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『運命の供犠姫』私のVRMMO生活は、運命値極振りから始まる百合ライフ。呪いの装備は絆の証?  作者: malka
第2部 - 第6章

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155.6章 - 第24話 ”〇〇〇の〇〇所 #2/2”

「これは、また。邪神案件かと思ったら」「マッドサイエンティストとか、そっち系でしょうか」

「むごい……です」


 部屋の奥に並ぶ多数の培養槽。薄緑色の液体に満たされ、様々な配管や、正体不明の魔術と機械文明が融合したような器具が、取り付けられた装置群にとり囲まれるその中。1つの培養槽に1つ、浮かぶのは『脳髄』。


「人間ぽいのもありますし、明らかに違いそうなのもありますね。これとかたぶん、外にいた事も考えればゴリラかな?」

 紗雪が一つ一つ、おそらく現実側で手に入る情報も参照しながら、教えてくれます。


「見ていて決して気色のいい物ではないですね」 「とはいえ、帝国で見るような魔導具とも明らかに違いますし、せっかくなのでアメティスタ達も呼びますか」

「あー……はい、すごく喜んでいますね。あ、来る? はい」

 紗雪が早速ドール体で”悠久の楽園”にいるアメティスタに連絡をしてくれたようで。言い切る前に。

 後ろに扉ができたと思うや否や、淑やかに両手を前に重ねてそろえ、しかし高速に飛翔して出てきた、薄紫色の髪、アメジストの瞳の少女人形。と、彼女の部隊の子達。


「お呼びいただけ、光栄ですわ! 早速、早速調べてもよろしいでしょうか」

「え、ええ。どうぞ?」

 かなり、マッドであれな情景ですが。彼女たちにとっては知的好奇心の方が優先なのでしょうね。うん、普段一番お淑やかですが、アメティスタもあれでこう……。


 きゃ~、わ~と、嬉しい悲鳴と共に、あっという間に未知の装置に取り付く彼女達。


 `ドールの子達、かわいいぃぃぃ`

 `アメティスタ様~`

 `うちはホムンクルスにしたけれど、魔導人形もいいな~~`

 `皆ドレスなの、拘りを感じる`

 `アクセとか、ドレスのアレンジが違って、個性があるのも、いいよね~`

 `姿は優雅、しかし本質は職人`

 `測定系の魔法とか、バンバン使ってるんだけど`

 `●解析班:見た事もない解析系魔法が飛び交っているんですが……`


 ああ、スキル結晶を買い与えるだけでなく、彼女達が独自に研鑽を積んでいますからね。その上、神代魔導人形に進化した事で、特殊な魔法やスキルに目覚めた子達もいるようで。私も全部はとても把握できていません。

 私達の中でも紗雪だけでしょうね、全部きちんと把握してくれているのは。感謝感謝です。


 なんて、私の思考が伝わったのか、つんつんと私の脇腹をつついて、陰に隠れてしまう紗雪。恥ずかしがらなくてもいいのに。


 なんて、ワイワイしていると。突如切り替わる視界。

 確かにアメティスタ達を後ろから眺めていた私達。ところが、今の一瞬で、背にしていたはずの私が開けた壁の穴が、眼前に。クロノス・ジュエルバタフライ、”セレスティア”による、瞬間的な短距離転移。

 と、いう事は何らかの脅威が私達を襲ったという事。


 一拍遅れ、連続する射撃音。さっきまで照れ隠ししていた紗雪が、ウェポンシステムに命じ、射出した無数の弾丸。

 煌めく一閃の輝き。意識の隙間をすり抜けるような、無拍子に振るわれたルナリスの一刀。

 天使ボディを翼で射出し、振るった双短剣に触れる確かな手ごたえ。瞬間、融炎の発動。深紅の焔が黒い影を焼き尽くす。

 傷も負った堕天使ボディは、一歩下がり、アリアと共にアメティスタ達を背にかばう。


 焼滅した2体は別として、床に転がるのはきれいに真っ二つにされた物が2体。穴だらけの物が4体。

 計8体の……。


「ナオさん~、これはさすがに、いくらなんでも! きもちわるいです~」

「これは、さすが……に」

「「うん、無いですね」」

 ええ、動く脳髄の触手包み。


 まじめに、どうしてこう、私達の行く先々はえちぃのとか、気色悪いのばっかり……。

 ただ、それ以上に。私の胸中では煮えたぎるような怒りがふつふつと燃え盛っていました。

 この触手の生えた脳髄のような生物。あの時はすぐに私が対処したので、ルナリスはもちろん、紗雪も気が付いていませんが。邪神ナイアルラトテプと、クロウリード王の暴虐にさらされたルナリスの……頭部に張り付いていたのが……こいつと酷似していたことに気が付いたのです。


 どういう関係が。一体全体どういう由来で。

 必死に、この怒りとが2人に魂核経由で伝わってしまわないよう。心の中でも平静を装う私。


「皆様、名前が鑑定できましたわ」

 さすがアメティスタ達、鑑定、解析系のスキルにおいても、専門的に習熟していますからね。


「あちらの死骸が、”ミ=ゴの実験体”。この脳髄が”ミ=ゴの使役体”、だそうですわ。ついでではありますが、あちらの装置群、それぞれ細かく役割は異なりますが、総じて称するなら、”ミ=ゴの実験装置”ですわね」


