129.5章-第23話 ”テイマーの戦い方? #2/3”
本日から1日3話投稿(7:10, 18:10, 22:10の3回)に変更させていただきます。
こちら本日1回目の投稿になります。
「さて、ではボスエリアに行きましょうか」
「ボスは基本4属性に加えて、光闇の6属性を扱う巨大スライム “☆5 ヒュージ・エレメントスライム”で、林の中にできた開けた草むらがボスフィールドです」
ようやく満足して落ち着いたところで、林の中へ。紗雪が、事前に調べてきてくれた情報を伝えてくれます。
アレイスター王国、というか、クロウリード王と邪神ナイアルラトテプの企み関連で、アンブロシウス辺境伯領にもプレイヤーが大分進出してきていましたが、あくまで黒い兵士への対応と、仕掛けによって滅茶苦茶にされた試練ダンジョンが主であったため、野良ダンジョンのプレイヤーによる攻略はあまり進んでいません。そんな事もあって、情報は住民由来の冒険者ギルドで手に入るものしかないのですよね。
「反対属性の……弱点は、おそらくない……ので、リィナの混沌……による破壊を主軸……に」
「そうですね、うちの子達に任せるうえでは、メインアタッカーはどうしてもそうなりますね」
と、話しながら進むと間もなく、木々の密度が下がり開けた場所に……。
「あれ? 草むら……ではないですね?」
出たのですが、そこは緑に覆われた草むらではなく、剥き出しの地面に、岩がごろごろと転がる荒れ地でした。
周囲には囲むように石碑がいくつも円周上に配置されています。
`あれ? ここ、ギルド情報と違うじゃん`
`草むらじゃなくて岩場だ……`
`どう見てもボス戦フィールドだけど`
`石碑……? あれは?`
`なんか嫌な予感`
`まさか、また裏ボス引き当ててる?w`
`ギルド情報が間違ってるのか、このダンジョン自体が変質してるのか……`
前情報との違いに、コメントもざわついていますね。
「ナオさん、ごめんなさい。情報が間違っていたみたいですね……」
紗雪の声には、いつもより少しだけ、申し訳なさそうな響きが混じっている。
『いや、紗雪は悪くないよ』。念話で伝えながら、私が彼女の頭をそっと撫でると、彼女はふわりと目を細めた。
実際に声に出しては、
「いえいえ。というか、冒険者ギルドがスタンピード防止のために依頼したクエストで嘘を言うとは思えませんし、定期的なクエストのはずですから。異変とみるべきでしょうね」
荒れ地の手前、林の中から様子をうかがっていた私達ですが、そこでルナリスが
「ナオ……様。鑑定の結果……石碑……が、魔術と生命力……を吸収する……ものと。効果は内側に……向いていて……」
「なるほど。つまり内部は魔術禁止領域、兼、ダメージゾーンといったところですか」
`やっぱりデバフフィールドかよ`
`魔力と生命力吸収、悪質`
`いや、魔力じゃなくて、魔術なのがポイントかな?`
`超強い使い魔もいるし、そもそも本気出せば楽勝だろ`
`使い魔のスキルは魔術じゃないから、影響ないかな?`
`魔術行使不可の領域とか今まであったっけ?`
`遭遇した事はないかも? あったとしたら、試練系統のダンジョン?`
`属性無効とかのモンスタースキルや特性はあるけれど、フィールド効果ではそう言えば見たことが無い`
`内向きのデバフゾーンなら、外から石碑を壊しては?`
「外から破壊ですか……なるほど?」
コメントで流れてきた、外からの石碑破壊という意見。
「せっかくですから試してみましょうか」
ルナリスがうなづき、早速リィナに指示を出します。そろりと近寄った、ふさふさの毛並みの黒い大型犬のシルエットから放たれる、混沌属性を宿した破壊の波動”混沌の侵食”。
あえて制御を外し、無差別に球状に放たれたそれに、地面がスプーンで抉ったように消し飛ばされます。が、石碑は微動だにせず無傷。土台部分の地面も崩壊をまぬかれていますね。
「吸収の方向は円周の内側と石碑近傍。基本は荒れ地と化した広場を向いていますが、さすがに石碑周辺は自衛も兼ねて吸収領域が展開されているみたいですね」
「はい……対象を絞っても……だめ……でした」
声なき唸りを上げ、リィナが眼前に集約させた崩壊の波動を放ちましたが、石碑は相変わらず無傷。
