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『運命の供犠姫』私のVRMMO生活は、運命値極振りから始まる百合ライフ。呪いの装備は絆の証?  作者: malka
第2部 - 第7章

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167.7章 - 第8話 ”生放送『デウスの秘密、世界の変革』 前半 #2/2”

「発言は挙手をして。結論だけを端的に、ぎゅっとこう、お願いできますかな?」

 司会の百瀬が、傲慢な笑みを浮かべて、勝手かつ無礼な言葉を返します。

 スタジオ全体が赤く明滅するモニターの光に染まり、異様な威圧感が場を支配していました。



 一瞬、風華さんに目配せする彼女。

「(๑•̀ㅂ•́)و✧グッ! ヤッチマエイナ」

 そんな吹き出しが、猫じゃらしの上に浮かび。


「一昨日。とある女性SEOプレイヤーにして配信者の自宅が襲撃されました。当然ご存じですわよね?」

 映像には音声も付随していました。これは、ニュース番組。あぁ、今出演している人達もワイプで写っていますね。


 『こうした、多数の問題が取りざたされるSEO。その一つに独自配信サイトを通じた、プレイヤーの誰しもが配信者になれる。視聴者の心の動きに応じた報酬がもらえると。まあこのような何とも怪しいビジネスを展開しているDeus ex Machina Corp.という企業なわけですが』


 スタジオのモニターが移り変わり、映っていたのは、レディッシュブラウンの髪をお嬢様スタイルにまとめた、目つきの少し鋭い、非常に美しい30代前半ほどの女性。


『さて、ここでその実態を見て見ましょう。これは”草の姉御”と呼ばれるSEOプレイヤー兼配信者。その正体は、3年前にVTuber活動を引退した花菱 風華。毒舌と本音トークで人気だったそうですが、聞くに堪えない低レベルな活動ですね』


 イラスト風のキャラクター、姉御肌の美女が配信の視聴者と語らう姿の映像を前に、好き勝手なことを言い合い。爆笑、嘲笑するスタジオ。


『ある社会問題化した行動がきっかけで炎上、引退。その後、清楚系VTuberとして再デビューするも不倫関係が発覚し炎上。と、まあこのような人間が配信活動などと称して、投げ銭? ですか? をせびると。まあ世も末でありますな』


 今もここで司会者をしている百瀬が、映像の中で締めくくる。


 猫じゃらしの、風華さんの頭上に浮かぶ吹き出し。

「不倫は、誤報ナー。あたしゃ誰とも付き合った事ないぜ~。一方的に付きまとわれてただけ ╮(´-ω-`)╭」

 なるほど、これは彼女に関する事なのですか……。


 本人の顔が出る事などあり得ないはずの職種。にも関わらずどこから入手したのか、素顔を晒し、果ては学歴、住所。ありとあらゆる情報を駄々洩れに話す。嘲笑を浴びせる。

 個人情報など無視し、ただの一般人をあげつらう、醜悪極まりない情景。



 ――画面が切り替わる。



 そこにはレポーターがマイクを手に、興奮したようにわめき散らす姿。

 周囲には黄色いテープの封鎖線が張られ、警察官が出入りする様子が見て取れます。


 『花菱 風花の自宅前にいます! ナビAIの通報により、駆け付けた警官隊に犯人が取り押さえられています!  風花は……あ、今出てきました! 担架に乗せられた風花が今、出て来ました。ちょっと、コメント、コメントと映像。撮るわよ、来なさい!』


 駆け寄るレポーターとおそらくカメラクルー。揺れる画面。

 押し戻そうとする警官すら押しのけ、刺し傷でしょうか……血まみれの女性の姿をアップで映し出す報道カメラ。


 『元国際問題を引き起こしたVTuberにして、SEOというゲームの配信者、花菱 風花です。中で何があったのかいまだ不明ですが、複数の男が押し入り、このような有様です』


