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『運命の供犠姫』私のVRMMO生活は、運命値極振りから始まる百合ライフ。呪いの装備は絆の証?  作者: malka
第2部 - 第6章

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153.6章 - 第22話 ”彷徨いの樹海踏破挑戦 中層#3/3”

 歌が響き渡る。澄んだ声音に魅せられ、聞き惚れるごとに、意識は歌から離れられなくなってゆく。

 吸い寄せられるまま、たまらず視線を向ければ、美しき銀の姫が、透ける2層のドレスを揺らし、扇と刀を手に舞い踊る。

 進む突撃はいつしかその矛先を捻じ曲げられ、自然の姿とは到底思えない魔獣たちの牙が、やわ肉を欲するまま貪らんと迫る。


 しかし、ああ、獣たちは気が付く。進む剛脚はこのわずかな間に萎れ、萎え。舞いとともに彷徨う視線が映すは散る桜の幻影。

 ゆらり、ゆらり。

 ひらり、ひらり。

 捕らえたと思った、舞い踊る翼持つ銀の姫ははるか先。

 命を、魔力を、吸い上げられ、すでにその身は干からびはじめ。

 向かう先もすでに定まらず、ただただ、この昏き森に舞い踊る姫が満たした、月明かりが生む幻影に翻弄されるばかり。


 `モンスター達、急に減速したと思ったら、明後日の方向に攻撃して倒れてる`

 `範囲ドレインと集団幻覚?`

 `いやなんというかこれは……えぐい……えぐすぎる`

 `厳つい巨大獣が何もできずに地面に折り重なっていくんですが……`

 `空飛ぶ2本の剣が、さらにとどめで首を刎ねてまわってるのも怖い`


 稀にルナリスに直撃しそうな遠距離からの魔術攻撃が飛んでくれば、傍に控える金毛銀毛狐のカグラが幾倍にも増幅させ打ち返し。

 ゴリラ型の射撃兵の腕4本が変じた迫撃砲から打ち出される弾丸は、ルナリスが月魔術の反射を刀の軌跡に瞬間的に付与し、明後日の方角へと弾き飛ばす。

 前後不覚となり、幻影を相手に暴れまわる巨獣は黒犬リィナの”混沌の侵食”で破壊の魔力を叩き込まれ、身体の各部を次々崩壊させられ、悲痛な叫びと共に崩れ去る。


「わたくし……の、素肌に、触れて……よいのは、ナオ……様と、紗雪ちゃん……だけ、です」


 `姫、一途`

 `一途……なのか?`

 `ナオ氏一筋は間違いないけれど、紗雪嬢も……つまり……`

 `堂々のサンp……宣言`

 `いけない、それ以上はいけない`

 `性愛属性の誘引効果に、幻影効果、自身の素のCHAステータスの魅力値を舞踏と舞いであげて……姫も何のかのナオさんの仲間だなーってわかる、特化重ねっぷり`

 `刀捌きも確実に技術が上がってるぞ`

 `PVP大会で見せた意識をすり抜けるみたいな、無拍子の一閃を繰り出してるね`


 修行の成果をしっかり見抜いてくれている視聴者さんもいますね。

 刀としての扱いに関する綾さんからの、期間は短いとはいえ集中講義。

 神授の雫で得た、未来の動きの片鱗の記憶と体験。

 そしてなにより、SEO内にいる間は1日も欠かさず続けてきた2本の浮遊する剣との稽古。

 今や師と呼べる、試練の間で出会った2振りの剣の姿をとる存在。そのクエストの示す先がまさか、この”彷徨いの樹海”になろうとは思いもしませんでしたが。この攻略の中で、きっとその示すところも分かるのでしょう。


 “☆9 時空刀 - 朧月宮改”の、時空を断ち斬る斬撃を振るうまでは至らず、十分にさばき切れていますね。あれは、魔力の消費も相応に大きいので、切り札に取っておいているのでしょう。3人で共有された魔力、私は自然回復が相変わらずできませんので、2人からの補充任せで申し訳ない限りです……。