軽くうなだれて『くぅん』。肩越しにこちらを見つめるリィナが可愛いですね。本質は不定形流体生命と知っていても、黒いゴールデンレトリバーな姿でされると、愛くるしさしかありません。ルナリスが早速よしよしと、なでなでしてあげています。
`わんこ、健気でかわいい`
`リィナちゃん、頑張った。そして慰めるルナリス姫可愛い`
`石碑、壊せないか~`
`やっぱ、このフィールドの中に入るしかないのね。そもそもボスもPOPしてないよね`
`ボスが何かにもよるけれど、結構キツいだろ`
`シナリオ勢と見せかけたトップ勢だからな~余裕でしょう`
`使い魔のスキルが効くなら、縛りプレイのままでも行けそう?`
`そもそも、テイムモンスとの連携スキル無し。これ、テイマー縛りというより、テイマーですらないただのペット放任プレイw`
`問題は本体のボスだろ。スライムってことは、物理攻撃が効かない可能性も……`
「壊せないならそれはそれで、ボスを倒せばよいのでしょう」
宝石蝶のセレスティアに新たに生み出してもらった分身を念のため、保険として林の中に潜ませてもらいましたので、いざとなれば転移ポイントも万全。
そうして一歩、石碑の円陣の中に踏み込むと、ごごご……と軽い揺れが発生し、広場中央には事前情報の、ぷにぷにとしたヒュージ・エレメントスライムとは似ても似つかない。ごつごつと小粒の岩を無秩序にくっつけたような塊が、がれきの地面が盛り上がるように生み出されたではありませんか。
「鑑定……結果、”☆6 コブル・プロリフィレーション・スライム”……と」
「名前通りなら、”岩が増殖するスライム”とかそんな感じですか? 土属性単独……?」
ルナリスが暴いてくれた名称に紗雪が注釈を加えます。
それぞれが配置につく中、地面を揺らし現れた岩の集合体のスライムが体表から、構成する10㎝程度の岩をどこどこと打ち出してきます。ただ、その狙いは微妙にそれて……。
「危ない」
天使の身体の高AGIに支えられた動体視力が、飛来する無数の岩の変則的な軌跡を捉えます。海の中で方向転換する小魚の魚群のように、横向きの放物線を描く岩の群れ。逸れていたはずのそれらが確実に、こちらに降り注ぐように軌道を変えるのを見抜きます。
念話で竜属性のクジラの幼体、アリアに間に入ってもらい、受け流し……は、成功したのですが、2つの事が起こります。
まず何よりまだ幼体で両手で抱えられるボール程度の大きさのこの子では、体表、”浮遊する霊鱗”の効果で受け流しはできても、衝撃で連続したノックバックを食らってしまい。盾になる位置から後方に、あっという間に弾き飛ばされてしまいました。
そしてもう一つ。受け流された岩は、そのまま地面に落ちるのではなく。再度、くにゃりとその軌道を曲げたではありませんか。
「石碑に吸い込まれる方向に軌道が変わっています」
弾き飛ばされたアリアの穴を埋めるように、鋼糸の結界を展開し、防壁を成した紗雪が冷静に軌道を見極め、伝えてくれます。ちなみに念話経由の報告で、咄嗟の事で”属性:結界”の結界魔術は発動するのを忘れ。今展開されているのは、これまで通りスキル魔闘術の鋼糸だけで編んでくれた結界との事。
『せっかく習得したのに……』と、ちょっと不満そう。というかがっかりしています。
『でも……紗雪ちゃん……は、いつでも……すごい、です……』
『……ルナリスちゃん』
ルナリスが紗雪を労うと、紗雪は嬉しそうに目を細めます。
「なるほど、初めの射出から、石碑へ吸われる方向への軌道変化ありきの攻撃というわけですか。吸収の威力が、石碑ごとに微細に調整されて、誘導弾のように岩の起動を操っていますね?」
「物理……攻撃みたいで……カグラが、吸収できない……です」
土属性と想定し、ルナリスがカグラに、吸収と復讐の放出を念話で頼みましたが、無理という結論の模様。
`おー、紗雪嬢の鋼糸結界では防げるのか!`
`元が属性攻撃のスライムから、純物理ボスに変化?`
`一応鑑定結果がスライムだったけれど、これ、ゴーレムとかそっち系の方が近いんじゃ`
`前、動画で金属のゴーレムをルナリス姫、断ち斬ってたよね`
`まあ、全力戦闘すれば余裕でしょ。ルナリス姫の刀、ナオ氏のハルバード、紗雪嬢の対物狙撃銃、どれでも瞬殺できそう`
`魔術吸収フィールドがボスの能力なら、魔術弱点?`
`質量が減ってないね`
`このボス、本体の岩を飛ばして、その端から岩を生成か供給してるっぽい`
