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『運命の供犠姫』私のVRMMO生活は、運命値極振りから始まる百合ライフ。呪いの装備は絆の証?  作者: malka
第2部 - 第6章

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154.6章 - 第23話 ”〇〇〇の〇〇所 #1/2”

 `なにここ、いきなりなんか、SFっぽい?`

 `アレイスター王国の騒動の時、動画で紗雪嬢が捕まってたところに似てる`

 `なんか不気味`


 大樹の間を抜けた先にあったのは、地面に斜めに深く深く開けられた大穴でした。上空はあまりに巨大な樹木の上部に覆われているものの、その直径10m程の大穴はしっかりと覆い隠されており、仮に上空を飛行しても、発見は困難でしょう。


「紗雪。大丈夫ですか?」

「ん。もう平気ですよ……って、ナオさん過保護ですよぅ」

 翡翠色の瞳を見つめ、額に軽くキスをして、ギュッと抱きしめる堕天使ボディ。彼女のトラウマの場所となっている可能性がありますからね。あの邪神アザトース召喚の場所は。そしてコメントにある通り、ここはあまりに類似している。

 まるで、近未来の宇宙船か、研究施設の中のよう。金属質の壁に、蛍光灯のような、壁の上下に埋め込まれた青白い照明。魔法の光とは違う、冷たくて目が痛くなるような人工的な光。


 『それに……あの出来事のおかげで、私は魂を得て、ナオさんと本当の意味で結ばれたんですよ? もう私の中で半分は良い思い出です。怖かったのは……そうですけど』

 そっと念話でささやかれる紗雪の気持ち。

 『そうですね。だからこそ、その怖かった半分を、私に少しでも預けてください』

 さらにギュッと抱きしめる小柄な身体。森を抜け、戦闘の後だというのに、灰銀色の柔らかな髪からはほんのり優しい香り。

 現実にもマテリアライズさせてもらった絆のアクセサリーが、抱きしめた頭で深紅の輝きを放っているのが視界の隅に。


 気丈にふるまっていますが、こうして、深く抱きしめれば微かな震えを隠しきれていないのが、全身で感じ取れます。

 紗雪はすぐに強がって、本心を隠してしまいますからね。これは、無理をさせないようにしないと。と、心の中でしっかりと気持ちを入れなおします。


 それと、あの時の疑問。いくら邪神とはいえ、ゲーム内の存在にすぎないはずのナイアルラトテプが、どうして紗雪。デウスの管理区画にあるはずのナビゲーションAIの演算領域へハッキングなんてしかけられたのか。


「ルナリス、気配はどうですか?」

「わずかな……神気は……感じますが。邪神、あるいはその断片……程の濃密さに……は、程遠い、です」

「いるとしても眷属か、せいぜい儀式の名残とかその程度。と、いったところですかね」

「はい……。おそらくは。ただ……魔力の……気配は濃密……です」


 堕天使ボディで紗雪をなだめている間に、天使ボディの方ではルナリスとこの緩やかに湾曲した通路から、先に感じる気配を読み取ろうと魔力視も全開に、探りを入れます。

 彼女の言う通り、神殿まで備わった私達の領域”悠久の楽園”を循環する魔力水に勝るとも劣らない、濃密な魔力を空気中から感じます。


 `あぁ……いいところなのに`

 `げ、黒い兵士。001サーバーにも、まだおったんか`

 `いや、見た目が001サーバーで出現したのと全然違う`

 `PK厨とか、犯罪プレイをするプレイヤーが多い004サーバーに出現したのに近い見た目かも`

 `獣と融合してるみたいなことはないけれど、人型部分で比較したらそれよりも凶悪。全土が飲み込まれる直前に出現したのと同じか、それ以上`


 私と紗雪の温もりシーンに盛り上がっていたコメント欄がにわかに、ざわめきだします。

 通路脇の扉がスライドし、中から登場したのは、ミドガ帝国にも攻め込んできていた黒い兵士達。

 ただ、その姿はコメントが教えてくれる通り、かつてこのサーバーで見たモノよりもはるかに凶悪。

 全身をねじくれたとげに覆われた、漆黒の甲冑。武器は手にせず、しかし、鎧の小手には巨大な返しのついた……某アメコミヒーローのようなカギヅメが5本。肘や膝の関節からは、偃月刀のような漆黒のブレードがにょきりと生えている。