 もう少し現実の出来事も意識すべきでしょうか。こんな凄惨な出来事があったとは……。

 ルナリスは、と見やるとショックを受けた。というよりも、怜悧な美貌に冷たい表情を浮かべ、凍てつく視線でスタジオの反対側の人間達を見据えています。

 紗雪も、表向き微笑を浮かべながら。ああ、翡翠の瞳は一切笑っていませんね。今ここに、いつもの魔導銃、対物狙撃銃があればスコープを覗き、破壊の魔弾体がすでに装填されていた事でしょう。



 出来事の予想を裏付け、補完するように。夢咲CEOが言葉を発します。


「貴女方の不適切な報道により、住所を特定された風花さんは、不法滞在中の某国の人間に襲撃を受けました。このほかにも散々、悪意を先導するような事実無根の報道を。実名、住所まで晒し上げ、繰り返し行っていましたね」


 真っ赤に染め上げられた、多種多様な配信コメントの背景の前。

「当然でしょう。事実であり、これは国民の知る権利を守るための活動なのですから。SEO? VRMMO? その上にマテリアライズに、治癒魔術? ばかばかしい。金銭的詐欺にとどまるならまだしも、国家間の安定を損ない、人民の精神の安寧をも貶めるなど。我々、教育する立場にある報道機関が、正しく導かねばならないのです」

 ふてぶてしく、不遜な態度で。臆面も言い放つ百瀬。


 他のコメンテーターも、相変わらず、豚のようにわめいていますね。


「まあ、あたしはデウスのお陰で無事、治療も受けられたし。あの襲撃だって、ポンちゃんが緊急通報を発報してくれたから警察がぎりぎり、間に合った。だからもういいのさね」

 それまで、顔文字を浮かべるだけで、言葉は一度たりとも発信買った”草の姉御”が、声を大にして告げます。


「でもなぁ。なんだいなんだい今日のこれまでのくっだらない、おためごかしは。どこのお国の手先だか知らないけれどねぇ。こんなことを繰り返して、次は誰がどんな犠牲者になるか。わかったもんじゃァないんだよ。なあお前らそうだろ!?」


 `おうよ、姉御ぉ`

 `姉御が超美人すぎて、もう一生ついて行くっす`

 `あの時、引退するのを見送るしかなかった。俺はもう、間違わねぇ`

 `2度目の引退だって、テレビ局の差し金じゃねぇか。んだよ、睡眠薬盛られたって`

 `姉御には俺らが付いてますぜぇ`

 `とっちめてやってくだせぇ`


「相変わらずうちのリスナーは言葉が悪いねぇ。だが、それがいい! まあ、今日はあたしじゃなく、彼女がぶちかましてくれるから見てなぁ」


「うふふ、”草の姉御”、承りましたわ」

 黒いシルエットのまま、妖艶な嗤いを漏らす夢咲CEO。



 彼女の周りに、一気に何十ものモニターが空中に投影される。半球を成すように、ドーム型に展開される数多のモニター。


 そんな近未来幻想の光景の中から、彼女の手が触れると。触れられた画面が大きくステージ中央に、次々と拡大されていく。夢咲CEOは、組んでいた脚をことさらゆっくりとゆっくりと解き、前傾姿勢になります。

 その仕草だけで、猛禽類に狙われた小動物のように、向かいの席の男たちがビクリと肩を震わせました。



「皆様は仰いましたわね? 『国民の安全』、『公平性』、『人権』……そして『倫理』と。ええ、素晴らしい御題目、実に結構。ですが、その言葉を吐く口で、裏では何をなさっていたのかしら?」


