140.6章 - 第9話 ”六本木ヒルズの冒険 #1/3”
※※※作者注:今後、配信内で振り返り視聴している”動画の中のセリフ”は、『』で囲ませていただきます。※※※
「皆様、先程ぶりです」 「”悠久の羅針盤”、配信再開です」
「再開……です」
「はっじまっるよー」
配信スペースのソファに身を沈めた私達。ルナリスと紗雪が私の2つの身体に抱き着いて、髪の陰から半分だけお顔を出して手をふりふり。
配信画面には、すでに再開を待ちわびていた視聴者が集まり、コメント欄は祝福の言葉で溢れていた。
`きた~! 待ってた!`
`気のせいかな。なんか、すっごいつやつやしてる気がするw`
`尊い……`
`おかえりなさい!`
`まったり配信、いいですね`
`3人とも、なんか幸せオーラがすごいw`
`今日の配信は、ナオ氏のノロケ話で終わりそうwww`
`それでいい、それがいいんだ`
「皆様もありがとうございます。ではでは、ルナリスと紗雪との、現実での初お出かけの動画を一緒に見ていきましょう♪」 「いやぁ……本当、2人とも可愛いんですよぅ~」
「新しい、世界……楽しかった、です」
ルナリスの言葉に、隣の紗雪がこくりと頷く。
「知識で知っているのと経験するのは別物、って、本当なんですね」
「今日のお出かけは主に足りない日用品の購入と」 「外での過ごし方に慣れる事、でした」
配信画面には直接紗雪が動画を埋め込み、それと同じ画面が、配信スペースの大きな液晶モニターに映し出されます。
流れる動画には、私とルナリス、そして紗雪が、リムジンの扉を開き、六本木ヒルズへと歩きだす姿が映し出される。
私が先に降り、2人をそれぞれの身体でエスコートするところでは、コメント欄が軽く爆発していましたね。
風になびくルナリスの銀髪と、太陽の光を反射して輝く紗雪の灰銀の髪。普段はゲーム内のドレス姿を見慣れているため、現実の、ドレッシーではあるものの現代調な服装が新鮮で、3人の美しさを際立たせている。
`うわ、現実の映像だ……これ、CG合成じゃないんだよな`
`すごい……本当に、ゲーム内と変わらないお姿が、現実の都内に`
`ナオ氏の隣にいるルナリス姫と紗雪嬢、可愛すぎだろ`
`この3人……4人? が歩いてたら、そりゃ周りも見るよな`
`ナオ氏のリアル身体、美人すぎんか?`
`ゲーム内のアバターと全く同じだ……`
`結局ナオ氏は双子だったの?`
`今日の1個前の配信で答えてくれてるよ。あくまで一人で、片方の身体は姫と同じ造りモノ`
『ルナリス?』
動画の中の私達は、ちょうどミストシャワーが設置されたところに差し掛かったあたり。
腕に抱き着いたルナリスが、歩みを緩め、警戒するように前方、頭上から降る細かい霧を見詰めています
『ナオ……様……罠、です』
『あれは大丈夫ですよ。9月初めでまだ暑いでしょう? 歩行者の感じる気温を少しでも下げるために、ああして水を霧状にして噴霧しているんです』
説明を聞くも、じっとまだ警戒が融けない視線で、恐る恐る迂回する方向に誘導しようとする彼女。
『ルナリスちゃん、毒とかは入っていないですから、大丈夫ですよ~ほら』
そういって、堕天使ボディの私の腕を引き、霧のカーテンの中で空いた片手で手招き。
『とはいえ、不快に感じて避ける人もいるから、無理をする必要はないですよ?』
『いえ……経験……です』
まだ恐る恐るという感じですが、そっと、左手を前に差し出し、ミストに触れる銀の姫。
`水が出てくるやつまで、女神様演出みたいに見える`
`日差しが水滴に反射してきらめいて、MVとかのエフェクトみたい`
`モデルが違うと、こうも変わるのか……俺らがあれの中に立っても……`
`考えたらいけない`
『ぴりぴりしたり……は、しません』
『ええ、あくまで、安全な設備ですからね。ただの水……だと思いますよ?』
再び歩みを進めるルナリスを、紗雪と共に微笑ましくみつめる私。
「最初は、ちょっと気恥ずかしかったですよね
「はい……とても……多くの人、の視線が……」
「でも、ナオさんがいてくれたから、大丈夫でしたよ♡ 不埒な視線はそれとな~く、遮ってくれるんですよね」
だって、2人にぶしつけな視線を浴びせられるのはちょっと……
「人目と言えば、ナビAIらしき子達と会話している人たちともすれ違いましたね」 「初めはただ、ハンズフリーで電話でもしているのかと思いましたが」
「本体は自宅でお留守番して、イヤホンマイクをつけた常時通話で、サポートしたり。スマホのカメラからの視覚を共有して一緒に外出を楽しんだり、ですね。もうしばらくしたら、実際の身体を得た子達が、一緒にお出かけしている姿も見られるようになると思いますよ」
ええ。オーダーメイドで販売されたナビAIのボディも、少しづつ届いているとの事ですからね。紗雪のように人間大サイズの子達はまだのようですが。