 `なんかナオ氏、天使モードで、天使その物の微笑みを浮かべて姫をみてるけどさ`

 `やってることが、えげつないんよ……天使の顔した暗殺者`

 `ルナリス姫と天使モードで、タッグかな? テイムモンスの支援付きで`

 `格上の大軍勢……なん、だよな……?`

 `圧倒的格上。(笑)とか言われてるけど、勇者様チーム『クルセイダーズ』が中層突破できずに逃げたのも納得できる程度には、質も確保されたうえでの圧倒的数の暴力`

 `少数攻略するような相手じゃない。森だから、大規模破壊魔法ドーンもしづらいし`


 おや? コメントが私の事に触れている気がしますが、私より麗しの銀の姫をしっかり見ていましょうよ。

 ああ、なんて芸術的。ドレスと共に舞い踊る銀の髪の美しさときたら、国宝級どころか世界の至宝ですよ?

 あ、そこ邪魔、ルナリスが見えないでしょ?


 全翼展開でもはや神速と呼んでも差し支えない域に達した、超高速飛翔。

 ただでさえ、視覚で追うのが不可能レベルの私のAGI特化型の速度に、ルナリスの性愛他諸々に誘引され、そもそもこちらに意識を向けられないモンスター達。


「いやぁ……らくちんらくちん」

 寄るを幸いと、眼球から脳、胸部から心臓、喉元から首そのもの。

 “☆9 神炎翔舞”の双短剣を次々、突き立てては、邪神クトゥルフの加護をも上乗せされた”属性:神炎”の圧倒的熱量に、消し飛ぶように蒸発する。

 致命箇所を消し飛ばされ、瞬時に絶命……。

 怪しげな緑の蒸気を噴き上げてきますが、新しい防具がもたらす『魂魄守護』によって向上した耐性の前には、特段何も怪しい事も起きません。そもそも、ほとんどは瞬時に燃やして聞かしていますしね。


「おっと」

 頭上から、ルナリスめがけて落下攻撃を仕掛けようとしていた狼頭の大蛇。4つの首の付け根を一瞬ですべて消し飛ばし。安心していたら、尻尾を前に、落下攻撃を敢行。よく見れば、尻尾側には大蛇本来のものらしき頭が。

 即座に貫き、焼滅。


「なんか、気色悪いですね……わざわざ本来の頭を尻尾に挿げ替えたの? 自然発生でこうはならないですよね」

 ええ、正面側も蛇頭ならまあ……と思いますが、狼と蛇のキメラって……。

 言葉を零す合間も、神速移動を繰り返し次々、即死させていきます。


 `巨木のそびえる森、しかも、枝やら幹やらの生い茂る上部を超高速飛翔ですり抜けていくの、異常すぎるんよ`

 `ルナリス姫も飛翔は緩やかに補助に使ってるだけでしょ? ナオ氏が異常`

 `転移してるんじゃなく、飛行なんよな? これ……`

 `●解析班:モーションキャプチャーして、解析させてもらってもいっすか?`

 `解析班、やっぱり食いついたw`

 `●紗雪(ドール体):どうぞ~`

 `いや、これはマジで、ナオ氏が実はAIでも驚かないw`

 `●紗雪(ドール体):あ、ちなみに私にも無理です。ナオさん、どうなってるんでしょうね?`

 `www`

 `演算分野だろうに、AI越えってw`

 `紗雪嬢のかなり派手な装備更新とルナリス姫の属性強化で、ナオ氏のは少しかすむかと思ったけれど。ある意味一番純粋に、徹底強化されているのがナオ氏よな`

 `元々特化の重ねで強いところを、倍率とか、重ね掛けの数が増えてるから。乗算で強くなってる。一番実は正当強化`

 `そこに、謎の天性の才能? 人外の飛行適正? が加わって、こうなると`


 各翼から放出する魔力と、風の抵抗を組み合わせてですね……と、説明しようかと思いましたが、感覚的なもの過ぎて無理ですね。がーーっとして、ごひゅ~~ってなったところを、くいくいってしたところを、きゅいんってする。みたいになりますね、これ。


「まあ、全ては大軍を誘引しながら、かすり傷一つなくさばききっているルナリスあってこそですよ」

 遠距離攻撃が重なって避けきれないところは、セレスティアが短距離転移で幻影に紛れてこっそり補助したりはしていますが、本当、繊細な身体制御は芸術的な域に至っています。


