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『運命の供犠姫』私のVRMMO生活は、運命値極振りから始まる百合ライフ。呪いの装備は絆の証?  作者: malka
第1部 - 第5章

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127.5章-第21話 ”夢現の羅針盤”

「これまで通り動画はアップしますが、そろそろリアルタイムの配信も考えてもいいかもですね」

「現実への移住が済めば、”Deus ex Machina Corp.”から表に露出する依頼もあるそうですし。MCの獲得は、動画や配信の方が良いのですよね?」


 25億MCを稼ぐという目標はあるものの、リアル来年3月までの7ヶ月強の猶予はある。という事で、紗雪と計画を考えていたのですが。


「んー単調な狩りではMOB1体あたりのMC獲得効率が徐々に落ちていきます。目標額を考えると、今までのような大規模でユニークなイベントに絡みながらでないと、長期的に続けた場合、正直効率は悪いですね。サービス開始最初の、レベリングイベントと同じ現象です。それは視聴者の感情に左右される動画や配信も同じですが、私たちの場合、進化後の新しい要素も多いですからね」


「なるほど。そうして練習を兼ねたゲーム内の大きな、私達がかかわろうと思うイベントがない期間の間にいろいろと新しい要素に慣れて行けば、あっという間に9月。現実への移住となって、新要素もりもり。というわけですね」


 真剣に話しながらも、甘えるように膝の上に乗った紗雪の髪を優しく撫でながら、改めて考え、そう言葉を紡ぎます。

 そっと体重を背中にかけ、私の胸の中にさらに深く収まる紗雪。


「ええ。今まで通りの生活であれば、ゲーム内でモンスターを討伐しながら、大きなクエストフラグを拾う。という手もあるとは思います。でも、せっかく現実世界にルナリスちゃんも来られるのに、ゲーム内に24時間こもりっぱなしはしませんよね?」


「そうですね。現実世界での楽しみをいろいろと、ルナリスと紗雪と一緒に経験したいですから。少なくとも9月に入ってから当面は、普通のプレイヤーと同じゲーム内時間で4日に1,2日程度のログインでいいかなと」


 この仮想空間、VRMMOの中での彼女達との生活がもう一つの現実になっている今。本来の現実での生活に一抹の戸惑いを覚えつつも、大きな期待と共に夢想せずにもいられませんでした。


「知識としては知っていますけれど、現実の身体でというのは初めてですから。私としてもそれは嬉しいですね」


 紗雪がそっと身体を反転させ、私の腰に手を回し、頬を寄せてくる。彼女の言葉、期待もまた、私の心を温かくしてくれます。


「そうしたら、斎賀さんからのお題でもあった”魔術”ではない、”魔法”の練習をゲーム内はメインに。あまり重いシナリオには絡まないようなまったり進行で行きましょうか。どうせ聖国マリシアにはいかないのですから。ルゥちゃん絡みのシナリオがいつか進行するだろう事を視野に、ティアマト・ホエールのアリアが育って大陸間移動ができるようのを待つ。そんな感じですかね」

「しばらくはそんな感じで良さそうですね。割と息の長い話になりそうですけれど。当面プレイヤー陣にとっての大きなクエストは聖国マリシア関連になるでしょうから」


 と、言うわけでリアル9月初めの生活の大きな転換まで、8月いっぱいは割とまったり、普通にゲームを楽しむことにしたのでした。メインストリームとは違う、オリジナルの特殊クエストを拾えるかもしれませんしね? 今までもある意味、それが私達のSEOの進め方でしたから。


「戦闘スタイルも8月いっぱいは、私達は後方で”魔法”の練習、戦闘のメインは使い魔の子達できませんか? 配信を試しに始めるにも、戦闘のメインをあの子達に任せればコメントへの対応の練習もできますし」


 そう言って紗雪は、私の手を握りしめる。正直なところ、ルナリスとの運命に関わる特大のシナリオを終え、燃え尽き症候群に陥りかけていた私ですが…………。この温もりが私に、止まらず前へと進む、確かな活力をくれます。


「それがよさそうですね。ダンジョンや、良さそうなフィールドはあります?」

「冒険者ギルドで適当に見繕いましょう」


 と、そこで。一晩立ってもまだ、しっかりと話は聞きつつも、もふもふに魅了されて離れられずにいるルナリスに……

「ルナリス、どうです? 配信を試す感じになりますが」

「承知……しまし……た」

 体のサイズも自由に変えられる、”リィナ”と名付けた、”カオス・エーテルシフター”のふかふかわんこソファに沈み込みながら、”カグラ”と名付けた”陰陽の守護狐”の銀毛で飾られた金毛の狐を抱っこする彼女が、こちらを見てお返事してくれます。