 彼女が指を鳴らすと、紗雪からも念話が。

『ナオさん、行きますね~♪ いやぁ、デウスの情報バックアップ、半端じゃなかったですよ!』


 瞬間、背後の巨大モニター群に、無数の画像とテキストログが滝のように流れ始めました。

 私がとんでもないリソースを現実サイドに拡張してしまった、紗雪の特大演算能力。そしてもちろん彼女自身の資質。

 さらには、デウスが元々収集し、そして今、この場でび我慢の時間を用いて、読み取っていたであろう彼らの思考。


 その集大成が今ここに、開示される。



 まずは、『雑魚』から、という事でしょうか。


「な、なんだこれは!?」

 最初に悲鳴を上げたのは、人権活動家の芸能人アガトでした。


 モニターの一つに大写しにされたのは、理路整然と並べられた証拠と共に、彼の様々な情報。

 SNS裏アカウント、共演者とのやり取り、プロダクションとの通話内容……出るわ出るわ、次から次へと。

 それらには、彼が表で語る綺麗事とは真逆の、醜悪な言葉が並んでいます。


 『ブスは生きている価値なし』、『あの女優、枕営業確定だろw』、『〇〇〇雇用とかマジ勘弁、効率落ちるわ』

 『XX:XXに、部屋な』、『XXXが足りないんだけど』、『〇〇に貢がせればいいんだって』


「こ、これは……捏造だ! デウス社の陰謀だ!」

 顔面蒼白で叫ぶアガトに、隣の紗雪が冷ややかな声で追い打ちをかけます。

「IPアドレス、端末の個体識別番号、位置情報、すべてご本人のものと一致しています。また、第三者の証言もほら、この通り。……多様性と人権を謳う方が、裏では随分と差別的な選民思想をお持ちのようです」


「ふ、フザケルナ! ほ、法律違反だ! 情報を」

 自身の欺瞞を暴かれ、言葉を失うアガト。

 ええ、確かに情報の入手経路次第では、違法行為足りえますね? そんな証拠も残っていないでしょうけれど。

 なにより、彼に。人気商売を糧とする彼にとって、これは致命的。


 その上……。


「あら。見てお分かりになるでしょう? これは全て、貴方の『お仲間』からの情報でしてよ?」

「う、嘘だ!! あいつらが……」

 言いかけ、蒼白となる彼。


 馬鹿ですねぇ。



 もはや追及する価値無しとばかりに、その失言を嘲笑と共に蹴り捨て、目線を移す夢咲CEO。

 なにせ、これもまだ序の口。


「さて、次は岩見先生と橋田様」

 黒蝶姫の視線が、脂汗を流す政治家とジャーナリストに向けられます。


「貴方達は『技術の独占は悪だ』『海外へも提供しろ』と仰いましたわね。特に、現在サービス提供を中止した諸外国へ。そもそも、サービスを停止させたのは先方です。私共は平等に、世界全ての国での同時サービス開始をSEOについて行いました。それに対し、無茶な要求を行い。そのご希望に沿ってサービス提供を中止したまでの事。まあ、それは置いておきまして」


 新しいモニターが開きます。

 そこには、銀行の入出金記録と、密会写真。そして、生々しい音声データが波形と共に再生されました。


『――ええ、デウスへの圧力はかけ続けますよ。この法案さえ通してしまえば、彼らの手足はもいだも同然。技術譲渡は時間の問題』

『頼みますよ先生。あちらの国、〇〇も心待ちにしている』

『成功報酬はいつものように。ハハハ、いつの時代も、お国のため。そして、世界のためという建前は便利なものですな』

 『ゲームの提供にうつつを抜かしておるまでは、まだよかったものを。マテリアライズなど冗談ではない。踏んではいけない虎の尾というものを、理解しておらんのだよ』


 会場が凍り付きます。

 岩見議員の声と、橋田の声。言い逃れようのない、数々の売国の証拠。

 それも、彼ら2人はあくまで、末席に顔を並べて調子のよい事を言っているだけ……その録音の続きでは……。


「な……ば、馬鹿な……どこでこれを……」

「安全性が確認できない? ええ、その通りですわ。貴方達のような『国を売って私腹を肥やすハイエナ』に渡せば、マナ技術がどう使われるか。安全性などあったものではありませんもの」


 夢咲CEOは嘲笑を浮かべ、カメラに向かって言い放ちました。

「デウスが特定国へのサービス再開ならびに、マテリアライズサービスの開始を拒否している理由。それは差別などではありません。彼らがこの技術を『兵器』として転用しようとしている明確な証拠を、我々が掴んでいるからです。……ねえ? 平和を愛する国際ジャーナリスト様?」


