124.5章 - 第18話 ”悠久の楽園の変化”
なんのかの、その後も現実での生活に向けたあれやこれやを話し、Steps to Elysium Online内へ戻ったのはその日の夜になっていました。皆にはあらかじめ明日の朝までは3人で過ごすと伝えてあったので問題ありませんが、4倍加速が現実から見るといかに早いかを、実感しますね。一般的な現実の社会生活をしていた他のプレイヤーからみたら、24時間ログインがどれだけ大きな差であったか、改めて認識します。
今日がリアル8月17日の午後、ゲーム内部191日目。内部時間あと57日で現実世界での生活も始まるわけです。稼ぎの事も考えつつ、明日は、創造神の眷属様が仰っていた変化の確認をしつつ、計画を立てなければならないでしょう。
その夜は当然のように3人で。と言っても、私が同時顕現で顕現体の表/裏、両方を常時出せるようになったので、体は4人。で、しっかりいちゃいちゃして過ごしました。
ルナリスは宣言通り性魔術を駆使し。私は2つの身体で時に一人を集中的に、時に2人を平等に愛し。紗雪もさらに向上した演算能力と記憶力を駆使して、2人が望むことを先回りし。
ええ……進化前と比べてさらに濃密かつ、とんでもない快感で……正直はまって抜け出せなくなりそう……。
2人もその気持ちは同じだったようで。朝起きた時、それはもう、すごい有様でしたね。
そうしてようやくプライベートエリアから出た私達を待っていたのは、4人の副統括の子達でした。
が、その姿は以前と異なる点が。翼は白と黒の2対4枚に増え、ヘイローも紗雪と同じ白黒2色で斜めに交差する形に。
それに、全体的なオーラ―と言いますか、魔力の質がより神々しく変わっています。
「お待ちしておりました。皆様の進化、おめでとうございます」
前に進み出たのはヴァルキリーを彷彿とさせる出で立ちの、ドレスアーマーを着たアクロイト。
「皆も進化できたのですね」
「はい、古代魔導人形から、神代魔導人形へと。容姿はもちろん、基礎性能の向上と、魔力が神性を帯びるようになりました」
と、魔力の話で前に1歩出たのが、黒に紫のさし色のロングドレス、魔術部隊たる第2部隊を率いるルビーノ。
「全体的な威力と魔力効率の向上、属性として数段引き上げられていますわ。そして何より、神代魔導人形となった私たち全員が、まだまだ微弱ではありますが、マナを生成できるようになりましたの♡」
「おお、それは、大きな進化ですね」
おそらく住民と同様の存在に近づいているという事なのでしょうね。
「装備の更新をお考えと伺っております。せっかくですので、デザイン変更等もこの機会にと考えておりますが、ナオ様のドレスは蜘蛛神アトラアク=ナチャ様からの賜りものですので、マジッククローゼット用としてご用意する事になりますね」
「そうですね、さすがにこればっかりは。2つの身体で同時顕現しても、きちんと両方の身体に合わせた姿でそれぞれに現れてくれていますし。強化だけお願いして、これまでみたいに、気分を変えるお洒落はアバター衣装で楽しむ感じがよさそうですね」
そこで、ルナリスから要望が。
「わたくしの……供犠姫のドレスは、役目を終え……ましたので、変えたいと」
「はい、もちろんですわ。ドレスの付随効果、”身捧ぐ姫”の内、吸収効果を筆頭に再現することを意識しつつ。新たなお立場に相応しい、最高のお衣装をご用意いたします」
「ありがとう」
こくりとうなづき、お礼を述べるルナリス。
「アメティスタ、私の武装の復元と強化は可能そうですか?」
「はい、もちろんです。私初め、生産部隊の皆も進化させていただきましたので、ただの復元にとどまらず、腕によりをかけて強化改造を施し、ご用意しますわ」
「楽しみですね、いくつかスキルの計画もあるので、後でドール体の方で相談に行きますね」
「お待ちしております。名残惜しいですが私は皆さまの装備のご用意に早速取り掛かりますね」