 しかし、その表情には、どこか、不安が残っているように見えて。

   「でも、ナオ様、紗雪ちゃん。わたくし、あまり……お話が、得意では……ありません」


 これは、少しうかつでしたか……。もふもふに取りつかれていただけではなく、不安を紛らわせていたかもしれないと、今になって気が付く私の迂闊さ、迂遠さに心が苦しくなります。

 

「大丈夫ですよ~。ルナリスちゃんはそこにいるだけで、絵になりますから。それに、コメントなんて気にしなくていいのです。私とナオさんが全部対応しますからね。変なコメントは私が全部ブロックしちゃいますし。来てくれるリスナーさんの多くは、自由に愛情を伝え合う、私達の日常を期待してくれていますから」

   「な、なる……ほど」

 

 紗雪の優しい言葉に、ルナリスの表情が少し明るくなりましたね。が、ちょっと聞き捨てならない言葉が紛れていたような?

「紗雪? 愛情って。え、衆人環視の中ではおとなしくしますよ? ほら、動画だって、大分マイルドにしてくれていたでしょう?」

「だからこそですよ~真実の姿をしっかり見せつけてあげるのです」

「え……え? ルナリス? ルナリスもそれは嫌ですよね?」

 と、麗しの銀の姫に目線をやりますが、先ほどの紗雪の言葉に安心したのか、もふもふにまた夢中になって、気にしていませんね?

 仕方がないので、配信での立ち振る舞い等、たっぷりと語り合いましたが……わかってくれたのでしょうか……聞き流されただけな気が……。




 そうしてやってきたのは辺境伯領内にある、試練ダンジョンとは異なる、いわゆる野良ダンジョン。

 アレイスター王国からの侵攻で荒れた農村部の立て直しは今まさに真っ最中。冒険者たちも復興支援に回る事が多く、野良ダンジョンの抑制が少し手薄らしいのでちょうど良いですね。

 試練ダンジョンはアレイスター王国による干渉がされた特殊な状況を除けば、本来、モンスたえーがあふれ出すスタンピードは発生しません。しかし、野良ダンジョンはそいうもいきませんから。




「これで映っていますかね?」

 渦巻く闇を湛える祠を隣に森の中、紗雪が操るドローンカメラの内、視認可能状態にした1基を、天使姿でのぞき込みます。

 配信もありますので呼称をわかりやすくしようとルナリスと紗雪とも相談し、神翼種となった今も、転身体の表の姿を天使、裏の姿を堕天使と呼ぼうという事になりまして。

 今後は2つの身体で同時に顕現していますので、表裏といちいち呼ぶのも少し違和感がありますしね。メインの背中の翼の色は白か黒かで変わっていないので、初期の種族名ではありますが、そのまま行くことにしたのです。