 よく見ると、外で会敵した……改造体ゴリラが付けられていたブレードも似た形だった気もしますが……あれはあっという間に殲滅したので記憶に残っていませんね。


「前衛は私が」


 2人が並んで通れる程度には広いといっても、ルナリスの舞刀術を振るうには狭すぎる空間。

 紗雪と離れ、堕天使ボディで前衛を受け持ち、左右の隙間をルナリスが刀術で埋める。

 まずは小手調べと、純粋物理戦闘で自分がどこまで行けるように成長したか様子を見るためにも、冷炎斧槍が纏う冷たき炎も消し、身構える。余裕のあるうちに、自分の成長を実戦で試しておかないと。いざという時に困りますからね。さっきの大規模集団戦みたいな、余裕に見えて余裕のない戦闘ではそう言うわけにはいきませんので。


 敵は6体。

 ハルバードを腰だめに、先端の槍部を主軸とした構え。

 通路一杯に迫る敵前衛の2体が、カギヅメの刺突を繰り出すつもりだろう、駆け寄ってくる

 両側面に広がる斧部と鎌部で丁寧に受け流し……


 飛び散る鮮血。


 走る勢いごと、確かに受け流したはずのハルバードを、まるですり抜けるように、くにゃりとねじ曲がった漆黒の武装。

 射程も圧倒的に優位であったはずが、突き出した槍部の矛先が触れもしないうちから、両肩、右脇腹、左前腕部を抉る灼熱の痛み。

 受けた損傷に比例し、“血姫繚乱”から湧き上がる力を感じつつも、戸惑いを隠せない。


 ハルバードを引き戻す途中、

 キン……ギン……


 鋭い剣戟音が左から。

 通路の奥で詰まっていたはずの黒い兵士の腕が触手のように伸び、私の柔肌に突き立てられようとしたカギヅメを、ルナリスが刀で受け流していた。


「これ、あの時とは確かに、別物ですね……」

「鑑定……が、通りま……せんでした」


 なるほど。

 変化する間合い、形状そのものも変幻自在。しかもその速度もかなり早い。堕天使ボディの低AGI(速度)とは、相性がかなり悪いかもしれませんね。


 “☆9神域のドレス 背徳”の、“聖別空間”を強く意識。展開したままの翼の属性補助も引き出す。

 外でのような無差別広範囲はここではまずい。しっかりと、展開領域を規定。天井知らずに乗算で引き上げられていく力の制御を意識。

 発動プロセスは、まだ魔術に依存するところが大きいけれど、実戦こそ最高の練習。せっかくですから、魔法発動プロセスを強く意識。


「領域規定……魔力展開……魔術属性、氷、暗黒……複合……特性、束縛」


 魔力を制御する間も、ルナリスの刀が、私のハルバードが、確かに受け流したはずのカギヅメ。それらが接触の瞬間に軟体生物のようにくにゃりと曲がり、すり抜けてくる。神域のドレスは、破格の性能と言えど、ドレスであることには変わりない。点に集中した刃に貫き通され、返しのついた刃に肉ごと抉られる。

 血姫繚乱で増幅されている痛覚に、激烈な痛みを感じるが、気合で我慢。

 現実の感覚よりは、痛みも弱い弱いと、やせ我慢。


 魔法にはまだ一歩届かず、工程は途中から魔術発動に流れる。何かがあと一歩、足りない……。

 とはいえこれはこれで、重ねに重ねた強化効果が全て相乗効果で乗るので問題なし。

 足元から壁を伝い、闇を内包する昏い氷がツタのように成長し、通路を塞ぐ敵に絡みつき、這いあがる。

 魔法の練習のためにも、邪神の加護のアシストが入る冷炎属性は乗せていませんでしたので、通常の魔術属性のみ。


 青白い光に照らされた通路の奥、腕を触手のように伸ばした残る4体の敵も氷のつたに全身をからめとられたのを確認。


 天使体の私の視界が瞬時に切り替わる。正面前衛を張る私から見た敵の最奥、敵の背面。

 密かに隙間を縫い、飛んで行っていた宝石蝶のセレスティアが、その分身をターゲットに、短距離転移で飛ばしたのです。


 眼前には無防備に堕天使の私に向かって腕を伸ばす、黒い兵士の背中。

 双短剣から吹き上げる、接触特化の焔。2体の長々と伸ばされた腕を、刹那の内に肩口から溶断。


「さんざんやってくれましたねぇ…… 属性:復讐、く・ら・え~!」

 あちこちから血を流す、堕天使ボディ。“不朽の束縛“を通じて生命量(HP)の共有化された私達ですが。幸い、武術:斧槍術-天翔”が内包した”背水”や”血姫繚乱”は個人単位の損傷と、元のHPから算定される損耗率で、バフ比率をかちあげてくれる。

 そうして引き上げられた威力にさらに、受けた損傷、損害に対する”復讐”の特性を上乗せ!