 聞きなれない名前に、紗雪を振り返すと、早速ナコト写本の知識も含めて、検索してくれていた彼女が


「ミ=ゴ。邪神系シナリオの一環と思ってよさそうですね。それ自体は邪神ではなく、同じ神話体系における、地球外生命体のようなものです。これまた諸説ありますし、SEOにおける扱いはいろいろあるでしょうけれど。総じて、人間や鉱物資源を採取するために、たびたび地球を訪れている。邪神の崇拝し、身体改造を忌避しない。利己的で人間とは敵対的。等々」

「なる、ほど? 簡単に言ってしまえば」「邪神崇拝なマッドサイエンティスト種族。みたいな?」


「当たらずとも遠からずですね。とりあえずはそのご理解で良いかと」

「では……この場所は、彼ら……の、研究室のような……もの、でしょうか」

「そう思って差し支えなさそうですね。ここが本拠地なのか、その中の一つにすぎないなのかはわかりかねますが」


 `まさか、彷徨いの樹海にこんなものが隠されているなんて`

 `てことはさ、黒い兵士って、そいつらの実験で生み出された何かって事?`

 `ねえ、それ、脳髄の見た目してるよね……`

 `元人間を改造して、黒い兵士に……してた?`

 `え、待って待って。ならなんで、アレイスター王国とかは、そいつらを操ってたの?`

 `ナオ氏達、いきなり重大情報ぶっこむのやめてもろてぇ`

 `おい、これ、他のサーバーもすぐ調べるべきじゃね?`

 `初期サーバー群では001サーバー以外無理だって、彷徨いの樹海まで到達できない`

 `南側から海ルートならあり得なくはないかもだけれど、多分近寄る前に沈められる`


「ご事情を紗雪様のドール体から伺っておりましたが。立ち寄られた村落、おそらくそこの住民は……」

 と、アメティスタが恐る恐る、告げる。


「なるほど。なるほど? つまりこの彷徨いの樹海に呑まれた。まあ、どの範囲までかはわかりませんが」「村や町の住民は、ミ=ゴ? という敵性種族に捕まって……」

「むごい……」

「住民の異様な様子にも、得心が行きますね。もしもあそこに長居したり、食事など受け入れていれば、今頃もしかすると私達も脳髄を抜き出されたり……あそこを離れるナオさんの選択は正解でしたね」


 その後、この施設。仮に”ミ=ゴの研究室”と呼ぶことにしましたが、を探索してみると、出てくるわ出てくるわ。

 警備兵替わりに置いていたのか、襲い掛かてくる黒い兵士達。その外観や身体的特徴もまちまち。アレイスター王国が使っていた量産の兵士というよりも、ワンオフのカスタマイズモデル。まさに実験体だったのでしょう。

 そしてそのどれもが、脳髄が別個の生命体のように、襲い掛かってくる。むしろ、身体は乗り物みたいなもので、こっちの改造された脳髄”ミ=ゴの使役体”が本体なのでしょうね。


 そして、研究施設を見て回るうちにだんだん、アメティスタの表情も険しくなっていき。

「面白い施設かと、初めは思いましたが……美しくありませんわ」

 と、扇で口元を隠しながら、その瞳に冷たい怒りを宿すアメティスタ。

「魂を……存在の根源を、ただの消耗品。代替可能な演算装置でしかない物のように扱っている。自分達の都合の良い玩具のように、ただ弄んでいる。おそらく『ミ=ゴ』自身が遠隔から乗っ取り、乗り換え。あるいは、中身を書き換えて都合の良い端末のように改ざんし。これは、魂を宿す。魂を宿さんと目指す者への冒涜です」

 その言葉には、終ぞ口にされたことはない。うちの人形少女の子達。その本心での願いも込められているような気がして……。ナビAIですが、紗雪は例外と斎賀さんからも聞いていますが……何か道筋はあるのでしょうか。


「邪神の信奉者の多くが、魂を神への捧げもの。神を降臨させる燃料とみている節もあるようですからね。何かを生み出す、そういう思想とは逆行していたとしても不思議ではありません。アメティスタ。私達はこうはならないよう、反面教師にすればいいのですよ」

 紗雪がそっと、アメティスタの手を引き、小さなその身体を胸元に抱きしめます。

「そう、ですわね。悔しいですが技術力、蓄えている知識は異質にして膨大なのでしょう。私たちも頑張りますわ」

「いい子ですね~」




 ――陰鬱な気分になる探索の果て、いよいよ残す区画もわずかだろうという所。


「どうしました?」

 ルナリスの様子が。

 すっかり剣術の師匠の座に納まっているブローチから、2本の銀の剣が勝手に浮かび上がり、何かを訴えかけるようにルナリスの眼前を飛び回っています。


「なにか……伝えたいみたいで……」

 と、ふと思い立ったように、空間拡張のベルトポーチから、彼女が取り出したのは1枚の羊皮紙。

 それは、クエストスクロール “想いと技、託して”でした。


「表記……が、変わりました」

 以前までは、『鍛錬あるのみ いづれ、標(しるべ)は示される』と示されていたそれ。

 今の文面は『時、来れり。継承者たれ』。


 その文字をルナリスが確認したのを見届けるや、宙に浮いた2本の剣は今までにない速度で奥へ。残る未探索の扉の奥へと、まるですり抜けるようにして消えて行ってしまいました。


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