「はい、大丈夫ですよ。今コメントも見えるようにウィンドウを出しますね」

 モデレーターも兼ねてくれている紗雪が言うや、それぞれの前に半透明のウィンドウが邪魔にならない程度の大きさで浮かび上がります。


「動画では、これまでもご覧いただいていますが」 「リアルタイムでは初めまして。改めて、プレイヤーのナオです」

 天使と堕天使二つの姿で並び、交互に口を開きながら、うっすらとほほ笑み、手を振ってみます。



 ※※※ 作者注 ※※※

 今後、<配信コメント>は `XXX` と、`で囲った表記をさせていただきます。

 また、ナオが天使、堕天使2つの身体で続けて喋る場合、あえて改行を挟まず、”「XXX」 「YYY」”と、ナオ一人のセリフとして並べようかと思います。

 ※※※ ※※※ ※※※



 `ナオしゃん、きたああああ! ふつくしい……!`

 `え、双子? まさか、アバター2体、同時操作? やばw`

 `まじでナオ氏、リアルチートすぎんだってw`

 `ルナリス姫、どこ?`

 `待ってました!`

 `ナオ氏、今日もせくしぃ! そのお胸に埋もれたい`

 `初見です。なにこれ、一人で二人? 姉妹?`

 `実は今までの入れ替わり戦闘、2人で1キャラ操作だったとか……?`


「あくまで一人ですよ~。実は種族進化しまして」 「その時のいろいろで、2つの顕現体を同時に操れるようになったのです」

 斎賀さんとも連絡を取り、いろいろ、開示可能範囲などについてもすり合わせ済みです。

 その中でも一番大きいのが、やはり今までは切り替えするしかなかった2つの顕現体の同時顕現でしょう。


「実は多重思考のスキルを手に入れまして」 「そのお陰で2つのアバターを同時に操っています」


 `多重思考ってなんだ……?`

 `思考加速はそこそこ使用者がいる。多重思考は住民で前例ありかな?`

 `多重思考って……え、生身の脳は一つよな。どうやってるん? 無理くない?`

 `やっぱナオ氏のキャラクリ、異次元すぎるだろ。頭パンクするって。できてもやれないわ`

 `ルナリス姫と紗雪嬢はどこ……?`


「さてさて。気にしてくださっている方もいらっしゃいますね。実は、私。というよりも、ルナリスが」 「現実世界へ訪れる住民の一人に選ばれまして!」


 `!?`

 `まじかよ……! 事前予想だと確かに最有力候補に上がっていたけれど。ルナリス姫、正式に選ばれたか!`

 `ルナリス姫、現実世界に来られるの!?`

 `マジ!?`

 `やば。生ルナリス姫がみられるようになる?`

 `サユキ嬢は?`

 `サユキ嬢は、ナビAIだから普通にAI用ボディで来れるのでは?`

 `ってことは、ナオ氏、ルナリス姫と現実でも同棲!?`

 `え、尊い空間が現実に?`

 `ナオさん、まじで人生勝ち組すぎんだろ`

 `ルナリス姫お幸せに……`

 `サユキ嬢どこ~~~`


「時期も開示許可をいただいていますので、後程お伝えするのですが」 「まずは当の本人達をの紹介を」

 ちょいちょい、と、ドローンカメラの反対側で待機していたルナリスにまずは手招きし。


 静々とやってきた彼女を、

「「愛しの銀の姫、ルナリスです」」

 天使と堕天使の身で両側から抱きしめ、頬にキスをしてドローンカメラに向かって軽いアピール……と、思ったのですが、彼女は優しく抱き返し、見せつけるように濃厚な口づけを、天使/堕天使両方の身体と交わしてしまいます。

 そうしてたっぷりと濃密な愛情を交わし、見せつけ、ほんのり妖艶な微笑みを浮かべた後。優しくカメラに向かって微笑み、美しくカーテシー。

「ナオ……様の愛の……しもべ。ルナリス……でございます」

「ちょ、ルナリス!?」

 事前の打ち合わせと違う自己紹介に思わずカメラを忘れ、彼女を見つめてしまいます。


 `あああああああああああああああああああああああああああああああああ`

 `なん、今の!!!`

 `待って、まじで今心臓止まった`

 `愛のしもべ……え、もう、尊い`

 `百合ップル、マジで最高`

 `姫様、大胆すぎんだろw`

 `はいもう、夫婦、確定`

 `公式、ナオ氏に許可取ってんのか? この動画の公開w`

 `いや、ナオ氏が許可してるというか、自分から配信してるんだろw`

 `これ、紗雪嬢プロデュースの個人チャンネルやで。デウスの公式チャンネルちゃう`

 `つまり、本人達公認の公開濃厚百合キッス`

 `これ、ルナリス姫のこれまでを知らないと、衝撃的すぎるだろ`

 `いろいろと聞きたい事もあったのに、開幕から全部吹っ飛んだww`


「翼……も、含め、ナオ……様の、深い愛情がわたくしを……作り変え。わたくしの、この身は……もはや、ナオ……様でできている。ナオ……様の、一部と申し……ても、過言ではあり……ません」


 `待って、重い、重すぎるw`

 `でも、その重さがいいんだよ`

 `わかる、わかるよルナリス姫……`

 `公開プロポーズじゃんじゃん、これ`

 `姫からの重すぎる愛の告白`

 `一部……ナオ様の一部…… ナオ様でできてる……(鼻血)`

 `動画が盛られているのかと思っていたら、リアルタイムの方がもっと、もりもりだった`

 `動画の方がマイルドにカットされてたとか、草w`


 爆弾発言と、いきなりの過激なシーンに、配信コメントが一気に沸き立ちます。


「えー、ちょ、ちょっと予定外というか、あれですが」 「つ、続いて、もう一人の私の最愛……」

 ルナリスを間に挟む体勢から一度少し後ろにひき、紗雪を紹介しようと先ほどまで彼女がいた方へ視線を……っていない?

「ん……んんぅ……!」

 堕天使ボディで感じる、濃厚な接吻、口の中を甘く舐る感触。白と黒の2翼を展開した紗雪がこれまた予定と違い、死角から空を飛び、いきなり抱き着いてきての、濃厚接触。

「って、あ、こら」

 堕天使の身で感じる名残惜しさと、透明な橋がつっと切れると、天使ボディで再び感じる幸せな感触。

「ルナリスちゃんだけなのは、ずるいですから」


 カメラ、というかその前のたくさんの視聴者を忘れているとしか思えない、妖艶なまなざしでぺろりと唇をなめる、翡翠の瞳の少女人形。

「「もう、2人とも仕方がない子達なんですから」」

 天使ボディで紗雪を、堕天使ボディでルナリスをぎゅっと豊満な胸で抱きしめる私。

 視界の隅で配信コメントが滝のように流れていますが、もう知りません。


 せっかく『夢現の羅針盤』と名付けた配信チャンネルの名前紹介もできずに、公開いちゃいちゃ垂れ流し配信に移行してしまったのでした。

 えぇ、初回から放送事故。ふぅ。


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