 金属製の床がへこむほどの、踏み込み。震脚と共に繰り出されるハルバードの剛撃。“バガンッ!” 空気が破裂する衝撃音が響き渡る。

「ひゃっ」

 もう一人の自分が生み出した破滅的な衝撃波に、慌てて上空後方へと退避する天使の私。間に挟まれていた6体の黒い兵士はと見れば、たった一撃の剛閃に、見事に上下の身体を分かたれ。さらには胸部上下の肉体が消滅してしまっています。


「ふぅ。生命量共有のおかげで、リスポーンはしませんけれど、”血姫繚乱”で自分の傷の回復ができないのは依然変わらないのがちょっと痛いですね」

 ずきずきと、痛みを訴える傷口を耐えつつ、零す私。


 `これがただの力技とか、まじかー`

 `いろいろ上乗せされてるのは、わかる。わかるけど`

 `その内地球割りとかやれそー`


「?」

 確かに、6体まとめて胴体消滅はやりすぎかな? と思わないでもないですが。それにしては配信コメントがドン引きしすぎているような。


「ナオさん、ナオさん…………」

 そっと後ろから指さす紗雪。振り抜いた先。向かって右の壁を見れば。


「おや~? 物置でしょうかね、お部屋がまるみ~え」

 うん。壁どこ行った? 金属製の、それはもう頑丈そうな近未来的な壁の姿はそこにはなく。


 `無自覚の破壊者`

 `きょとんとしてるナオ氏、かわゆすぎかw`

 `ルナリス姫すら、唖然としてるんだぞw`

 `体の個別制御が緩んで、天使ボディが無表情になってるww`


「復讐の属性……は、相当に上位の、属性……のために、倍率が……すごいのではないか、と」

「たぶんそうですね。その上、蓄積した分を一発に全て載せて放出した。っていうのもありそうです。ナオさんの全力全開、1撃に全てを乗せる剛撃ですね。せっかくだから試しに」


 やおら、対物狙撃銃を逆側の壁に向かって構え、”ズドンッ!”

「わひゃぁ」

 可愛い悲鳴を上げる紗雪。バフもりもりにした私の堕天使モード以外では、私達の中でも通常攻撃としては単発威力最大級の、混沌と破壊の魔力弾。しかし、その破壊の塊は、壁に傷一つつける事無く、跳弾を繰り替えして、通路のはるか先へと飛んで行ってしまいました。


「傷一つないのはなんだか納得できませんけれど。ナオさんの威力のおかしさが、よくわかりましたね」


 `無傷、だと……`

 `普通にこの素材で盾でも作ったら無敵では?`

 `加工できるかわからないけれど、壁引っぺがして持っていけば、それだけでやばい防具になりそ`

 `プレイヤーオークションに流してくれたら、普通に買いたい`


 そんな、実にゲーマーらしいコメントなど眺めつつ、ふよふよと、謎の培養槽らしきものが奥に並ぶ部屋へ”アリア”が漂っていくのを見ながら。

「確かに、復讐の効果については十分に検証できませんでしたからね」「ルナリスと紗雪に、復讐で反撃を撃ってみるなんて、絶対にできませんから」


 8月の後半、テイムモンスターの子達を中心に活動していた時は、ダンジョンの難易度も抑えめで、堕天使ボディが深刻な傷を負うような事もありませんでしたしね。今使ってみた感じ、怒りを溜めて一気に何倍にもして放出する、いわゆる溜めゲージ的な挙動な感じがしました。小分けにして放出もできるのでしょうけれど、一気に放出するとまさにこの通り、致命的な破壊をもたらせる、堕天使ボディに最適な属性だったと言えそうですね。

 以前感覚的に理解した通り、各計算パラメータの全てに復讐の増幅効果が乗る。かなりえげつない乗算効果だという事まではわかっていましたが。これを見る限り、その一つ一つの乗算効果自体が、復讐の重さ次第でとんでもない倍率まで跳ね上がると。



 うん、良きかな良きかな……興味津々に、消失した壁の跡を乗り越える、黒犬と金毛銀毛狐は見なかったことにしましょう、ええ。


 あ、散らばった壁の破片は、うちの生産系副統括”アメティスタ”へのお土産に採取しましたよ。彼女、生産のための研究開発にも余念がありませんからね。”☆7 着想具現”のスキルなら、この素材を直接活用できそうな気もしますし。


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