「あ、あ……あ……」

 橋田はガタガタと震え、岩見議員は椅子から崩れ落ちそうになっています。


「放送を何故止めていない! CMだ! 今すぐ切れ!」

 司会の百瀬が狂ったようにスタッフへ怒鳴ります。


「無駄ですわ、百瀬さん。そもそも、地上波では放送は止まっているでしょう。愚かしくもね? ですが、この場所がどこかすらお忘れ? 世界中のあらゆるメディア、媒体へと私共デウスから直接生配信しています。そこのカメラクルーたちはお飾り、地上波向けの映像にしか使われてもいませんわ。局の上層部も、今頃頭を抱えているでしょうね。……ああ、そうそう」


 黒蝶姫は、最後に百瀬を見据えました。


「貴方も無関係ではありませんからね? 貴方が過去に揉み消した、女子アナウンサーへのセクハラとパワハラの示談書。他意にもまあ、いろいろな書類に、電子データ。ええ、たんまりとございますわね? あ、それに……なるほど? もっといろいろと面白い事、お隠しだったようね?」


「し、思考盗聴!?」

「さぁ? 何の事かしら?」


 頭を抱えてうずくまる百瀬。


 四者四様の断末魔。

 正義の味方のような顔をして私たちを断罪していた彼らが、今や醜悪な罪人の顔を晒しています。


 私は隣のルナリスを見ました。

 彼女は、悲しそうに、しかし毅然とした瞳で彼らを見つめています。

『ナオ……様。これは、現実の……“汚れ”なのですね』

『ええ。でも、これが全てではありませんよ』 『むしろこういう輩を許さない、そういう方の方が圧倒的多数なのです。まあ、しばしば行きすぎますが……』


 私は空中に浮かぶコメント欄を指さしました。

 先ほどまでの罵倒は消え失せ、驚きと、そして「ざまぁみろ」という熱狂が渦巻いています。


 `うわぁ……全部真っ黒じゃん`

 `裏垢バレは草`

 `売国奴が逆に売られてやんの`

 `デウス社、諜報能力えぐいなぁ。てかそれ、本当どこから手に入れた`

 `テレビは放送中止してるw でもそもそもテレビでなんぞ見てねぇしww`

 `徹底的にやれ! 膿を出し切れ!`

 `おい、特報ラッシュやべぇ、ネットでもテレビでもいいからニュースみろww`


 流れは変わりました。


 しかし、夢咲CEOの追及はここで終わりません。

 彼女は冷徹な瞳で、カメラの向こう側――この茶番劇を仕組んだ『黒幕』達へと宣戦布告します。


「パネリストの皆様は、所詮は捨て駒。隠れ蓑の操り人形。トカゲのしっぽ。……本当に罪深いのは、彼らを使って世論を操れると。愚かにもこの時代にあっても信じている、裏にいる権力者達です」


 画面が切り替わります。

 そこに映し出されたのは、ニュース速報のテロップ、緊急特番、ネットニュースサイト。



 『ニュース速報です。BPO(放送倫理・番組向上機構)の室越委員長ならびに、峰野木事務局長について。運営資金流用の疑いで、関係先への強制捜査(家宅捜索)が入りました』


 また別の画面には

『総務省事務次官、荒波裂氏の記者会見が間もなく始まります』

『情報流通行政局長が本日付で更迭。その背景に、特定の企業に対する便宜供与の疑いが……』

『総務省の情報流通行政局長が本日付で更迭されましたが、その背景には、長官自身の中央合同庁舎のセキュリティー対策の調達案件を巡る贈収賄の疑いが浮上しています』

『……中央合同庁舎監視カメラ導入に係る調達において、外資ベンダーから高額な賄賂を受け取っていた疑いが』


 さらに別の画面では

『こちら外務省前です。総合外交政策局”長真備(おさなぎ)局長”の接待疑惑について、事情聴取が行われているとの情報が入ってきています。現在時点、こちらでは目立った動きは見受けられませんが、引き続き状況に注視して参ります』


