この場で私がお答えしましょう」



 はるほど。確かに、SEOのファンタジー寄りの世界とはまた全然違う。わくわくするようなSF的な世界ですものね。


 ルナリスと天使の私。紗雪と堕天使の私。2人ペアになって、逆方向へと手をつないで飛び出します。

 まず真っ先に気が付くのは、空気の匂い。

 都市というよりも、森の中。濃密な緑の薫りをたっぷりとすいこみ、日の光を浴びる。

 現代都市部ではそのために旅行に行く。などでもなければ、到底味わえないのびのびとした環境。


 『ん、気持ちがいいですね~』 翼を広げる背中をそっと伸ばしながら念話で呟く私に。

 『モンスター……の、気配もない、自然と……不可思議な景色。面白い……です』

 壁面を這うつたに咲く、色とりどりの花に近づけば、爽やかで甘い蜜の香り。


 『ナオさん、ルナリスちゃん、ビルの中にも入れますよ』

 『自動扉みたいに空中の窓が開きますね』

 通路が外壁まで伸びているみたいで、近寄ると地上40階位にもかかわらず、ガラス壁が開きました。

 もしかして、飛行して移動する事も意識しているのでしょうか。



 そんなわくわく探検に勤しむ私達の映像を、おそらく映し出しながら、天に浮かぶ会場では斎賀さんが質問を拾い上げています。


「情報の機密性について。これは契約上の条項を信頼いただくほかございません。政府による厳密な監査制度や規制についても未だ制定は完了しておらず。ご利用は各位、各企業様のご判断にお任せするところとなります」


 まあ、思考盗聴だなんだと、初期から言われていたわけですからね。それが、現実の機材、そして何より情報も持ち込めるとなれば……。物理法則や現象の再現性等、こちらでできない事は山ほどあるはずですが。そのあたりも何とかしてしまいそうなのが、デウスの怖いところですか。それでも、4倍加速の時間というのは労働者側のみならず、経営側にとってもあまりに魅力的でしょうね。

 と、ちょうどそれで気になった事の質問を拾い上げていますね。


「労働基準法との関連性。これは弊社が感知する事は率直に申しまして、できかねますが。いくつか、先行テストにご参加いただいた企業様においては、加速時間における労働時間を実就業時間とみなす。との決断を下されておりました。つまり。現実の1日が4日となるこの世界。こちらで8時間の労働をこなされれば、現実では2時間だけの就業時間でその日の勤務時間は終えられる。そういう事ですね。もちろんそれが可能な職種はかなり限定されますでしょうが……。負荷の状況なども見つつ、複合的な勤務形態をすでに模索されている企業様もございます」


 取引先との兼ね合いの在る職種では、どちらか一方だけが現実2時間で終わってはいお終いとはならないでしょうね。一方で、クリエイティブなお仕事、デジタルで可能なものなどはフルに恩恵を享受できるでしょう。

 実際、SEOの絵画、同人誌制作等。すでに恩恵を受けている作家様もあります。その際のハードルであった現実の機材、ソフトウェアも、解消できるという事ですから。



「また、取引先も含む、世界の多くがこの4倍加速の世界へと基盤を移行される将来が来たならば……? 4倍働かされるだけ? あはは、そんな夢の無い世界にはきっとどなたもなされたくないでしょう?」


 経営者や、新規ビジネスの立ち上げ、生き馬の目を抜く様なビジネスパーソン。確かに過重労働問題に拍車をかける器具もありますか。ですが、それも、このVR世界では強制ログアウトも可能。すべては”使う側次第”でしょうね。


 加えて、工場等の現実側の生産活動がかかわるような業種業態。

 これも、実働が紗雪のような体を持ったナビAIに手伝ってもらえるようになれば……。

 世界が変わる基盤を、着々とデウスは構築しているのではないでしょうか?

 世界そのものが受容できる体制に移行できるか。という問題には長い年月が必要なのでしょうけれども。


 会場の様子は見えませんから、私達の配信チャンネルのコメントだけちらっと見れば。


 `社畜の救済キターーー!!`

 `通勤ラッシュもなくなるとか神かよ`

 `昔の画面の中の儀時空間とは違う、SEOと同じ品質のVRMMO空間なら現実と変わらない別世界!`

 `1日が22時間自由時間ってこと!? 人生変わるわ`

 `いや、斎賀氏も言ってるけれど、そう簡単じゃない`

 `これに乗るか乗らないか、人材確保に相当大きな差が生まれるぞ?`

 `結果的に自然淘汰で、乗る企業が増えていく可能性、十分にある`

 `ナビAIの超性能もあるから、まじめに世界が変わりうる`

 `乗り遅れる企業もだけれど、国レベルで、ガチでやばくね?`

 `学生もこれ滅茶苦茶でかい! リアル2時間だけ学校行けばあと全部自由っしょ?`

 `確かに学生こそ、最大の恩恵を受けられそう。ネット授業と違って、生身の身体と同等の姿で友達とも会える`



 慎重な意見もありつつ、おおむね期待感爆発という感じですね。



 ふと横を見れば、ルナリスはあまり実感がないためか、微笑を崩さず真剣に聞いてはいるものの。

 内心では大分、ぽやぽやとしていますね? 私にはわかりますよ?

 あ、あれが気になるんですね?

 『行ってみましょう』

 『はい……!』


 そっと視線の先を追って見える、噴水。それも、何とも前衛的というか。

 あるべき台座のようなものは何もなく、無限に循環する水流が、空中で球を形成。

 さらにはその球がいくつも合流したり、分断されたりを繰り返して、目に楽しい演出がなされています。

 『水魔術……で、このような……芸をする方がいると……聞いたことはありましたが』

 『たしかに。空中での水のお手玉というか。こんな芸があったら楽しそうですね』


 紗雪は紗雪で、一緒に楽しみながらも、私達の配信の方のコメントも一生懸命捌いてくれています。

 ちなみに返答を見ている限り、この空間、B001サーバーに関する情報は紗雪も知らなかったみたいですね。

 私に内緒にされていなくてよかったです。ちょっと拗ねてしまうところでした。




「このご質問を最後にしましょう。国際的な連携について。B001サーバー、Elysium Catalystは、全世界共通で1つのワールドとなっています。ただし、国や地域。現実における通関、出入国管理と同じ境界を仮想的に設けております。ここを通過するには各国政府が定めた基準、手続きを経ていただく必要があります。密入出国は溶岩の大海原を素足で渡るよりも厳しいと、お伝えいたします」



 正直。SEOという時間4倍加速のVRMMO登場から、その世界を活用したビジネスというのは既に、考えられていました。

 そこでのハードルはやはり現実とVR世界での当時では情報の可搬性(持ち込み、持ち出し)。当時はまさか、物質までもが現実とVRで行き来できるなんて誰も思っていませんでしたからね。

 それをまだ、初期段階で手探りとはいえ、各国政府も巻き込み実現にこぎつけるとは。



 あ。屋上に何でしょう車?

 でもタイヤが無くて……これ、ホバーカーとかそういうものでは?

 ひょっとして、空飛ぶ車で移動できるのですか、ここ。


 普通にビジネス用途だけではなく、観光地としても人気が出そうですね。


 SEOの中にももしかしてこういう世界観の大陸もあったりするのでしょうか。

 まだ聖国マリシア以外との大陸間移動の目途はどのプレイヤーも、おそらくたっていませんが、楽しみが無限に広がっていくのをまた感じます。


 とはいえ、まずは今の初めの大陸、アーカリア大陸での問題を片付けるのが私達は先決ですが。


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