`もしかするとギミック的には石碑の吸収が、このボスの活動エネルギー?`
`でも、それなら石碑が壊せないの、ギミックが破綻してない?`
`ナオ氏の考察通りなら、石碑の吸収を操っているのも、ボスとみるべきでは。ステージギミックではなく、ボスの一部とか`
今も雨あられと言わんばかりに景気よく岩を飛ばしてきているボスですが、確かにコメントの通り、大きさが変わった様子がありません。
「わずかづつですが、石碑の生命吸収によるスリップダメージ」 「加えて、物理的な岩の攻撃による足止め。意外と厄介ですね?」
私、天使と堕天使の身体で交互に喋るのが、ちょっと癖になってきていますね。
「リィナの……”混沌の侵食”は発動……するみたい……です」
「私の鋼糸もですが、スキルに魔力を使用していても吸収されないみたいですね。魔力ではなく、属性魔術だけが、石碑に吸収されてします」
紗雪が手のひらの上に石弾を生み出そうとして、その端から、魔力が石碑に吸われていきます。
「本気でかかれば問題ないと思いますが……」
と、あい変わらず無限に続く岩の嵐が、鋼糸の結界で弾き飛ばされるのを横目に見て、念話に切り替え。
『せっかくですから、魔法の練習に使いませんか?紗雪の防御で弾けていますし』
『属性転換……しても、魔術に……吸われない、のです……ものね』
『ええ、さっきの紗雪の石弾、魔法の練習として試していた魔力変質が、魔術に勝手に利用されるSEOの仕様。魔力変質そのものではなく、魔術発動の術式に魔力が取り込まれた段階で初めて、石碑に吸収されている気がするのですよね』
『確かに。あまり意識していませんでしたが、魔術の起動段階で吸収され始めていたかもです。魔術発動のプロセスで考えれば、マナ/魔力ではなくて、魔術の構成術式に反応して、吸収されているのかも』
「ちょっと新技の練習にちょうどいいので、試しますね。画面映えは地味になるかもしれませんが、ご容赦を」
一応視聴者に配慮し、一言告げてから、各々、魔力の属性変換を試し始めます。
神代魔法を行使した事で、魔力を視認する事。は、3人ともある程度できています。
天使の身体で、双短剣にまずは魔力を纏わせ、それを火に転換するイメージを。
堕天使の身体で、魔力を糸のように伸ばし、その経路を氷に転換するイメージを。
それぞれ、意識を集中し試みます。
が、一瞬各属性のきらめきが生まれるものの、その端から魔術に転換され、あえなく石碑に吸収されていってしまいます。
`何を試しているんだろう`
`吸収される前に魔術の発動?`
`発動スピードの向上っていう事かな。無詠唱とは別に、発動その物を早くするとか?`
`確かに、詠唱短縮しても、魔術発動までの待機時間はあるよね。発動前硬直みたいなやつ`
`魔力収束とか、術式構築とか、魔術理論を勉強するといろいろ段階があるね。その各段階をいかに効率化するか。が、上級魔術師として階梯を上がっていく関門。現実の学術書みたいに整備されてる魔術書で、しっかり勉強できる。`
`魔術書とか、あまり見かけないけれど、あるんだ?`
`帝国図書館にもあるけれど、魔術師への弟子入りとか、あとは連邦の魔術学園都市に入学できると、そういう講義もあるよ`
`なんか、難しそう。スキルでそういうの無いよね?
`それこそ、ナオ氏の特化スキルとか。効果向上系統のスキルにわずかだけれど、発動待機時間の短縮効果もある。だから、あると言えばある。けれど、制約と隣り合わせだから純魔術師なら、きちんと魔術理論で学んだ方が良い`
`リアル魔術学校体験ができるから、そういうのに憧れてる人は、本気で目指してもいいと思う。楽しいよ。ちなみに箒に乗って空飛ぶボール追い掛け回す体育祭とかもある
視聴者は発動時間の短縮と、予想しているみたいですね。それだと、仮に発動できても、放出系ならそれこそ、魔術の飛翔中に吸収されてしまいそうですが。あれ? でも魔術の構成をきっかけに吸収しているなら、その工程を瞬時にこなせる人なら飛翔する魔術は吸収の対象外で、魔術で戦える? なるほど。それが王道の攻略法なのかもしれませんね。
まあ、私達は純魔術師プレイヤーではありませんから。まずはとにかく魔法を発動できるようにすることです。
これで魔法も吸収されるギミックなら、笑って物理で削り倒しましょう。