お辞儀をし、退席する彼女に変わり、前に出たのはゴシックドレス調メイド服のサフィーロ。
「変化した悠久の楽園をご案内する、なの」
「皆もご挨拶できるのを楽しみにしております」
そうして 行く先々で総勢250人にまで増えた、人形少女の子達とあいさつを交わしつつ。サフィーロを筆頭に、アクロイト、ルビーノに案内され、変化したという”悠久の楽園”内を見て回ることに。
アレイスター王国にいる間はほとんどこちらに戻れませんでしたから、少し懐かしい気がしますね。
我が家という感じで嬉しいです。
まず何より真っ先に感じたのは、循環する魔力の質が以前とは比べ物にならないほど濃密、かつ神聖な雰囲気を纏っていますね。そのお陰もあってか、水にはうっすらと虹色の輝きが秘められ、色とりどりの花が随所に咲き乱れ。
さらに、浮遊島の大地を彩る宝石やクリスタル結晶が新たに生え、幻想的で彩り豊かな空間へと変貌しています。
「ルナリスの、ユヴェール(宝石種)としての血筋の影響かな」
「かも……しれません」
「考えられない程、豪華な空間になっていますね。あ、見てくださいここなんて、宝石でできたお花の、花畑ですよ」
日の光を反射してきらきらと煌めく、一面の花畑。確かにその全てが宝石やクリスタルでできているではありませんか……。
「新たに生じたこれらは栽培もでき。採集しても時間で徐々に再生されてまいります。アメティスタが狂喜乱舞しておりましたね」
「なんと。宝石城や、白亜城の周りの湖の底と違って、採集不能の不壊じゃないのですか」
アクロイトが補足してくれると、反対側に付き添ってくれていたルビーノが、
「紗雪嬢のドール体から伺ったところの、ルナリス様の生成能力の影響が領域に現れているのではないかと~。魔力の源は循環する水ですね~。宝石花の花畑は水源に近いところが中心となっておりますわぁ。もちろん魔力自体は空間全体を循環していますが、濃度は行き交う水が最も高いですので♡」
相変わらず妖艶な雰囲気を漂わせつつ。
タワーディフェンス要素における襲撃ポイントともなっている南北2か所の魔法陣周辺は、堅牢な要塞が築かれていました。
幸い一番激しかったアレイスター王国内や、邪神ヨグ=ソトースの空間の中にいた時も、みんなの頑張りで防衛線が破られることはなく。逆にその機会に第4部隊の子達が遠慮なく強化と増強を繰り返し、こうなったとの事。
せっかく景観の美しさも考えながら、希少な物を含む様々な植物の生育を行ってくれている領域に、モンスターがあふれ出したら嫌ですからね。
魔導砲とか、そういうものがたくさん並んでいる姿は圧巻でした。10人がかりの儀式魔術と同程度の威力が1発あたりにある上に、いざとなれば、領域中枢で生み出される魔力も活用し、連射も可能だそうですよ。
古代魔導人形工房も、神代魔導人形工房へと進化。さらには近くの浮遊島にこれを補助するよう建造された、素材の加工等を行う自動化設備と倉庫。いづれも、以前も美しい外観ではありましたが、さらにその美に磨きがかかり。彫刻に彫金、宝石を使った装飾も優美さを損なわない範囲で、追加されていました。内装もそれに合わせるように、こちらは、アメティスタ達が作ってくれているのでしょう、少しづつ入れ替えが進められるとともに機能性も向上されていっています。
何より見た目での一番の変化は新しく、とんでもなく立派な建造物が増えている事でしょうか。
宝石の花畑にクリスタルの樹木も混ざる、幻想的な雰囲気の中。宝石城に最も近い浮遊島の一つにそびえたつは、まるでノートルダム大聖堂のような外観の、巨大な神殿。
内部は主となる大聖堂とは別に、小聖堂とでも呼ぶべきでしょうか、大聖堂からつながるいくつもの聖堂が配置されています。 1歩中に踏み入れると、荘厳にして神聖な空気……と、一部大変に力強い邪気を感じますね……?
