152.6章 - 第21話 ”彷徨いの樹海踏破挑戦 中層#2/3”
「な~んか、落ち着きませんね」
テイムモンスター4体に先導を任せて進む私達。リンクされたウェポンシステムの魔導銃達からの情報を見ている紗雪が、ピリピリとした様子で、自身の目でもあたりを見渡します。
両腰の宝珠から追加の武装を取り出し浮遊させながら。
「魔獣はいるのに、襲ってこない。こちらをただじーっと見ているだけ。威嚇射撃をしても、碌に反応すらしない。どうなっているんですかねこれ」
そうなのです。村を出てから進むこと約1時間。もうかなり進みましたが、村に到着する前までは、浅層までに倍する勢いでひっきりなしに襲い掛かってきていたモンスター。その姿を少なくとも私は、一切見かけていません。
紗雪の偵察圏内でこそあるものの、どうも遠巻きにこちらを観察しているだけ。
近づこうとすると距離を保つように離れ、気の陰に隠れてしまうので、その姿も良く見えません。
「あの集落の人達と同じ感じ、なのですよね?」
「ですです。なんか、ぎょろっとした。けれど、虚ろな感じがする目で。種類は千差万別ですよ。それも、明らかに浅層よりも強そう。」
「目視……できないので……鑑定が、できませんが」
「ふーむ……この奥に何があるんでしょうね」「これまでのような、ボスがいるただの小領域とは思えないですけれど」
樹木は本数を減らし、しかし1本1本は巨大になって行くばかり。空は分厚い木の葉と枝の層に覆われ、もはや外の光は一切差し込まない闇の中。
私の光輝魔法の光球を紗雪の浮遊する銃達にかけ、灯りとしています。接触特化は変わらない私ですが、こうして一度付与した魔術は維持されますので。紗雪のおかげで、さらに使い勝手がよくなりました。
「ナオさん、この先、通せんぼ……なのかな? されています」
黒犬姿のリィナ達4体も静止し、各々が警戒態勢をとっています。
一際巨大な樹木達にさえぎられ、奥に何があるのかはわかりませんが、明らかにこの先を守るように、闇の中、うつろな目をこちらに向ける魔獣の群れと対峙する形となりました。
ようやく姿を見る事となった彼ら。
その姿は、まさに異形と称するにふさわしいものでした。
元となった獣の姿は明確に残しつつ、しかし、それらはことごとく、獣やモンスターと混ぜ合わされ、冒涜的な新しい生命へと変貌しています。
まずどの個体も、脈動する緑色の液体を循環させる半透明のパイプのようなものが飛び出し。その付け根、皮膚の裂け目から覗くのは、赤い肉ではなく半透明の樹脂のような、硬質なゼリー状の何か。
容姿というべきか、形状は様々。
巨大な蛇の身体の先端には4つの狼の頭。
巨猪は背中に、体躯に相応しい巨大な蝙蝠の翼を生やし、額からは太くねじくれた山羊の角。
もぐら……なのでしょうか? しきりに地中と地上を行き来しているそれの下半身は、スライムのような半透明のゼリー状に蠕動。
特に異彩を放つのは、ゴリラが元となったらしき異形の兵団。6体からなる小隊単位で分散。両肘、両膝に巨大な鎌が据え付けられた攻撃型2体。両腕が大盾に変じた防御型2体。各隊後方に控える、2体が融合されたような4本腕の個体は、腕の先端が迫撃砲のような形に変貌。
最後に、とりわけ不気味なのは、ぐしゃっと一つの球体に押しつぶされたような元ゴリラ型のモンスター。四肢もなく、頭部も球体の中にめり込み、しかし魔力の密度はこの集団の中でもひときわ高い、おそらく魔術型。
それらが数えるのも嫌になる程、それこそ百は超える数で地上樹上問わず、こちらへ虚ろな目を向け、臨戦態勢で待ち構えています。
さらに良く見れば、虚ろなだけで目ではあると思っていた物。彼らの瞳孔は、まるでカメラのレンズのように激しく収縮を繰り返し。イメージ的にはまさに、私たちを『スキャン』しているかのよう。
「周辺のも、徐々に包囲を狭めてきています」
紗雪の報告に視線を横に向ければ、ずっと遠巻きについてきていたはずのモンスター達が少しづつ包囲を狭めてきています。彼らもやはり気味の悪い見た目は同じ。
「この先には絶対に行かせたくない……」「といったところですか?」
「この奥からは、濃密……な、邪の気配……が、します。どこか……ヨグ=ソトース……に近しい、ような。他にも……何かの気配が……複数入り交じった、神気のような……」