「元の……世界の姿……を存じませんが。あちらの……世界での情景が、こちらへ……実現してきているのだと、ナオ……様が」
SEOのプレイヤー数は加速度的に増えているそうですからね。いづれ、何らかの形でナビAIの子達と日常を過ごす風景が、普通になってくるのかもしれません。
「あ、ちなみに、各お店には配信許可をいただいておりますので、その点はご安心くださいね」 「逆に許可がないケースとか、映せない個所、それと編集の都合もあるので。場面がたびたび飛んでしまいますが、ご容赦を」
場面は施設内に移る。
『まるで、ダンジョン……です。マッピングは……どう、しましょう?』
建物に入り、空気が変わったことで、再び緊張を増し、一歩前に進むルナリス。武器こそ手に持っていないものの、その姿はいつでも舞い謡い始められそう。
『安全ですから、備えなくて大丈夫ですよ。確かに、SEOに高層建造物はないですからね』『そういえば、スマホとかも結局置いてきてしまいましたね。あ、紙の地図がおいてありますね』
『私が、ネットワークとつないで、案内できますから大丈夫ですよ』
緊張をほぐすようにそっと、肩に手を置き。それぞれに再び腕をとってゆったりと歩を進める私達。
`新宿や池袋ダンジョンにもいってみてほしい`
`ある意味リアル迷宮`
`そもそも、ルナリス姫、日本語の文字読めるの?`
`ゲーム内の逆パターンで、自動翻訳されてるんじゃない?`
`遠出もすることがあれば梅田ダンジョンとかもいいな`
`お前ら……`
`いやだって、戸惑ったり、警戒したにゃんこみたいになってるルナリス姫がかわゆすぎて`
エスカレーターのタイミングに慣れなくて、少しだけ乗るのにてこずり、頬を薄く桃色に染める銀の姫を連れ、初めに目に留まったのは、国内で創られる伝統の和はもちろん、モダンなテイストが融合された品々も扱う雑貨店。
店内入ってすぐには、可愛らしいインテリア雑貨や、食器が並んでいます。
『ナオ……さん、見て……ください! このお皿……可愛い、です!』
ルナリスが、白い季節の花が描かれた小皿のセットを手に取り、目を輝かせる。
『あ、本当だ。それに、この切子ガラスをアレンジしたコップも素敵ですね。こっちの黒猫のマグカップもかわいい~』
紗雪が、黒猫の形に造られたマグカップを見つける。
『うんうん、いいですね。部屋に合わせたセットはありますから』『三人の普段使いの、気安く寛ぐ食器に、こういう可愛らしいので揃えましょうか』
私の言葉に、ルナリスと紗雪は顔を見合わせ、嬉しそうに頷く。
ええ、お部屋にあらかじめ用意されているものはどうにも、お高すぎて……いえ、SEOでの収益で十分買える事はわかっているのですが。
`3人でお揃いの食器、定番。でも……尊い`
`ナオ氏の顔、すごい幸せそうだな`
`ルナリス姫、こういう可愛らしいものにも目がなかったんだ`
`ゲーム内で、あんなに凛として涼やかな表情だったのに、ギャップがすごい`
`確かに。笑顔がなんか、自然になったっていうか`
`贄姫の宿命?とか、王女様とか、いろいろ重しが取れて、心も軽くなってきているんじゃないかな`
`幸せになっておくれよぅ`
`紗雪嬢が選んだ猫マグカップ、私も欲しい。形もにゃんこになってる~`
`この店、どこだ?`
`六本木ヒルズの雑貨店かな? あの突き当りの方にある`
その後も、いろいろなお店を巡り。私たちは、食器の他にも、小物入れやクッション、バス用品など、各自の私室用で新生活に必要なものをあれでもないこれでもない。前のお店のとどっちにする? とか。相談しながら、きゃっきゃきゃっきゃと、楽しく見て回ってはお買い物。
初めから用意されていたあまりに高級な日用品は、少し気後れしてしまって……でも、美容に関わるものとかは、遠慮なく使わせていただきますが。
`結構荷物増えたのに、ナオさん、軽々持ってるね`
`成人男性でも割ときつくないか……?`
`隠れ怪力`
`それでも、ルナリス姫と紗雪嬢にはもたせないの、解釈一致`
`道行く人と比べてもひときわ小柄なのに、なんか、3人? 4人? の中では一段背も高いから、ちょうどいい身長差カップルになってるの、素敵`
`あんな超絶美人が、これだけの荷物もってたら、荷物持ちに志願したくなる`
コメントでも言われていましたが、重さは超スペックボディのおかげで気にならないものの、質量がかさばってしまっていた頃ですね。ルナリスが、魔法のカバンがない事に驚く一幕もあったりしました。
「そうですね、ちょうどこの後、コインロッカーに預けて」 「予定していた、カフェに行ったんですよね」
「至福……でした」
「そうそう。ルナリスちゃん、大はしゃぎ」
ちょうど動画も場面が映り、手ぶらになった私の2つの身体それぞれで、2人をエスコートし、一度屋外へ出て、待機してもらっていたリムジンに乗り込みます。