 さらに、さらに……。


『総務省・大物次官に収賄容疑 東京地検特捜部が強制捜査へ』

『BPO委員長、資金流用疑惑で辞任表明か』


 現実世界でも、すでに『大掃除』が始まっていたのです。


「な、なんだこれは……。じ、次官が? まさか……」

 岩見議員が、引きつった顔でモニターを凝視しています。そこに映し出されているのは、彼が頼みにしていた『後ろ盾』達が、次々と検察や警察に連行されていく姿。


 黒蝶姫は、まるで天気予報でも読み上げるかのような気軽さで解説を加えます

「ふむふむ? 総務省の情報流通行政局長、本日付で更迭。理由は、特定企業への便宜供与疑惑。……あら、岩見先生? この局長、貴方の義理の弟さんでしたわよね?」


「ひっ……!」


「外務省前からも中継が繋がっていますわ。総合外交政策局、局長が、外国勢力との私的な接触――事実上のスパイ行為……失礼、”不正な資金の流れに関する事情聴取”で任意同行を求められています。橋田様、貴方が『国際社会の声』と呼んでいたのは、この局長を経由した某国の……えーと」


 彷徨うように指を空中に躍らせ。

 何枚もの、外国語の書類が投影され。


「これら『指令書』のことでしたかしら?」


「あ、ああ……終わりだ……」

 橋田は糸が切れたように崩れ落ち、仮想の身体で、失禁すらしているようです。


「放送を……止めろ……こんなもの、流していいはずが……そ、そうだ! こ、国際的な書面、機密の漏洩だ!」

 司会の百瀬が、もはや言葉にならないうめき声を上げています。

 しかし、黒蝶姫は慈悲を見せません。


「あらぁ。随分と一斉に、大変なニュースが続々と。のようですわねぇ? こちらリアルタイムの、現実世界での映像でしてよ」

 黒い影、偽物のシルエットとしてのみ表現されている夢咲CEOのアバターの口元が。

 にーっ。

 と、三日月形の笑みに裂ける。


 司会者の百瀬と、コメンテーターの橋田が、手を微妙に震わせ、顔を見合わせる。その顔面は隠しようもなく蒼白。



 元政治家の岩見があわを食ったようにわめき始める。

「あり、ありぇな。い、いい、いいかね! SEOの提供を取りやめた国々は新たな、そう! 新たな画期的な仕組みをすでに準備しているのだ! 今、今ここで”この国”がデウスの技術を獲得し、世界基準を作らねば……」

 おや? 泡をくって喚き散らし始めた彼の動きが。ぴたりと止まりましたよ?

 と、思ったら、白目をむき、魂が抜けたように崩れ落ちてしまいました。


「そこの岩見さんは、大変気になることを仰られていましたわね。そして……ひどい事をしますのね。ご冥福をお祈りしますわ……」

 ――これは後日知った事ですが。岩見氏は『興奮による脳梗塞』で、この時、この瞬間に、他界された。

 そういう事にされたようです。漏らしかけていた、ある秘密と共に。

 もちろんこれはデウスによるものではない事も、知りました……。



「ああ、そうそう」

 黒蝶姫の視線が、百瀬を射抜きます。

「百瀬さん。先ほどの”草の姉御”への許しがたい狼藉ですがね? 貴方が裏社会の知人に『生意気な配信者を黙らせろ』と電話していた音声データ、警察に提出済みですわよ?」


「んな……ち、違う! 私は言われた通りに喋った! そ、そう、台本。台本を読んだだけなんだ! 局長が!」

 百瀬は演台にしがみつき、無様に命乞いを始めました。権威を傘に着ていた男の、あまりにも惨めな末路。


「見苦しいですわね。……さて」




 黒蝶姫の表情は一転、冷徹な処刑人から、慈愛に満ちた女神のような微笑みへと変わっています。



「どうされます? まだ続けられますか? 私としましては、すぐにログアウトし、身辺の整理……いえ、もう遅いですわね。さようなら」

 今度は残る3人、そしてスタッフたちが一斉に消えました。

 こちらは恐らく、強制的に外部からログアウトさせられましたね。



 空白の空間に残されたのは、デウス側陣営のメンバーのみ。

 そうして、夢咲さんが宣言します。


「さあ、皆様。つまらないお時間に付き合わせてしまい、申し訳ありませんでしたわ。ここからが、本日の本番ですわよ!」


 そうして彼女が両腕を広げると……!


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