魔力しか見えない私と違って、彼女の瞳とスキルは、神霊すらも見通す位階にあります。
「ふむ……。だとすると……」「邪神の加護のある私達でも通してもらえないのでしょうか?」
「加え……て、鑑定結果……が……一部、読み取ることができませんでした。が、強敵……です」
と、提示してくれた読み取った情報。
============
☆5 〇〇〇の改造体 Lv200
============
またも、伏字。巨大な熊型のあのボスモンスターのドロップアイテム、心臓も伏字交じりでインベントリ内の説明が書かれていましたよね。
ランク3になって、とたんにレベルの上昇が鈍化した私達のレベルはまだLv125。
Lv幾つがランク上昇の基準かは不明ですが、Lv200 となると、ランクすら1個上の”ランク4”という可能性もありそうですね。
さらにレアリティーも高いと……完全な格上の個体が200体以上の大軍勢。
ふふ……久しく忘れていたゲーマー根性がまた、刺激されるではありませんか。ええ、ええ。そうですよ。
「せっかくのゲームなのに」「いつまでも邪神だなんだに、おびえたり、憂慮したりもおかしいですよね!」
「はい……もう……以前の、供犠姫……そして、国や邪神に縛られるわたくし……ではありません」
「「なら、全力全開、久しぶりのフルスロットル戦闘、いっちゃいましょうか!!」
「ナオさん、せっかくなら、配信もしちゃいましょう! コメントは人形体の私の方が”悠久の楽園”から対応しておきますから」
「いいですね。ただ、ちょっとこの不気味さというか、邪神の気配含めて嫌な予感もします。」 「念のため、閲覧注意の警告も付けておいてくださいね」
「了解です!」
今にも先端が開かれようとする大軍の前で、目配せを交わし合い……。
悠久の楽園以外では初めて、邪神の加護をも得たランク3の神翼種としての私達の完全全開姿を開帳しましょうか。
`急に配信開始の通知きた`
`どこ、ここ`
`閲覧注意?`
`●紗雪(ドール体):はいはい、みなさ~ん。私達は今”彷徨いの樹海”中層の浅いところで、不思議な場所を発見。これから攻略に乗り込もうというところで、防衛部隊と開戦直前です!`
`おぉ?`
`中層で新発見、ま!?`
`なんか、強そうなのが山ほどいる`
`改造ゴリラ兵団?`
`キメラ魔獣っぽいのも、いっぱいいるぞ`
`なんかファンタジーよりSFポくない? バイオでハザードな感じというか`
`●紗雪(ドール体):ちょっとグロテスクな感じの敵なのもあって、閲覧注意つけてます! ですが、私達の新しい本気モードも、実戦初公開ですよ!`
`wktk`
各々が宿した属性、特性に沿った、翼が展開される。
背に4翼、頭に2翼。片や純白と深紅の焔。片や漆黒と灰白の冷たき炎。色彩の異なる6翼の2つの身体で対を成す私。
背と腰に6翼、頭に2翼。純白に漆黒、加わる宝石の煌き、虹を纏ったルナリス。
背に2翼、頭に2翼、白黒の2色を共に宿し、破壊の雷纏う紗雪。その背には原初の魔導書”ナコト写本”の幻影が宿る。
`うぉ。めっちゃ豪華!?`
`翼が綺麗~。頭の翼がエフェクトだけなのも良き`
`出し入れ自在の翼か! 進化してもナオ氏の翼変わらないのかと思ったら、増えていたでござる`
`神翼種って、まだナオさん達だけでしょ?`
`紗雪嬢の動画で、たぶん第6翼までは確実にあるって言ってたよね`
`でもこれ、制御できるん? 普通の1対2翼でもぶっちゃけ無理ゲーって話だったよね`
`たしかに`
`紗雪(ドール体):初めは少し苦労しましたね~。ナオさんだけはなんか、す~ぐ慣れちゃってましたけれど。`
そんな事もありましたね。あれは進化後の現実で言う8月。錐もみ状態に陥ったルナリスに相対速度と回転軸を合わせて抱きとめたり。翼の飛翔タイミングがずれて失速、パニックになった紗雪を優しく受け止めたり。2人とのいちゃいちゃたっぷり、あまあま飛翔訓練を思い出して思わず薄っすら笑みが浮かびます。
GGGGRYRUUUUUUAAAAAAAAA!!
森を揺るがす咆哮の連なり。多重の吠え声が音圧の暴力となって私達の身体に叩きつけらると同時。
光輝の球体に照らされた暗い森で、大軍との激突の幕が切って落とされました。