 さて、そうやって誘蛾灯に群がる羽虫を燃やし尽くすように捌いていく私達。

 一方後方背中側はと言えば。




 冷気が一面を覆い尽くす。

 黒い巨木を足場に、群がる巨獣やゴリラベースのキメラ達が、躍動感あふれる氷像と化して微動だにしない。

 空気すらも凍り付いたような静寂。


「やりすぎましたかね……」


 `加減してもろて`

 `ドレスの『聖別空間』も相乗効果で、爆乗せ?`

 `元々デバフ特化型なのはわかってるけれど、これはやりすぎやろ`

 `PVP大会で対戦相手がデバフ喰らっただけで行動不能判定下されてたの、今ならわかるわ……`

 `即死攻撃よりえぐいかもしらん`

 `即死は耐久や防御力、クリティカル抵抗とか、対抗できるのも多いけど。これ、ただでさえ上げづらい状態異常耐性で対抗だからなぁ……`

 `ダイヤモンドダストが綺麗だな~ (現実逃避)`


 たしかに、瞬間的な極低温への気温低下で氷結した空気中の水蒸気が、細氷となって、幻想的に舞っています。

 ただ、これ。あくまで敵は1体も死んでいないのですよね。阻害、デバフ特化です故。

 でも、私は一人ではないですから。


 油断なくハルバードは構えつつも、振り向いた後ろ。ルナリスと堕天使モードの私の間。

 上空に浮かぶ、灰銀色の髪をなびかせる紗雪。

 退廃的なゴシックドレスを纏い、機械的なパーツで彩られた彼女の周囲。

 整然と整列する、無数の古代魔導銃。その全てが魔力の高まりに魔導核を輝かせ。


「照準、固定。弾道補正、完了。弾種、徹甲。属性、混沌、破壊、充填」


 すっと、腕が前方へと掲げられる。翡翠色の瞳がきらりと瞬き。


「ウェポンシステム、一斉射。ファイア」


 全ての銃口から、清浄な光と深淵の闇が入り交ざる、混沌たる弾体が打ち放たれる。

 寸分のずれもなく同時に斉射された100を超える弾丸は、各々が最適な軌道を描き、標的となったモンスター達の急所へと吸い込まれる。

 天使モードの私が暴き出した急所の情報、それは念話よりも深い、魂核同士の繋がりを介し、紗雪にも渡されていた。

 正確に致命のポイントを貫徹される、凍てついたモンスター達。


 変化は、激烈。


 混沌の弾丸が抜けた後。静寂を破る事すら無く、正面一面を覆い尽くす凶悪な改造体の名を冠するモンスターの群れは……消滅した。

 通常の、マナの靄となるプロセスすら省略された、まさに、消滅。

 凝縮された邪神アザ=トース直々の加護による破壊の属性は、既に抵抗の術を凍れる炎に奪われた彼らに、存在の維持を許すことなく、消し去っていた。


 `格上……なんだよ……な?`

 `連携をとる軍勢との、ぎりぎりバトルになるかと思ったら`

 `速攻の殲滅戦だったでござる`

 `対集団戦もSEOトップ10に入るだろこれ`

 `連携の良さも大きいかな~`

 `ほとんど指示とかも飛んでないよね。念話かもしれんけど`


 なかなか好評だったようで何よりですね。

 あの大集団を都合よく操り、なおかつ、そのとんでもない集中攻撃を捌ききる。幻影を交えた回避タンク役のルナリス。

 彼女の視覚を全方位、神速でカバーし、殲滅力もある天使モードの私。

 ルナリスがカバーしきれない面を制圧する、堕天使モードの私。

 ピンポイントの確殺、範囲大量殲滅をこなす紗雪。

 さらにそれぞれの細かな隙間を埋めるテイムモンスターの子達。

 ほとんどパーティーコンボのようなものなので、実際、誰か一人でも欠けたらだめですね。


「さて。では、彼らが必死に守護していたこの先」「何が隠されているのか見に行きましょう」

 大量のMCと、素材系ドロップアイテムが共有インベントリに収納されたのを横目に、昏い森の先へと、歩みを再開します。


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