「あの中心付近の、邪気が漏れ出す小聖堂は……」
「この神殿は皆さまの進化と同時に、気が付けば出来上がっておりました。皆様と縁ある神々の聖堂が小聖堂として配置されているようです」
アクロイトの言に、それぞれの小聖堂を見に行くと、予想にたがわず……。
邪神アザトース、邪神ヨグ=ソトース、邪神クトゥグア、邪神アフーム=ザー、邪神アトラク=ナチャ……。
見事に邪神、それも最上位も……という一角が出来上がっていました。
幸い、肉の触手だの悍ましい物は配置されておらず、他の場所と同様の美しい内装に、祭壇にそれぞれを象徴するのであろう不可思議な物体や、炎等の彫刻が飾られているだけ。
唯一アトラアク=ナチャの小聖堂だけ、彫刻の代わりに祭壇にくぼみが作られており。
「これは、あれを祀りなさいという事ですね?」
取り出しましたるは、”☆8 異界の箱”。異界の神(アトラク=ナチャ)の歓心を得た者に下賜された箱 。
たまに、血や羽根他、捧げものをしていたそれが、ぴたりとはまりました。
せっかくなので祈りを捧げ、進化した今の羽根や血を皆で捧げますと……
“良き神殿。進化へ祝いの品を贈ろう”
とのメッセージが表示され。って、相変わらずメッセージツールも兼ねた箱ですね。まさかその内、ここに遊びに来られたりとかないでしょうね……。いや、ないですよね?
現れたのは、相当の分量の、透き通るような布。
ルナリスの上級鑑定に上がった鑑定スキルに表示されたのはシンプルな
“☆9 邪神”アトラアク=ナチャ”の蜘蛛糸で編まれた布。加工には神代魔力が必要となる”
との情報。
「神代魔力……今のアメティスタ達……ならば」
「ですね、これはまた本当にありがたい」
「この分量、全員分に使えそうですね。まさかの防具素材を賜るとは……あ、アメティスタが大興奮で飛んできています」
ドール体経由で伝えられたアメティスタは、止める間もなく飛び出したらしく。
「ナオ様、ルナリス様、お脱ぎになってください! いえ、もう脱がせます」
そして全速力で飛んできた彼女にひん剥かれる私とルナリス。慌ててインベントリから替えの、ワンピースを取り出しましたが。
「最高の仕上がりに仕立て直させていただきます! 先ほどは外見専用にとのお話しになっておりましたが、こちらを用いたなら、今のナオ様のお召し物をアップグレードしてしまっても神罰は下りませんでしょう」
と、大興奮のままわき目も降らずに、工房へ飛んで行ってしまいました。
「いや……いいのですけれどね」
よくよくもう一度、お祈りとお礼をする私達でした。
「大きな変化はこれくらいですかね?」
「はい。後は大聖堂に皆様の像をお立てするのをお待ちください」
「うん……うん!?」
さらっと言ったアクロイトに、思わず流しかけてしまいましたよ。
「大聖堂は~そのための場所だと思うのよ~?」
「当然、です。私達の心の拠り所、です」
「えー……え、小神殿に神様……邪神様? をまつって大聖堂にそれは……」
いろいろまずい気がしませんか?
「ですが、この構造は明らかにそのような意図かと」
「創造神様を祀るのが自然では?」
うんうん、そうですよ、それがいい。眷属さんも一緒に祀って
「それは~反対側の大聖堂に一番近い、小聖堂にすでにあるわよ~♡」
「うそん……」
本当でした。
結局ルナリスと紗雪も大きな反対はなく、人形少女達の自由にさせる事になったのでした。
げせぬ。




